血糖値スパイクに注意! | 適切な習慣で食後高血糖を防ぐ
公開日: 2019.07.07更新日: 2025.02.04
最近、テレビや新聞、インターネットの記事などで「血糖値スパイク」という言葉を目にし、不安を感じた方も多いのではないでしょうか。食後、急激に血糖値が上昇するこの現象は、健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。この記事では、血糖値スパイクの原因と、その予防に役立つ適切な生活習慣について詳しく解説します。食後高血糖を防ぎ、健康を守るためのヒントをお伝えしますので、ぜひご参考ください。
目次
血糖値スパイクとは
食後に血糖値が急激に上昇し、その後急降下する状態を「血糖値スパイク」といいます。スパイクとは「とがったもの」を意味し、血糖値のグラフが鋭いトゲのような形状になることから、この現象は血糖値スパイクと呼ばれています。
血糖値の上昇自体は、体にとって悪いことではありません。食事で摂取したブドウ糖は、エネルギー源として体内で利用されるため、腸で吸収された後、血液中に入ります。その結果、食後には血糖値が上昇します。
ただし、健康な人の場合、血糖値はゆっくりと上昇し、徐々に下降していきます。食事のたびに、血糖値のグラフはひらがなの「へ」の字のような緩やかなカーブを描きます。
一方、血糖値スパイクでは、グラフが「M」の字のように急激な変動を示します。糖尿病では血糖値が常に高い状態が続きますが、血糖値スパイクの場合、空腹時の血糖値は低いことが特徴です。そのため、空腹時血糖値を測定する健康診断では「正常」と判定されることが多いです。
血糖値スパイクが起きる原因
血糖値スパイクは、インスリンが適切に分泌されなかったり、分泌のタイミングがずれてしまうことによって発生します。
インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉などの細胞に取り込むための「カギ」の役割を果たしています。インスリンの分泌が不足すると、血液中のブドウ糖が十分に減らないため、食事後に血糖値が急激に上昇します。その後、急激に上昇した血糖値を抑えるために、過剰なインスリンが分泌されることで、血糖値が急降下します。
血糖値スパイクは、老化、肥満、運動不足、炭水化物中心の食事、朝食を抜くなどの生活習慣によって引き起こされやすいとされています。
血糖値スパイクは病気の可能性も
血糖値スパイクは正式な病名ではなく、病気そのものを指すものではありません。しかし、この状態の背後に糖尿病が潜んでいる可能性があります。糖尿病かどうかの判断には、過去1〜2か月間の血糖値の平均を示すHbA1cの値が用いられます。HbA1cの数値が高い場合、糖尿病と診断されることがあります。
血糖値スパイクに潜むリスク
健康診断では、血糖値スパイクが見逃される可能性があります。通常の健康診断では空腹時血糖値を測定するため、食後のみ血糖値が急上昇する血糖値スパイクは検出されないことが多いのです。この状態が長く続くと、自覚がないままに病気が進行するなど、さまざまなリスクが発生する可能性があります。
糖尿病のリスク
血糖値スパイクは、インスリンの働きや分泌量の低下によって引き起こされます。インスリン分泌の低下は糖尿病の原因ともなり、これを放置すると糖尿病の発症リスクが高まります。一般的な健康診断では空腹時の血糖値を測定するため、食後の高血糖である血糖値スパイクは見逃されやすい傾向にあります。このため、血糖値スパイクに気づかず放置してしまうことが多く、その結果、糖尿病を発症しやすくなります。
認知症のリスク
インスリンが極度に多い状態は、記憶力が衰える原因になります。
血糖値スパイクでは急激な血糖値の上昇に対し、インスリンが過剰に分泌されます。ネズミによる実験では、インスリンが極度に多いとき、脳にアルツハイマー型認知症の原因といわれるアミロイドベータという物質が蓄積していることがわかってきています。
つまり、インスリンが極度に多い状態はアルツハイマー型認知症の原因になりかねません。
一方、脳に届くインスリンの量が少なくなると記憶力が低下するといわれているため、記憶力や認知症を抑えるためにも血糖コントロールが重要です。
がんのリスク
インスリンは細胞のがん化やがん細胞の増殖を引き起こすといわれています。また、糖尿病によって起こる高インスリン血症や慢性炎症なども、がんを招く原因です。
心筋梗塞や脳卒中のリスク
耐糖能異常によって動脈硬化が起こると脳卒中や心筋梗塞など糖尿病の合併症を引き起こす可能性が高くなります。
血糖値スパイクではインスリンの分泌量や働きが低下しているため、上昇した血糖値を正常値に戻す力が非常に弱く、耐糖能異常といえます。耐糖能異常は動脈硬化の引き金になりかねません。
また、食後の高血糖は血管にストレスを与えたり、炎症を起こすことで動脈硬化を引き起こすともいわれています。
血糖値スパイクを防ぐための食事法について
血糖値スパイクを起こさない食事法は以下のとおりです。
- 朝食を抜かない
- 野菜から食べ始める
- 早食いせずにゆっくり食べる
- 食後に軽い運動をする
食後の血糖値が上がりにくい食べ物を選んで食べると、食後の血糖値の上昇が穏やかになります。血糖値スパイクを防ぐポイントをみていきましょう。
朝食を抜かない
