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大人の側弯症の治し方|症状が軽度な場合の対処法は?有効な治療法について解説

大人の側弯症の治し方|症状が軽度な場合の対処法は?有効な治療法について解説
公開日: 2025.11.28

大人になってから背中や腰の痛みで病院に行ったら「側弯症」と診断され、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

子供の病気だと思っていたのに、止まらない腰痛や背中の痛みに悩み、「手術が必要なのか」「もう治らないのか」と不安を抱える方は少なくありません。

本記事では、大人になってから現れた側弯症の治療法について詳しく解説します。

この記事を読むとわかること

  • 側弯小で手術が必要な基準と具体的な治療法
  • 大人になってから発症・進行する原因
  • 子供と大人の側弯症の違い

痛みを我慢するだけの生活を終わらせ、安心して過ごせる毎日を取り戻すために、本記事を役立ててください。

大人の側弯症の治し方とは?有効な治療法

大人になってから治療を始める場合、大きく分けて2つのアプローチがあります。

現在の進行度や痛みのレベルに合わせて、医師と相談しながら適した方法を選択しましょう。

以下では、それぞれの治療法について詳しく解説します。

保存療法

側弯症の治療法として、まずは体にメスを入れない保存療法から開始することが一般的です。

大人になってからの側弯症治療では、痛みの緩和を目的として以下のような治療が用いれられます。

治療内容 具体的な目的
内服薬・湿布 炎症を抑えて腰や背中の痛みを和らげる
神経ブロック注射 坐骨神経痛など強いしびれを緩和する

これらの処置を続けながら、専門医による定期的な診察とレントゲン検査をして背骨の角度を確認します。

また、側弯症治療のイメージで多いコルセットを用いた「装具療法」は、成長期が終了している大人の場合、治療効果は限定的です。

脊柱を外側から支えることで、一時的な痛みの緩和に役立つ場合がありますが、 成長期が終了した大人では、変形の矯正や進行防止効果は期待できません。

大人になってからの側弯症は、痛みをコントロールしながら経過観察していくケースがほとんどです。

手術療法

保存療法を継続しても痛みが改善しない、あるいは変形が高度で内臓への影響が懸念される場合は、手術を検討します。

曲がってしまった背骨を金属製のボルトやロッドで固定し、真っ直ぐに矯正する方法で、主な術式には後方矯正固定術」と「前方矯正固定術」の2種類があります。

入院期間は、患者さまの年齢や症状によって異なりますが、一般的には2〜4週間程度が目安です。

術後はコルセットを装着し、継続的にリハビリに取り組みながら社会復帰を目指します。

軽度の側弯症は経過観察をする場合もある

背骨の曲がりが小さい段階では、すぐに装具の装着や手術を行うわけではありません。

一般的に側弯症のカーブが25度未満であれば「軽度」とみなされ、特別な処置をせずに定期的に経過観察を行います。

ただし、「治療しない=何もしなくて良い」というわけではありません。

側弯症が気づかないうちに進行する恐れがあるため、数ヶ月ごとに専門医の診察を受けたり、レントゲン検査で状態の確認をしたりすること重要です。

もし側弯症が悪化し、カーブが25度以上に達した場合、成長期であれば進行を抑えるために装具(コルセット)の着用を検討します。

大人になってから側弯症になる?主な原因や症状

成人してから背骨の曲がりを指摘されるケースは珍しくありません。

なぜ大人になってから症状が出る・診断されるのか、そのメカニズムとサインを解説します。

ご自身の状況と照らし合わせ、正しく病態を把握しましょう。

大人になってから側弯症になる原因

大人になってから側弯症の症状が出る・悪化する原因は、大きく分けて「子供時代からの進行」と「加齢による変化」の2パターンがあります。

基本的に子供時代に発症した「思春期特発性側弯症の成人期遺残」であり、大人になってから新規発症するケースは稀です。

成長期に発症した側弯症の軽いカーブを放置することで、大人になってから悪化し、症状が現れるケースが多いです。

一方で、年齢とともに背骨のクッションである椎間板や関節が傷んでしまうケースで発症する可能性もあります。

水分を失った椎間板が潰れ、支えきれなくなった背骨が徐々にねじれてしまいます。

また、骨粗しょう症による圧迫骨折が引き金になることもあります。

大人の側弯症でみられる症状

大人の側弯症の症状は、子供の側弯症とは異なり、はっきりとした「痛み」や「しびれ」を伴うのが特徴です。

主な症状は、以下のとおりです。

症状 具体的な状態
慢性的な痛み 腰や背中が重苦しく痛む
神経障害 お尻から足にかけてのしびれ(坐骨神経痛)
歩行障害 長く歩くと足が痛み、休むとまた歩ける(間欠性跛行)
外見の変化 肩の高さが違う、ウエストのくびれが左右非対称

稀ではありますが、重症化して非常に高度な変形(通常70度以上)に達した場合、内臓が圧迫されることで呼吸機能の低下や逆流性食道炎などを招く恐れもあります。

「ただの腰痛」と我慢せず、異変を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。

子供の側弯症との違いは?

