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糖尿病はなぜ治らないと言われる?完治と寛解の違いや治療法について解説

糖尿病はなぜ治らないと言われる?完治と寛解の違いや治療法について解説
公開日: 2025.12.26

血糖値を下げるためのインスリンを分泌するβ細胞は、一度破壊されてしまうと完全に元通りにすることは、一般的な治療では非常に困難とされています。

そのため、「糖尿病になったら治らない(完治しない)」と言われています。

しかし、従来の治療でも、症状が落ち着いて健康な人と大きく変わらない状態を指す「寛解(かんかい)」を目指すことは可能です。

本記事では、糖尿病がなぜ治らないと言われるのか、現在の治療目標となる寛解について詳しく解説します。

「治らない」という言葉の真意を正しく理解し、病気とうまく付き合いながら健康な人生を送るためのヒントとしてお役立てください。

また、従来の治療では完治しないとされている糖尿病に対して、損傷した膵臓の機能改善が期待できる「再生医療」が注目されています。

再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を高めることで、損傷した膵臓や血管の再生・修復を促す医療技術です。

当院リペアセルクリニックでは、糖尿病の再生医療について無料カウンセリングを実施しているため、ぜひご相談ください。

糖尿病はなぜ治らないと言われるのか【1型・2型】

糖尿病が「治らない」と言われる理由は、血糖値を調節する膵臓(すいぞう)の機能や、遺伝的な体質を根本から「発症前の状態」に戻すことが医学的に難しいからです。

糖尿病は、風邪が治るようにウイルスが消えて元通りになるのとは異なり、「症状をコントロールし続ける必要がある病気」と捉えられています。

それぞれのタイプごとに、なぜ完治が難しいのか、そのメカニズムを見ていきましょう。

1型糖尿病|破壊された膵臓を再生できないため

1型糖尿病は、自己免疫の異常などが原因で、インスリンを分泌する膵臓の「β(ベータ)細胞」が破壊されてしまうタイプです。

現在の標準的な医療では、一度死滅してしまったβ細胞を自然に再生させたり、修復したりすることはできません。

体内でインスリンを作ることが物理的に不可能になってしまうため、長期にわたって外部からインスリンを補い続ける必要があります。

しかし、近年の治療では、自己細胞を用いて、損傷した組織の再生・修復を促す「再生医療」が注目されています。

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2型糖尿病|体質を変えられないため

2型糖尿病は、遺伝的な「インスリンの働きが弱い体質」に、過食や運動不足などの環境要因が重なって発症するタイプです。

治療によって血糖値が正常に戻ったとしても、それはあくまで良い状態を保っているだけであり、「糖尿病になりやすい体質」そのものが変わったわけではありません。

正常な数値に戻った後に以前のような生活習慣に戻れば、休ませていた膵臓に再び負担がかかり、いつでも高血糖の状態に逆戻りしてしまう可能性があります。

適切な治療を続けていれば症状が落ち着いた状態を維持できるケースもあるため、自己判断で薬を中止しないようにしましょう。

糖尿病の完治は難しいが「寛解」は目指せる

現代の医療において、糖尿病を完全に治す「完治」は難しいものの、症状が落ち着いた状態を指す「寛解(かんかい)」を目指すことは可能です。

糖尿病からの回復を諦める前に、まずは「寛解」について正しく理解しておきましょう。

以下で詳しく解説していきます。

完治と寛解の違い

完治と寛解の大きな違いとして、「再発の可能性」や「経過観察の必要性」が挙げられます。

項目 完治 寛解
状態 病気の原因が完全に治った状態 症状が落ち着いている状態
薬の使用 不要 必要(不要になるケースもある)
再発リスク 基本的になし 治療、生活習慣次第であり得る
経過観察の必要性 不要 定期的なチェックが必要

完治とは、病気の原因が完全に消失し、再発の可能性がなくなった状態を指しているため、治療や経過観察などは不要です。

一方で、寛解は病気の原因は消失していないものの、症状が落ち着いている状態のことを指します。

あくまで「現時点で症状が落ち着いているだけ」なので、薬の服用や経過観察は医師の判断に従う必要があります。

糖尿病の寛解を妨げる要因

全ての人が寛解に至るわけではなく、罹患期間の長さや膵臓(すいぞう)の機能低下が大きな壁となることがあります。

糖尿病の寛解を妨げる要因は、以下のとおりです。

  • 罹患期間が長い|発症してから長期間放置したり、高血糖の状態が長く続いたりしている
  • インスリン分泌機能の低下|膵臓の細胞が破壊され、自力でインスリンを出す力がほとんど残っていない
  • 重度の肥満|内臓脂肪が多く、インスリンの効きが悪い状態(インスリン抵抗性)が改善されていない

