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幻肢痛とは?原因・症状・治療法までわかりやすく解説

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公開日: 2025.09.30

事故や病気などで手足を切断したにもかかわらず、「存在しないはずの手や足が痛む」と感じることがあります。

これは幻肢痛(げんしつう)と呼ばれる現象で、突然の激しい痛みやしびれに悩まされ、「なぜ起こるのか」「治るのか」と不安を抱える方もいるのではないでしょうか?

本記事では、幻肢痛の原因・症状・治療法に加え、日常生活でできる工夫についてもわかりやすく解説します。

治療には薬物療法や鏡療法など複数の選択肢があり、それぞれ特徴が異なるため、自分の症状に合わせた方法を取り入れることが大切です。

幻肢痛に悩んでいる方やご家族の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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幻肢痛とは|切断したはずの手や足に痛みを感じる現象

幻肢痛(げんしつう)とは、事故や病気によって手足を切断したにもかかわらず、存在しないはずの手足に痛みを感じる現象です。

国内外の研究では、切断患者の最大約80%が幻肢痛を経験し、そのうち約5〜10%は強い痛みに悩まされると報告されています。
※参照:PubMed「幻肢痛:特徴、原因、治療」

幻肢痛は多くの切断患者が直面する問題ですが、発症の仕組みや症状の現れ方は人によって異なります。

治療に取り組むためには、まず幻肢痛の特徴や原因を正しく理解することが第一歩です。

主な症状・原因については以下で解説していますので、ぜひ参考にしてください

主な症状

幻肢痛の症状の特徴は、切断したはずの手や足に間欠的(断続的)な痛みを感じることです。

痛みの持続時間は数秒から数時間と比較的短いことが多く、発作的に現れては消えるのが典型的なパターンです。

痛みの種類は、以下のように多岐にわたります。

  • ズキズキする痛み
  • 刺すような痛み
  • 電撃痛
  • 灼熱感
  • 拘縮感や動かない感覚
  • ひりひりした感覚

    多くの場合、切断後4日~1週間以内に発症し、時間の経過とともに症状が徐々に軽くなる傾向にあります。

    主な原因

    幻肢痛の原因は一つではなく、末梢神経・中枢神経・心理的要因などが複雑に関与していると考えられています。

    現在も研究が続けられていますが、代表的な要因は以下の通りです。

    分類 内容
    脳と身体感覚の不一致 脳からは「動かそう」という信号が出ても実際の四肢は存在せず、脳の認識と身体感覚のズレが痛みとして現れる
    末梢神経の変化 断端部に神経腫が形成され、そこからの異常信号が幻肢痛を誘発する
    心理的要因

    ・うつ病、不安障害、気分障害など精神的背景を持つ方は発症リスクが高い
    ・外傷や強いストレスも症状を悪化させる要因となる

    切断の背景にある疾患や外傷 血管性疾患(糖尿病性壊疽・動脈硬化)、トラウマ(交通事故・労働災害・戦傷)、がん/悪性腫瘍(腫瘍浸潤や再発予防のための切断)、先天性疾患(奇形や血管異常)など

    参照:PubMed「幻肢痛」

    また米国では糖尿病や動脈硬化といった血管性疾患が主な原因で、四肢切断者が2005年に約160万人、2050年には360万人に増加すると予測されており、日本でも同様の傾向が見込まれます。
    ※参照:J-Stage「タブレット型端末装置(iPad®)を利用した下肢幻肢痛に対する鏡療法」

    ただし、幻肢痛のメカニズムは未だ解明されていない点が多いです。

    だからこそ、専門家に相談した上で総合的な診断や治療法を提示してもらうことが重要です。

    幻肢痛の治療法

    幻肢痛の代表的な治療方法は、以下の4つです。

      それぞれ治療の方針や適している方などが異なります。

      単体の治療で痛みが和らぐ例もありますが、複数を併用して治療を進めることが一般的です。

      ここでは、それぞれの治療法について詳しく解説します。

      薬物療法

      薬物療法とは、抗てんかん薬や抗うつ薬などを服用し、幻肢痛の改善を目指す治療法です。

      現在、単独で確立された治療薬は存在しませんが、複数の薬剤を組み合わせて使用することで効果が期待できるとされています。

      第一選択薬
      • 抗てんかん薬(ガバペンチン/プレガバリン)
      • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン)
      第二選択薬
      • 抗うつ剤(デュロキセチン/ミルタザピン)
      • NMDA受容体拮抗薬(メマンチン/ケタミン)
      • オピオイド系鎮痛薬(モルヒネ/トラマドール)

        ただし、オピオイド系鎮痛薬は副作用や依存・乱用のリスクがあり、医師の判断のもとで慎重に処方されます。

        また、局所療法(特定の部位に限定して行う治療)として、以下のような方法で痛みの緩和を図るケースも少なくありません。

        • カプサイシンクリームの塗布
        • リドカインスプレーの塗布

        薬物ごとに効果や副作用に個人差があるため、主治医と相談しながら調整することが重要です。

        鏡療法

        鏡療法(ミラーセラピー)とは、以下のように鏡を用いて「失われた手足が実際に存在し、動いている」と脳に錯覚させることで、幻肢痛を和らげる治療法です。

        症例※画像引用元:J-Stage「タブレット型端末装置(iPad®)を利用した下肢幻肢痛に対する鏡療法」

        • 【鏡療法(ミラーセラピー)の手順】
        • 身体の正面に鏡を設置する
        • 健常な手足が鏡に映り、切断部位は見えないように調整する
        • 鏡に映った健常肢の像が、あたかも失われた手足であるかのように重なる位置に合わせる
        • 健常肢を動かし、鏡に映る像を集中して観察する

