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変形性膝関節症と半月板損傷の関係は?痛みの原因と治療の優先順位を解説

膝が痛くて病院に行ったら、「変形性膝関節症」と「半月板損傷」の両方を指摘され、どっちが原因なのか分からず不安になる方は少なくありません。
画像検査で「半月板が切れています」と言われると、それだけで手術が必要なのではと焦ってしまうこともあります。
一方で、変形が進んでいると言われても、日によって痛みが違うと「本当に悪いのかな」と判断が難しくなります。
そこで本記事では、膝OAと半月板損傷の関係を整理し、痛みの原因の切り分け方と治療の優先順位を分かりやすく解説します。
目次
結論|膝OAでは半月板損傷が併存しやすく、原因の切り分けが重要
膝OAの診療では、半月板損傷が併存しやすいため、「痛みの主因がどこか」を切り分けて考えることが重要です。
【まず押さえる結論】
- 膝OAと半月板損傷はセットで見つかることが多い
- MRIで半月板損傷があっても、それが痛みの原因とは限らない
- 治療は「保存療法を整える→必要なら次の選択肢」を基本に組み立てる
- 急なひねりや転倒など外傷がある場合は、対応の優先順位が変わる
膝は年齢や体重、筋力、動作の癖などの影響を受けやすく、痛みの原因が一つに決め切れないケースがよくあります。
そのため「半月板がある=手術」「変形がある=もう治らない」と短絡的に考えると、必要以上に不安が大きくなります。
大切なのは、症状の出方と生活の困りごとを軸に、画像所見を“材料”として解釈することです。
ここから先は、膝OAと半月板損傷をそれぞれ整理し、セットで起こりやすい理由と見分け方を具体化していきます。
変形性膝関節症(膝OA)とは?
変形性膝関節症(膝OA)とは、膝関節の軟骨や周辺組織の変化が進み、痛みやこわばり、動かしにくさが出る状態です。
よくあるイメージは「軟骨がすり減る病気」ですが、実際は骨・軟骨・滑膜(かつまく)・半月板・靱帯などが複合的に影響します。
そのため、痛みの強さと画像での変形の程度が必ずしも一致しないことも、膝OAの難しさです。
初期は歩き始めや階段で痛む程度でも、放置すると活動量が落ち、筋力低下が進んで悪循環になりやすい点に注意が必要です。
半月板損傷とは?(外傷性と変性の違い)
半月板損傷とは、膝のクッション役である半月板に亀裂や断裂が生じた状態です。
半月板損傷は大きく分けて、スポーツや転倒などで起こる「外傷性」と、加齢や膝OAに伴って起こる「変性(へんせい)」があります。
外傷性は「ひねった直後から鋭い痛み」など、きっかけがはっきりしていることが多いです。
一方の変性は、いつの間にか傷んでいるタイプで、MRIで見つかっても症状がないことも珍しくありません。
膝OAと半月板損傷がセットで起こりやすい理由
膝OAでは、半月板の傷みが重なりやすいため、「どちらもある」状態が一般的です。
【膝OAと半月板損傷が重なりやすい理由】
同じ膝の痛みでも、主役が「炎症・軟骨・骨」なのか「半月板」なのかで、優先すべき治療が変わります。
また、痛みが強い日に「半月板が悪い」と決めつけてしまうと、生活指導や運動療法などの土台が抜けやすくなります。
ここでは理由を3つに分けて、整理していきます。
加齢変性で半月板が傷みやすい
年齢を重ねると、加齢変性によって半月板は水分や弾力が減り、ちょっとした負荷でも傷みやすくなります。
そのため「明確なケガがないのに半月板損傷がある」という状況は、決して珍しいことではありません。
中高年ではMRIで半月板の損傷所見が見つかる頻度が高く、痛みがない人にも一定割合で認めらています。
つまり、半月板損傷は“原因”にもなり得ますが、“同時に見つかる所見”であることも多い、という立ち位置です。
この前提を知らないと、画像結果だけで不安が大きくなりやすいため注意が必要です。
半月板逸脱などでクッション機能が落ち負荷が増える
半月板は、ずれたり外へ押し出されたりする半月板逸脱が起こると、クッションとしての働きが落ち、膝の負荷が増えやすくなります。
