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血糖値の急上昇は突然死のリスク|今すぐ始めたい食後高血糖の症状と改善方法 最近は機能性食品のCMなどで「血糖値の上昇を抑える」「糖の吸収を抑える」というキャッチコピーを聞くことが増えてきました。 血糖値が急激に上昇すると何が問題なのでしょうか。 この記事では血糖値が急上昇すると何が問題なのか、また血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える方法について解説します。 食後に血糖値が急上昇したまま戻らないのは病気の可能性 健康な人であっても、食事をすると血糖値が上がります。しかし、健康な人であれば食後しばらくすると上昇した血糖値が下がります。食後、時間が経っても血糖値が上がったままという場合は食後高血糖になっている可能性があります。 食後血糖値とは 食事で摂ったブドウ糖は腸で吸収されたあと血液に入り、すい臓から分泌されたインスリンによって筋肉や肝臓など全身の組織や細胞に取り込まれ、エネルギーとして利用されます。つまり、食後は血糖値が上昇するのです。 健康な人であれば、食後2時間ほど経てば140mg/dl未満(平常時の血糖値)に血糖値が下がりますが、食後高血糖の場合は140mg/dl以上の状態が続きます。 定期健康診断では空腹時(前日の夜から10時間以上絶食)血糖値を測定するため、血糖値が下がった状態の血糖値を見ていることになります。 しかし、食後高血糖は食後のみ症状が現れるため、空腹時血糖値では異常が見られず、健康診断で「正常」と判定されることがあるのです。 食後高血糖が起きる原因 食後はどんな人でも血糖値が上がりますが、健康であればすい臓からインスリンが分泌されるため、食後2時間後には空腹時の血糖値まで下がっていきます。 しかし、インスリンの分泌量が少なかったり、なかなか分泌されない場合は血糖値が下がらず食後も高血糖の状態が続きます。 食後高血糖にひそむ危険な病気 食後高血糖は食後に現れる高血糖です。空腹時は正常値に戻るため、通常の健康診断では高血糖を見逃されてしまい、気付かないうちにさまざまなリスクが起こる可能性があります。 糖尿病を発症するリスク 健康な人であれば、食事で上がった血糖値は食後2時間ほどで下がります。しかし、食後高血糖のある方は食後2時間経っても血糖値が下がりません。 食後血糖値が下がらない原因としては、すい臓から分泌されるインスリンの働きや分泌量そのものが低下していることによると考えられています。 インスリンの働きや分泌量の低下は糖尿病の原因でもあるため、放置すると糖尿病の発症リスクが高くなります。 さらに、食後高血糖は食後しばらくの間しか高血糖であることが確認できないため、一般的な健康診断では見逃されてしまうことが多くあります。 そのため、食後高血糖は隠れ糖尿病とも呼ばれています。 食後高血糖は気づきにくく放置してしまう傾向があるため、糖尿病を発症しやすくなります。 がん・認知症を発症するリスク 健康な人であれば、食事をするとインスリンがうまく働くため、血液中の糖をスムーズに細胞に取り込むことができます。 しかし、生まれ持った体質や生活習慣の乱れが原因で、インスリンが効きにくくなり、血液中の糖を細胞に取り込みにくくなると血糖値が急上昇してしまいます。 また、上昇した血糖値を正常に戻すために、すい臓は大量にインスリンを分泌するため、血糖値の上がり下がりが激しくなります。この急激な血糖値の上がり下がりのことを血糖値スパイクといいます。 実は、このようにインスリンが極度に多い状態は記憶力が衰える原因になるといわれています。ネズミによる実験では、インスリンが極度に多いとき、脳にアルツハイマー型認知症の原因といわれるアミロイドベータという物質が蓄積していることがわかってきています。 つまり、インスリンが極度に多い状態はアルツハイマー型認知症の原因になりうるということになります。 一方、脳に届くインスリンの量が少なくなることでも記憶力が低下するといわれているため、記憶力や認知症を抑えるためにも血糖コントロールが重要になります。一方、糖尿病はがんの発症リスクも高めます。 実はインスリンは細胞のがん化やがん細胞の増殖を引き起こすといわれています。また、糖尿病によって高インスリン血症や慢性炎症などを起こすこともがんを招く原因になると考えられています。 特に食後高血糖は血糖値の上がり下がりが繰り返されるため、インスリンが極端に多い状態による影響が大きくなります。そのため、食後高血糖はがんや認知症のリスクが高くなるのです。 心筋梗塞や脳卒中を発症するリスク 食後高血糖の場合、インスリンの分泌量や働きが低下しているため、上昇した血糖値を正常値に戻す力が非常に弱く、耐糖能異常の状態であるといえます。耐糖能異常は動脈硬化の引き金になることがわかっています。 また、食後高血糖は活性酸素の発生をうながすため、血管にストレスを与えたり、炎症を起こすことで動脈硬化を引き起こすともいわれています。 このように、耐糖能異常によって動脈硬化が起こると脳卒中や心筋梗塞など糖尿病の合併症を引き起こす可能性が高くなります。 今すぐ始めたい血糖値の急上昇を抑える食事法 食後の血糖値の急上昇を抑え、高血糖を抑えるにはどうすれば良いのでしょうか。 食後の血糖値が上がりにくい食べ物を選んで食べると食後の血糖値の上昇が穏やかになります。ただし、食後高血糖を防ぐには食べ方にもポイントがあります。 規則正しい3食の食生活 朝食を抜くと、昼食後に血糖値スパイクが発生することがわかっています。これは、朝食を抜くことで空腹の時間が長くなるため、昼と夜(残り2食)の食事後の血糖値が急上昇しやすくなるためです。 そのため、3食規則正しく食べることが食後の急激な血糖値の上昇を抑えることにつながります。 食べる順番は野菜から 食事をする際は野菜から食べることが血糖値の急上昇を抑えることにつながります。 野菜は食物繊維が豊富なため、最初に野菜を食べると食物繊維が腸の壁をコーティングするため、あとから食べるものの吸収速度を緩やかにする効果があります。なお、最初に食べるのは野菜だけでなく、きのこや海藻もおすすめです。 野菜の次に食べるならたんぱく質が豊富な肉や魚がおすすめです。肉や魚などを食べると、胃から腸に運ばれる際に脂質やたんぱく質と反応することでインクレチンというホルモンが分泌されます。 インクレチンは胃の内容物を排出するスピードを遅くする働きがあるため、あとに食べるご飯などの炭水化物の消化吸収速度が遅くなり、血糖値の上昇が緩やかになります。 飲食中に気を付けるポイント 食後の血糖値の急激な上昇を抑えるためには食べる順番だけでなく、ゆっくりと食べることも大切です。早食いはインスリンの働きが追いつかず、食後の血糖値を急激に上昇させてしまいます。 早食いの習慣がある場合は、一口食べたら箸を置くことを意識すると自然と早食いが抑えられ、食事の時間を長くすることができます。 食後は軽い運動をする 運動には血糖値を下げる効果があります。したがって、食後に軽い運動を行うと食後高血糖を防ぐ効果があります。 血糖値は食後30分~1時間後に上昇します。そのため、このタイミングで運動を行うと血糖値の上昇を穏やかにする効果があります。運動は散歩やウォーキングだけでなく、体操や家事をするといったことでもかまいません。少しでも良いので食後に体を動かすことが大切です。 一方、食後15分間は胃腸の働きが活発になり、食事で摂った糖が腸から吸収されるため血糖値が上がりやすいといわれています。 したがって食後15分後に運動すると血液が筋肉や手足に奪われるため、胃腸の働きが低下して血糖値の症状も抑えられるといわれています。ただし、食後すぐの運動は消化不良を招く可能性もあるため、注意が必要です。 血糖値を下げる食べ物・上げにくい食べ物 食後高血糖を抑えるには、血糖値を下げる食べ物や血糖値が上がりにくい食べ物を選ぶのも効果的です。血糖値を下げる食べ物または血糖値が上がりにくい食べ物には以下のようなものがあります。 ・野菜類(玉ねぎ、オクラ、トマト、レタス、キャベツなど) ・キノコ類 ・海藻類 ・食物繊維を含む食べ物(発芽玄米や大麦、オートミールなど) ・酢 ・柑橘類 ・大豆製品 ・乳製品 玉ねぎは料理に取り入れやすく、ミネラルも豊富なため、血糖値を気にする方には特におすすめの食材です。ただし、水にさらすと水溶性のビタミンが溶け出してしまうため、水にさらさずに調理することをおすすめします。 血糖値を上げるNG食べ物 食後高血糖を抑えるためには血糖値を上げる食べ物は避けましょう。血糖値を上げやすい食品には以下のようなものがあります。 ・ご飯・食パン・菓子パン ・麺類(うどん、そば、パスタなど) ・イモ類(里芋、ジャガイモなど) ・大豆以外の豆類(おたふく豆やインゲン豆など) ・甘いもの・甘い飲み物(饅頭やケーキ、スナック菓子、ジュースなど) 野菜は血糖値を上げにくいものが多いですが、とうもろこしやかぼちゃといった澱粉質の多いものは血糖値を上げやすいため、摂りすぎないようにしましょう。 まとめ・血糖値の急上昇は突然死のリスク|食後高血糖の症状と改善方法 血糖値が急上昇するリスクや血糖値の上昇を抑える食べ物や食事方法について説明しました。 食後高血糖を放置すると脳卒中やがん、認知症などさまざまなリスクを引き起こすことがあります。食後高血糖が気になったら医師に相談しましょう。 また、医師から食後高血糖といわれた場合は食事や運動に気を付け、糖尿病の進行を抑えることが大切です。 監修:院長 坂本貞範 こちらもご参照ください
最終更新日:2023.09.22 -
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インスリン注射の針の取り扱い方|購入から廃棄まで 糖尿病でインスリン治療を始めることになったけど、「インスリンってどうやって購入するの?」「インスリン注射の使い方は?」「どうやって針を捨てれば良いの?」などインスリンを初めて使う方はわからないことが多いでしょう。 糖尿病の注射薬にはインスリン以外にも種類がある 通常、食事をすると「すい臓からインスリンが分泌される」ことで血糖値が一定に保たれます。一方、糖尿病は何らかの原因でインスリンの作用不足が起こることで高血糖状態が続く病気です。 糖尿病は発症原因によって1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌することができないため、インスリン注射が必須になります。 一方、2型糖尿病は最初は食事療法や運動療法など生活習慣を改善することで治療を行いますが、それでも改善されない場合は飲み薬やインスリン注射などの注射薬を導入します。 糖尿病の注射薬には大きくGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤に分かれます。 GLP-1(ジーエルピーワン)受容体作動薬 GLP-1受容体作動薬はこれまでの糖尿病治療薬とは大きく異なるメカニズムで血糖降下作用をもたらす薬です。 食事を摂るとすい臓にあるβ細胞からインスリンが分泌されます。GLP-1はこのβ細胞にあるGLP-1受容体に結合することでcAMP(サイクリックAMP)を上昇させ、インスリンの分泌を増やす働きがあります。 β細胞を刺激してインスリンの分泌を増やす働きのあるホルモンをインクレチンといい、GLP-1受容体作動薬はインクレチン製剤の1つです。 GLP-1受容体作動薬は1日1回注射するタイプと1週間に1回注射するタイプがあります。GLP-1受容体作動薬は食後血糖値と空腹時血糖値の両方を低下させる働きがあり、食欲を抑える効果もあります。ただし、GLP-1受容体作動薬は胃腸障害を起こすことがあり、膵炎の発症も懸念されています。 また、GLP-1受容体作動薬は1型糖尿病に使用することはできません。 インスリン製剤 インスリン製剤とは、インスリンそのものを注射で体の外から補充するものです。インスリン製剤は、1型糖尿病のようにほとんどインスリンを分泌できない場合や肝臓に障害がある場合、高血糖によって昏睡状態に陥っている場合、妊娠糖尿病、糖尿病を合併している妊婦などの治療時に用いられます。 なお、インスリン製剤には以下の6種類があります。 ・超速攻型インスリン製剤 ・速攻型インスリン製剤 ・中間型インスリン製剤 ・持効型溶解インスリン製剤 ・混合型インスリン製剤 ・配合溶解インスリン製剤 超速攻型インスリン製剤 超速効型インスリン製剤はインスリンの追加分泌を補うもので、食事にあわせて注射を行います。注射してすぐに効き始め、インスリン製剤のなかで作用時間が最も短いことが特徴です。 速攻型インスリン製剤 速効型インスリン製剤は超速効型インスリン製剤と同じくインスリンの追加分泌を補うものですので、食事に合わせて注射します。速効型インスリン製剤は注射後30分程度で効き始め、超速効型よりゆっくりと効くことが特徴です。 中間型インスリン製剤 中間型インスリン製剤はインスリンの基礎分泌を補うもので、食事のタイミングに関わらず、決まった時間に注射します。中間型インスリン製剤は注射後ゆっくりと効き始め、ほとんど一日中効果が続きます。 持効型溶解インスリン製剤 持効型溶解インスリン製剤は中間型インスリン製剤と同じくインスリンの基礎分泌を補うもので、食事のタイミングに関わらず決まった時間に注射します。持効型溶解インスリン製剤は中間型インスリン製剤よりも効果が長く続くうえ、一日中安定した効果が得られます。 混合型インスリン製剤 混合型インスリン製剤は超速効型と速効型、中間型インスリン製剤の混合製剤になります。混合型インスリン製剤は食事に合わせて注射して、インスリンの追加分泌と基礎分泌を補います。 配合溶解インスリン製剤 配合溶解インスリン製剤は超速効型と持効型溶解インスリン製剤の配合製剤になります。配合溶解インスリン製剤は食事に合わせて注射し、インスリンの基礎分泌と追加分泌を補います。 ペン型インスリン注射の針の価格と購入方法 インスリン注射はペン型のものが主流ですが、針を別に購入する必要があります。価格の相場と購入方法について見ていきます。 インシュリン注射(ペン型)の価格 ノボノルディスクファーマ社の在宅自己注射の診療報酬点数によると、注射針加算費用は3割負担で月400~600円程度(月130点または200点)が相場となります。 なお、この価格は2016年4月1日時点での価格です。さらに、使用する注射針によって値段が変わることもあるため、あくまで目安と考えてください。 一方、注射器と薬剤が一体化しているキットタイプの場合は薬代が含まれた値段になっているため注意が必要です。 インシュリン注射(ペン型)の購入方法 ペン(万年筆)型のインスリン注射の針は医療関連施設登録をしている人だけが購入可能なため、一般の人が直接購入することはできません。 そのため、糖尿病患者の方は医師の処方箋をもとに調剤薬局で購入するのが基本になります。注射薬や針は保険適用となります。一方、注射を失敗するなどトラブルがあった場合、針だけが足りなくなることもあります。 針だけを処方してもらう場合は保険適応外となるため、全額自己負担となってしまいます。そのため、医師から注射薬を処方される際は針を多めに処方してもらうようにすると良いでしょう。 インスリン注射の針の取り扱い方 インスリン注射薬は医療器具になります。そのため、取り扱い方や保尊方法など注意すべき点があります。以下で詳しく見ていきます。 注射針の取り扱い・保存方法 インスリン注射薬の針は自分だけが使用するというのが基本です。さらに、針の再利用は感染症などのリスクがあるため、注射を打つたびに針を交換しなければなりません。 また、注射針は細いため、何かの拍子で先端が曲ることもあります。針に触ったり、何かにぶつけたりしないように注意が必要です。使い終わったら針を外して保管する必要があります。注射針をつけたまま保管してしまうと、下記のようなリスクがあります。 ・異物や細菌が混入してインスリンの品質が低下する ・空気が混入して注射精度が低下する ・インスリンが液だれし、インスリンの濃度が変化する ・針内部でインスリンが結晶化し、注射できなくなる 空うちした後に単位を戻し忘れない 実際にインスリン注射をする際は空打ちを行い、注射針の空気を抜いたり、液が正しく出るかを確認する必要があります。空打ちは2単位にダイアルを合わせて行います。 このとき、空打ちしたままの単位でそのままインスリン注射を行うと、適切な量を投与できなくなってしまいます。そのため、実際にインスリンを打つ際は必ず指示された単位にダイアルを合わせ直すことを忘れないようにしましょう。 針の再使用がNGな理由 インスリン注射では針を再使用してはいけません。これには以下のような理由があります。 ・感染症を発症する危険性がある ・針先が変形し、痛みや傷口が大きくなる可能性がある ・針の変形で、針が折れて体内に残留する危険性がある インスリン注射の針の廃棄方法 インスリン注射で使用した針は速やかに廃棄しましょう。ただし、注射針は適切な方法で廃棄する必要があります。 注射針の使用後は自宅で専用の容器に保存 近年、在宅医療の発展にともない、家庭からも在宅医療による廃棄物が出るようになりました。注射針のように鋭利なもの以外は在宅医療の廃棄物も市区町村で収集してもらえます。 お住まいの市区町村によって分別方法が異なりますが、一般的にはビンや缶などは不燃ごみやリサイクル(資源ごみ)、脱脂綿やチューブ、針を取り外した注射器などは燃やせるごみとして収集します。 一方、注射針を廃棄する際は注意が必要です。注射針の廃棄方法は市区町村によって異なりますが、注射針をほかのごみと一緒に収集している地域では、廃棄する前は針ケースに入れ、牛乳パックやペットボトルなどの容器に入れて保存します。 また、地域によっては注射針の収集を行っていないこともあります。この場合は蓋のある頑丈な容器または専用容器に注射針を入れて保存します。 注射針を廃棄できる場所 注射針をほかのごみと一緒に廃棄する場合は、注射針を入れる容器に「「在宅医療廃棄物の自己注射針で燃やすもの」」ということがわかるように明記したうえでポリ袋に入れ、ほかの廃棄物と同じごみ袋に入れて捨てることになります。 注射針の収集を行っていない地域では、注射針を専用容器などに入れて通院先の病院や薬局に持参します。また、病院によっては針を捨てる専用のごみ箱を設置していることもあります。 注射針の廃棄に関する注意点 注射針をほかのごみと一緒に廃棄する際は缶やビンに入れてはいけません。もし、ビンや缶に入れて廃棄した場合、注射針がリサイクルに回る危険性があります。 また、注射針は少量ずつこまめに廃棄するようにしましょう。特に大きなペットボトルで針を保管すると注射針を溜めすぎる傾向があります。こうなると、病院や薬局に持参するのが面倒になり不法投棄を招く原因になります。 実際、ホテルや空港、ショッピングモールなど公共の場に注射針を廃棄し、作業員などケガをするという問題が発生しています。外出時は必ず注射針を持ち帰り、適切な方法で廃棄することが大切です。 まとめ/インスリン注射の針の取り扱い方(購入から廃棄) 糖尿病注射薬の種類の説明やインスリン注射の購入方法から使い方、針の廃棄方法などについて説明しました。インスリン注射は扱い方や廃棄方法など注意すべきことが多くあります。 使用する際は医師や薬剤師の指示に従い、適切に扱うことが大切です。 監修:院長 坂本貞範 この記事では、インスリン注射の購入から使い方、針の廃棄方法まで詳しく解説します。 こちらもご参照ください 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病と診断されたらどのくらい治療費がかかるのか、継続的に支払うことができるのかなど心配になる人もいるでしょう。糖尿病の治療は長期におよぶことも少なくないため、経済的な負担を減らす方法も知っておきたいですよね。 この記事では糖尿病治療にはどのくらい費用がかかるのか、また支払いが困難な場合に経済的な負担を減らす方法について解説します。 こちらもご参照ください インスリン治療の注射にかかる費用 糖尿病は継続して治療を行う必要があるため、治療費がどのくらいかかるのかを知っておく必要があります。以下ではインスリン治療の注射を導入した際にかかる費用について3つの例で説明します。 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安の金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:16,400円 ※10割の場合(3割負担の場合4,920円、1割負担の場合1,640円) トータル支払額:①+②=39,400円 ※10割負担の場合(3割負担の場合11,820円、1割負担の場合3,940円) 受診と経口薬(1日1種類)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)+血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)+血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:24,110円 ※10割負担の場合(3割負担の場合7,230円、1割負担の場合2,410円) トータル支払額:①+②=47,110円 ※10割の場合(3割負担の場合14,130円、1割負担の場合4,710円) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)血糖自己測定(月60回以上) 受診と経口薬(1日1種類)+インスリン療法(1日4回)+GLP-1受容体作動薬(1日1回)血糖自己測定(月60回以上)にかかる費用の内訳と目安金額は以下となります。 【診察に関する費用】 ・外来診察料 ・在宅自己注射指導管理料(28回以上) ・血糖自己測定指導加算(60回以上) ・処方箋料 ・検査料など ①診察費用合計:23,000円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,900円、1割負担の場合2,300円) 【薬に関する費用】 ・調剤基本料 ・服薬情報等提供料 ・内服薬調剤料 ・注射薬調剤料 ・薬剤服薬歴管理指導料 ・薬剤料など ②薬費用合計:20,470円 ※10割負担の場合(3割負担の場合6,140円、1割負担の場合2,050円) トータル支払額:①+②=43,470円 ※10割(3割負担の場合13,040円、1割負担の場合4,350円) インスリン治療の注射の費用が払えない場合は ほとんどの方は健康保険証があれば3割(75歳以上は1割)まで治療費の自己負担を抑えることができますが、それでも経済的に苦しくなることもあります。特にインスリン治療が始まると、インスリンなどの薬代だけでなく、在宅自己注射指導管理料が加算されるようになります。さらに自己血糖測定も行う場合は血糖自己測定指導加算も加わります。 経済的に苦しく、インスリンの治療費を支払うのが困難という方のために、治療費を軽減する方法を紹介します。 注射の種類などを主治医に相談 インスリン治療に使用するインスリン製剤の価格は薬の種類によって変わります。しかし、インスリン製剤に価格差があることは患者の方にあまり知られていません。実際、インスリン製剤は医師から勧められたものをそのまま使用しているケースがほとんどです。 そもそも、治療は患者と医師が一緒に取り組むものです。薬の選択を医師に丸投げするのではなく、「もっと安くなる方法はありませんか?」などと医師に聞いてみることも大切です。 ジェネリック医薬品への変更 処方される薬などをジェネリック医薬品(後発医薬品)に変更するのも治療費軽減に有効です。ジェネリック医薬品とは新薬(先発医薬品)の特許が切れたあとに販売される、新薬と同じ有効成分を同量含み、同等の効き目があると認められた医薬品のことをいいます。ジェネリック医薬品に変更した場合、薬代が半額程度になることもあります。 なお、ジェネリック医薬品を希望する際は、病院や診療所、保険薬局の薬剤師や医師にその旨を伝える必要があります。 糖尿病の医療費が払えない場合は社会保障を受ける 国や自治体によっては、糖尿病や合併症によって障害がある方に役立つ社会保障や支援制度を紹介します。 介護保険制度 介護保険制度とは、日常生活で介護や支援が必要となり、要介護または要支援と認定された人がさまざまな介護サービスを受けられる制度です。対象者は、65歳以上の方(第1号被保険者)あるいは40~64歳で16の特定疾病を持つ方(第2号被保険者)になります。 特定疾病のうち、糖尿病に関係する疾病には糖尿病性神経障害や糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症などがあります。 