- アキレス腱
アキレス腱が切れる前兆4つ|注意すべき行動や対処法について解説【医師監修】

「運動中にふくらはぎやアキレス腱にピリッとした痛みを感じた」
「朝、歩き始めにかかと周辺がこわばる」
上記のような症状を、軽い筋肉痛や疲労だと思って見過ごしていませんか?
アキレス腱が弱っていることを示すサインの可能性があり、「アキレス腱断裂」につながる前兆かもしれません。
前兆を軽視して無理を続けると、ある日突然、激しい痛みとともにアキレス腱が切れてしまうリスクがあります。
本記事では、アキレス腱が切れる前に現れる前兆から、断裂を防ぐために注意すべき行動を詳しく解説します。
- アキレス腱が切れる前に現れる4つのサイン
- 前兆があるときに絶対に避けるべき行動
- 違和感を感じたときの正しい対処法
万が一、断裂してしまった場合の治療法についても紹介しているので、アキレス腱断裂に不安を感じる方はぜひ参考にしてください。
近年のアキレス腱断裂の治療には、先端医療の一つである「再生医療」が注目されています。
再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて自然治癒力を向上させることで、断裂したアキレス腱の再生・修復を促す医療技術です。
当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の治療法や症例について配信しているため、併せてご参考ください。
目次
アキレス腱が切れる前兆4つ
アキレス腱断裂は、一般的に「パチン」という音とともに激しい痛みが生じる、突然起こる怪我です。
しかし、アキレス腱断裂患者の4%※は前兆と考えられる症状がみられたというデータがあります。
※出典:PubMed
本章では、アキレス腱が切れる前兆について解説します。
上記の前兆を見逃さずに早期に対処することが、深刻な断裂を防ぐための鍵となります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
アキレス腱周辺の痛みや違和感
アキレス腱が切れる前兆として多いのが、アキレス腱やかかと、ふくらはぎをはじめとする足の痛みや違和感です。
これは、アキレス腱に炎症が起きているサインと考えられます。
とくに、以下のようなタイミングで痛みを感じる場合は、注意が必要です。
- 朝起きて、ベッドから下りて踏み出す最初の一歩に痛みが生じる
- 車や椅子から立ち上がるなど、しばらく動かなかった後の動き始めに痛みが生じる
- 運動を始めると少し楽になるが、運動後には痛みが強くなる
上記のような痛みを「そのうち治るだろう」と我慢して無理な運動などを続けると、完全に断裂するリスクが高まります。
アキレス腱周辺の腫れや熱感
アキレス腱の周辺が腫れていたり、触ると熱っぽく感じたりするのは、炎症が起きているサインです。
過度な負担によってアキレス腱に微細な損傷が生じ、体を修復反応として炎症が起こります。
ご自身で簡単にできるセルフチェックのポイントは、以下のとおりです。
- 左右の足のアキレス腱を親指と人差し指で優しくつまんで太さを比べる
- 部分的に硬いコブのような盛り上がりがないかを確認する
- 手の甲で触れてみて、左右で熱感に違いがないかを見る
もし、アキレス腱周辺が明らかに腫れていたり熱っぽかったりする場合は、炎症が悪化している証拠です。
速やかに運動を中止し、患部を冷やすなどの応急処置を行いましょう。
ふくらはぎや足のむくみ
アキレス腱の痛みと同時に、同じ側のふくらはぎや足首にむくみが見られることがあります。
これは、アキレス腱の炎症が周辺の血行を悪化させているサインです。
通常ふくらはぎの筋肉は、血液を心臓へ送り返すポンプの役割を担っています。
しかし、アキレス腱の痛みで歩き方が不自然になると、このポンプ機能がうまく働かなくなり、足に水分が溜まりやすくなります。
とくに、左右の足でむくみ方に差がある場合は、痛みのある足の腱に何らかの異常が起きている可能性が考えられます。
痛みとむくみが同時に現れた際は、軽視せずに注意してください。
かかとを持ち上げる動作が困難
かかとを持ち上げる動作が困難になるのは、アキレス腱の機能が低下している危険なサインです。
アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉の力をかかとに伝え、地面を蹴り出す重要な役割を担っています。
以下のような動作でアキレス腱に痛みが出たり、力が入りにくかったりする場合は注意が必要です。
- つま先立ちの動作
- 階段や坂道を上る動き
- 走ったりジャンプしたりするときに地面を蹴る瞬間
上記の動作に支障が出る場合、アキレス腱の損傷が進んでいる可能性があります。
放置すると、ふとした瞬間に断裂するリスクが高いため、直ちに運動を中止し、整形外科など専門医の診察を受けましょう。
アキレス腱が切れる前兆があるときに注意すべき行動