クッションが効きにくくなると、歩行や階段のたびに関節の特定部位へ力が集中し、痛みや炎症が続きやすくなります。
その結果、膝OAの進行と半月板の傷みが互いに影響し合い、症状が長引くループに入りやすい点が問題になります。
「最近、O脚気味になってきた」「内側だけが痛い」といった訴えの背景に、逸脱を伴う半月板の機能低下が混ざっていることもあります。
ただし、逸脱の有無だけで治療を決めるのではなく、痛みの出方と日常動作の困りごとを合わせて判断することが重要です。
画像所見=痛みの原因とは限らない(解釈が重要)
MRIで画像所見が見つかっても、それが痛みの原因と一致するとは限らない点が、膝の診療で最もつまずきやすいポイントです。
半月板損傷は無症状の人にも見つかることがあり、「見つかった=そこが悪さをしている」とは言い切れません。
逆に、画像での変形が軽くても、炎症や筋力低下が強いと痛みが強く出るケースもあります。
だからこそ、医師は画像だけではなく、触診や動作テスト、腫れの有無、痛む場面などを組み合わせて原因を推定します。
治療で後悔しないためには、画像を“答え”として扱うのではなく、“判断材料の一つ”として捉えることが大切です。
症状の見分け方|半月板由来を疑うサイン/OA由来のサイン
膝の痛みを整理するうえでは、症状の出方から「半月板寄りか」「OA寄りか」を推測するのが現実的です。
もちろん、実際には両方が混ざっていることが多く、「どちらか一方」と決めつけない方が安全です。
ただ、サインを知っておくと、相談時に伝えるべき情報が整理でき、診察がスムーズになります。
ここでは“典型例”として、よくある違いを具体的に挙げます。
引っかかり・クリック・動作で鋭く痛む場合
膝を動かしたときの引っかかり・クリックが目立つ場合は、半月板由来の要素を疑うヒントになります。
例えば、しゃがむ・立ち上がる・方向転換の瞬間に「ズキッ」と鋭い痛みが走るときは、半月板に負荷が集中していることがあります。
また、膝が伸びきらない、特定角度で止まる感覚がある場合は、状態の評価が必要です。
ただし、クリック音は健常者でも起こることがあるため、音だけで判断するのではなく、痛みや腫れの有無とセットで考えることが重要です。
生活の中で「どの動作」「どの角度」で起こるかをメモして受診すると、原因の切り分けに役立ちます。
歩き始めや階段で痛む・腫れやこわばりが強い場合
朝の歩き始めの痛みや、階段の上り下りで痛むタイプは、膝OAの典型像と重なることがあります。
膝OAでは、関節の炎症やこわばりが関係し、動き出しが特につらいと感じる方が多いです。
また、腫れが続く、熱っぽい、膝に水がたまりやすいといった特徴がある場合は、滑膜の炎症が関与している可能性があります。
このタイプの痛みは、注射や薬だけでなく、筋力や体重、歩き方などの要因を整えるほど安定しやすい傾向があります。
治療の優先順位をつけるためにも、「何をすると腫れるのか」「休むとどう変化するのか」を把握しておくと有用です。
急性外傷(ひねり・転倒)があるかで考え方が変わる
直前に急性外傷(ひねり・転倒・スポーツ)がある場合は、変性ではなく外傷性半月板損傷として優先度が上がることがあります。
この場合、痛みの出方が急で、腫れが強く出たり、体重をかけられないほどの痛みになったりすることがあります。
また、靱帯損傷など他のケガが混ざることもあるため、早めに医療機関で評価する方が安全です。
一方で、外傷がなく徐々に痛くなった場合は、膝OAや変性半月板損傷が混ざった慢性経過を想定して組み立てる方が現実的です。
「いつから」「きっかけは何か」は、原因の切り分けの出発点になるため、できるだけ具体的に整理しておきましょう。
変形性膝関節症と半月板損傷の治療の基本
膝OAと半月板損傷が重なる場合でも、治療の基本は保存療法を土台に整えることです。
【治療の優先順位(基本形)】
- 痛みの評価:どの動作で、どの部位が、どの程度痛むかを整理
- 運動療法:太もも・お尻の筋力と動作を整えて負荷を分散
- 体重・生活調整:階段、立ち座り、歩行量の設計を見直す
- 薬物療法:内服・外用・関節内注射などを状態に応じて併用