介護保険制度の利用を希望する場合はお住まいの市区町村担当窓口にご相談ください。 高額療養費制度 高額療養費制度とは、同一月内に病院や薬局で支払った医療費が上限金額を超えた場合に、上限を超えた金額が払い戻される制度のことです。 70歳未満の方で、あらかじめ医療費が高額になることがわかっている場合は、限度額適用認定証を提示すれば、還付の代わりに病院や薬局の窓口で支払う自己負担金額を軽減することができます。 小児慢性特定疾患医療費助成制度 子供の糖尿病は治療期間が長引くことが多いため、医療費が高額になる傾向があります。そのため、小児慢性特定疾患医療費助成制度によって世帯所得に応じて医療費の自己負担金額を軽減することができます。 対象となるのは18歳未満ですが、治療を継続する必要があると認められた場合は20歳未満まで延長することができます。 特別児童扶養手当 特別児童扶養手当とは、精神あるいは身体に(糖尿病を含む)障害がある20歳未満の子供を持つ保護者に対して支給される手当です。 特別児童扶養手当は病気の状態や日常生活の状況など総合的に鑑みて認定され、所得制限や障害認定基準などの法的支給要件を満たす必要があります。 障害年金 障害年金は、ケガや病気によって何らかの障害がある方が障害等級表の基準に該当すると認定された場合に受給できるものです。 障害等級認定基準のなかで糖尿病患者の方が関係するものとしては以下のようなものがあります。 第1節・・・眼の障害(糖尿病性網膜症による視力低下や視野障害など) 第7節・・・肢体の障害(糖尿病神経障害による下肢切断など) 第11節・・・心疾患による障害(心筋梗塞や狭心症など) 第12節・・・腎疾患による障害(糖尿病性腎症による人工透析) 第15節・・・代謝疾患による障害(糖尿病) 上記のうち第15節以外は糖尿病による合併症と関連する基準になります。 一方、第15節は血糖コントロールが難しい方のうち、日常生活に制限があり支援が必要な場合や労働に厳しい制限が必要な場合に認められることになります。 身体障害者手帳 身体障害者手帳は、身体障害者福祉法で定めた障害がある場合に居住地の市区町村障害福祉担当窓口に申請を行い、都道府県から認定されることで受け取ることができます。 身体障害者手帳があれば、医療費の助成だけでなく、車いすや補聴器などの購入費用や手すりの取りつけといった住宅リフォーム代の助成などさまざまな支援や福祉サービスを受けることができます。 なお、受けられるサービスや助成金の上限金額は障害の等級や種類によって変わるため、利用前に確認しておくことが重要です。 糖尿病で身体障害者手帳が交付される場合 糖尿病で身体障害者手帳が交付されるケースには以下の4つがあります。 ・網膜症による視覚障害を患っている方 ・糖尿病足病変の方 ・著しく腎機能が低下している方 ・人工透析をされている方 身体障害者手帳が交付されるかどうかは患者の方の病状によっても変わりますので、医師に相談してみると良いでしょう。 難病医療費助成制度 難病医療費助成制度は、指定難病の治療に対して必要な医療費の自己負担分を助成してくれる制度です。 この制度は、国から指定難病であると診断され、病気ごとに重症度分類に照らしあわせたときに病気や症状の度合いが一定以上である方が対象となります。 指定難病が原因や治療で糖尿病になってしまった場合 糖尿病自体は国の指定難病ではありません。ただし、指定難病が引き金となった場合や指定難病の治療で糖尿病になった方は難病医療助成制度の対象となる可能性があります。 まとめ 糖尿病治療にかかる費用や経済的な負担を減らす方法について説明しました。 糖尿病の治療費はインスリン注射が始まるとより高額になります。しかし、病状や世帯収入などによっては国や自治体からの助成対象になることもあります。 また、助成が受けられない場合は、ジェネリック医薬品に変更したり、「もっと安い治療薬はありませんか?」と医師に相談することも大切です。 治療費について医師に相談することは恥ずかしいことではありません。積極的に相談することが大切です。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
最終更新日:2024.03.14 -
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子供が糖尿病になる原因、チェック方法や予防策 糖尿病は大人、しかも中年以降で発症するというイメージが強いと思われていませんか? 実は、最近の食生活を中心に環境の変化によって子供でも糖尿病を発症するケースがあります。自分の子供が糖尿病ではないかと心配になったら、まずは、その疑いをチェックしておきたいものです。 この記事では、子供が糖尿病になる原因を明確にして、実際の症状を解説、そのためのチェック方法を解説します。併せて糖尿病を発症しないための予防法についても紹介します。 子供の糖尿病には「1型と2型」があり、症状も違います 糖尿病とは、すい臓から分泌されるインスリンの作用が不足することによって高血糖状態が続く病気です。糖尿病は発症原因によっていくつか種類があります。発症する可能性がある糖尿病は1型糖尿病と、2型糖尿病の2つになります。 子供の1型糖尿病の症状 1型糖尿病の発症原因について、実のところ詳しく解明されていないのですが、何らかの原因によってすい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞が破壊され、インスリンを作ることができない状況を生むことで発症するといわれています。 1型糖尿病も後述する2型糖尿病も高血糖による症状が見られますが、1型糖尿病の場合は「突然」「急激に」症状が出ることが特徴です。 1型糖尿病では、ほとんどインスリンを分泌することができない状態となるため、治療をしなければ血糖値が上がり続け、糖尿病ケトアシドーシスなどの急性合併症を発症することがあります。 治療を行わなければ血管がもろくなり、その結果として詰まりやすくなります。そうなると血流が阻害されるため、さまざまな臓器に障害がおこることになるため、治療は積極的に行わなけれななりません。 子供の2型糖尿病の症状 2型糖尿病は、インスリンの分泌量が減ったり、分泌されたインスリンが効きにくくなることで発症するといわれています。 2型糖尿病は血糖値がゆっくりと上がるため、なかなか症状が現れないことが特徴です。一般的には学校で行われる尿検査によって発見されることが多いようです。 糖尿病になる原因 1型糖尿病と2型糖尿病では、それぞれ発症原因が異なります。以下で詳しく見ていきましょう。 子供が1型糖尿病になる原因 1型糖尿病の場合、なぜすい臓のβ細胞が破壊されるのか正確に分かっていませんが、自己免疫と呼ばれる免疫反応が異常を起こし、自分の細胞を攻撃してしまうことが原因ではないかと考えられています。 そのため、食事や運動などの生活習慣が原因となって1型糖尿病が発症するとは考えられていないと言われています。 子供が2型糖尿病になる原因 子供が2型糖尿病になる原因として、大きく次の3つが挙げられます。 2型糖尿病の原因 ・遺伝的な体質 ・生活習慣(食生活や運動など) ・ストレス 最近は、お菓子やジュース、ファーストフードなどを気軽に食べることができるうえ、スマホやゲーム機の普及などによって子供が外で体を動かす機会も減っています。 以前は、2型糖尿病といえば大人がなるものと思われていました。しかし近年、子供を取り巻く食生活、生活習慣が大きく変わってきたことで子供にも肥満が冷えてきたことで2型糖尿病患者が増えているのではないかといわれています。 子供への糖尿病チェックリスト 子供が糖尿病かもしれないと思ったら、以下のチェックリストを使ってチェックしましょう。 お子様の糖尿病チェックリスト ・喉が渇きやすく水分をたくさん飲みますか? ・前より尿が多くなりましたか? ・できものがなかなか治りませんか? ・食は細くないのに痩せていませんか? ・お腹が空きやすいですか? ・家族や親族に糖尿病を患っている方はいませんか? ・太っているor太り気味ですか? 糖尿病の治療方法 糖尿病の治療法は、1型糖尿病と2型糖尿病で違います。それぞれの治療法について以下で詳しく説明します。 子供1型糖尿病の治療方法 1型糖尿病は、体内でインスリンを作りだすことができません。したがって、体の外からインスリンを補うことが必要になります。1型糖尿病のインスリン補充方法は大きく次の2つになります。 1.インスリン注射 2.持続皮下インスリン注入療法 1.インスリン注射 インスリン注射は、自分かご家族の方がお腹や太もも、腕などに注射をする方法です。インスリン注射は扱い方も簡単ですので、小学校低学年くらいになれば子供が自分で注射できるようになります。 2.持続皮下インスリン注入療法 持続皮下インスリン注入療法は、体の外にインスリンポンプを取り付け、皮下に留置したチューブや針(カニューレ)を通じてインスリンを注入する方法です。 一般的には、インスリン注射でも血糖コントロールがうまくいかず、子供の1型糖尿病患者や妊婦など厳格な血糖管理が必要な場合に行われます。 なお、インスリンは毎日元気に生活するために必要なものです。絶対に中止してはいけません。万が一、インスリンの補充を中止した場合は短時間で命に関わる重篤な状態を招くことがあります。 子供2型糖尿病の治療方法 2型糖尿病は、体質などの遺伝的要因と生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。そのため、最初に生活習慣の見直しを行ったうえで食事療法と運動療法に取り組むことになります。 食事療法と運動療法を行っても改善が見られない場合は内服薬や注射薬などの薬物療法を取り入れることになります。 子供を2型糖尿病にさせないための予防策 1型糖尿病は、発症原因が解明されていないため、予防法として確立されたものはありません。 しかし2型糖尿病は遺伝的要因と生活習慣の組み合わせで発症することがわかっています。体質などの遺伝的要因は防ぎようがありませんが、食事や運動などの生活習慣については予防することができます。 以下で子供を2型糖尿病にさせないための正しい食生活と運動について説明します。 正しい食生活 2型糖尿病を予防するには、まずは乱れた食生活を改善することが基本です。糖尿病予防のための食生活のポイントは次の6つがあります。 1)1日3食規則正しく食べる 2)栄養バランスを考えて食べる 3)野菜をたくさん摂る 4)脂質は控えめに 5)お菓子や清涼飲料水は控えめに 6)ながら食いをしない(TVを見ながらの食事など) 糖尿病の予防で大切な食習慣は、栄養バランスの良い食事を朝、昼、晩と3食規則正しく食べることが基本です。また、食事を摂るときは野菜を先に食べるようにすると血糖値の上昇を抑える効果があります。 テレビなどを観ながらの食事(ながら食い)は、脳の満腹中枢への刺激が散漫になるため、満足感が得られにくく、食べすぎにつながってしまいます。食事をするときはテレビを消し、家族との会話を楽しみながらゆっくり時間をかけて食事をしましょう。 定期的な運動 2型糖尿病を予防するには定期的な運動も大切です。定期的に運動をすると肥満の解消につながりますし、筋肉がつくことで基礎代謝が上がり、太りにくい体を作ることができます。 スポーツクラブや運動部に入って運動するのも良いですし、通学や犬の散歩など普段の生活を運動として取り入れることも良いでしょう。 まとめ/子供が糖尿病になる原因、チェック方法や予防策 子供が糖尿病になる原因や糖尿病の予防法について解説しました。 最近は昔と比べて子供が外で体を動かす時間も減り、食生活も変わってきています。また、子供の頃に身についた生活習慣は大人になっても続く傾向があります。したがって、まだ糖尿病を発症していない場合であっても、乱れた生活習慣を続けてしまうと大人になって糖尿病を発症してしまうこともあります。 1型糖尿病と違い、2型糖尿病は予防法が確立されていますので、早い段階で生活習慣の改善に努め、糖尿病を予防することが大切です。以上、子供が糖尿病になる原因、チェック方法や予防策について記しました。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2023.09.11 -
