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ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方は?画像検査の重要性と治療法の違いを解説

手首や手の甲、指の付け根などに突然しこりができると、「これはガングリオンだろうか?」「もしかして悪性の腫瘍だったらどうしよう」と不安になるかもしれません。
多くのしこりは良性のガングリオンですが、まれに悪性腫瘍である可能性もゼロではありません。
本記事では、ガングリオンと悪性腫瘍を見分けるための一つの目安となる特徴の違いについて解説します。
さらに、確定診断に欠かせない画像検査の重要性や、両者の根本的な治療法の違いについても解説しています。
ぜひ最後までご覧いただき、ガングリオンをはじめとするしこりに対する不安を和らげるための知識を身につけましょう。
目次
ガングリオンと悪性腫瘍の見分け方
ガングリオンと悪性腫瘍を見分けるには、しこりの硬さや可動性といった「特徴の違い」をセルフチェックし、最終的には病院での「画像検査」を受けることが重要です。
自分でもある程度の違いを把握することはできますが、自己判断だけでは悪性の可能性を完全には否定できません。
不安を解消し、適切な対処を行うためにも、まずは両者の一般的な違いを知り、専門医による正確な診断の流れを理解しておきましょう。
特徴の違いから判断する
ガングリオンと悪性腫瘍は、しこりの「硬さ」「動き(可動性)」「大きさの変化」「痛み」などの特徴に違いが見られる傾向があります。
主な特徴の違いは、以下のとおりです。
| 比較項目 | ガングリオン | 悪性腫瘍 | 
|---|---|---|
| 硬さ | ・柔らかいものから骨のように硬いものまでさまざま ・弾力性を感じることが多い | ・石のように硬いことが多い ・弾力性があまりない傾向がある | 
| 動き | ・押すと上下左右に少し動く(可動性がある)ことが多い | ・動きにくい(可動性が乏しい)傾向がある | 
| 大きさ | ・大きくなったり小さくなったりする ・自然に消えることもある | ・基本的に小さくなることはない ・持続的に大きくなり続ける | 
| 痛み | ・痛みがないことが多い ・神経の近くにできると圧迫して痛むこともある | ・初期は痛みがないことが多い ・大きくなると痛みを伴う場合がある | 
自分でしこりに触れた際の感覚や、時間経過による変化を観察することで、ある程度の目安をつける助けになります。
ただし、これらはあくまで一般的な傾向であり、例外も存在するため注意しましょう。
例えば、ガングリオンでもゼリー状内容物が充満し、骨のように硬いと感じる場合や、悪性腫瘍でも初期は動くように感じるケースもあります。
自己判断で決めつけず、医療機関を受診して画像検査を受けましょう。
画像検査を受ける
ガングリオンか悪性腫瘍かを正確に診断するためには、整形外科などの医療機関で画像検査を受けましょう。
医療機関では、医師による触診(しこりの硬さや動きを確認)の後、より詳しく内部の状態を調べるために画像検査が実施されます。
一般的に行われる主な画像検査は、以下のとおりです。
| 検査方法 | 特徴・目的 | 
|---|---|
| 超音波検査(エコー) | ・ガングリオンの診断に有効な検査 ・しこりの内部が液体か固形物か、大きさや形、血流の有無などを確認 | 
| MRI検査 | ・しこりの内部構造をより詳細に把握できる検査 ・超音波では判断が難しい場合や、悪性腫瘍が強く疑われる場合に用いられる | 
| CT検査 | ・骨との関係や石灰化の有無などを調べるのに適している ・軟部組織の描出はMRIに劣る | 
| レントゲン(単純X線)検査 | ・基本的にガングリオンは映らない ・骨に異常がないか、または石灰化を伴う腫瘍でないかを確認するために行われる | 
これらの画像検査の結果、とくに超音波検査やMRI検査で内部が液体であることが確認できれば、ガングリオンと診断されます。
逆に、内部が固形成分であったり、周囲の組織へ広がっている様子が見られたりする場合は、悪性腫瘍の可能性が疑われます。
ガングリオンと悪性腫瘍の基礎知識|治療法の違い
ガングリオンは基本的に良性の「袋」であり、悪性腫瘍は命に関わる可能性のある細胞の「異常増殖」です。
両者は根本的に性質が異なり、したがって治療法や緊急性も大きく異なります。
以下では、それぞれの定義とどのような治療が行われるのかの違いについて解説していきます。
ガングリオンとは
ガングリオンとは、関節や腱の近くにできる、ゼリー状の液体が詰まった良性の「しこり(嚢胞)」のことです。
関節を包む「関節包」や腱を包む「腱鞘」とつながって発生し、内部には、関節液や腱鞘内の液体が濃縮された、粘り気のあるゼリー状の物質が詰まっています。
多くは手首や手の甲、指の付け根などにできますが、足首や膝など他の関節にできることもあります。
基本的には良性であり、ガングリオン自体が「がん化」することはありません。
痛みなどの症状がない場合も多いですが、神経の近くにできて圧迫されると、痛みやしびれを引き起こすケースも見られます。
悪性腫瘍とは
悪性腫瘍とは、体内の正常な細胞が異常に増殖し続け、周囲の組織を破壊したり、他の臓器に転移したりする性質を持つ「腫瘍」のことを指します。
ガングリオンと見分けが必要となるのは、主に手足の皮下や筋肉内にできる「軟部肉腫(なんぶにくしゅ)」です。
良性の腫瘍(脂肪腫など)とは異なり、無秩序に増殖しながら周囲に染み込むように広がるのが特徴です。
さらに、血液やリンパの流れに乗って、肺などの遠くの臓器に「転移」する可能性もあります。
放置すると命に関わるため、早期に発見し、適切な治療を開始することが求められます。
