急に膝の皿が痛いのはなぜ?主な原因や疾患、今すぐできる対処法を解説
公開日: 2019.04.18更新日: 2025.04.28
膝のお皿に痛みを感じると、普段の生活や運動に支障をきたすことがあります。
膝蓋骨(膝の皿)周辺の痛みは、日常生活では階段の昇降や立ち座り、運動時のランニングなどで特に負担がかかりやすい部位です。
この記事では、急な膝蓋骨の痛みの主な原因や疾患について解説します。
急に膝の皿が痛い原因
膝のお皿が痛む場合、膝蓋骨に何らかの負担や異常が生じている可能性があります。
痛みの原因には以下があります。
痛みの原因について、それぞれ解説するので参考にしてください。
大腿四頭筋の筋力が弱い
膝蓋骨は大腿四頭筋腱内に位置し、大腿四頭筋の筋力が弱まると膝蓋骨の動きが不安定になります。
その結果、大腿骨との接触面で摩擦が増加し、膝蓋大腿関節に炎症や痛みを引き起こすことがあります。
膝蓋骨の位置が正常でない
膝蓋骨の位置が高すぎる(膝蓋骨高位)または低すぎる(膝蓋骨低位)と、膝蓋大腿関節に過剰な負担がかかり、痛みや炎症が生じることがあります。
先天的要因や外傷のほか、筋肉のバランス異常も膝蓋骨の位置に影響を及ぼす要因です。
大腿四頭筋や内転筋の強化の筋力トレーニングで改善が期待できます。
股関節が硬い
股関節の硬さや柔軟性の低下は、大腿四頭筋や腸腰筋の機能に影響を与え、膝蓋骨の動きが制限される可能性があります。
これにより膝蓋骨に過剰な負担がかかり、痛みが生じることがあります。
ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)が硬い
ハムストリングスが硬くなると膝関節の屈曲・伸展が制限され、膝蓋骨に不要な負荷がかかります。
この筋肉の硬さは、筋力バランスの乱れや長時間の座位姿勢による緊張から生じることが一般的です。
慢性的に硬い状態が続くと、膝蓋骨痛症候群(膝蓋大腿痛症候群)の一因となる可能性があります。
足関節の動きが悪い
足関節の動きが悪いと、歩行や立ち上がりの際に膝関節への負荷が増加します。
これが続くと膝蓋骨と大腿骨の間で摩擦が生じて、炎症を引き起こしやすくなるのです。
足関節の動きが悪くなる原因として、ふくらはぎやすねの筋肉の緊張、または過去の捻挫による後遺症が挙げられます。
姿勢が悪い
猫背やストレートネックなどの姿勢の歪みは、膝蓋骨の痛みを引き起こすことがあります。
頭が前に出る姿勢は、重心が前に偏り膝関節に負荷をかける要因の一つです。
この状態で長時間立ったり歩いたりすると、膝関節へ過剰な負荷がかかり痛みを引き起こします。
猫背やストレートネック以外にも、左右のバランスの違いや背骨の歪みが膝蓋骨の痛みに関係することがあります。
膝の皿が痛い際に考えられる疾患
膝蓋骨(膝の皿)周辺に痛みが生じる場合、以下のような疾患が考えられます。
ここでは、各疾患について原因や症状を解説します。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、膝関節内の軟骨が摩耗し、関節面での摩擦が増加して炎症や痛みを引き起こす疾患です。
主に中高年に多く、加齢や長期にわたる膝への負担が原因とされます。
症状は進行性で、初期には階段の昇降時や動き始めに痛みを感じることが多いですが、重症化すると歩行が困難になることもあります。
治療には、初期段階ではリハビリテーションや体重管理、消炎鎮痛剤などを用いる保存療法が主に行われます。
進行した場合は関節内注射や人工膝関節置換術などの手術が検討されます。
半月板損傷
半月板損傷は、膝関節内でクッションの役割を果たす半月板が損傷する疾患です。
スポーツ中の急な方向転換や膝の過度な捻り、または加齢による半月板の劣化が主な原因として考えられます。
症状には、損傷直後の急激な痛みや腫れ、膝がスムーズに動かせなくなるなどがあります。
具体的には、膝を曲げたり伸ばしたりする際に引っかかりを感じたり、膝を完全に伸ばせなくなるロッキング現象などがあります。
軽度の損傷では保存療法を中心とした治療を行いますが、損傷が重い場合や症状が続く場合には、手術による修復や部分切除が検討されます。
有痛性分裂膝蓋骨
有痛性分裂膝蓋骨とは、膝蓋骨が分裂した状態で痛みを引き起こす疾患です。
骨折とは異なり、先天的な要因や成長期における骨の発育過程の影響で発生します。この状態自体が必ずしも問題になるわけではありません。
ただし、大腿四頭筋に過度な負担がかかると、分裂部にストレスが加わり、炎症や痛みを引き起こすことがあります。
分裂の形態にはいくつかのパターンがあり、分裂部の位置や形によって痛みの場所が異なることがあります。
痛みが強い場合には安静を保ち、必要に応じて消炎鎮痛剤を使用します。症状が改善しない場合には手術が検討されることもあります。
膝蓋軟骨軟化症(ランナー膝)
膝蓋軟骨軟化症(ランナー膝)は、膝蓋骨の裏側の軟骨が柔らかくなったり、変形したりすることで痛みが生じる疾患です。
ランニングやジャンプなど膝に繰り返し衝撃がかかる運動をしている人に多く見られます。