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糖尿病リスクを減らす!健康を維持する果物の摂り方 糖尿病は国民病と呼ばれるほどポピュラーな病気です。糖尿病は一度発症すると失明や足の切断など恐ろしい合併症を招くことがあります。もし糖尿病に予防方法があるなら、発症前に取り入れて予防したいですよね。 実は果物は糖尿病のリスクを減らす効果があるともいわれます。しかし、果物は糖分が含まれるため、糖尿病の発症リスクが高くなりそうなイメージもありますよね。 この記事では本当に果物で糖尿病のリスクを減らすことができるのかについて解説していきます。 食事に果物を取り入れれば糖尿病を防げるのか 果物は果糖やブドウ糖などの糖分が多く含まれています。そのため、血糖値を上げたり果物は肥満を招くなど、「健康に良くない」というイメージを持つ人もいるでしょう。 しかし、果物には積極的に摂りたい栄養素も豊富に含まれています。以下で詳しく見ていきます。 果物が糖尿病防止に一役買う仕組み 国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC Study)によると、40~60歳の日本人男女約5万名に対して果物と野菜の摂取量について5年間追跡したところ、果物の摂取量が増えても糖尿病リスクが上昇しないことがわかりました。 果物には糖分が多く含まれていますが、果物や野菜に含まれるカロテノイドや抗酸化ビタミンにはインスリンの感受性を高める働きがあるといわれています。 インスリンは血液中の糖を細胞に取り込みやすくすることで血糖値を下げるホルモンです。そのため、果物や野菜を多く摂った場合も糖尿病の発症リスクが上がらないと考えられます。 また、果物は食物繊維が豊富です。食物繊維は糖質の吸収を穏やかにし、コレステロールや脂質の吸収を抑える効果があります。 さらに、食物繊維は満腹感も得やすくなるため、食べすぎを防ぎ、肥満を防ぐ効果が期待できます。一方、果物を多く食べる人はそうでない人と比べて心筋梗塞や脳卒中の発症リスクも低下するともいわれています。 なお、果物を摂る際は果物ジュースなどではなく皮ごと食べるほうが効率よく栄養素を摂取できるためおすすめです。 果物の糖とお菓子やジュースの糖の違いとは? 果物はブドウ糖や果糖を含みます。一方、お菓子やジュースに含まれている砂糖はスクロースと呼ばれるグルコースとフルクトース(果糖)が結合した糖ですが、水に溶けるとグルコースとフルクトースを生じます。なお、果糖(フルクトース)はブドウ糖の構造異性体になります。 このように、お菓子やジュースに含まれる糖と果物に含まれる糖は似ている部分が多いことがわかります。しかし、果物に含まれる糖とお菓子やジュースに含まれる糖は体内での吸収のされ方が違います。 前述のように、果物には食物繊維が豊富ですので、ブドウ糖の吸収が穏やかになります。また、同じ量を摂取すると仮定した場合、果物とお菓子では含まれる糖質量も違います。 例えば50gのイチゴは糖質が3.5g含まれていますが、同量のストロベリーアイスは糖質が11~15gも含まれるため、同じ量を食べるなら果物を選んだほうが糖質の摂取量を抑えることができます。 もちろん食べ過ぎはNG 果物はジュースやお菓子と比べて糖質量が少ないと説明しましたが、ある程度は糖質が含まれていることに変わりはありません。果物に含まれる糖によって直接血糖値が上がるというリスクはほとんどありません。 一方、空腹時に果糖(フルクトース)はフルクトース-1,6-ビスリン酸を経ることで糖新生に入るといわれています。糖新生とは肝臓によって糖質以外のものからグルコースを生産することですので、糖新生によって果糖からグルコースに変換されることになります。 つまり、果物を食べすぎると中性脂肪が増加したり、糖代謝が悪化することがあるのです。 糖尿病を防ぐための果物の食べ方 果物を食べたからといって糖尿病の発症リスクが上がることはありませんが、食べ方を間違えると血糖値を上げる原因になったり、せっかくの栄養素を吸収できなくなる可能性も否定できません。 以下で果物の適切な食べ方を詳しく見ていきます。 果物を食べるタイミング 果物を食べる場合は夕食後や夜遅い時間帯に食べることはやめましょう。夜間は摂取したカロリーをエネルギーとして消費しにくく、体脂肪として蓄えやすいため、肥満を招きやすくなります。 一方、「果物は食後のデザート」というイメージもありますが、食後は消化に時間がかかるため、腹痛などのトラブルを招くことがあります。果物を食べる場合は日中の食前か食間に食べるのがおすすめです。 果物を食べる量 果物を摂取する際は食べすぎてはいけません。健康な人であれば果物の適正な摂取量は1日あたり200gが目安になりますが、糖尿病患者の方の場合は1単位量程度が安心です。 なお、1単位とは糖尿病の食事療法で用いられる食品交換表の単位で、「1単位=80kcal」になります。 主な果物の1日の目安量(1単位)は以下となります。 ・リンゴ・梨:半分(りんごなら150g、梨なら200g) ・バナナ:1本(100g) ・ブルーベリー:150g ・いちご:250g ・桃:大1個(200g) ・キウイフルーツ:小1個半あるいは大1個)150g) ・ぶどう…巨峰・マスカットなら10~15粒程度(150g) ・みかん…2個(200g) 糖尿病対策に特におすすめの果物・気を付けたい果物 糖尿病対策で果物を摂取するなら、比較的カロリーが低く、食物繊維が豊富なものを選ぶことが大切です。例えば、キウイやブルーベリー、イチゴ、桃、オレンジなどがおすすめです。 反対にバナナや柿、温州ミカン、ブドウなどは糖質が多いため食べすぎには注意する必要があります。一方、温州ミカンにはβ-クリプトキサンチンと呼ばれる抗酸化作用の強い成分が含まれるうえ、皮や袋には血液循環や中性脂肪を改善するヘスペリジンという成分も含まれます。 これまで、β-クリプトキサンチンは骨の健康に効果があるといわれてきました。それにより、生鮮品として初めて「三ヶ日みかん」が機能性表示食品として販売された経緯があります。今後、糖尿病改善に役立つ新しい効果が発見されるかもしれません。 すでに糖尿病である場合は果物を食べて良いのか では、すでに糖尿病を発症している人は果物を食べても良いのでしょうか。日本糖尿病学会によると、糖尿病患者の方は果物を1日80kcal(1単位)摂ることが推奨されています。 果物はエネルギー量あたりのビタミンや食物繊維が豊富なため、効率的に必要な栄養を摂取することができる食品です。もちろん、食べすぎは中性脂肪の増加などを招くため、1日1単位を守って摂取することが大切です。 まとめ/糖尿病リスクを減らす!健康を維持する果物の摂り方 果物を食べても糖尿病のリスクが上がらない理由や糖尿病リスクを上げずに効率よく果物を摂取する方法などについて説明しました。 果物は食物繊維やビタミンが豊富なうえ、適量であれば糖尿病リスクを上昇させることはありません。食べる時間や食べ方、果物の種類を工夫することで、効率よく糖尿病を予防しましょう。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.10.11 -
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糖尿病と診断されるHbA1cと血糖値とは|目標値も解説 定期健診を受けても糖尿病と判定されたわけではない。何か自覚症状があるわけでもない。とはいえ、「健康診断で糖尿病の判定が出ていなければ放っておいても良いの?」と気になる人もいるでしょう。 もし糖尿病の判定基準があるなら、糖尿病と診断される前に自分がどういう状態なのか知っておきたいですよね。 この記事では糖尿病と診断される数値や注意すべき数値は何かを説明し、数値を正常値に下げる方法も紹介します。糖尿病が疑われる数値の内容糖病と診断する際は空腹時血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を指標としています。 それぞれについて以下で詳しく見ていきます。 HbA1cとは ヘモグロビンは肺で酸素と結びつくことで全身に酸素を行き渡らせる働きがあります。HbA1cとは赤血球に含まれるヘモグロビンと血液中のブドウ糖が結合したグリコヘモグロビン量のことです。 定期健康診断で用いる空腹時血糖値の場合、測定時にたまたま血糖値が低く出てしまったというケースもありますが、HbA1cは過去1~2ヶ月の血糖値の平均を示すため、安定した指標であると考えられています。 血糖値とは 血糖値は血液中のブドウ糖の濃度です。血糖値は測定するタイミングによって以下の3つの測定方法があります。 ・随時血糖検査 ・早朝空腹時血糖検査 ・75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験) こちらも併せてご参照ください 随時血糖検査 随時血糖検査とは、食事からの時間を決めずに採血を行い、血糖値を測定する検査方法です。 早朝空腹時血糖検査 検査当日の朝食を抜き、空腹状態(10時間以上絶食した状態)で採血を行い、血糖値を測定する検査方法です。健康診断などではこの早朝空腹時血糖検査を行うのが一般的です。 75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験) 10時間以上絶食したあと、75gのブドウ糖を水に溶かしたものを飲み、30分、1時間、2時間経過後に採血を行い、血糖値を測定する検査方法です。 注意すべき高い数値の範囲 糖尿病はある日突然異常に血糖値が高くなるわけではなりません。血糖値は数値によって正常型、境界型、糖尿病型に分類されており、初めは正常値だった数値がだんだん高くなり、境界型を経たうえで糖尿病型と診断されます。したがって、糖尿病と診断される前の段階で対策を講じる必要があります。 以下で糖尿病と診断される数値について見ていきます。 HbA1cの数値 HbA1cは世界中で測定される項目ですが、日本の測定値は世界の多くの国と比較して0.4%程度低い値であることがわかりました。そのため、2012年4月より、従来のHbA1c(JDS)から国際基準であるHbA1c(NGSP)を日本でも用いることになっています。 HbA1c(NGSP)による糖尿病の目安は以下となります。 ・正常:5.6%未満 ・要注意:5.6~5.9% ・糖尿病の可能性あり:6.0~6.4% ・糖尿病型:6.5%~ 血糖値の数値 血糖値においても糖尿病の目安となる数値があります。 血糖値においては以下の3つのうちいずれかが確認された場合は糖尿病型と判定されます。 ・早朝空腹時血糖値:126mg/dl以上 ・75gOGTT2時間値:200mg/dl以上 ・随時血糖値:200mg/dl以上 一方、次の数値をともに満たす場合は正常型と判定されます。 ・早朝空腹時血糖値:110mg/dl未満 ・75gOGTT2時間値:140mg/dl未満 上記のいずれにも当てはまらない場合は境界型といわれます。境界型の人は正常型の人よりも糖尿病を発症しやすいことがわかっています。境界型の段階で生活習慣の改善に努めれば、糖尿病の発症を防ぐことにつながります。 いずれかの血糖値で糖尿病型と判定された場合は別の日に検査を行い、再度糖尿病型と判定され場合は「糖尿病」と診断されます。 一方、HbA1cだけが糖尿病型と診断されても糖尿病と診断することはできません。血糖値のいずれかの値とHbA1cがともに糖尿病型と判定された場合に「糖尿病」と診断されることになります。 数値を下げて糖尿病を予防する方法 糖尿病は大きく1型糖尿病と2型糖尿病にわかれますが、日本の糖尿病患者のほとんどが2型糖尿病といわれています。したがって、一般的には糖尿病というと2型糖尿病のことを指すことが多いです。 糖尿病は、暴飲暴食や運動不足など乱れた生活習慣と体質などの遺伝的要因が組み合わさることで発症するといわれております。体質は変えることができませんが、生活習慣は変えることができます。 以下で糖尿病を予防するための方法について紹介します。 食事 糖尿病を予防するためには、まず食生活を見直しましょう。このとき以下の6つのポイントを押さえることが大切になります。 ・腹八分目までで止める ・食物繊維(野菜、海草、キノコ類)を積極的に摂る ・よく噛んでゆっくり食べる ・夜食や間食は極力控えて ・朝・昼・晩の食事をきちんととる ・脂質を控える 運動 糖尿病の予防では運動不足を解消することも大切です。