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抗がん剤治療による末梢神経障害は治る?原因や治療薬・対策について解説

抗がん剤治療による末梢神経障害は治る?原因や治療薬・対策について解説
公開日: 2026.03.31

抗がん剤治療を受けている方、治療を終えた方の中には、手足のしびれやピリピリとした痛みにお悩みの方も多いのではないでしょうか。

こうした症状は末梢神経障害と呼ばれ、抗がん剤の副作用として現れる可能性があります。

「このしびれはいつまで続くのか」「しびれはどうすれば治るのか」と不安を感じている方も少なくないでしょう。

本記事では、抗がん剤治療による末梢神経障害が治るのかどうかをはじめ、発症の原因、治療薬、日常生活での対策・対処法について解説します。

末梢神経障害への早期対処につなげるためにも、ぜひ最後までご覧ください。

また、従来の治療法では末梢神経障害の改善が見られないという方にとって、再生医療も選択肢の一つとして注目されています。

再生医療とは、患者さまの細胞や血液を利用し、損傷した神経組織の再生・修復を促す治療法です。

当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療に関する情報を配信していますので、ぜひ参考にしてください。

抗がん剤治療による末梢神経障害は治るのか

本章では、抗がん剤治療による末梢神経障害の回復の見通しについて、以下の2つの観点から解説します。

以下でそれぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

治療終了後に改善が見込める

抗がん剤による末梢神経障害は、原因となる薬剤の投与が終了すれば数カ月から1年以上かけて徐々に改善するケースが多いです。

例えば、オキサリプラチンによる急性の末梢神経障害は、投与後2日以内に現れますが、投与後数時間から数日で改善するとされています。

一方で、投与の継続により生じる慢性的な神経障害については、約80%の方が回復し、そのうち約40%の方は8カ月後には完全に回復したという報告もあります。
※出典:がん薬物療法に伴う末梢神経障害の診療ガイドライン

回復のスピードには個人差があるため、焦らずに担当医と相談しながら経過を見守ることが大切です。

投与量が多い場合は完治しないケースもある

抗がん剤の累積投与量が多くなると神経細胞の障害が進行し、治療が終わっても症状が残ったり、回復が困難になったりする場合があります。

神経の損傷が重度になった場合には、手足の先(四肢遠位部)の筋萎縮や筋力低下、歩行障害といった後遺症につながるリスクも指摘されています。

こうした慢性化を防ぐためにも、しびれや痛みなどの初期症状を我慢せず、早めに担当医へ相談することが重要です。

抗がん剤治療で末梢神経障害が起こるのはなぜ?

抗がん剤による末梢神経障害は、抗がん剤が脳や脊髄から全身に伸びる末梢神経の細胞を直接障害することが原因と考えられています。

末梢神経は、「感覚神経」「運動神経」「自律神経」の3種類に大きく分けられ、抗がん剤はこれらの神経細胞にダメージを与えることがあります。

末梢神経障害を起こしやすい代表的な抗がん剤としては、以下のようなものが挙げられます。

分類 代表的な薬剤名 主な症状の特徴
白金製剤 ・シスプラチン
・オキサリプラチン
・カルボプラチン
など
・手足のしびれ/痛み
・オキサリプラチンでは冷感刺激で悪化
タキサン系 ・パクリタキセル
・ドセタキセル
など
・手袋/靴下型のしびれや痛み
・投与量/回数に比例して増加
ビンカアルカロイド系 ・ビンクリスチン
・ビノレルビン
など
・指先の感覚が鈍くなる(感覚鈍麻)
・進行すると筋力低下/歩行障害
プロテアソーム阻害薬 ・ボルテゾミブ
など
・手足のしびれ/疼痛

※参考:静岡がんセンター「末梢神経障害を起こしやすい抗がん剤について」

上記のように、薬剤の種類によって障害の現れ方や特徴は異なります。

また、同じ薬を使用していても症状の程度には個人差があるため、少しでも異変を感じた場合は早めに担当医へ相談することが大切です。

抗がん剤による末梢神経障害を和らげるための治療薬

抗がん剤による末梢神経障害に対して確立された治療法は現時点ではないため、原因となる薬の減量や休薬をするのが一般的です。

しかし、しびれや痛みなどの症状を和らげるための薬物療法が補助的に用いられることがあります。

以下でそれぞれの薬について詳しく見ていきましょう。

神経障害性疼痛治療薬

神経障害性疼痛治療薬は、末梢神経障害によるしびれや痛みの軽減に広く用いられている薬剤です。

代表的な薬剤として、以下のものが挙げられます。

薬剤名(商品名) 主な作用・特徴
プレガバリン(リリカ) ・神経の過剰な興奮を抑え、しびれや痛みを緩和する
・眠気・ふらつきなどの副作用に注意
ミロガバリン(タリージェ) ・プレガバリンと同様の作用機序を持つ
・末梢神経障害性疼痛に適応
デュロキセチン(サインバルタ) ・痛みを抑制する神経の働きを強める
・吐き気の副作用に注意が必要

