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ES細胞とiPS細胞の違いとは?特徴・メリット・デメリットを比較して解説

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公開日: 2026.07.31

ES細胞とiPS細胞は、どちらも体を構成するさまざまな細胞へ変化できる「多能性幹細胞」です。

両者の最も大きな違いは、ES細胞が胚から作られるのに対し、iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞から作られる点です。

細胞の由来が異なることで、倫理面、免疫拒絶、作製方法、品質管理などにも違いが生じます。

本記事では、ES細胞とiPS細胞の違いやメリット・デメリット、現在の医療での活用状況を比較しながら解説します。

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ES細胞とiPS細胞は「由来」が最も大きな違い

  • ES細胞は発生初期の胚から作られる
  • iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞から作られる
  • どちらも多能性と自己複製能力を持つ

ここでは、ES細胞とiPS細胞の由来や共通する性質について解説します。

ES細胞とiPS細胞の最も大きな違いは、細胞を作るために使用する材料です。

ES細胞は、主に不妊治療で使用されず提供された発生初期の胚から細胞を取り出して作製します。

一方のiPS細胞は、皮膚や血液などから採取した体細胞に特定の因子を導入し、細胞の状態を初期化して作製します。

作り方は異なりますが、どちらも長期間増殖でき、神経細胞や心筋細胞、網膜細胞などに分化できる性質を持っています。
※参照:京都大学iPS細胞研究所「iPS細胞とは?」

ES細胞とiPS細胞の違いを比較

ここでは、ES細胞とiPS細胞の違いを比較したうえで、それぞれの特徴を解説します。

両者の違いは、細胞の由来だけでなく、倫理面や免疫拒絶の可能性、個別作製にかかる期間にも表れます。

ただし、iPS細胞であれば必ず免疫拒絶が起こらないというわけではありません。

研究や治療では、目的、安全性、必要な細胞数などを踏まえて使用する細胞が選ばれます。

項目 ES細胞とiPS細胞の違い
由来 ES細胞:発生初期の胚
iPS細胞:皮膚や血液などの体細胞
作製方法 ES細胞:胚盤胞の内部細胞塊を培養する
iPS細胞:体細胞へ初期化因子を導入する
倫理面 ES細胞:胚を使用するため慎重な倫理的配慮が必要
iPS細胞:胚を使用しないため課題は比較的小さい
免疫拒絶 ES細胞:他人由来となるため起こる可能性がある
iPS細胞:患者様本人の細胞を使えば低減が期待できる
個別作製 ES細胞:既存の細胞株を利用する方法が中心
iPS細胞:患者様ごとの細胞株を作製できるが時間と費用がかかる
腫瘍形成リスク 両者とも未分化細胞が残る場合には腫瘍形成リスクがある
主な用途 ES細胞:基礎研究・創薬・臨床研究
iPS細胞:疾患研究・創薬・臨床研究・再生医療等製品

ES細胞とは

ES細胞は「Embryonic Stem Cell」の略で、日本語では胚性幹細胞と呼ばれます。

一般的には、受精後数日が経過した胚盤胞の内部にある細胞を取り出し、培養して作製します。

ES細胞は高い増殖能力と多能性を持ち、長年にわたって多能性幹細胞研究の基準として利用されてきました。

一方で、作製時に胚を使用するため、提供者からの同意や研究計画の審査など、厳格な手続きが求められます。
※参照:文部科学省「ヒトES細胞研究・生殖細胞作成研究・ヒト胚モデル作成研究」

iPS細胞とは

iPS細胞は「induced Pluripotent Stem Cell」の略で、日本語では人工多能性幹細胞と呼ばれます。

皮膚や血液などの体細胞に初期化因子を導入し、分化する前に近い状態へ戻すことで作製します。

胚を使わずに多能性幹細胞を作製できる点が、iPS細胞の大きな特徴です。

患者様の細胞から病気を再現する研究や薬の候補を調べる創薬研究にも活用されています。
※参照:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「人工多能性幹細胞―iPS細胞医療の研究開発・実用化」

ES細胞のメリット・デメリット

  • 長年の研究で性質が詳しく調べられている
  • 安定した増殖能力と多能性を持つ
  • 胚の使用に関する倫理的課題がある
  • 移植時に免疫拒絶が起こる可能性がある

ここでは、ES細胞を研究や医療へ活用するメリットとデメリットを解説します。

ES細胞のメリットは、長年の研究蓄積があり、性質を詳しく解析した細胞株を共通の材料として使いやすい点です。

増殖能力と分化能力が高いため、細胞の発生過程を調べる研究や、新しい薬を評価する研究にも利用できます。

一方で、胚を使用して作製することから、生命の萌芽をどのように考えるかという倫理的な議論があります。

また、患者様本人とは異なる遺伝的背景を持つ細胞を移植する場合は、免疫拒絶を抑えるための対応が必要になる可能性があります。
※参照:京都大学iPS細胞研究所「iPS細胞とは?」

iPS細胞のメリット・デメリット

  • 皮膚や血液などから作製できる
  • 患者様本人の病気を細胞で再現できる
  • 個別作製には時間と費用がかかる
  • 品質や安全性の厳格な確認が必要

ここでは、iPS細胞を研究や医療へ活用するメリットとデメリットを解説します。

iPS細胞のメリットは、採取しやすい体細胞から作製でき、胚を使用する必要がない点です。

患者様本人の細胞からiPS細胞を作製すれば、その病気の特徴を持つ神経や心筋などを研究室内で作ることも可能です。

ただし、患者様ごとに細胞の作製、分化、品質試験を行う方法は時間と費用がかかるため、実際の開発では健康な提供者由来のiPS細胞を使用する場合もあります。

細胞株によって分化しやすさや遺伝子の状態に違いが生じる可能性もあり、目的の細胞だけを安全に選別する技術が必要です。

患者様本人由来のiPS細胞でも、作製工程や移植する細胞の性質によってリスクは異なるため、免疫拒絶が必ず起こらないとは限りません。

現在の再生医療ではどちらが使われている?

