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糖尿病を発症すると皮膚に影響が出ることがあります。多くの糖尿病患者の方が、乾燥やかゆみ、痛みなどの肌のトラブルに悩まされています。 糖尿病患者の方に皮膚の病気が出てしまう原因を解説しながら、予防法についても紹介します。 皮膚に影響がでてしまう原因 糖尿病の患者の方に現れる症状のうち、皮膚や肌に関係するものは次のとおりです。 ・乾燥する ・かゆい ・ちくちくと指すような痛みがある ・手足の感覚がない ・切り傷が治りにくい 血糖値が上がると、皮膚の水分が失われ乾燥肌になりやすくなります。乾燥した皮膚は傷つきやすいので、かゆみが生じたり、痛みが走ったりします。 さらに皮膚の傷から、感染症を引き起こす細菌やウイルスが体内に侵入しやすくなります。 しかも糖尿病患者の方は免疫が落ちているので細菌やウイルスと闘えなくなり、感染症が発症しやすくなるのです。 免疫は外界の攻撃や刺激から皮膚を守る機能を備えています。では、なぜ糖尿病を発症すると免疫が低下してしまうのでしょうか。 免疫の機能を担っているのは白血球です。白血球は、体内に侵入しようとするウイルスや細菌と闘います。糖尿病患者は血流が悪くなり、特に細い血管に血液が届きにくくなります。 血液が届かないということは、血液中の白血球も届かないということです。さらに高血糖になると白血球や免疫機能が低下してしまいます。 その結果、ウイルスや細菌に負けてしまい、感染症を起こしやすくなるのです。また、感染症に起こしてしまうと治療に時間がかかることになります。 こちらも併せてご参照ください 皮膚に影響がでる合併症の種類 糖尿病患者の皮膚のトラブルとして知られているのは次の病気です。 ・陰部、爪、趾間(足の指と指の間)のカンジダ症 ・足の白癬(水虫) ・足底(足の裏)や下腿(膝から足首までの部位)の水疱症 カンジダ症や白癬は真菌という細菌に感染することによって発症します。糖尿病患者の方は真菌を排除する力が弱っているので、常に体を清潔に保つ必要があります。 また糖尿病患者の方は、足底や下腿に「いつの間にか」水泡がでてきていることがあります。水泡が破裂すると、そこがウイルスや細菌の「入口」になり感染症につながってしまいます。 組織を壊疽させる(腐らせる)感染症にかかると、最悪、足を切断することになりかねません。 足の合併症を事前に防ぐ方法 糖尿病患者の方が足のトラブルを回避するには、患者の方ご自身が自分の足を毎日確認することが欠かせません。 足に異変を感じたら、すぐに主治医に相談してください。 足の観察やケアは以下のように行ってください。 ・ちょうどよいサイズの靴を履く(靴で足を傷つけないようにする) ・足を常に清潔に保つ(ウイルスや細菌を常に排除する) ・爪を切るとき深爪をしない(ウイルスや細菌の侵入経路をつくらない) ・やけどに注意する 糖尿病患者の方は感覚に関与する神経が障害されるので、合併症ややけどなどによる異変や痛みを感じにくくなっています。そのため「意識的に」足をチェックする必要があるのです。 まとめ 糖尿病を発症すると免疫力が低下します。免疫は体の「防御壁」の1つですので、糖尿病患者の方は常に無防備にある、といっても過言ではありません。 そのため、患者の方は一般の人より、ウイルスや細菌、感染症、皮膚の異常に敏感になる必要があります。体を清潔に保ったり、こまめに足の観察を行うようにしてください。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
2019.03.16 -
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糖尿病と風邪薬の服用について|内科専門医師が配信 糖尿病の治療中に風邪をひいたら、風邪薬と糖尿病の薬の飲み合わせに注意しなければいけません。 「薬の飲み合わせ」とは複数の薬を飲むことで相互作用が働き、本来の効果が出なかったり、逆に効果が出すぎてしまう現象のことをいい、健康に悪影響を及ぼすこともあります。 風邪の治療のために、糖尿病治療を受けている医療機関以外のクリニックにかかったり、市販の風邪薬を服用するときは、医師や薬剤師に必ず現在使っている糖尿病治療薬の名称を伝えてください。 また、患者の方は自身でも気をつけて飲み合わせに注意する必要があります。 糖尿病で服用している薬を確認 飲み合わせを注意するには、まずは糖尿病の治療で服用している薬を確認しておく必要があります。 日本の医療機関では糖尿病の治療で主に次の7種類の薬を使っています。 ・インスリンの抵抗性を改善する:①ビグアナイド薬、②チアゾリジン薬 ・インスリンの分泌を促進する:③スルフォニル尿素薬、④グリニド薬、⑤DPP-4阻害薬 ・糖の吸収や排泄を調整する:⑥α-グルコシダーゼ阻害薬、⑦SGLT2阻害薬 自分の糖尿病治療薬がどれに該当するのか知っておいてください。 いずれも、飲み合わせで効果が効きすぎたり効果が出なかったりすると血糖値が極端に上昇したり下降するなどをはじめに、健康に害を及ぼしたり、治療に影響が出る可能性があります。 こちらも併せてご参照ください 担当の主治医に確認 糖尿病治療の薬の注意点については、事前に主治医に尋ねておくことが大切です。医師に「別の薬を飲むときに気をつけることを教えてください」といえば、注意点を教えてもらえるはずです。 もし確認をする前に次のような症状が起きてしまい、別の医療機関にかかることになったら、すぐに主治医に薬の注意点を確認してください。 ・嘔吐が止まらない ・下痢が止まらない ・熱が38度以上ある ・食欲がない ・血糖値が350㎎/dl以上ある ・意識の状態がおかしい もし主治医にすぐに連絡が取れない場合は、別の医療機関の医師に、現在使っている糖尿病の薬の情報を伝えてください。そうすれば、飲み合わせの悪い薬をすすめられることを回避できるはずです。 注意が必要な相互作用 風邪をひいたときに特に注意しなければならないのは鎮痛剤です。 総合感冒薬や解熱鎮痛剤のなかに含まれているアスピリンという成分が、糖尿病の薬の血糖を下げる効果を増強させてしまうことがあります。 したがってアスピリンと糖尿病の薬を飲み合わせることで、血糖値が下がりすぎてしまう危険があるのです。 また、咳や痰を止める薬に含まれているメチルエフェドリンや麻黄という成分には、糖代謝を促進させ血糖値を上昇させる効果があります。 つまり、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果が抑制される可能性があるのです。 相互作用の予防方法 風邪薬と糖尿病の薬の「悪い飲み合わせ」や「悪い相互作用」を予防するには、医師や薬剤師の服用指示を守ることが大切です。 医師の指示を忘れないように、メモに書いておくなどの予防策を講じておきましょう。 また、単に「糖尿病の薬」と覚えるのではなく、「血糖値の上昇を抑える薬」「血糖値を下げる薬」「インスリンの抵抗性を改善する薬」「インスリンの分泌を促進する薬」「糖の吸収や排泄を調整する薬」といったように、効果について覚えておきましょう。 効果を覚えておくことで、ほかの薬との相互作用を、よりいっそう気をつけることができます。 薬と同様に漢方薬やサプリメントにも注意が必要 漢方薬やサプリメント(以下、サプリ)にも、糖尿病治療薬との相性が悪いものがあります。 風邪をひいたときに処方される漢方薬に麻黄湯(まおうとう)や葛根湯(かっこんとう)があり、これらには麻黄という成分が含まれています。 さきほど「麻黄には血糖値を上昇させる効果がある」と紹介しましたが、それ以外にも麻黄には血管を収縮させる作用があり血圧が上がってしまうことがあります。 糖尿病患者の方は高血圧を併発している場合も多いので、注意が必要です。 逆に血圧を下げすぎてしまうのがセサミンです。糖尿病患者の方のなかには降圧薬を服用していることも多いですが、降圧薬を服用中にセサミンを飲み合わせると血圧が下がりすぎてしまう危険があります。 DHA(ドコサヘキサエン酸)もサプリでは人気の成分ですが、血糖値を高めてしまう効果が確認されています。 DHAは、血糖値を下げる糖尿病治療薬の効果を弱めてしまうかもしれないです。 「漢方薬やサプリは薬ではない」というのは間違いではないですが、飲み合わせで生じるリスクは薬と同様です。健康のために服用している以上、身体への影響はゼロではないのです。 まとめ 医師は糖尿病治療薬を選択するときに、患者の方の状態や体調や生活環境を詳しく調べます。それは、糖尿病の薬の効果が「出なくても」「出すぎても」健康に悪影響を及ぼすからです。 そのため医師は、患者の方それぞれに合わせて薬の効果を厳格にコントロールしています。 したがって糖尿病の患者の方は、「風邪薬や漢方薬やサプリが、そのコントロールを狂わせることがある」と覚えておいてください。 新しい薬や新しいサプリを飲み始める前に、糖尿病治療の主治医か、かかりつけ薬剤師に相談する「くせ」をつけておいてください。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
2019.03.15 -