アキレス腱に前兆となるサインを感じた場合、その後の行動が断裂という深刻なケガを防ぐために重要になります。
腱が弱っている状態で無理をすると、ふとした瞬間に完全断裂につながる可能性があるためです。
特に、以下の表に示す行動はアキレス腱への負担を急激に増大させるため、痛みや違和感があるときは絶対に避けましょう。
注意すべき行動 | 注意すべき理由 |
---|---|
痛みを我慢した運動の継続 | ・無視して運動を続けると腱の微細な損傷が拡大し、断裂のリスクを高める |
急激な負荷がかかる動作 | ・ダッシュやジャンプ、急な方向転換などは、アキレス腱に大きな力が加わるため、断裂の直接的な原因となる |
自己流の強すぎるケア | ・痛む部分を強く揉んだり、無理にストレッチしたりすると炎症を悪化させる可能性がある |
足に合わない靴の着用 | ・クッション性のない靴やかかとが不安定な靴は、歩行時の衝撃により、アキレス腱への負担を増大させる |
前兆を感じたら、まずはアキレス腱を休ませ、負担をかけないように意識することが断裂を防ぐために重要です。
アキレス腱が切れやすくなる原因
アキレス腱は、腱そのものが弱くなる「内的要因」と腱に負担がかかる「外的要因」の2つの原因によって、断裂する可能性があります。
とくに、上記2つの原因は、アキレス腱断裂のリスクを大きく高める要因として知られています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
加齢による柔軟性の低下
アキレス腱断裂が30代から50代の方に多く見られる背景には、加齢によるアキレス腱の柔軟性の低下があります。
年齢を重ねると、アキレス腱を構成するコラーゲン線維が硬くなり、腱全体の柔軟性が失われていきます。
健康でしなやかな腱は強い力に耐えられますが、硬くもろくなった腱は、ささいな衝撃でも断裂しやすくなります。
とくに、以下のような場合に断裂リスクが高まります。
- 普段あまり運動しない人が、急にスポーツを行ったとき
- 学生時代以来など、久しぶりに運動を再開したとき
- 週末だけ激しいスポーツをする「ウィークエンドウォリアー」
若い頃と同じ感覚で動いたときに「アキレス腱がその負荷に耐えられない」というケースも少なくありません。
激しいスポーツによる負荷
アキレス腱断裂の直接的な引き金になるのは、アキレス腱に大きな力がかかる動作です。
ダッシュからの急停止やジャンプからの着地などの瞬間に、アキレス腱には体重の何倍もの負荷がかかります。
以下のような動作を繰り返すスポーツは、断裂リスクが高いといえます。
- テニスやバドミントン:前後のボールに追いつこうと踏み込む動作
- バスケットボールやバレーボール:ジャンプと着地を繰り返す動作
- サッカー:ダッシュやキック、急な方向転換
久しぶりに行うスポーツでは負荷がかかりやすいため、注意しましょう。
アキレス腱が切れる前兆がある場合の対処法
アキレス腱が切れる前兆があるときに、正しく対処できるかどうかでその後の回復に影響します。
完全断裂という深刻なケガを防ぐためにも、それぞれの内容を確認しましょう。
患部への負担を避けて安静にする
アキレス腱に痛みや腫れなどの前兆を感じたときに、まず行うべき対処法は患部を安静に保つことです。
運動は直ちに中止し、アキレス腱に負担のかかる動作を避けましょう。
応急処置としては、スポーツ外傷の基本である「RICE処置」が有効です。
アルファベット | 意味 | 具体的な方法 |
R (Rest) | 安静 | 運動を中止し、体重をかけないようにして休ませる |
I (Ice) | 冷却 | 氷のうなどをタオルで包み、15〜20分程度冷やす |
C (Compression) | 圧迫 | 腫れを防ぐため、弾性包帯などで軽く圧迫する |
E (Elevation) | 挙上 | 患部をクッションなどの上に乗せ、心臓より高く保つ |
RICE処置は炎症や腫れを抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
セルフケアで痛みが引かない場合は、早期に医療機関を受診しましょう。
医療機関を受診する
セルフケアをしても痛みが数日以上続く、または悪化するような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
一度アキレス腱が完全に断裂すると、治療に数ヶ月から1年近くかかることもあります。
早期回復には、完全断裂に至る前に適切な治療を受けることが重要です。
「ただの筋肉痛だろう」「すぐ治るだろう」と軽視せず、専門医による正確な診断を受けましょう。
アキレス腱が切れる前兆に関するよくある質問
アキレス腱が切れる前兆についてよくある質問にお答えします。
これらの疑問を解消し、万が一の際に適切な判断ができるようにしましょう。
アキレス腱が切れたら歩けない?