- 装具・杖:痛みが強い時期に負荷を下げる道具を使う
半月板損傷があっても、まずは「痛みを下げて動ける状態」を作り、筋力や歩き方を整える方が結果が安定しやすいことがあります。
特に変性半月板損傷では、手術を急ぐよりも、運動療法と生活調整を先に十分行うことが推奨される流れが一般的です。
一方で、膝が完全に動かないほどのロッキングが疑われる場合など、例外的に手術検討が必要なケースもあるため、症状の重さで判断することが大切です。
改善しない場合の治療選択肢
保存療法を続けてもつらさが残る場合は、次の選択肢を比較して選ぶことが重要です。
【保存療法で限界を感じたときの選択肢】
- リハビリの再設計(フォーム、負荷量、筋力の偏りの修正)
- 注射や薬の見直し(炎症の強さ、生活の困りごとに合わせて調整)
- 骨切り術・人工関節などの手術療法(変形や病期に応じて検討)
- 状態によっては再生医療を含む相談(慢性痛・機能低下への新しい選択肢)
膝OAは病期が進むほど、注射や薬だけで生活を維持するのが難しくなることがあり、その場合は手術療法も現実的な選択肢になります。
ただし、いきなり手術に進むのではなく、「どの治療で何がどこまで改善するのか」を生活目線で比較することが大切です。
また、半月板損傷が併存していても、まず保存療法で機能を引き上げたうえで判断した方が納得しやすいケースもあります。
治療の最適解は一つではないため、症状の経過と優先したい生活動作(仕事、家事、歩行距離など)を軸に、段階的に選ぶ姿勢が重要です。
まとめ|「原因の切り分け→保存療法→次の選択肢」の順で考える
膝OAと半月板損傷の関係は、併存しやすいからこそ切り分けが重要という点に尽きます。
【この記事の要点】
- 膝OAと半月板損傷はセットで見つかることが多い
- 画像所見だけで原因を決めず、症状の出方と生活の困りごとで判断する
- 治療は保存療法を土台に整え、必要なら次の段階へ進む
- 外傷がある場合は優先順位が変わるため早めの評価が重要
「半月板が切れていると言われた」「変形があると言われた」という情報だけで、今後の見通しを一人で抱え込む必要はありません。
痛みの原因を丁寧に整理し、できる対策を積み上げることで、生活の安定につながるケースは多くあります。
それでも「保存療法を続けているのに痛みが戻る」「日常動作の限界が近い」と感じる方もいるはずです。
そのような場合は、選択肢を比較し直し、自分に合う次の一手を決めることが大切です。
リペアセルクリニック大阪院では、膝OAと半月板損傷が重なるケースも含め、状態評価と選択肢の整理を重視し、必要に応じて再生医療の可能性も含めて相談を受け付けています。
「痛みの原因がはっきりせず不安」「次に何を優先すべきか迷う」と感じる場合は、我慢を続ける前に一度ご相談ください。
| リペアセルクリニック大阪院の特徴 | 内容 |
|---|---|
| 相談の軸 | 痛む動作・経過・治療歴の整理、生活上の優先順位の確認 |
| 評価の視点 | 膝OAと半月板要素の切り分け、腫れ・歩行・筋力バランスの確認 |
| 提案の方向性 | 保存療法の再設計、負荷管理の具体化、必要時の治療選択肢の比較 |
| サポートの考え方 | 再発予防を含む生活設計、長期の動作安定を意識した案内 |
【相談時に整理しておくと役立つこと】
- いつから痛いか、きっかけの有無(ひねり・転倒・スポーツなど)
- 痛む場面(歩き始め、階段、しゃがみ、方向転換など)
- 痛みの場所(内側、外側、膝裏、膝のお皿周りなど)
- 腫れ・熱感・水がたまる頻度、朝のこわばりの有無
- 画像検査(X線・MRI)の結果や、これまでの治療内容
膝の痛みは、原因の整理が進むほど、打てる手が見えやすくなります。
「手術しかないのか」「このまま続けてよいのか」と迷う時間を短くするためにも、いまの状態を評価し直すことが重要です。
無理に我慢して動ける範囲が狭くなる前に、早めに選択肢を並べて判断できる状態を作りましょう。
監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設
