同じ「側弯症」という病名でも子供と大人では性質が異なり、主に「症状の有無」と「治療のゴール」に大きな違いがあります。

それぞれの症状や治療目的は、以下のとおりです。

項目 子供(思春期特発性) 大人(成人脊柱変形)
症状 ほとんどない(無痛が多い) 強い腰痛や足のしびれ
発症原因 原因不明なことが多い 思春期特発性側弯症の進行・悪化、加齢変性や骨粗しょう症による新規発症
進行要因 身長の伸び(成長)に伴う 加齢による骨や関節の劣化
治療目的 カーブの進行予防(矯正) 痛みの緩和と生活の質改善

子供の場合は自覚症状がほとんどないため発見が遅れがちですが、大人は痛みをきっかけに病院を訪れる方が大半です。

また、大人になってから症状を自覚した方でも、実は子供の頃から側弯症だった(思春期特発性側弯症の成人期遺残)というケースがあります。

大人の側弯症の治し方についてよくある質問

ここでは、大人の側弯症の治し方についてよくある質問に回答していきます。

正しい知識をもち、悪化を防ぐ生活習慣を身につけましょう。

側弯症でやってはいけないことは?

側弯症は、以下のような習慣が側弯症のカーブを悪化させたり、痛みを増す可能性があるため注意が必要です

側弯症でやってはいけないこと

  • 長時間同じ姿勢で座り続ける(デスクワークなど)
  • 重い荷物を片側の肩だけで持つ
  • 体を極端にひねるスポーツを無理に行う
    など

上記のように背骨に偏った負担をかけ続ける動作は、変形を強めたり痛みを悪化させたりする要因になります。

仕事で座る時間が長い場合は、こまめに休憩を挟んで体を動かしましょう。

また、荷物を持ち運ぶカバンはリュックサックにするなど、左右均等に重さがかかる工夫をしてください。

以下の記事では、側弯症の方がやってはいけないことについて詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。

側弯症はストレッチで治る?

骨の変形そのものは物理的な矯正が必要なため、ストレッチだけで曲がった骨を完全に真っ直ぐに戻すのは困難です。

ただし、治療の補助としては有効なケースもあります。

アプローチ 期待できる役割
ストレッチ 固まった筋肉をほぐし、痛みを緩和する
整体・手技療法 全身のバランスを整え、動きやすくする
専門的なリハビリ 正しい姿勢を維持する筋力をつける

しかし、整体などで一時的にバランスを整えても、普段の姿勢が崩れていれば元に戻ってしまいます。

ストレッチは「治す手段」ではなく、「症状を和らげ、進行を防ぐためのケア」として活用しましょう。

また、次の記事では背骨が曲がった状態を治すストレッチについて解説しているので、ぜひ参考にしてください。

側弯症を放置するとどうなる?

側弯症を適切な対処をせずに放っておくと、加齢とともに症状が段階的に悪化するリスクがあります。

具体的には、側弯症が悪化することで、外見の歪みが進行し、背中や腰の痛みが強くなったり、神経痛が生じます。

また、稀ではありますが、カーブが70度を超えるような非常に高度な変形の場合、肺や心臓のスペースが狭くなり、心肺機能に影響を及ぼすケースもあります。

健康寿命を縮めないためにも、診断を受けたら放置せず、継続的な治療に取り組みましょう

大人の側弯症を治すには早期受診と適切な治療を受けることが重要

大人の側弯症は、カーブが25度未満で軽度の場合、定期的な診察と検査による「経過観察」となります。

しかし、日常生活の過ごし方や、加齢とともに変形が進み、生活に支障をきたす恐れがあるため、違和感を覚えたら早めに専門医を受診し、現在の状態を正しく把握しましょう。

放置して高度な側弯症まで進行してしまった場合は、手術が検討されます。

また、側弯症の手術後の後遺症の神経症状(しびれ)・慢性的な痛みが出た場合には、「再生医療」という選択肢があることを覚えていただきたいです。

再生医療の幹細胞治療は、患者さま自身の幹細胞を採取・培養して治療に用いることで損傷した神経組織の再生・修復を促す医療技術です。

自己細胞を用いるためアレルギー反応などの副作用のリスクが少なく、従来の治療では改善が難しかった症状への新たなアプローチとして注目されています。

再生医療による脊髄損傷改善の症例はこちら

「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。

監修者

岩井 俊賢

Toshinobu Iwai

医師

略歴

2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長