血糖値の急上昇は突然死のリスク|今すぐ始めたい食後高血糖の症状と改善方法
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血糖値の急上昇は突然死のリスク|今すぐ始めたい食後高血糖の症状と改善方法
最近は機能性食品のCMなどで「血糖値の上昇を抑える」「糖の吸収を抑える」というキャッチコピーを聞くことが増えてきました。
血糖値が急激に上昇すると何が問題なのでしょうか。
この記事では血糖値が急上昇すると何が問題なのか、また血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える方法について解説します。
食後に血糖値が急上昇したまま戻らないのは病気の可能性
健康な人であっても、食事をすると血糖値が上がります。しかし、健康な人であれば食後しばらくすると上昇した血糖値が下がります。食後、時間が経っても血糖値が上がったままという場合は食後高血糖になっている可能性があります。
食後血糖値とは
食事で摂ったブドウ糖は腸で吸収されたあと血液に入り、すい臓から分泌されたインスリンによって筋肉や肝臓など全身の組織や細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。つまり、食後は血糖値が上昇するのです。
健康な人であれば、食後2時間ほど経てば140mg/dl未満(平常時の血糖値)に血糖値が下がりますが、食後高血糖の場合は140mg/dl以上の状態が続きます。
定期健康診断では空腹時(前日の夜から10時間以上絶食)血糖値を測定するため、血糖値が下がった状態の血糖値を見ていることになります。
しかし、食後高血糖は食後のみ症状が現れるため、空腹時血糖値では異常が見られず、健康診断で「正常」と判定されることがあるのです。
食後高血糖が起きる原因
食後はどんな人でも血糖値が上がりますが、健康であればすい臓からインスリンが分泌されるため、食後2時間後には空腹時の血糖値まで下がっていきます。
しかし、インスリンの分泌量が少なかったり、なかなか分泌されない場合は血糖値が下がらず食後も高血糖の状態が続きます。
食後高血糖にひそむ危険な病気
食後高血糖は食後に現れる高血糖です。空腹時は正常値に戻るため、通常の健康診断では高血糖を見逃されてしまい、気付かないうちにさまざまなリスクが起こる可能性があります。
糖尿病を発症するリスク
健康な人であれば、食事で上がった血糖値は食後2時間ほどで下がります。しかし、食後高血糖のある方は食後2時間経っても血糖値が下がりません。
食後血糖値が下がらない原因としては、すい臓から分泌されるインスリンの働きや分泌量そのものが低下していることによると考えられています。
インスリンの働きや分泌量の低下は糖尿病の原因でもあるため、放置すると糖尿病の発症リスクが高くなります。
さらに、食後高血糖は食後しばらくの間しか高血糖であることが確認できないため、一般的な健康診断では見逃されてしまうことが多くあります。
そのため、食後高血糖は隠れ糖尿病とも呼ばれています。
食後高血糖は気づきにくく放置してしまう傾向があるため、糖尿病を発症しやすくなります。
がん・認知症を発症するリスク
健康な人であれば、食事をするとインスリンがうまく働くため、血液中の糖をスムーズに細胞に取り込むことができます。
しかし、生まれ持った体質や生活習慣の乱れが原因で、インスリンが効きにくくなり、血液中の糖を細胞に取り込みにくくなると血糖値が急上昇してしまいます。
また、上昇した血糖値を正常に戻すために、すい臓は大量にインスリンを分泌するため、血糖値の上がり下がりが激しくなります。この急激な血糖値の上がり下がりのことを血糖値スパイクといいます。
実は、このようにインスリンが極度に多い状態は記憶力が衰える原因になるといわれています。ネズミによる実験では、インスリンが極度に多いとき、脳にアルツハイマー型認知症の原因といわれるアミロイドベータという物質が蓄積していることがわかってきています。
つまり、インスリンが極度に多い状態はアルツハイマー型認知症の原因になりうるということになります。
一方、脳に届くインスリンの量が少なくなることでも記憶力が低下するといわれているため、記憶力や認知症を抑えるためにも血糖コントロールが重要になります。一方、糖尿病はがんの発症リスクも高めます。
実はインスリンは細胞のがん化やがん細胞の増殖を引き起こすといわれています。また、糖尿病によって高インスリン血症や慢性炎症などを起こすこともがんを招く原因になると考えられています。
特に食後高血糖は血糖値の上がり下がりが繰り返されるため、インスリンが極端に多い状態による影響が大きくなります。そのため、食後高血糖はがんや認知症のリスクが高くなるのです。
心筋梗塞や脳卒中を発症するリスク
食後高血糖の場合、インスリンの分泌量や働きが低下しているため、上昇した血糖値を正常値に戻す力が非常に弱く、耐糖能異常の状態であるといえます。耐糖能異常は動脈硬化の引き金になることがわかっています。