糖尿病予防に有効な運動はジョギングやウォーキング、水泳などの有酸素運動とダンベル、腹筋、スクワットや腕立て伏せなどの筋肉に負荷をかける筋力トレーニング(レジスタンス運動)が有効です。 なお、運動を行う際は以下の3つのポイントを押さえることが重要です。 ①運動強度 ②運動頻度 ③運動の時間帯 以下、有酸素運動と筋力トレーニングにわけて見ていきます。 有酸素運動 ①運動強度:中等度(最大酸素摂取量50%程度、運動時の心拍数が50歳未満100~120拍/分、50歳以降100拍/分以内) ②運動頻度:20~60分間の運動を最低3~5回/週、できれば毎日行う。合計で150分以上/週行うことが好ましい。ウォーキングの場合は15~30分/回×2回/日、一日一万歩が目安 ③運動の時間帯:食事1~2時間後に行うのが好ましい 筋力トレーニング(レジスタンス運動) ①運動強度:8~10種目の筋力トレーニングのうち、1種目ごとに10~15回/セット×1~3セットを繰り返す。 ②運動頻度:最低2~3回/週 ③運動の時間帯:食事1~2時間後に行うのが好ましい いずれの運動の場合も、「ちょっときつい」と感じる程度の強度で行うことがポイントです。また、体への負担やケガを防ぐためにも準備体操や整理体操を忘れずに行いましょう。さらに、身体に合った服装や足に合った靴を履き、こまめに水分を補給することも大切です。 どうしても運動する時間が取れないという場合、ちょっとした工夫で身体活動量を増やすことができます。 日常生活のなかでできる工夫には以下のようなものがあります。 ・エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使う ・通勤で電車やバスを使う場合は一駅前で降りて歩く ・大股で歩く など なお、持病や体調に不安がある場合は医師に相談したうえで運動に取り組むことが大切です。 まとめ 糖尿病と診断される数値や注意すべき数値、数値を正常値に下げる方法について説明しました。 糖尿病は発症してしまうと完治することはできない病気です。健康診断などで境界型と呼ばれる数値が出た場合は生活習慣の改善に努め、糖尿病を発症しないようにすることが重要です。 また、数値には異常がないが、疲れやすい、家族に糖尿病の既往歴があるなど気になることがある場合は自己判断をせず、医師に相談することも大切です。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.10.10 -
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糖尿病で失明する原因を知る|そうならない為の予防方法も紹介 糖尿病は進行するとかすみ目など『目』に異常が現れることがあり、重症化すると視力低下や失明に至ることがあります。 この記事では糖尿病によって失明する原因や失明を予防する方法について解説します。 糖尿病で失明する原因は糖尿病網膜症 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど現れませんが、進行するとさまざまな合併症を招くことがあります。 特に糖尿病に合併しやすい症状には糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病性腎症の3つがあり、糖尿病の3大合併症と呼ばれています。特に、糖尿病網膜症は日本人の失明原因の上位の疾患になります。 なぜ糖尿病網膜症になるのか 網膜は、カメラでいえばフィルムにあたるもので、眼底一面に広がる膜状の組織のことをいいます。そもそも、なぜ糖尿病を発症すると糖尿病網膜症を合併するのでしょうか。 糖尿病網膜症になる原因や症状、治療法や症状が回復する可能性、糖尿病網膜症で失明する確率などについて詳しく見ていきます。 糖尿病網膜症の原因 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと血管が傷つくため血流が悪くなります。糖尿病では特に毛細血管などの細小血管が傷つきやすいため、毛細血管の多い部位に障害が起こりやすくなります。 網膜には目に酸素を運ぶための毛細血管が張り巡らされているため、高血糖によって血流が悪くなると網膜に酸素が行き届かなくなったり、血管が脆くなるため血管が破れて出血が起こることがあります。 このように、網膜にさまざまな障害が起こることで糖尿病網膜症を引き起こしてしまいます。 糖尿病網膜症の症状 糖尿病網膜症は進行度によって以下の3つの段階にわけられ、症状も段階ごとに異なります。 ・単純糖尿病網膜症 ・増殖前糖尿病網膜症 ・増殖糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症は初期の糖尿病網膜症です。最初は毛細血管瘤や小さな眼底出血などの異常が現れます。また、脂肪やたんぱく質が血管から漏れることで網膜に硬性白斑と呼ばれるシミが現れることもあります。自覚症状はほとんどありませんが、血糖コントロールを行うことで改善することもあります。 増殖前糖尿病網膜症 増殖前糖尿病網膜症は単純網膜症より進行した状態です。 網膜血管の閉塞が広範囲におよぶと網膜に酸素が十分に行き渡らなくなります。このとき不足した酸素を供給するために新生血管と呼ばれる新しい血管が作られ始めます。 この段階になると、かすみ目などの症状が現れることが多くなりますが、自覚症状がないこともあります。 増殖糖尿病網膜症 増殖糖尿病網膜症は糖尿病網膜症のなかでも重症化した状態のことをいいます。 不足した酸素を供給するために作られた新生血管は硝子体(眼球のなかのゼリー状の組織)や網膜に向かって伸びていきます。 新生血管はもろく破れやすいため、新生血管の壁が破れることで血液中の成分が漏れ出したり硝子体出血が起こります。硝子体出血が起こると飛蚊症や急激な視力低下を招きます。 また、増殖膜(増殖組織)と呼ばれる膜が網膜や硝子体内に形成されると、増殖膜の収縮によって網膜を引っ張ってしまい、網膜剥離を起こすことがあります。 糖尿病網膜症の治療 糖尿病網膜症は症状によって治療法が異なります。糖尿病網膜症の治療法には以下の3つがあります。 1,血糖コントロール 2,レーザー治療(網膜光凝固術) 3,硝子体手術 それぞれについて以下で詳しく見ていきます。 1,血糖コントロール 糖尿病網膜症は糖尿病が原因で起こります。したがって、まずは血糖コントロールを行い、糖尿病の治療を行うことが大切になります。単純糖尿病網膜症などの初期段階の網膜症であれば血糖コントロールによって進行を食い止めることも期待できます。 こちらも併せてご参照ください 2,レーザー治療(網膜光凝固術) 単純糖尿病網膜症から症状が進行すると新生血管が作られ始めます。そのためレーザー照射によって網膜光凝固術を行うことで新生血管の発生を抑えることになります。 レーザー照射による網膜光凝固術は糖尿病網膜症の進行を抑えて失明を防ぐために必要な治療になります。 3,硝子体手術 レーザー治療を行っても効果が出ない場合や網膜症が進行してしまった場合、急激に視力が低下した場合は硝子体手術を行います。硝子体手術は眼球に小さな孔を開け、手術器具やライトなどを入れて出血によって濁った硝子体や増殖膜を取り除く方法です。 症状が回復する可能性 血糖コントロールやレーザー治療、硝子体手術といった治療はあくまで進行を抑えるものです。 糖尿病網膜症は進行を遅らせることはできても機能を元に戻すことはできません。したがって、糖尿病網膜症を発症しないための予防法が大切になります。 糖尿病網膜症の予防方法については後述します。 糖尿病網膜症で失明する確率 糖尿病が進行して糖尿病網膜症を発症した場合、失明する確率は全糖尿病患者のうち20%程度といわれています。 糖尿病網膜症は糖尿病発症後10年ほど経過してから症状が現れるといわれています。そのため、定期的に眼底検査などの検査を受け、早い段階で治療に取り組むことが失明を回避するうえで大切になります。 失明しないための予防方法 糖尿病発症後、早い段階で治療を行えば糖尿病網膜症の発症を予防でき、発症した場合であっても重症化を抑えることができます。 糖尿病網膜症の予防方法と重症化を抑える方法について以下で詳しく見ていきます。 糖尿病網膜症の発症予防 そもそも糖尿病を発症しなければ糖尿病網膜症を引き起こすことはありません。したがって、まずは糖尿病を予防することが重要です。 糖尿病は体質などの遺伝的要素と食生活などの生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。ですから、糖尿病を発症する前に生活習慣の改善に努めることで糖尿病の発症リスクを減らすことができます。糖尿病を予防するには以下のポイントを押さえることが有効です。 ・食事は腹八分目で止める ・野菜をたくさん食べる ・定期的に運動をする ・禁煙する ・定期的に健康診断を受ける ・体重をきちんと管理する(太らないように) 糖尿病網膜症の重症化予防 糖尿病網膜症を発症した場合は重症化を防ぐことが重要です。糖尿病網膜症の重症化を防ぐには4つのポイントがあります。 ・積極的に血糖コントロールを行う ・積極的に血圧コントロールを行う ・糖尿病腎症の発症を予防する ・脂質代謝異常の治療薬を用いる 積極的に血糖コントロールを行う 血糖コントロールが悪いと糖尿病網膜症が重症化しやすいといわれています。網膜症の重症化を抑えるためにも血糖コントロールを徹底することが大切になります。 積極的に血圧コントロールを行う 糖尿病網膜症は高血糖だけでなく、高血圧によっても進行するといわれています。また、高血圧はそれ自体が高血圧性網膜症と呼ばれる症状の原因になります。そのため、降圧剤などを用いて血圧をコントロールすることも大切になります。 糖尿病腎症の発症を予防する 糖尿病の合併症の1つである糖尿病性腎症は初期段階で微量のアルブミン尿の排泄が見られます。アルブミン尿は糖尿病網膜症を進行させる因子ともいわれているため、血糖値や血圧を適切にコントロールすること腎症と併せて治療を行うことが大切です。 脂質代謝異常の治療薬を用いる 中性脂肪を下げるフェノフィブラートなどのフィブラート系と呼ばれる薬は糖尿病網膜症の重症化を抑えるといわれています。 まとめ 糖尿病によって失明する原因や失明を予防する方法について説明しました。 糖尿病網膜症は進行を抑えることはできても、元の健康な状態に戻すことはできない病気です。また糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど現れないため、糖尿病を発症していることに気付かないこともあります。 糖尿病による失明を防ぐためには、糖尿病を予防し、定期的に健診を受けて早期発見をすることが何より大切です。不安な点がある場合は医師に相談すると良いでしょう。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
最終更新日:2022.10.08 -