治療アプローチの違い
ガングリオンの多くが「経過観察」も選択肢となるのに対し、悪性腫瘍は「積極的な治療」が原則となる点に大きな違いがあります。
しこりが見つかった場合の標準的なアプローチは、以下のとおりです。
| 比較項目 | ガングリオン | 悪性腫瘍 | 
|---|---|---|
| 治療の目的 | ・痛みや機能障害、見た目などの症状改善 | ・腫瘍を取り除き、「根治」と「転移の防止」を目指す | 
| 主な治療法 | ・経過観察:症状がなければ様子見も可能 ・穿刺(せんし):注射器で内容物を吸い出す ・手術(摘出):症状が強い場合や再発を繰り返す場合に袋ごと切除 | ・手術:腫瘍と周囲の正常組織を広範囲に切除 ・放射線治療:手術前後で再発防止のために行う ・化学療法(抗がん剤):転移がある場合や手術が難しい場合に用いる | 
| 緊急性 | ・無症状の場合、緊急性は低い | ・緊急性は非常に高く、すぐに医療機関を受診する | 
それぞれの治療方針は、その性質(良性か悪性か)によって根本的に異なります。
上記のように、良性であるガングリオンの治療は、生活の質(QOL)の向上を目指すもので、無症状の場合は経過観察も可能です。
一方、悪性腫瘍の治療は命を守るために行うものであり、早期発見・早期治療が重要となります。
ガングリオンと悪性腫瘍についてよくある質問
本章では、多くの方が抱く「悪性化」の心配や痛みが出た時の対処法など、よくある質問についてお答えします。
しこりを見つけた際に抱きがちな、上記のような不安や疑問を解消し、適切に行動するための知識を整理しておきましょう。
ガングリオンが悪性の場合どうなる?
ガングリオンは良性の嚢胞(のうほう)であり、それ自体が悪性化(がん化)することはありません。
医学的に「ガングリオン」と診断されたものは、中身がゼリー状の液体であり、腫瘍細胞の異常増殖である「がん」とは根本的に異なります。
したがって、ガングリオンが時間経過とともに悪性腫瘍に変化するということは考えにくいです。
「ガングリオンが悪性だったら」という心配は、多くの場合、「ガングリオンだと思っていたしこりが実は最初から悪性腫瘍だった」というケースが考えられます。
両者は発生の原因も性質も全くの別物なので、自己判断せずに画像検査などで正確な診断を受けましょう。
ガングリオンが痛い時の対処法は?
ガングリオンによる痛みがある場合、まずは安静を心がけることが重要です。
周囲の神経圧迫による痛みである可能性が高く、無理に動かすと袋の中の圧力が高まって痛みが強まることもあるため、まずは負担をかけないようにしましょう。
安静にしても痛みが改善しない、または日常生活に支障が出る場合は、医療機関での対処が選択肢となります。
自分でしこりを押し潰そうとするのは、神経や周囲の組織を傷つけるリスクがあるため避けるべきです。
ガングリオンの痛みが続く、あるいは強くなるようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。
ガングリオンと似た症状の病気は?
ガングリオン以外にも、体にしこりを形成する病気はいくつか存在し、中には悪性腫瘍のように緊急を要するものも含まれます。
ガングリオンと間違われやすい、あるいは鑑別(見分けること)が必要な主な病気は、以下のとおりです。
| 病名 | 特徴 | 
|---|---|
| 脂肪腫(しぼうしゅ) | ・皮下にできる柔らかい脂肪の塊 ・ゆっくり大きくなる傾向がある | 
| 軟部肉腫(なんぶにくしゅ) | ・手足の筋肉や脂肪、神経組織などに発生する ・初期は痛みがなく、しこりは硬い ・持続的に大きくなる | 
| アテローム(粉瘤) | ・皮膚の下に袋ができ、垢や皮脂が溜まったもの ・感染すると赤く腫れる | 
| 腱鞘炎(けんしょうえん) | ・腱鞘(腱を包むトンネル)が炎症を起こす病気 ・特定の動作で痛みや腫れが出る | 
しこりができる病気は多岐にわたり、触った感覚や発生場所が似ていることもあります。
自己判断は難しく、中には緊急を要する悪性腫瘍である可能性もあるため、気になるしこりがあれば医療機関を受診しましょう。
ガングリオンと悪性腫瘍を見分けるには画像検査が重要
ガングリオンと悪性腫瘍を見分けるには、セルフチェックも一つの目安ですが、最終的な診断には画像検査が欠かせません。
まずは、それぞれの主な特徴を参考に、セルフチェックしてみましょう。
| 比較項目 | ガングリオン | 悪性腫瘍 | 
|---|---|---|
| 硬さ | ・柔らかいものから骨のように硬いものまでさまざま ・弾力性を感じることが多い | ・石のように硬いことが多い ・弾力性があまりない傾向がある | 
| 動き | ・押すと上下左右に少し動く(可動性がある)ことが多い | ・動きにくい(可動性が乏しい)傾向がある | 
| 大きさ | ・大きくなったり小さくなったりする ・自然に消えることもある | ・基本的に小さくなることはない ・持続的に大きくなり続ける | 
| 痛み | ・痛みがないことが多い ・神経の近くにできると圧迫して痛むこともある | ・初期は痛みがないことが多い ・大きくなると痛みを伴う場合がある | 
医療機関では、超音波検査やMRI検査などの画像検査によって、ガングリオンか悪性腫瘍か診断されます。
悪性かどうか不安を抱えたまま過ごすよりも、まずは医療機関を受診し、正確な状態を把握することが安心への第一歩です。
 
                            監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師
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