複数の要因が重なっている場合は、インスリンを出す機能(β細胞の機能)が既に限界を迎えている可能性が高く、寛解へのハードルが上がるとされています。

しかし、これらに当てはまる場合でも、合併症を防いで現状を維持することは可能です。

糖尿病の寛解を目指すための治療法

糖尿病の寛解を目指すために重要なのは、疲弊した膵臓(すいぞう)を休ませ、本来の機能を取り戻す環境を作ることです。

主に以下の治療を組み合わせて行います。

それぞれの治療法について詳しく確認していきましょう。

薬物療法

糖尿病における薬物療法では、インスリンの分泌を促進させたり、血糖値を下げたりする効果が期待できる内服薬や注射を用います。

高血糖の状態が続くと「糖毒性」によってさらにインスリンが分泌されにくくなる悪循環に陥るため、薬を使って強制的に血糖値を下げることで、この糖毒性を解消し、膵臓を休息させることができます。

薬物療法によって機能が改善すれば徐々に薬を減らし、最終的に薬に頼らなくても血糖値が正常範囲でコントロールできるケースもゼロではありません。

自己判断で中断せず、医師の指示通りに服薬することが寛解への第一歩です。

運動療法

糖尿病における運動療法では、血液中のブドウ糖を筋肉に取り込ませて直接血糖値を下げる効果と、インスリンの効きを高める長期的な効果が期待できます。

特にウォーキングなどの「有酸素運動」とスクワットなどの「筋力トレーニング(レジスタンス運動)」の組み合わせが効果的です。

筋肉量が増えると、それだけ糖を消費する容量が大きくなるため、太りにくく血糖値が上がりにくい体作りにつながります。

まずは医師の判断のもと無理のない範囲で、ウォーキングやスクワットなどの運動を習慣化してみましょう。

食事療法

糖尿病における食事療法の目的は、膵臓に過度な負担をかける「食後の急激な血糖上昇(血糖スパイク)」を防ぐことにあります。

食事療法の主なポイントは、以下のとおりです。

  • 規則正しい食生活を送る|1日3食をしっかり食べる
  • 栄養バランスを意識する|炭水化物・たんぱく質・脂質をバランス良く摂る
  • 食物繊維豊富な食品を摂る|野菜・海藻・きのこ類を積極的に摂る
  • 低GI食品を選ぶ|玄米・そば、大麦など血糖値が上がりづらい食品を選ぶ

炭水化物(糖質)の量を適正にコントロールしつつ、食物繊維が豊富な野菜から先に食べる「ベジファースト」を実践するだけでも、血糖値の上昇は緩やかになります。

「何を食べるか」も大切ですが「どう食べるか」を見直すことで、インスリンの無駄使いを防ぐことにつながります。

糖尿病の根本治療に期待されている再生医療

従来の治療では「完治が難しい」とされていた糖尿病ですが、近年では「再生医療」による治療が注目されています。

再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を高めることで、損傷した膵臓や血管の再生・修復を促す医療技術です。

低下した膵臓の機能が改善することで、薬に頼らずともインスリンの分泌量を増加させたり、血管内で糖の吸収を促進したりする効果が期待できます。

以下の動画では、再生医療によって糖尿病性網膜症が改善した症例を紹介しているので、ぜひご覧ください。

当院リペアセルクリニックでは、糖尿病の再生医療について無料カウンセリングを実施しているため、ぜひご相談ください。

糖尿病はなぜ治らないのか|適切な治療で「寛解」を目指すことが大切

糖尿病は、一度発症すると膵臓の機能を完全に戻す「完治」は難しい病気ですが、適切な治療で健康な人と変わらない状態である「寛解」は十分に目指せます。

「治らない」という言葉に悲観せず、まずは主治医と相談しながら、ご自身に合った治療法を根気よく続けていくことが大切です。

また、近年の糖尿病の治療では、損傷した膵臓の機能改善が期待できる「再生医療」が注目されています。

再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を高めることで、損傷した膵臓や血管の再生・修復を促す医療技術です。

現状の治療に限界を感じている方は、糖尿病の新たな治療選択肢としてぜひご検討ください。

監修者

渡久地 政尚

Masanao Toguchi

医師

略歴

1991年3月琉球大学 医学部 卒業

1991年4月医師免許取得

1992年沖縄協同病院 研修医

2000年癌研究会附属病院 消化器外科 勤務

2008年沖縄協同病院 内科 勤務

2012年老健施設 かりゆしの里 勤務

2013年6月医療法人美喜有会 ふたこクリニック 院長

2014年9月医療法人美喜有会 こまがわホームクリニック 院長

2017年8月医療法人美喜有会 訪問診療部 医局長

2023年12月リペアセルクリニック札幌院 院長