  • iPS細胞は臨床研究から実用化へ進みつつある
  • ES細胞も基礎研究や治験で利用されている
  • 対象疾患や研究目的に応じて使い分けられる

ここでは、ES細胞とiPS細胞が現在の研究や医療でどのように使われているかを解説します。

現在は両方の細胞が活用されており、iPS細胞だけに置き換わったわけではありません。

iPS細胞では、網膜疾患、パーキンソン病、心疾患などを対象とした臨床研究や治験が進められてきました。

2026年には、日本でiPS細胞由来の再生医療等製品に条件及び期限付きの承認が示され、研究から実用化へ進む動きが見られます。
※参照:厚生労働省「iPS細胞製品の承認について」

ただし、対象となる病気や使用できる医療機関は限られており、一般的な治療として幅広く受けられる段階とは異なります。

ES細胞も、肝臓疾患などを対象とした治験や細胞分化の基礎研究で重要な役割を担っています。
※参照:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「先天性尿素サイクル異常症でヒトES細胞を用いた治験を実施」

ES細胞とiPS細胞に共通する課題

  • 目的の細胞へ正確に分化させる技術
  • 未分化細胞による腫瘍形成リスク
  • 遺伝的な安定性と品質管理
  • 大量培養と製造コスト

ここでは、ES細胞とiPS細胞を医療へ応用する際の共通課題を解説します。

両者に共通する重要な課題は、必要な細胞だけを高い純度で作製し、安全性を確認することです。

移植する細胞に未分化な多能性幹細胞が残っていると、体内で増殖して腫瘍を形成する可能性があります。

長期間の培養中に遺伝子や染色体の変化が生じていないか、細菌やウイルスなどが混入していないかも確認しなければなりません。

さらに、多くの患者様へ安定して届けるには、同じ品質の細胞を大量に培養し、保存・輸送する仕組みが必要です。

医療への応用では、投与直後の安全性だけでなく、長期的な経過を継続して調べることも求められます。
※参照:独立行政法人医薬品医療機器総合機構「ヒト細胞加工製品の品質・安全性評価のための考え方」

再生医療で期待される活用分野

  • 神経細胞や網膜細胞を補う細胞移植
  • 心筋や血液細胞を作る再生医療
  • 患者様の病気を再現する疾患研究
  • 薬の効果や副作用を調べる創薬研究

ここでは、ES細胞とiPS細胞の活用が期待されている主な分野を解説します。

多能性幹細胞は、失われた細胞を補う再生医療だけでなく、病気の解明や創薬にも利用されています。

神経領域では、パーキンソン病で失われるドパミン神経細胞などを作製し、患者様へ移植する研究が進められています。

網膜疾患や心疾患では、iPS細胞などから作製した網膜細胞や心筋細胞を移植し、損なわれた機能の回復を目指す研究が行われています。

血液や肝臓、膵臓などの細胞を安定して作製する研究も進められていますが、臓器をそのまま作れる段階とは異なります。

患者様由来のiPS細胞で病気の状態を再現すれば、発症の仕組みを調べたり、複数の薬の候補を細胞で試したりすることも可能です。
※参照:京都大学iPS細胞研究所「iPS細胞とは?」

まとめ|ES細胞とiPS細胞は特徴を生かして使い分けられている

ES細胞とiPS細胞は、どちらも高い増殖能力と多能性を持ちますが、細胞の由来や作製方法が異なります。

ES細胞は胚から作られるため倫理的な配慮が必要であり、iPS細胞は皮膚や血液などの体細胞から作製できる点が特徴です。

一方で、どちらにも分化制御や腫瘍形成、品質管理、大量培養などの課題があります。

現在は一方だけが優れているのではなく、研究目的や対象疾患に合わせて両者が使い分けられています。

なお、リペアセルクリニックで行う自己脂肪由来幹細胞治療は、患者様の脂肪に含まれる体性幹細胞を用いるものであり、ES細胞やiPS細胞を用いる治療とは異なります。

再生医療の種類や自己脂肪由来幹細胞治療について知りたい方は、公式サイトや無料相談をご活用ください。

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監修者

岩井 俊賢

Toshinobu Iwai

医師

略歴

2017年3月京都府立医科大学 医学部医学科卒業

2017年4月社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 初期研修医

2019年4月京都府立医科大学附属病院 整形外科

2020年4月医療法人啓信会 京都きづ川病院 整形外科

2021年4月一般社団法人愛生会 山科病院 整形外科

2024年4月医療法人美喜有会 リペアセルクリニック大阪院 院長