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糖尿病と診断されてから不安や憂鬱な気持ちが続く…これってうつ病? 糖尿病治療を続けていると精神的に不安定になることがあります。一見、糖尿病とうつは関係がないように思えますが、実は糖尿病患者はうつ病になりやすいといわれています。 この記事では糖尿病によってうつ病を発症しやすくなる理由や改善方法について説明します。 うつ病とは うつ病は心の病といわれていますが、糖尿病とも深い関わりがあります。うつ病の特徴と原因について見ていきます。 うつ病の特徴と原因 うつ病は生活環境やものの考え方、日常生活で生じたストレスなどが組み合わさることで発症するといわれています。必ずしも悲しい出来事だけでうつ病を発症するわけではなく、明るい出来事がきっかけで発症するケースもあります。 例えば結婚や昇進といったイベントは周りからすると喜ばしいことに思えますよね。しかし、こういった環境の変化はその人の捉え方によって不安やストレスになることもありますよね。このように、どのような環境の変化であっても人によってはストレスとなることがあるのです。 一方、脳内ではさまざまな神経伝達物質が働くことで情報伝達が行われています。 これらの神経伝達物質のなかでも特にノルアドレナリンやセロトニン、ドパミンの3種類のモノアミンと呼ばれる物質がうつ病治療において重要であるといわれています。 うつ病は過労やストレスなどによってこれらのモノアミンが減少することで発症すると考えられています。 うつ病の症状 うつ病は精神的な症状だけでなく、肉体的な症状が現れることもあります。 精神的な症状 うつ病の精神的な症状には以下のようなものがあります。 ・抑うつ気分 ・不安 ・焦り ・興味または喜びの喪失 ・意欲の低下 ・自分を責める など 肉体的な症状 うつ病の肉体的な症状には以下のようなものがあります。 ・睡眠障害 ・食欲の減退 ・疲労感・倦怠感 ・動悸 ・口が渇く など 糖尿病患者はうつ病になりやすい 糖尿病患者はうつ病を発症しやすいといわれています。糖尿病を発症するとなぜうつ病になりやすいか、またうつ病と糖尿病にどういう関係性があるのかを見ていきます。 糖尿病患者がうつ病になる原因 これまで、糖尿病患者がうつ病になりやすいのは以下のようなことが原因と考えられてきました。 ・糖尿病と診断されること ・治療のため、これまでの生活習慣を変えなければならない ・インスリン治療が苦痛 ・合併症の発症・進行などに伴う苦痛 しかし、最近は上記以外にも糖尿病とうつ病にはさまざまな因子が関係しているともいわれています。これについては次項で説明します。 糖尿病とうつ病の関連性 うつ病は生活環境や物事に対する考え方、日常生活で生じたストレスなどが組み合わさることで発症するといわれています。 糖尿病患者の方は、上記のような日常的なストレスだけでなく、「糖尿病と診断されたこと」や糖尿病治療(血糖コントロール)に伴う精神的なストレス、さらに血糖値を上げるホルモンの分泌量が増えることでうつ病を発症しやすくなるといわれています。 さらに、うつ病と糖尿病はどちらもストレスが発症原因になるという共通項があります。また、うつ病の人は夜食や間食が多く、運動不足であることが多いということもわかっています。 このようにうつ病患者と糖尿病患者には生活習慣に共通した項目が多いこともわかっています。糖尿病患者の方がうつ病になると何が問題になるのでしょうか。 うつ病は肉体的な症状が出ることがあります。例えば、うつ病を発症すると自律神経やホルモン分泌などさまざまな機能に影響が出ることがあります。 糖尿病はインスリンという血糖値を下げるホルモンの作用不足で起こるといわれています。したがって、うつ病によってホルモン分泌に影響が生じるとインスリンの作用不足が生じることがあるのです。 また、うつ病は集中力や意欲が低下することがあります。そのため、医師の指示通りに服薬したり、通院を続けることが難しくなり、治療が難しくなることがあるのです。 糖尿病患者のうつ病の改善・予防方法 糖尿病患者がうつ病を発症した場合、うつ病の治療と糖尿病治療を併せて行うことになります。 糖尿病治療は自己管理が必要なうえ、ストレスを抱えやすくなります。一方、うつ病のようにメンタル面に問題を抱えていると糖尿病を悪化させる原因になります。したがって、うつ病と糖尿病は同時に治療を進めていく必要があるのです。 糖尿病患者がうつ病を発症した場合、精神科や心療内科での抗うつ剤による投薬治療や認知行動療法などの心理学的なアプローチによる治療、あるいはその両方を併用した治療を行います。 糖尿病患者の方のなかには「精神科を受診するのはハードルが高い」と感じている人も少なくありません。 しかし、精神的に健康であることは糖尿病にとっても重要です。そのため医師の指示に従い、適切に受診することが大切になります。 さらに、糖尿病の治療は食事や投薬などの自己管理が非常に重要になります。しかし、うつ病を患っていると自己管理がうまくできないことがあります。 自己管理がうまくできなくなると、自分を責めてしまい、うつ病が悪化する悪循環を招く可能性もあります。 このようなケースでは、家族や周囲の協力を得ることで、血糖コントロールがうまくいくだけでなく、患者の方も精神的に楽になります。 家族や身近な人に糖尿病患者の方がいる場合、糖尿病やうつ病に対してネガティブな情報ばかりを提供したり、暗い顔で接するようなことは絶対にやめましょう。 いつもと変わらない態度で前向きに治療に取り組むことがうつ病の発症を予防し、糖尿病の改善にもつながります。 まとめ 糖尿病とうつ病の関係性や改善方法について説明しました。 糖尿病患者の方はうつ病を発症しやすい傾向があります。しかし、不安や悩みを1人で抱え込まず、周りの協力を得ながら前向きに治療に取り組むことがうつ病を予防し、糖尿病の治療にもつながります。 糖尿病を治療するにあたって悩みがある場合は医師に相談するのもその1つです。わからないことや不安なことがあればすぐに医師の診察を受けることが大切です。 監修:院長 坂本貞範
最終更新日:2022.09.21 -
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糖尿病とは?その症状と原因、自宅でできるチェック法 糖尿病は国民病といわれ、現在の日本では糖尿病に悩んでいる方が多くいます。これだけ多くの人が悩まされていると、「今のところ自覚症状はないけど自分は大丈夫なのだろうか」と心配になりますよね。 でも、「これといって自覚症状がないのにわざわざ病院に行くのは気が引ける」という方も多いのではないでしょうか。この記事では、尿を使って自分で簡単に糖尿病のチェックができる方法を紹介します。 糖尿病の症状と原因 糖尿病を発症するとどういった症状が現れるのでしょうか。糖尿病の発症原因と併せて見ていきます。 糖尿病の症状 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると以下のような症状が現れます。 ・喉が渇く ・排尿の回数と量が多い ・疲れやすい ・食べても体重が減る ・足がつる、しびれる ・目がかすむ、黒い点が見える ・傷が治りにくい ・ED(男性の場合) など なお、2型糖尿病は「ゆっくりと」「少しずつ」上記のような症状が現れますが、1型糖尿病では「突然」「急に」症状が現れるという違いがあります。2型糖尿病と1型糖尿病については後述します。 糖尿病の原因 食事をするとすい臓のランゲルハンス島にあるβ細胞からインスリンが分泌され、血糖値の上昇を抑えます。しかし、糖尿病患者の方は何らかの理由によりインスリンの分泌力が低下しているか、あるいは分泌されたインスリンがうまく働かないため血糖値を下げることができません。 糖尿病は発症原因によって大きく2型糖尿病と1型糖尿病にわかれます。 2型糖尿病の原因 2型糖尿病は以下のように遺伝的要因と生活環境が組み合わさることで発症します。 ・高齢(40歳以上) ・肥満 ・家族に糖尿病の人がいることによる遺伝 ・運動不足 ・食べ過ぎ 食べ過ぎが続くと、すい臓はインスリンを大量に分泌しようとするため疲弊してしまい、インスリンの分泌力が低下します。 また、運動不足が続くと血液中のブドウ糖を細胞に取り込みにくくなるため、インスリンに対する感受性の低下(インスリン抵抗性)を招きます。また、加齢や肥満もインスリン抵抗性を招くといわれています。 現在、日本の糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病といわれています。そのため、「糖尿病」といえば一般的に「2型糖尿病」のことを差すことが多いです。 1型糖尿病の原因 1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌できないため体の外からインスリンを補充しなければなりません。1型糖尿病の原因ははっきりとはわかっていませんが、以下のようなことが原因と考えられています。 ・1型糖尿病にかかりやすい体質 ・何らかの原因ですい臓の一部が破壊された 1型糖尿病は、2型糖尿病と違い年齢に関係なく発症します。なお、すい臓の一部が破壊される原因としては免疫反応の異常(自己免疫)によるという説があります。 糖尿病を尿でチェックする 糖尿病検査といえば採血をして血糖値を調べるのが基本ですが、尿を使ってチェックすることもできます。 糖尿病は早期発見が大事 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど現れませんが、進行してしまうと重い合併症を招くことがあります。そのため、早い段階で糖尿病を発症していることに気付き、治療を開始することが大切になります。 最近は、隠れ糖尿病といって空腹時の血糖値は正常なのにも関わらず食後のみ高血糖が現れるという人もいます。しかし、一般的な健康診断では空腹時血糖値しか測定しないため、隠れ糖尿病であることに気付くのは難しいのが現状です。 そのため、隠れ糖尿病は放置しやすく、気付いたときには糖尿病が進行してしまっていることがあります。隠れ糖尿病の段階で異常を発見し、早い段階で治療に取り組めば糖尿病の進行を防ぐことにつながります。糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本です。 早い段階で生活習慣を見直し、血糖コントロールを行うことができれば、糖尿病の進行を抑えることにつながります。 尿のチェックでわかること 尿をチェックすることで糖尿病の有無を調べる場合は尿糖を調べることになります。尿糖検査では以下のことがわかります。 ・血液中の糖濃度 ・糖尿病・甲状腺機能亢進症・腎性糖尿の可能性 尿チェックの方法 尿を使ったチェック方法には尿糖、尿沈査、尿潜血、比重などさまざまなものがあります。特に、糖尿病で重要になる尿糖や血糖値は自宅でチェックすることもできます。 排尿時の泡立ち 尿にはウロビリノーゲンという物質が含まれており、健康な人であっても尿が泡立つことがあります。そのため、尿が泡立った場合でもすぐに消えるのであれば問題ありません。 しかし、なかなか泡が消えない場合は注意が必要になります。尿に糖やたんぱく質などが多く含まれるようになると、尿の粘調度が高くなります。そのため、健康な人よりも尿の泡立ちが目立つようになるのです。 日頃から排尿時の尿の状態をチェックし、泡がなかなか消えない場合は医師に相談することが大切です。 検査キットを使用したセルフチェック 市販の尿検査キットや血糖測定器を使って、自分で尿糖や血糖値のチェックを行うこともできます。血糖測定器とは、指先に針を刺して出てきた血液で血糖値を測定するものです。 一方、尿検査薬は、尿試験紙に尿をかけ、試験紙の色を見ることで尿糖や尿蛋白、潜血などが多く含まれるかどうかを調べるものです。尿検査薬は血糖測定器(1万円前後)と比較して安価(1000円/10枚程度)ですので、気軽にチェックすることができます。 体調に不安を感じているけれど病院に行くのは気が引けるという場合は、尿検査キットなどを使って定期的に尿の状態をチェックしましょう。 糖尿病の予防について 糖尿病は発症しても気付きにくく、進行すると重い合併症を引き起こす可能性があります。そのため、日頃から尿を使ったセルフチェックを行うと同時に糖尿病を発症しないように予防することが重要です。 糖尿病の予防とは血糖値を適正に保ち続けることです。血糖値を適正に保つには以下の2つが重要になります。 ・食事 ・運動 栄養バランスの良い食事を心がけ、食べ過ぎを防ぐことは血糖値の上昇を抑え、すい臓の負担を減らします。また、適度な運動を行うことで肥満を防ぎ、血液中の糖を細胞に取り込みやすくなるため血糖値を下げる効果があります。 糖尿病を発症してしまった場合は以下の3つの方法で血糖コントロールを行います。 ・食事療 ・運動療法 ・薬物療法 糖尿病の治療も食事療法と運動療法で血糖値をコントロールすることが基本になります。食事療法と運動療法を行っても血糖コントロールがうまくいかない場合は薬物療法を取り入れることになります。薬物療法を取り入れる場合も食事療法、運動療法を継続して行うことが重要です。 まとめ・糖尿病とは?その症状と原因、自宅でできるチェック法 尿を使った糖尿病のチェック方法について説明しました。 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど現れませんが、放置すると合併症など深刻な結果を招く可能性があります。そのため、糖尿病は早期発見・早期治療が何より大切になります。 日頃から尿をチェックし、「いつもと違う」と思ったらすぐに医師に相談することが大切です。 監修:リペアセルクリニック大阪院 ▼こちらも併せてご参照ください