        上記の治療を1回15~30分程度行うのが一般的です。

        鏡を通して健常肢を観察することで、脳は「幻肢が実際に動いている」と錯覚し、脳内での感覚と運動の統合が再構築され、痛みの軽減につながると考えられています。

        また従来の大きな鏡に加えて、以下のようにiPadを活用した新しい形の鏡療法も登場しており、今後さらに応用が広がることが期待されています。

        Ipad

        ※画像引用元:J-Stage「タブレット型端末装置(iPad®)を利用した下肢幻肢痛に対する鏡療法」

        電気刺激療法

        電気刺激療法とは、体内に電流を流し、神経を刺激することで幻肢痛を和らげる治療法です。

        電気刺激療法には、以下のような種類があります。

        • 経皮的電気神経刺激(皮膚に電極を貼り、電流を流す治療法)
        • 反復経頭蓋磁気刺激(磁気で脳を刺激する治療法)
        • 大脳皮質刺激(頭蓋内に電極を埋め込む治療法)

        いずれも「幻肢痛の軽減」が目的とされていますが、切断部位や神経が残っている部分によって電流を流す場所が異なります。

        リハビリテーション

        リハビリテーションで幻肢痛を治療するケースがあります。

        幻肢痛における代表的なリハビリテーションは以下の通りです。

        鏡療法(ミラーセラピー) 鏡を用いて「幻肢を動かしている」と脳を錯覚させる治療法
        義肢や装具の装着 脳が失った四肢を認識し、幻肢痛が和らぐ可能性がある

        また、義肢や装具のサイズが合わないと痛みが悪化する原因となるため、適切なサイズに調整していくなどの取り組みも行われます。

        幻肢痛の痛み方や症状は人によって異なるため、医師と相談しながらリハビリの方針を定めることが大切です。

        幻肢痛と向き合うために大切なこと

        幻肢痛と向き合うためには、以下の2点が大切です。

        医療機関での治療だけでなく、自宅でも可能なセルフケアに取り組むことで、幻肢痛の軽減が期待できます。

        ここでは、それぞれの取り組みについて詳しく解説します。

        ストレスをためない生活習慣を意識する

        ストレスをためない生活習慣を取り入れることで、幻肢痛の軽減が期待できます。

        強いストレスがかかると痛みを過敏に感じやすくなり、症状の改善を妨げる可能性があるのです。

        特に幻肢痛は、痛みによって不安・恐れ・怒りなどの感情が生じ、それがさらなるストレスとなって悪循環に陥りやすいといわれています。

        以下のように日常生活の中でストレスケアを意識することが非常に重要です。

        • 趣味に打ち込み、気分転換を図る
        • のんびりと散歩をして日光を浴びる
        • ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
        • 好きな食べ物やスイーツを適度に楽しむ
        • 規則正しい生活リズムを保つ

        一方で、暴飲暴食や過度の飲酒・喫煙は体調不良や睡眠不足を招き、痛みを悪化させる要因になります。

        日常生活の中で無理のない範囲で、心地よいことを取り入れ、体に負担となる習慣を減らすことを心がけましょう。

        家族や周囲の理解とサポートを受ける

        以下のように家族や周囲の理解やサポートを受けながら日々の生活を送ることで、ストレスの軽減につながり、幻肢痛の改善が期待できます。

        • 幻肢痛を持っていることを理解する
        • 残存している手や足を軽くマッサージする
        • 生活のサポートや補助グッズを導入し、ストレスを軽減する
        • 話相手や相談相手になり、ストレスや不安を和らげる

        まずは、本人がどのようなストレスを抱えているのか、そして幻肢痛がどのような症状なのかを周囲にしっかり伝えることが大切です。

        正しい理解が広がることで、サポートする側もより適切に寄り添うことができ、安心して治療やリハビリに取り組めるようになります。

        自分に合った幻肢痛の治療法を医師と一緒に検討しましょう

        幻肢痛とは、切断したはずの手や足に痛みを感じる現象です。

        治療方法は複数存在し、それぞれ特徴や適した方が異なります。

        効果的に改善を目指したい方は、信頼できる医師と相談した上で、自分に合った治療法を取り入れましょう。

        当院(リペアセルクリニック)では、幹細胞の働きを活かして身体損傷の修復を目指す「再生医療」を専門的に取り扱っており、専門カウンセラーによる電話での無料相談もご提供しています。

        詳しい治療法については、当院(リペアセルクリニック)の公式LINEでも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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        監修者

        岩井 俊賢

        Toshinobu Iwai

        医師

        略歴

        2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

        2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

        2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

        2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

        2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

        2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長