また、食後高血糖は活性酸素の発生をうながすため、血管にストレスを与えたり、炎症を起こすことで動脈硬化を引き起こすともいわれています。
このように、耐糖能異常によって動脈硬化が起こると脳卒中や心筋梗塞など糖尿病の合併症を引き起こす可能性が高くなります。
今すぐ始めたい血糖値の急上昇を抑える食事法
食後の血糖値の急上昇を抑え、高血糖を抑えるにはどうすれば良いのでしょうか。
食後の血糖値が上がりにくい食べ物を選んで食べると食後の血糖値の上昇が穏やかになります。ただし、食後高血糖を防ぐには食べ方にもポイントがあります。
規則正しい3食の食生活
朝食を抜くと、昼食後に血糖値スパイクが発生することがわかっています。これは、朝食を抜くことで空腹の時間が長くなるため、昼と夜(残り2食)の食事後の血糖値が急上昇しやすくなるためです。
そのため、3食規則正しく食べることが食後の急激な血糖値の上昇を抑えることにつながります。
食べる順番は野菜から
食事をする際は野菜から食べることが血糖値の急上昇を抑えることにつながります。
野菜は食物繊維が豊富なため、最初に野菜を食べると食物繊維が腸の壁をコーティングするため、あとから食べるものの吸収速度を緩やかにする効果があります。なお、最初に食べるのは野菜だけでなく、きのこや海藻もおすすめです。
野菜の次に食べるならたんぱく質が豊富な肉や魚がおすすめです。肉や魚などを食べると、胃から腸に運ばれる際に脂質やたんぱく質と反応することでインクレチンというホルモンが分泌されます。
インクレチンは胃の内容物を排出するスピードを遅くする働きがあるため、あとに食べるご飯などの炭水化物の消化吸収速度が遅くなり、血糖値の上昇が緩やかになります。
飲食中に気を付けるポイント
食後の血糖値の急激な上昇を抑えるためには食べる順番だけでなく、ゆっくりと食べることも大切です。早食いはインスリンの働きが追いつかず、食後の血糖値を急激に上昇させてしまいます。
早食いの習慣がある場合は、一口食べたら箸を置くことを意識すると自然と早食いが抑えられ、食事の時間を長くすることができます。
食後は軽い運動をする
運動には血糖値を下げる効果があります。したがって、食後に軽い運動を行うと食後高血糖を防ぐ効果があります。
血糖値は食後30分~1時間後に上昇します。そのため、このタイミングで運動を行うと血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。運動は散歩やウォーキングだけでなく、体操や家事をするといったことでもかまいません。少しでも良いので食後に体を動かすことが大切です。
一方、食後15分間は胃腸の働きが活発になり、食事で摂った糖が腸から吸収されるため血糖値が上がりやすいといわれています。
したがって食後15分後に運動すると血液が筋肉や手足に奪われるため、胃腸の働きが低下して血糖値の症状も抑えられるといわれています。ただし、食後すぐの運動は消化不良を招く可能性もあるため、注意が必要です。
血糖値を下げる食べ物・上げにくい食べ物
食後高血糖を抑えるには、血糖値を下げる食べ物や血糖値が上がりにくい食べ物を選ぶのも効果的です。血糖値を下げる食べ物または血糖値が上がりにくい食べ物には以下のようなものがあります。
- ・野菜類(玉ねぎ、オクラ、トマト、レタス、キャベツなど)
- ・キノコ類
- ・海藻類
- ・食物繊維を含む食べ物(発芽玄米や大麦、オートミールなど)
- ・酢
- ・柑橘類
- ・大豆製品
- ・乳製品
玉ねぎは料理に取り入れやすく、ミネラルも豊富なため、血糖値を気にする方には特におすすめの食材です。ただし、水にさらすと水溶性のビタミンが溶け出してしまうため、水にさらさずに調理することをおすすめします。
血糖値を上げるNG食べ物
食後高血糖を抑えるためには血糖値を上げる食べ物は避けましょう。血糖値を上げやすい食品には以下のようなものがあります。
- ・ご飯・食パン・菓子パン
- ・麺類(うどん、そば、パスタなど)
- ・イモ類(里芋、ジャガイモなど)
- ・大豆以外の豆類(おたふく豆やインゲン豆など)
- ・甘いもの・甘い飲み物(饅頭やケーキ、スナック菓子、ジュースなど)
野菜は血糖値を上げにくいものが多いですが、とうもろこしやかぼちゃといった澱粉質の多いものは血糖値を上げやすいため、摂りすぎないようにしましょう。
まとめ・血糖値の急上昇は突然死のリスク|食後高血糖の症状と改善方法
血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える食べ物や食事方法について説明しました。
食後高血糖を放置すると脳卒中やがん、認知症などさまざまなリスクを引き起こすことがあります。食後高血糖が気になったら医師に相談しましょう。
また、医師から食後高血糖といわれた場合は食事や運動に気を付け、糖尿病の進行を抑えることが大切です。
監修:院長 坂本貞範
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