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前十字靭帯断裂の全治はどのくらい?断裂してからの過程を詳しく解説!

スポーツで発症しやすいケガとして、「前十字靭帯断裂」があります。
インターネットではスポーツ復帰まで時間がかかるとの記載が多く、「全治までどのくらいかかるのか」「ちゃんと復帰できるのか」と不安に思われるかもしれません。
結論から言えばリハビリをしっかりすれば復帰できますが、全治=競技復帰ではない点に注意が必要です。
不十分な状態で復帰すれば、再断裂につながりかねません。
そこでこの記事では、前十字靭帯断裂から競技復帰までの過程を詳しく解説します。
目次
前十字靭帯断裂の全治までに必要な期間の目安は?
結論から言えば、8〜10ヶ月が前十字靭帯断裂の全治期間です。
しかし、これは「治療にかかる期間」であり、競技復帰のための期間ではありません。
競技復帰するためには、手術を受けた後にも継続的なリハビリが必要です。
なお、仕事やスポーツへの復帰にかかるおおよその目安は以下の表をご参照ください。
仕事やスポーツに復帰するまでにかかる目安 | |
---|---|
デスクワークなど膝への負担が少ない仕事 | およそ1ヶ月 |
膝への負担が大きい仕事 | 3〜4ヶ月 |
スポーツへの復帰 | 8〜12ヶ月 |
あくまでも目安で手術内容や年齢にも左右されますが、簡単な仕事であれば1ヶ月程度で復帰できるでしょう。
前十字靭帯断裂では手術が必要?
スポーツを続けたいならば、前十字靭帯断裂をした後は手術が必要です。
前十字靭帯断裂とは、前十字靭帯が完全に断裂した状態を指します。
前十字靭帯は膝を支えてくれる重要な靭帯であり、完全に断裂した状態では膝がガクッとなったり、不安定な感じがしたりします。
このような状態でのスポーツは難しいため、手術が必要となるでしょう。
なお、手術しなかったときのリスクなどは以下の記事でまとめてありますので、ぜひご確認ください。
前十字靭帯断裂の手術後に行うリハビリの過程を解説
前十字靭帯の断裂後、以下のような経過でリハビリを行います。
手術からの期間 | リハビリ内容 |
---|---|
手術直後 |
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1週間〜2週間 |
|
1ヶ月 |
|
2ヶ月 |
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3ヶ月 |
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4ヶ月 |
|
6ヶ月 |
|
8ヶ月 |
|
これらの目安はリハビリ期間中の筋肉の状態や、前十字靭帯以外の組織の損傷具合によって左右されます。
また、身体面だけでなく心理面での問題で長引く可能性もあるため、あくまで目安とお考えください。
前十字靭帯断裂後に競技復帰するまでに必要なこと
前十字靭帯断裂から競技復帰するまでには、靭帯が完治するだけでなく身体面・心理面で必要な能力の基準を満たす必要があります。
もし基準を満たさないまま競技復帰したら、再断裂の可能性を否定できません。
事実、手術後9ヶ月以内に復帰した場合、9ヶ月以降に復帰したケースよりも7倍再断裂するリスクが高まるという研究※もあります。
ここからの項で詳しく解説するので、ぜひ最後までチェックしてください。
社会復帰までと競技復帰までの違い
社会復帰までと競技復帰までには、大きく以下のような違いがあります。
- 復帰に必要な期間
- 復帰に必要な身体面の能力
仕事内容にもよりますが、社会復帰は競技復帰と比較して短い期間で復帰できる傾向にあります。
スポーツと比較すると、多くの仕事ではスポーツほど筋力やバランス能力が必要ではありません。
そのため、膝に負担がかからない仕事であれば、痛み次第で早期に復帰できる可能性が高いでしょう。
なお、復帰に必要な期間は前十字靭帯断裂の全治までに必要な期間の目安は?で解説しているのでご参照ください。
競技復帰までに必要な基準
前十字靭帯断裂からスポーツ復帰するために必要な基準※は、以下のとおりです。
検査項目 | 必要な基準 |
---|---|
膝の動く範囲 |
|
筋力 |
|
関節の安定性 |
|
パフォーマンス能力 |
|
心理面 |
|
上記表の項目が満たされていなければ、再断裂のリスクが高くなります。
そのため、基準が満たされていなければ焦らずリハビリを継続しましょう。
また、これらの項目だけでなく前十字靭帯断裂後の関節機能を測定する機械(KS measureなど)での検査も復帰するための指標となります。
導入されている施設であれば、積極的に測定してください。
前十字靭帯断裂に対する再生医療の可能性
前十字靭帯断裂では手術が必要なことは前述したとおりです。
手術をした後は組織の回復を図るために、安静にしなければなりません。
もし安静にしなかったならば、回復が遅れるばかりか再断裂のリスクも高くなります。
しかし、近年再生医療が発達してきており、前十字靭帯断裂にも適応となる可能性が出てきました。
断裂した靭帯を完全にくっつけることは難しくても、再生医療を行うことで手術後の靭帯の回復が早くなる可能性があります。
また、前十字靭帯断裂に伴う他の関節組織(半月板や関節軟骨など)の損傷や、将来の変形性膝関節症へのリスク軽減にも有効になるかもしれません。
当院リペアセルクリニック大阪院での再生医療に取り組んでおりますので、興味がある人はお気軽にお問い合わせください。
スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。
前十字靭帯断裂でよくある質問
前十字靭帯断裂でよくある質問をまとめました。
前十字靭帯断裂ではどのような手術を行いますか?
前十字靭帯断裂で行われる手術は、主に以下の2つです。
手術方法 | 内容 | 特徴 |
---|---|---|
BTB法 | 膝のお皿の下にある腱(膝蓋腱)を使用して前十字靭帯を再建する方法 | 固定強度・早期安定性に優れ、競技復帰を急ぐ選手に向く |
ST-G法 | 太ももの裏にある筋肉の腱(半腱様筋と薄筋)を使用して前十字靭帯を再建する方法 | 膝の痛みにつながるリスクが少なく、日常生活や膝が動きやすい。また、傷跡が小さい |
それぞれメリットもありますが、状況に合わせた使い分けが必要です。
詳しくは執刀医にご相談ください。
前十字靭帯後どれくらいで走れますか?
順調な経過であれば、ジョギングは3ヶ月程度で可能です。
また、ダッシュは4〜6ヶ月程度でできるようになるでしょう。
【まとめ】前十字靭帯断裂は全治まで適切なリハビリが大切
前十字靭帯断裂の全治期間について解説しました。
ポイントは以下のとおりです。
- 前十字靭帯断裂の全治は8〜10ヶ月程度
- 全治すればスポーツ復帰できるわけではない
- スポーツ復帰するためにはクリアすべき基準がある
前十字靭帯断裂は適切なリハビリをすれば、スポーツ復帰できる可能性が高いでしょう。
しかし、焦って復帰すれば再断裂のリスクが高くなります。
本記事でご紹介した基準を満たせるよう、焦らずリハビリを頑張ってください。
また、当院では前十字靭帯断裂の靭帯再生を促す再生医療にも取り組んでいます。
完全に元に戻せなくても、回復を促進したり再断裂を予防したりする効果に期待できる治療です。
興味がある人は、お気軽にお問い合わせください。
スポーツ外傷は⼿術しなくても治療できる時代です。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設