主な原因として、膝蓋骨へ継続的な負荷がかかっていることや膝周辺の筋肉の柔軟性や筋力の不足が挙げられます。
初期症状は、運動中に膝蓋骨周辺で痛みを感じることが多いですが、進行すると階段の昇降や坂道を歩く際にも痛みが現れるようになります。
安静にしても症状が改善しない場合は、消炎鎮痛剤の処方やリハビリ、関節内へのヒアルロン酸やステロイド注射が行われます。
重症の場合は、軟骨の損傷部位を修復する関節鏡手術が検討される場合もあります。
大腿四頭筋腱炎
大腿四頭筋腱炎は、膝蓋骨の上部に付着する大腿四頭筋腱に過度の負荷がかかり、炎症や痛みを引き起こす疾患です。
ジャンプやダッシュを繰り返すスポーツに多く見られるため、「ジャンパー膝」とも呼ばれます。
特に成長期の若年層に発症しやすいのが特徴ですが、成人のアスリートにも起こることがあります。
過度な運動が繰り返されることで腱に微細な損傷が蓄積し、やがて慢性的な炎症と痛みを伴う状態になります。
軽度の場合は痛みの緩和を目的とした保存療法が有効です。
重症化して腱の断裂を引き起こした場合は、手術が必要になることが一般的です。
タナ障害
タナ障害は、膝関節内の滑液包の内側に存在するヒダ状の組織(タナ)が、膝の動きに伴って挟み込まれ、痛みや不快感を引き起こす疾患です。
タナ自体は多くの場合、先天的に存在しており、通常は日常生活に影響を与えることはありません。
しかし、膝を酷使する動作や繰り返される負担が加わることで、タナが炎症を起こしたり、膝関節内で挟み込まれて症状が現れます。
主な症状は、膝蓋骨付近にぼんやりとした痛みを感じることが多く、痛みの場所が特定しにくい点が特徴です。
また、膝を動かす際に「引っかかる」ような感覚や、「ポキッ」といったクリック音が生じることもよくあります。
軽症の場合、運動制限や姿勢の改善、理学療法などの保存療法によって症状が緩和することがほとんどです。
しかし、保存療法で効果が見られない場合や症状が重度の場合には、関節鏡手術によるタナの切除や調整が行われることがあります。
膝のお皿が痛い時はどうすればいい?
ある時突然、膝のお皿で痛みが出たらどのような対処をすればいいのかご紹介していきます。
圧痛があるか確認する
自分で簡単にできる鑑別方法としては、膝蓋骨を押してみて圧痛があるか確認することです。
もし強い圧痛があれば、膝蓋骨骨折の可能性もあります。そうでなければ、膝蓋骨の圧痛が発生するのはランナーズニーや有痛性分裂膝蓋骨が考えられます。
いずれにせよ、膝蓋骨で明らかに圧痛がある場合はそれまでの膝関節の使い方にも問題があるので、早めに医療機関に相談した方が良いでしょう。
膝に腫れがあるか確認する
膝のお皿が痛いと思っても、実は膝のお皿自体に問題があるわけではなく、膝関節の内部で異常が起きていることもあります。
代表的な例では変形性膝関節症や、タナ障害などです。
もし膝関節が腫れていて、水が溜まっているように感じたら、安静にして様子を見るか整形外科を受診することをお勧めします。
ストレッチをする
膝関節を曲げて大腿四頭筋のストレッチを入念に行い、大腿部前面の緊張を和らげてみてください。
膝のお皿で痛みが出る原因の多くは、大腿四頭筋の緊張や疲労の蓄積によるところです。
ストレッチだけでも痛みが少し楽になるようであれば、毎日続けることで徐々に膝のお皿の痛みは軽減されていき、再発の予防にもなります。
お風呂で温まる
体が温まることによって膝のお皿の痛みが軽減するようなら、膝関節や股関節の筋緊張が原因で起きている可能性が高いです。
お風呂で温まることによって血流が良くなり、筋緊張が緩和されることで痛みが軽減しているので、冷やさないような対策が有効になります。
整形外科に行く
膝のお皿が痛いとき、最初に行くべきは整形外科でしょう。
重症例では手術が必要な病態が隠れていることもありますし、膝蓋骨自体に原因があるのか、筋肉に問題があるのか確定的な診断ができるのは整形外科です。
まず自分の体に何が起こっているのか確認するためにも、診断してもらってください。
【まとめ】急な膝の皿の痛みが長引く場合は早急に病院を受診しよう
膝の皿の痛みは、日常生活や運動に支障をきたし、生活の質に大きな影響を与えることがあります。
その原因は、筋力や柔軟性の不足、姿勢の乱れ、さらには特定の疾患に起因する場合もあります。
痛みの原因を明らかにし、症状に応じた具体的な治療や改善方法を選ぶことが重要です。
さらに、痛みが慢性化している場合や従来の治療で改善が見られない場合には、再生医療も検討しましょう。
当院(リペアセルクリニック)では再生医療による治療を提供しており、膝関節の痛みの緩和や機能改善を目指せます。
患者様自身の細胞を利用して組織の修復や再生を促す再生医療は、膝の痛みでお悩みの方が検討できる治療法の一つです。
慢性的な痛みや従来の治療で改善が見られない場合は、ぜひ当院(リペアセルクリニック)へお問い合わせください。
膝の痛みは⼿術しなくても治療できる時代です。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設