水泳で股関節が痛くなる主な原因を解説!治療法も紹介
公開日: 2019.09.02更新日: 2025.04.30
「最近、水泳の練習中や練習後に股関節が痛む・・」と感じていませんか?
水泳は関節への負担が少ない低負荷の運動とされていますが、同じ動作を繰り返し行うことで股関節周辺の筋肉や筋膜に過度の負担がかかることがあります。
とくに、平泳ぎのように股関節を大きく使う泳法では、インピンジメントや関節唇損傷といった症状が起きることもあり、放置すると悪化やパフォーマンスの低下につながる恐れも。
この記事では、水泳によって股関節に痛みが生じる主な原因と、その対処法について詳しく解説します。
水泳によって股関節が痛くなる原因や治療法まで把握して、水泳を無理なく長く楽しむための知識を身につけましょう。
目次
水泳で股関節が痛くなる主な原因
水泳は全身運動として健康に良いスポーツですが、フォームなど何かしらの問題があると、股関節に痛みを引き起こすことがあります。
本章では、水泳によって股関節に痛みが生じる以下の原因について詳しく解説します。
これらの症状を早期に発見・対処して、水泳を長く楽しみましょう。
オーバーユースや筋膜の緊張
オーバーユース(使いすぎ)による股関節の痛みは、とくに長時間・高頻度のトレーニングを行う競泳選手に多く見られる症状です。
水泳では股関節を繰り返し動かすため、周辺の筋肉や筋膜に負担がかかり緊張状態になりやすく、これが長期間続くと股関節周辺に痛みを引き起こすことがあります。
このような症状は、適切な筋膜リリースやストレッチによって改善できる可能性があります。
また、痛みを予防するためにも水泳前後のウォームアップやクールダウンを行い、あわせてトレーニング量の調整にも意識して取り組みましょう。
股関節インピンジメント
股関節インピンジメントは、大腿骨頭と臼蓋(股関節の窪み)の間で骨同士が衝突することで、股関節の可動域が制限される状態を指します。
水泳、とくに平泳ぎのキック動作では股関節の屈曲・外旋・内転といった複雑な動きが繰り返されるため、股関節インピンジメントを引き起こす要因となることがあります。
股関節インピンジメントになると、膝を抱え込むように股関節を内側へ曲げる動作や、仰向けであぐらを組むようなときに痛みを感じることが多いです。
この症状は通常のX線写真では見つけにくいため、CTやMRI検査、関節鏡検査が行われます。
股関節インピンジメントの治療では、運動を控えることが基本です。
また薬物療法や関節内注射でも改善する可能性がありますが、重症の場合は手術が必要なこともあります。
股関節唇損傷
股関節唇損傷は、大腿骨頭と臼蓋(股関節の窪み)の間にある股関節の安定性と滑らかな動きを支える関節唇が傷ついた状態です。
水泳における強い屈曲・回旋動作が、この関節唇に負荷をかけ、損傷を引き起こすことがあります。
主な症状は股関節や足の付け根の痛みで、股関節を曲げると痛みが強くなります。
放置すると変形性股関節症に進行する可能性が高くなる場合もあるため、早期の治療が重要です。
初期段階では安静や消炎鎮痛剤、理学療法が中心となりますが、症状が続く場合は手術も検討されることもあります。
水泳の中でも平泳ぎは股関節に痛みが出やすい
水泳の代表的な泳法の中でも、とくに平泳ぎは股関節に負担がかかりやすいとされています。
平泳ぎのキック動作は「蛙足」とも呼ばれ、以下のように複合的な動きを繰り返し行います。
- 屈曲:足を引き寄せるときに股関節を前方に曲げる
- 外旋:膝を外に開く動作
- 内転:蹴り出すときに足を内側に寄せる動き
この一連の動きの繰り返しによって、股関節唇損傷やインピンジメントを引き起こす一因になる可能性があります。
しかし、適切な対策を取ることで、平泳ぎによる股関節への負担を軽減することが可能です。
まず、正しいフォームを身につけることが重要で、過度に膝を開きすぎない、蹴り出しの際に足首をしっかり曲げるなどの点に注意しましょう。
また、水泳前後のストレッチを丁寧に行い股関節周囲の柔軟性を高めるとともに、筋力強化トレーニングを取り入れることで関節の安定性を向上させ、負担を分散することができます。
これらの対策を日常的に取り入れて、股関節を痛めないように予防しましょう。
股関節の痛みに対する治療方法
股関節の痛みに対する治療方法としては、主に次の2つがあります。
症状の程度や原因によって、適切な治療法が選択されます。
保存療法
水泳による股関節の痛みに対しては、手術を行わずに症状の改善を目指す「保存療法」が選択されることが一般的です。
保存療法では、まず活動の制限を行います。
痛みを引き起こす動作、とくに平泳ぎなどの股関節に負担のかかる泳法を一時的に控えることで、炎症を抑え組織の回復を促します。
薬物療法も効果的で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服や外用剤を使用して、痛みや炎症を抑えます。
症状が強い場合には、ステロイド剤や麻酔薬の関節内注射も治療の選択肢です。
また、理学療法も治療において重要な位置を占めており、専門のセラピストによる股関節周囲の筋力強化やストレッチング、筋膜リリースなどが行われます。
理学療法により、股関節の安定性が高まり、痛みの原因となる動きの改善が期待できます。
ご自身による日常生活での自己管理も大切で、適切なウォームアップやクールダウン、正しいフォームの習得、そして十分な休息を取ることで、症状の再発を防ぐことができます。
手術療法
保存療法で症状が改善しない場合には、手術療法が検討されます。
股関節の問題に対する代表的な手術方法としては、股関節鏡手術(内視鏡手術)があります。
股関節鏡手術(内視鏡手術)は小さな切開から内視鏡を挿入して行う低侵襲な手術です。損傷した関節唇の修復や、インピンジメントを引き起こす骨の突出部分を削る処置などが行われます。
股関節唇損傷の場合は、股関節鏡視下股関節唇形成術という手術が行われます。可能な限り本来の組織を温存することを目指して、傷ついた股関節唇を縫い合わせる手術です。
また、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)に対しては、大腿骨頭の出っ張り(カム変形)を削る処置も組み合わせて行われます。これにより股関節唇への負担を軽減し、変形性股関節症への進行を防ぐことができます。
股関節鏡手術は入院期間も短く、術後のリハビリテーションを経て多くの場合、スポーツ活動への復帰が可能です。ただし、完全な回復には数か月を要することがあります。
より重度の変形性股関節症に進行している場合には、人工股関節置換術などのより大きな手術が必要になることもあります。
【まとめ】水泳時に股関節が痛む場合は放置せず、医療機関へ受診を
水泳は全身運動として健康に良いスポーツですが、適切なフォームや対策なしでは股関節に痛みを引き起こすことがあります。
股関節の痛みを防ぐには、フォームの見直しや運動前のウォームアップ、休息を設けるなどの対策が必要です。
症状によっては、運動の制限や薬物療法で改善できますが、重症の場合は手術が必要になるケースもあります。
手術を避けたい、入院せずなるべく短期間での治療をしたいとお考えの方は、再生医療も治療の選択肢としてご検討ください。
当院「リペアセルクリニック」では、股関節の痛みに対して2つの再生医療「幹細胞治療」と「PRP療法」を行っています。
どちらも患者さま自身の幹細胞・血液を用いるため、副作用のリスクが少ないのが特徴です。
また、手術・入院を伴わないため、早期のスポーツ復帰も目指せます。
「幹細胞治療」と「PRP療法」について詳しく知りたい方は、当院へお気軽にご相談ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設