薬の効果や副作用には個人差があるため、使用する際は担当医と十分に相談のうえ、自分に合った薬を選ぶことが大切です。

漢方薬

漢方薬は、末梢神経障害によるしびれに対して補助的に使用されることがありますが、現時点では治療効果が認められるエビデンスはありません。

しかし、しびれや冷えの改善が期待できる漢方薬として「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」が検討されるケースもあります。

漢方薬の使用を検討する際は、自己判断で服用せず、必ず担当医や薬剤師に相談しましょう。

ビタミン剤

ビタミンB12製剤(メチコバールなど)には、神経細胞の修復や再生を促進する働きがあるといわれ、末梢神経障害の補助的な治療として多くの医療機関で使用されています。

ただし、即効性はなく、効果を実感するまでに数週間から数カ月の継続服用が必要となることが多い点に注意が必要です。

また、ビタミンB12単独で末梢神経障害を完全に改善させることは難しいため、他の治療薬やセルフケアと併用しながら、総合的に症状の軽減を目指すことが重要です。

抗がん剤による末梢神経障害の対策・対処法

抗がん剤による末梢神経障害に対しては、日常生活における対策やセルフケアを取り入れることが、症状の悪化を防ぎ、生活の質を維持することにつながります。

本章では、末梢神経障害に対する具体的な対策・対処法について解説します。

以下でそれぞれの方法について詳しく見ていきましょう。

投与量を調整する

末梢神経障害の症状が悪化した場合、担当医の判断により抗がん剤の減量や休薬・中止が検討されることがあります。

抗がん剤の累積投与量が増えるほど末梢神経障害が進行しやすく、重症化すると薬を中止しても症状が十分に回復しないケースもあるためです。

早めに症状を医療者に伝えることで、重篤化を防ぐための投与量を調整できます。

投与量の調整は、がん治療の効果と副作用のバランスを考慮しながら慎重に判断されるため、必ず担当医に相談しましょう。

手足を保温・保護する

しびれのある部位は保温を心がけ、特に寒冷刺激(冷たいものに触れたり、冷気を浴びたりすること)を避ける工夫が大切です。

オキサリプラチンなどの白金製剤では、冷たいものに触れることでしびれや痛みが悪化する特徴があります。

冬場の外出時には手袋や厚手の靴下を着用し、冷たい飲食物の摂取にも注意が必要です。

また、きつい靴下やサイズの小さい靴など、手足を締め付けるものの着用は血行を妨げ、症状を悪化させる可能性があるため避けましょう。

血行を促進させる

血行を促すことで、末梢神経への栄養供給が改善され、しびれや痛みの軽減が期待できます。

例えば、入浴時に手足を優しくさするようなマッサージを行ったり、手のグーパー運動(手を握ったり開いたりする運動)を繰り返したりすることは、末端の血流改善に効果的です。

ただし、皮膚を強くこすると傷つける恐れがあるため、優しく行うことがポイントです。

足踏み運動やストレッチなどの軽い運動も、無理のない範囲で日常的に取り入れると良いでしょう。

安全な生活環境を整える

末梢神経障害によって感覚が鈍くなると、痛みや熱さに気づきにくいため、知らないうちにケガをしてしまうこともあります。

そのため、日常生活の中で火傷やケガ、転倒リスクを抑えられるように生活環境を見直すことが重要です。

具体的な対策として、以下のようなものが挙げられます。

リスク 対策
火傷 ・水温計を使って湯加減を確認する
・鍋つかみを使用し、熱いものに直接触れない
など
転倒 ・階段や段差に注意し、歩くときは足元を確認する
・床の敷物を取り除く
・浴室に滑り止めマットを設置する
など
ケガ ・包丁やハサミの使用時は十分に注意する
・靴下を履いて足先を保護する
など

日常生活を安全に過ごせるよう、身の回りの環境を整えておきましょう。

抗がん剤による末梢神経障害を治すには早期発見が重要

抗がん剤による末梢神経障害の症状は、薬の種類や治療期間によって個人差があり、累積投与量が多いほど長引く場合があります。

しかし、早期に症状を発見し、適切な対処を行うことで、進行を抑えたり症状を軽減したりすることが期待できます。

末梢神経障害の主な対処法としては、神経障害性疼痛治療薬などの薬物療法に加え、手足の保温や血行促進、安全な生活環境の整備といった対策が重要です。

担当医の指導のもと、適切な治療とケアを組み合わせることで、しびれや痛みの症状を和らげ、日常生活の質を保つことにつながるでしょう。

また、従来の薬物療法やリハビリでは十分な改善が見られない場合には、「再生医療」も選択肢の一つとなります。

再生医療とは、患者さまの細胞や血液を利用し、損傷した神経組織の再生・修復を促す治療法です。

「長引く末梢神経障害を治したい」「再生医療について詳しく知りたい」という方は、ぜひ当院リペアセルクリニックにご相談ください。

監修者

岩井 俊賢

Toshinobu Iwai

医師

略歴

2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長