朝食を抜くと、昼食後に血糖値スパイクが発生しやすいです。これは、朝食を抜くことで空腹の時間が長くなるため、昼と夜(残り2食)の食事後の血糖値が急上昇しやすくなるためです。
3食規則正しく食べましょう。
野菜から食べ始める
野菜から食べはじめると血糖値の急上昇を抑えられます。次の順番で食べるのがおすすめです。
- 野菜、海藻やきのこ
- 肉、魚などのタンパク質
- ごはんなどの炭水化物
野菜は食物繊維が豊富なため、食物繊維が腸の壁をコーティングし、あとから食べるものの吸収速度を緩やかにします。
野菜を食べた後は、たんぱく質が豊富な肉や魚を食べるようにしましょう。肉や魚に含まれる脂質やたんぱく質は、胃から腸に運ばれる際にインクレチンというホルモンの分泌を促します。
インクレチンは、胃の内容物が腸に排出されるスピードを遅くする作用があります。これにより、その後に食べるご飯などの炭水化物の消化吸収が遅くなり、血糖値の上昇が緩やかになる効果があります。
早食いせずにゆっくり食べる
血糖値スパイクを防ぐには、食べる順番だけでなくゆっくりと食べることも大切です。早食いはインスリンの働きが追いつかず、食後の血糖値を急激に上昇させてしまいます。
早食いの習慣がある場合は、一口食べたら箸を置いてみましょう。自然と早食いが抑えられます。
食後に軽い運動をする
運動には血糖値を下げる効果があるため、食後は軽い運動をしましょう。
血糖値は食後30分~1時間後に上昇します。そのため、このタイミングで運動を行うと血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。運動というと散歩やウォーキングを思い浮かべるかもしれませんが、体操や家事でかまいません。少しでも良いので食後に体を動かしてみましょう。
血糖値を上げにくい・下げる食べ物
血糖値を下げる食べ物や血糖値が上がりにくい食べ物を食べましょう。血糖値を下げる食べ物または血糖値が上がりにくい食べ物には以下のようなものがあります。
- 野菜類(玉ねぎ、オクラ、トマト、レタス、キャベツなど)
- キノコ類
- 海藻類
- 食物繊維を含む食べ物(発芽玄米や大麦、オートミールなど)
- 酢
- 柑橘類
- 大豆製品
- 乳製品
玉ねぎは料理に取り入れやすく、ミネラルも豊富なため、血糖値を気にする方には特におすすめ。ただし、水にさらすと水溶性のビタミンが溶け出してしまうため、水にさらさずに調理してください。
血糖値を上げてしまう食べ物
血糖値を上げやすい食品は以下のとおりです。
- ご飯・食パン・菓子パン
- 麺類(うどん、そば、パスタなど)
- イモ類(里芋、ジャガイモなど)
- 大豆以外の豆類(おたふく豆やインゲン豆など)
- 甘いもの・甘い飲み物(饅頭やケーキ、スナック菓子、ジュースなど)
ごはんや麺類、イモ類など、炭水化物は血糖値が上がりやすい食品です。
野菜は血糖値を上げにくいものが多いですが、とうもろこしやかぼちゃといったデンプン質の多いものは血糖値を上げやすいため、摂りすぎないようにしましょう。
大切なのは適切な習慣
炭水化物は血糖値を上げやすいとはいえ、ごはんや麺類を過剰に制限する必要はありません。ごはんなどの炭水化物は、体にとって必要な栄養素であり、決して悪い食べ物ではありません。まずは野菜を最初に食べる習慣を身につけ、適度に炭水化物も摂取していくことが大切です。
血糖値を下げようと過度に食事を制限すると、ストレスが溜まり、長続きしないことがあります。大事なのは、毎日の習慣やバランスを意識することです。運動を取り入れながら、無理のない範囲で食事を楽しみ、継続できる習慣を心がけてください。
まとめ
ここまで、血糖値スパイクの原因やリスク、対処法、そして食事について解説しました。血糖値スパイクが直ちに危険な状態を引き起こすわけではありませんが、血糖値の急上昇・急降下が続くことは、体に大きなダメージを与え、糖尿病への移行や、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な病気を引き起こすリスクがあります。
予防のためには、まず血糖値を上げにくい野菜から食べ始めることが有効です。また、食後30分から1時間後にストレッチなどの軽い運動を行うことで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。
ごはんや麺類などの炭水化物は血糖値を上げやすいですが、体にとって重要なエネルギー源でもあります。過度な食事制限を避け、無理のない範囲でバランスの取れた食習慣を心がけましょう。
適切な食習慣と運動習慣を身につけることで、血糖値スパイクや食後の高血糖を予防し、健康を守っていきましょう。

監修者
渡久地 政尚
Masanao Toguchi
医師
略歴
1991年3月琉球大学 医学部 卒業
1991年4月医師免許取得
1992年沖縄協同病院 研修医
2000年癌研究会附属病院 消化器外科 勤務
2008年沖縄協同病院 内科 勤務
2012年老健施設 かりゆしの里 勤務
2013年6月医療法人美喜有会 ふたこクリニック 院長
2014年9月医療法人美喜有会 こまがわホームクリニック 院長
2017年8月医療法人美喜有会 訪問診療部 医局長
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 院長