最終更新日:2022.12.20 -
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糖尿病のリスク|ツールを使った予測と予防方法を紹介 糖尿病は国民病といわれ、多くの方が悩まされている病気です。特に食習慣や運動不足など生活習慣が乱れているという自覚がある方は糖尿病のリスクが気になりますよね。 この記事では糖尿病のリスク要因にはどのようなものがあるのか、またどのように予防すれば良いのかを解説します。 糖尿病になるリスク要因 糖尿病は「甘いものの食べ過ぎ」で発症するというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、以下のようなものが発症リスクになります。 ・妊娠 ・アルコール摂取 ・食事方法 ・運動不足 ・肥満 ・年齢 上記のうち、「妊娠」については糖尿病と一見関係がなさそうに見えますよね。実は妊娠するとインスリンと呼ばれる血糖値を下げるホルモンの働きが悪くなるため、血糖値が上がりやすいのです。 母体が高血糖になると母親だけでなく子供にも合併症のリスクがあります。そのため、元々糖尿病でなかった人も妊娠中は血糖コントロールをより厳格に行う必要があるのです。 妊娠しているとき 糖尿病でなかった人も妊娠中は血糖コントロールが必要です。一方、元々糖尿病を患っている女性は妊娠する前の段階で血糖コントロールを行う必要があります。 妊娠初期は器官形成期と呼ばれています。そのため、妊娠前から高血糖状態が続いていると胎児に奇形などの異常が生じやすくなります。 妊娠前から高血糖状態が続いていた場合、妊娠が判明してから血糖コントロールを行っても手遅れとなるため、妊娠前に血糖コントロールを行うことが大切になります。 また、前述のように妊娠中は血糖値が上がりやすいため「妊娠糖尿病」を発症することがあります。妊娠糖尿病とは糖尿病とはいえない程度の軽度の糖代謝異常のことです。つまり、妊娠中はすべての妊婦さんが血糖コントロールを行う必要があるのです。 アルコール摂取の影響 アルコールはアルコールそのものの働きだけでなく、アルコールの代謝によっても血糖値に影響をおよぼします。特に多量の飲酒は糖尿病の発病リスクを高めます。さらに肝障害や膵障害を合併すると対処することが難しくなります。 糖尿病患者の方は医師と相談のうえ、飲酒する場合は飲酒量に気を付ける必要があります。 食事方法の影響 食事をすると血液中にブドウ糖の量が増え、血糖値が上昇します。このときすい臓からインスリンが分泌されることでブドウ糖が細胞に取り込まれ、エネルギー源として蓄えられます。 しかし、食事で摂るブドウ糖の量が多い場合、血糖値が急激に上昇するため、すい臓は大量にインスリンを分泌しようとして疲弊してしまい、結果的にインスリンの分泌量が減ってしまいます。 糖尿病を防ぐには食べ過ぎを防ぎ、ゆっくりとよく噛んで食べることが大切です。 年齢によるもの 糖尿病は年齢が高くなるにつれて発症リスクが高まります。 年齢を重ねるとインスリンの分泌量が減るうえ、分泌されたインスリンが働きにくくなるため、年齢が高くなるにつれて糖尿病患者が増える傾向があります。 また、加齢によって血管の壁が硬くなったり厚くなるため、動脈硬化が進行しやすくなります。そのため、高齢の糖尿病患者の方は後述する神経障害や網膜症などの合併症を発症しやすくなります。 さらに、高齢になると身体機能が低下するため、身体に異常があっても気付きにくくなります。糖尿病を発症すると感覚が低下しやすくなるため、高齢の糖尿病患者の方は特に自覚症状を感じにくく、症状が進行してしまう傾向があります。 糖尿病患者が注意したいリスク 糖尿病を発症している方は以下のことに注意が必要です。 ・妊娠・出産 ・手術 ・合併症 それぞれについて起こりうるリスクを以下で説明していきます。 妊娠・出産のとき 糖尿病患者の方が妊娠・出産の際に注意が必要なリスクとしては以下のようなものがあります。 ・合併症(特に網膜症・腎症・神経障害) ・妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症) ・羊水過多症 ・膀胱炎 ・腎盂炎 ・流産や早産・死産 など また、糖尿病患者の方が妊娠や出産をする場合、お腹の赤ちゃんにも影響があります。糖尿病患者の方が妊娠・出産する際に赤ちゃんが抱える可能性のある障害は以下のようなものがあります。 ・巨大児 ・低出生体重児 ・奇形 ・低血糖 ・呼吸障害 など 手術のとき 高血糖が続くと、抵抗力が低下し、感染症を発症したり、傷口が化膿しやすくなります。そのため、ケガをしたら早い段階で消毒などの応急処置を施し、速やかに病院を受診することが大切です。 また、外科手術が必要になった場合はさらに注意が必要です。 外科手術は創傷治癒があることを前提に行われます。創傷治癒は血管新生が起こってから肉芽組織が作られるという過程を経ることになります。しかし、高血糖状態が続くと血管が障害されるため新しく血管を作ることができません。 そのため、糖尿病患者が手術を行う際は事前に血糖値をコントロールしておく必要があります。また、手術が必要になった場合は自分が糖尿病患者であることを必ず外科医(手術担当医)に伝え、糖尿病の担当医にも手術を受けることを伝えておきましょう。 3大合併症 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど見られませんが、進行すると合併症を招くことがあります。以下の3つの合併症は特に糖尿病患者に多く見られるもので、3大合併症と呼ばれています。 ・神経障害 ・腎症 ・網膜症 神経障害 神経障害は多くの糖尿病患者の方に見られる合併症です。 神経障害の初期症状は痛みやしびれなどですが、進行すると激痛が起こったり、神経が壊死することで感覚がなくなってしまうこともあります。 神経障害で感覚に異常が生じると、無自覚性低血糖を起こし意識を喪失したり、無痛性心筋虚血による発作や呼吸の停止などを起こしやすく、突然死のリスクが高くなるため、決して軽視できない病気です。 腎症 糖尿病は高血糖が続く病気です。高血糖状態が続くと血管が障害され、全身で動脈硬化が起こりやすくなります。なかでも毛細血管などの細い血管が集中している部分は合併症が起こりやすくなります。 腎臓は糸球体と呼ばれる毛細血管の塊によって老廃物の濾過を行います。糖尿病性腎症は、高血糖状態が続くことで糸球体の毛細血管が障害され、血管が狭くなったり、傷ついたりして濾過がうまくできなくなる状態のことをいいます。 糖尿病性腎症を発症すると段階によって厳格な血糖コントロールや低たんぱく食、降圧薬の使用、透析療法を行うことがあります。 網膜症 毛細血管などの細い血管が障害されることを細小血管症といいます。目のなかにある網膜は毛細血管が広がっているため高血糖状態が続くと細小血管症を引き起こしやすくなります。糖尿病性網膜症は進行すると視力の低下や失明にいたることがあります。 糖尿病リスク予測ツール ここまで糖尿病患者の方が抱えるリスクについて説明しました。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行するとさまざまなリスクを抱えることになります。これらのリスクをなくすためには糖尿病を発症する前の段階で予防することが大切です。 国立国際医療研究センターは、職域コホート(J-ECOHスタディ)の健康診断データを使い、株式会社教育ソフトウェアと共同で糖尿病の発症リスクを予測するシステム(糖尿病リスク予測ツール)を開発しました。 糖尿病リスク予測ツールに記入するデータは以下となります。 ・基本項目(既往歴、身長、体重、性別、血圧など) ・追加項目(空腹値血糖値などの血液データ) 自分の糖尿病発症リスクを把握し、早い段階で生活習慣の改善に取り組むことが大切です。 引用元:国立国際医療研究センター「糖尿病リスク予測ツール」 糖尿病の予防方法 糖尿病は発症原因によって妊娠糖尿病や1型糖尿病、2型糖尿病などに分類されますが、一般的に「糖尿病」といえば、2型糖尿病のことをいうことが多いです。 2型糖尿病は体質などの遺伝的因子と以下のような環境因子が組み合わさることで発症します。 ・食べ過ぎ ・運動不足 ・肥満 ・ストレス ・不規則な生活 など 体質などの遺伝的因子は変えることができません。しかし、食生活や運動不足などの環境因子を変えることで糖尿病は予防することができます。また、食生活の改善や運動は糖尿病発症後の治療でも治療の基本になります。 特に食べ過ぎはすい臓に負担をかけ、インスリンの分泌力を低下させるだけでなく、肥満の原因にもなるため、治療と予防いずれにおいても重要になります。 こちらも併せてご参照ください まとめ・糖尿病のリスク|ツールを使った予測と予防方法を紹介 糖尿病患者の方が抱えるリスクと糖尿病を予防する方法について解説しました。 糖尿病を予防するためにも、自分の糖尿病発症リスクを把握し、早い段階で生活習慣を改善することが大切です。 また糖尿病を発症した場合は早い段階で血糖コントロールを行い、症状を進行させないことも重要になります。ここで紹介した予測ツールを活用したり、不安な点がある場合はすぐに医師に相談しましょう。
最終更新日:2022.10.11 -
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糖尿病で足が壊疽(えそ)する原因と症状|神経障害や潰瘍との関係について 「糖尿病で足が壊疽(えそ)した」「足を切断した」そんなことを聞いたこともあるのではないでしょうか。では、なぜ糖尿病が原因で足を切断することになるのでしょうかこの記事では糖尿病で足の壊疽にいたる原因と治療法について解説します。 糖尿病患者の壊疽の症状 糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖が続くと血管が障害されるため、血管壁が傷つき、硬くなったり脆くなることで動脈硬化などの血管病を発症することになります。 呼吸や食事で取り込んだ酸素や栄養は、全身に張り巡らされた血管によって全身の細胞に運ばれます。そのため、高血糖によって血管が障害されると体中の神経や細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、さまざまな臓器で障害が起こることになります。 壊疽の初期症状 足は心臓から遠いため、高血糖による血流障害の影響を受けやすくなります。そのため、壊疽の症状は足に多く見られます。 糖尿病を発症したからといっていきなり足が壊疽するわけではありません。糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど見られませんが、進行すると以下のような症状が少しずつ現れます。 ・足のしびれ・痛み ・靴擦れを起こしやすくなる ・足が冷える・火照る ・こむら返りがおきやすくなる ・水虫ができやすい ・ケガが治りにくい ・ひび割れ これらの症状が進行すると、足の感覚が鈍くなり、ケガややけどをしても気付かなくなってしまいます。また糖尿病患者の方は細菌に対する抵抗力が低下するため感染症を起こしやすく、放置した傷が化膿してしまい、最悪の場合壊疽につながってしまうのです。 神経障害で痛みを感じにくい 高血糖状態が続くと血管のなかでも特に細い血管が障害されるため、神経細胞への血流が悪くなり、神経障害を起こします。 神経には、感覚神経や運動神経、自律神経があります。感覚神経が障害を受けると、痛みを感じにくくなり、ケガや火傷をしても気付かずに放置してしまい、壊疽につながることがあります。 手の壊疽 糖尿病による壊疽は足に多く見られますが、稀に手指に現れることもあります。 ・しびれるような痛みが生じる ・感覚が鈍くなり感じなくなる 手・足いずれの場合も、早期発見・早期治療が壊疽を防ぐにあたり重要になります。 糖尿病の壊疽する原因 糖尿病で壊疽にいたる原因には以下の3つがあります。 ①糖尿病性足病変 ②糖尿病性神経障害 ③血流障害の影響 以下で詳しく説明します。 ①糖尿病性足病変 糖尿病性足病変とは糖尿病が原因で起こる足のトラブルの総称です。糖尿病性足病変には以下のようなものがあります。 水虫や細菌の感染 糖尿病を発症すると細菌に対する抵抗力が低下するため、水虫(足白癬)や感染症を発症しやすくなります。 