アキレス腱以外にも足首を動かす筋肉があるため、断裂後も歩けるケースはあります。
しかし、アキレス腱の機能が損なわれることで以下のような特徴が見られます。
アキレス腱が切れた時の特徴
- つま先立ちができない
- 階段の上り下りが困難になる
- 歩く速度が遅くなり、足を引きずる
アキレス腱断裂を放置すると後遺症が生じるリスクが高まるため、歩けるかどうかで重症度を判断せず、断裂が疑われる場合は直ちに整形外科を受診しましょう。
アキレス腱の断裂予防に効果的なマッサージはある?
アキレス腱断裂の予防として、以下のようなマッサージがおすすめです。
アキレス腱の断裂予防に効果的なマッサージ
- 手やフォームローラーを使い、気持ち良いと感じる強さでふくらはぎ全体を優しくほぐす
- アキレス腱を指で優しくつまみ、左右に軽く動かすようにして、周辺組織の滑りを良くする
- テニスボールなどを使い、足の裏をほぐす
アキレス腱周辺のマッサージは、運動前後のケアとして習慣にすると効果的です。
予防のためのケアとして、痛みがない範囲で行いましょう。
アキレス腱が切れる前兆があるときは「安静」が重要
アキレス腱周辺の痛みや腫れ、動かしにくさといったサインを感じたら、まず「安静」にすることが重要です。
痛みを我慢して運動を続けたり、自己流のマッサージを行ったりせず、患部に負担をかけないようにしてください。
完全断裂という最悪の事態を防ぐためには、早期に専門医の診断を受けることが重要です。
アキレス腱が切れる前兆や違和感を感じたら、本記事で紹介した対処法を実践し、医療機関に相談しましょう。
最後に、万が一アキレス腱が断裂してしまった場合の選択肢として「再生医療」を紹介します。
再生医療は、患者さまの細胞や血液を用いて「損傷した組織を再生・修復する力」を活用する治療法で、腱や靭帯の損傷を手術せずに治療できる先端医療です。
当院リペアセルクリニックの公式LINEでは、再生医療の治療法や症例について配信しているため、併せてご参考ください。

監修者
坂本 貞範
Sadanori Sakamoto
医療法人美喜有会 理事長
「できなくなったことを、再びできるように。」
人生100年時代、皆様がより楽しく毎日を過ごせることの
お手伝いができれば幸甚の至りでございます。
略歴
1997年3月関西医科大学 医学部卒
1997年4月医師免許取得
1997年4月大阪市立大学(現大阪公立大学)医学部附属病院 勤務
1998年5月大阪社会医療センター附属病院 勤務
1998年9月大阪府立中河内救命救急センター 勤務
1999年2月国立大阪南病院 勤務
2000年3月野上病院 勤務
2003年3月大野記念病院 勤務
2005年5月さかもとクリニック 開設
2006年12月医療法人美喜有会設立 理事長就任
2019年9月リペアセルクリニック大阪院 開設
2021年5月リペアセルクリニック東京院 開設
2023年12月リペアセルクリニック札幌院 開設