【足底の水虫】 引用元:播磨病院「糖尿病の足病変-水虫に要注意-」 【足の細菌感染】 引用元:播磨病院「糖尿病の足病変-水虫に要注意-」 足の変形やタコ 糖尿病によって運動神経が障害されると足の筋肉が萎縮し、屈曲障害や偏平足などの変形が起こり、タコや靴擦れが起きやすくなります。 引用元:播磨病院「糖尿病の足病変-水虫に要注意-」 【足の変形】 引用元:アルメディアWEB「糖尿病の足病変-水虫に要注意-」 足壊疽 糖尿病で動脈硬化が起こると特に足への血流が悪くなります。そのため、足にケガややけどをしても傷を治すための酸素や栄養が行き渡りにくく、潰瘍や壊疽(組織が死ぬこと)を起こすことがあります。 【足壊疽】 引用元:「糖尿病は食事で治る-」 足壊疽の詳細については後述します。 ②糖尿病性神経障害 糖尿病性神経障害では足の感覚が鈍くなることがあります。そのため、ケガややけどをして足に傷ができても痛みを感じず、傷を放置してしまうことがあります。また、足は意識しないと見ようとしない部分ですので傷があっても気付きにくい傾向があります。 糖尿病性神経障害を起こす理由ははっきりとはわかっていませんが、高血糖状態が続くことで神経細胞にソルビトールという原因物質が蓄積するという説や血流の悪化により神経細胞に必要な栄養や酸素が行き渡らないためと考えられています。 ③血流障害の影響 糖尿病は血管が障害されて血流が悪くなるため、傷が治りにくく、感染症を起こしやすくなります。さらに、糖尿病は高血糖状態が続くことで免疫機能が低下するため、感染が広がり潰瘍を作ることもあります。 特に足は心臓から遠いため血流が悪くなりやすくなります。足の動脈硬化が進行し、患部に栄養や酸素が行き渡らなくなると、そこから先の組織は生きていけなくなるため、壊疽を起こしやすくなります。 壊疽の治療 糖尿病によって足の潰瘍や壊疽にいたった場合、ケースにより治療法が変わります。糖尿病による足壊疽の治療のポイントは次の2つです。 ・初期なら切断を防げる ・壊疽してしまったら切断率が高い 以下で詳しく見ていきます。 初期なら切断を防げる 初期段階では、傷や潰瘍のある部分に体重をかけないように心がけ、抗生物質や真菌薬などを用いて治療を行います。細胞が死んでいる部分があると、傷口や潰瘍の治りを妨げてしまいます。そのため、デブリドマン(感染・壊死した組織を削り、洗浄すること)を行い、傷の治りを促す処置を行います。 また、血管が細く、血流が悪いと傷や潰瘍の治りが悪いため、血管を広げる治療を行うこともあります。 壊疽してしまったら切断率が高い 壊疽が広範囲に広がり、治癒の見込みがないほど重篤な状態になった場合は患者の命を守るためにも足を切断するケースが多くなります。 足壊疽患者の余命 糖尿病で足を壊疽した場合の予後や余命はどうなっているのでしょうか。 日本糖尿病学会の「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」によると糖尿病で足を壊疽し、下肢切断した場合の死亡率は以下のようになっています。なお、周術期とは周手術期ともいい、術前・術中・術後を含む一連の期間のことをいいます。 ・周術期・・・約10% ・術後1年・・・約30% ・3年・・・約50% ・5年・・・約70% このように、足を切断するほど症状が進行している場合は生命予後が非常に悪いことがわかります。また、糖尿病によって足を切断した場合、切断した足と反対側の足にも糖尿病足病変を再発しやすく、再度切断するリスクが高くなります。 まとめ/糖尿病で足が壊疽する原因と症状|神経障害や潰瘍との関係 糖尿病による足の壊疽の原因や治療法について説明しました。 糖尿病で足に壊疽を起こすと足を切断しなければならないことがあります。また、足を切断しなければならないほど症状が進行してしまうと、生命予後が非常に悪くなります。 糖尿病は発症してしまうと完治することができない病気です。糖尿病を発症した場合は、早い段階から治療を行い、足のケアやチェックを欠かさず行うことが何よりも大切になります。潰瘍や壊疽ができた場合も、初期段階であれば足を切断せずに済むケースもあります。 糖尿病と診断され、水虫やタコなどの異変があった場合はすぐに医師の診察を受けましょう。 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気? 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.10.10 -
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糖尿病による人工透析の費用や、予後について解説 糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると糖尿病性腎症などの合併症を発症することがあります。糖尿病性腎症は初期段階であれば血糖コントロールで対処が可能ですが、進行すると人工透析を導入する必要があります。 人工透析の導入には判断基準(透析導入基準)があり、症状や腎機能などを踏まえて導入時期を考えていくことになります。この記事では、人工透析の導入時期や費用などの概要や人工透析後の生活、予後について解説します。 糖尿病と人工透析 日本透析学会によると、2017年末の時点で日本で慢性透析療法を受けている患者数は約33万人であり、患者数は年々増加していることがわかっています。さらに慢性透析患者の原因疾患としては糖尿病性腎症が最も多く、約39%を占めています。 人工透析を導入する際には以下のことを確認しておく必要があります。 ・人工透析を始める時期 ・人工透析の費用 ・人工透析の副作用 人工透析を始める時期 人工透析を始める時期については、透析導入基準に従い、臨床症状、腎機能、日常生活障害度の合計点数が60点以上の場合に透析療法の導入が必要と判断することになります。 【臨床症状】 以下の7つの臨床症状のうち、3つ以上当てはまる場合は高度(30点)、2つ以上の症状で中等度(20点)1つの症状で軽度(10点)として計算します。 ・体液貯留(全身性浮腫、高度の低蛋白血症、肺水腫) ・体液異常(管理不能の電解質・酸塩基平衡異常) ・消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、下痢など) ・循環器症状(重篤な高血圧、心不全、心包炎) ・神経症状(中枢・末梢神経障害、出血傾向) ・血液異常(高度の貧血症状、出血傾向) ・視力障害(尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症) 【腎機能】 【日常生活障害度】 ・尿毒症症状のため起床できないもの・・・高度(30点) ・日常生活が著しく制限されるもの・・・中等度(20点) ・通勤、通学あるいは家庭内労働が困難なもの・・・軽度(10点) 人工透析の費用 1カ月に人工透析治療に必要な費用は患者1人当たり以下の金額となります。 ・外来血液透析:約40万円 ・腹膜透析(CAPD):30~50万円 腹膜付籍(CAPD)とは、在宅での透析療法になります。 このように、人工透析には高額な費用がかかりますが、患者の自己負担を軽減するための公的助成制度もあります。次で詳しく説明します。 人工透析の医療助成制度 人工透析の医療費助成制度には以下のようなものがあります。 ・自立支援医療(更生・育成医療) ・重度心身障害者医療費助成制度 自立支援医療(更生・育成医療) 自立支援制度とは、障害者(児)の身体的障害を軽減するための医療費について、自己負担分を国が助成する医療制度です。更正医療は18歳以上、育成医療は18歳未満が対象になります。 助成を受けるためには身体障害者手帳の交付を受けていること、治療を受ける医療機関が自立支援医療機関の指定を受けていることなどの条件があります。 重度心身障害者医療費助成制度 重度心身障害者医療費助成制度とは、身体障害者手帳1、2級の障害者が医療を受けた際に、自己負担分に対して各自治体が助成を行うという制度です。自治体によって制度の名称や助成対象、所得制限の有無や負担金額が異なるため、お住まいの自治体に確認しましょう。 このほか特定疾患にかかる高額療養費の特例制度を適用した場合、自己負担額を上限1万円まで抑えることができます。高額療養費の特例や自立支援医療、障害者医療費助成制度をすべて利用すれば、自己負担額が実質0円になるケースもあります。 なお、これらの制度は所得によって助成金額や上限金額が変わることがありますので必ず確認しましょう。 人工透析の副作用 人工透析導入直後は以下のような副作用が起こることがあります。 ・穿刺部の痛み ・不均衡症侯群(透析導入後の頭痛や嘔吐、吐き気など) ・血圧低下 ・低血糖発作 ・うつ症状 穿刺部の痛みは慣れると我慢できるようになります。 うつ症状と人工透析は一見関係なさそうに思えますが、定期的に人工透析を続けていくことに対して落ち込んでしまい、うつ症状が現れることがあるようです。「透析することで生き続けることができている」とポジティブに考え、透析中の時間を有効活用するなど頭を切り替えるようにしましょう。 人工透析患者の予後 人工透析患者の数は年々増加していると説明しましたが、主な原因疾患である糖尿病性腎症患者の数も年々増加しています。また、糖尿病性腎症患者数は女性よりも男性のほうが圧倒的に多くなっています。 人工透析導入したあとの予後はどうなるのでしょうか。以下のポイントにわけて説明します。 ・人工透析後の5年生存率 ・人工透析後の平均余命 人工透析後の5年生存率 日本透析医学会によると、2008年の人工透析導入患者の5年生存率は59.8%で、1992年以降に人工透析を導入した患者で生存率が改善していることがわかっています。また、20年、25年生存率はともに減少傾向であるものの、1年生存率に関しては一貫して増加傾向にあることが報告されています。 人工透析後の平均余命 人工透析後の余命には個人差がありますが、人工透析導入後の平均余命は健康な方と比べて約半分になるといわれています。さらに、人工透析後は健康な人の2倍の早さで老化が進むといわれています。 例えば2003年のデータによると、50歳男性の平均余命が30年ですので、同じ年齢の透析患者の方は余命が15年程度になるということです。2017年末時点での人工透析導入年齢の平均は68.43歳です。68~69歳の男性の平均余命は15年程度ですので平均余命は10年を切ることになります。 人工透析中の生活 人工透析療法を受けることになった場合は予後を悪くしないための生活を心がけることが大切です。そのためにも自己管理が非常に重要になります。 人工透析中の食事 人工透析中は以下のポイントを押さえた食事を摂ることが大切です。 ・十分な食事を摂る ・カリウムの制限 ・水分と塩分の制限 ・禁酒 腎機能が低下してしまうと、電解質であるカリウムの排泄量が低下し、高カリウム血症を起こすリスクが高まります。カリウムはお湯や水に溶ける性質があるため、野菜を摂取する際は流水にさらしたり、茹でこぼすことでカリウムの摂取量を減らすことができます。 人工透析中の注意点 人工透析中は食事だけでなく、以下のことに注意して生活することが重要です。 ・シャントを守る ・適度な運動 ・十分な睡眠 ・体重管理 シャントとは腕などに外科的に作る特殊な血液回路をいいます。シャントを感染や閉塞から守るためにも、透析日は入浴を避け、シャワーにとどめておきましょう。また、シャント側の腕を下にして眠ったり、シャント側の腕で重いものを持つことや腕時計を付けることを避け、採血や血圧測定などをしないことも重要です。 また、薬を処方されたら決められた量や服用時間を守ることも大切です。これにより、処方された薬の効果を効率よく発揮させ、副作用を防ぐことにつながります。 まとめ/糖尿病による人工透析の費用と予後について 人工透析の概要や人工透析後の予後などについて説明しました。 糖尿病性腎症は人工透析導入にいたる原因として最も多い疾患です。人工透析後は予後が悪くなることが多いため、糖尿病性腎症は初期段階で食い止めることが大切になります。 もちろん、人工透析後の自己管理を徹底すれば、透析を続けながら長期間生活し続けることも不可能ではありません。人工透析を導入することになった場合は医師の指示にしたがい、自己管理に努めることが大切です。 監修:リペアセルクリニック大阪院
最終更新日:2022.09.29