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糖尿病を放置すると、生活の質(QOL)を著しく低下させるより重い病気に進行してしまいます。糖尿病は成因によって1型糖尿病と2型糖尿部分類されます。 1型糖尿病はいまだ原因が不明とされていますが、糖尿病の9割を占める2型糖尿病は環境や生活習慣が原因とも言われています。 2型糖尿病であれば、初期のうちに対策に乗り出すことで進行を食い止めることが可能です。 今回は、この2型糖尿病について原因や改善策を解説していきます。「自分は糖尿病かもしれない」と思っている方は、ここで紹介する初期症状を把握し、異変を感じたらすぐに改善・予防策に取り組むようにしてください。 初期の糖尿病の症状 糖尿病の初期の段階では、症状があまり出ないため、病気に気付きにくいという特徴があります。 ただし、高血糖状態が長く続くと次のような症状が出てきます。 ・喉や口の中が乾く ・水分をたくさん摂りたくなる ・尿の回数が増える ・1回の尿量が多くなる ・空腹になりやすい ・体重が急激に減る ・疲れやすい これらの症状が出たとしても、糖尿病の自覚はないかもしれません。しかし、この段階で異変に気付き、治療や対策に乗り出すことが重要です。 ここで放置してしまうと糖尿病が進行してしまい、以下のような症状が現れてきます。 ・手がしびれる ・皮膚にかゆみが生じる ・ものが見づらくなる ・小さな傷でもすぐに化膿する こちらも併せてご参照ください 糖尿病の症状が出る原因 初期症状が起きるメカニズムをみていきましょう。 例えば尿量が増えるのは、腎臓が血糖値を下げようとして尿をたくさん生成するからです。尿が排出することで体内の水分が失われます。 その結果、体は失った水分を補おうとして喉が渇き、水分を多飲するようになります。 尿が増えると体重が減るのは、カロリーが尿で失われるためです。また、糖尿病は細胞のエネルギー吸収を助けるインスリンを減らすので、細胞は痩せ細り、さらなる体重減を引き起こします。 この体重減は健康的なダイエットによるものではありません。さらに、疲労感や眼のかすみといった症状も生じてしまいます。 また糖尿病は神経障害を引き起こしやすく、初期段階では手足がしびれることがあります。しかし、発症理由については明確になっておらず、初期の段階で自覚症状がある人は少ないです。 初期の糖尿病を改善&進行を予防するためにできること 糖尿病の初期症状が現れたら、食生活を改善し、適度な運動に取り組みましょう。「食と運動」は、糖尿病の初期から重度の患者の方まで共通で取り組むべき基本の対策です。 では、糖尿病の改善と進行の予防のために「具体的に何をすべきか」を紹介します。 食事の献立を見直して痩せる 食事による糖尿病対策では、量と質に注目し健康的なダイエットを目指します。 まず量ですが、1日あたりの適正エネルギー量を次の計算式で算出し、それ以上食べないようにします。 ・1日の適正エネルギー量(kcal)=標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg) 標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で算出します。 身体活動量は以下のとおりです。 ・軽労作(デスクワークが多い):25~30(kcal/kg) ・普通の労作(立ち仕事が多い):30~35(kcal/kg) ・重い労作(力仕事が多い):35~(kcal/kg) 例えば、身長170㎝(1.7m)の普通の労作の仕事に就いている人の1日適正エネルギー量は「1,907.4~2,225.3kcal」で、次のように計算します。 ・標準体重=1.7m×1.7m×22=63.58㎏ ・1日の適正エネルギー量=63.58㎏×30~35kcal/kg=1,907.4~2,225.3kcal 次に食事の質について見ていきます。 ポイントは、炭水化物とたんぱく質と脂質のバランスです。理想のバランスは以下のとおりです。 ・炭水化物:1日の適正エネルギー量の50~60% ・たんぱく質:1.0~1.2g×標準体重の数字(例:標準体重60㎏の人なら、60~72g) ・脂質:1日の適正エネルギー量の20~25% 理想の食事は、主食1品、主菜1品、副菜2品です。次のような食材を摂ることをおすすめします。 ・主食:ご飯、パン、めん類など ・主菜:良質なたんぱく質、魚類、大豆製品、卵、肉など ・副菜:野菜、キノコ類、こんにゃく、海藻など ・その他:牛乳、ヨーグルト、果物 しかし、性別、年齢、糖尿病の進行状況、合併症などによって上記の計算が当てはまらない場合があります。 必ず主治医と相談しながら決めてください。 運動して痩せる 糖尿病予防や、初期の糖尿病対策としておすすめしたい運動は、有酸素運動と筋力トレーニングです。この2つの運動に取り組んで、標準体重を目指しましょう。 有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、水泳などがあります。最も手軽なのがウォーキングです。ウォーキングは1回15~30分、1日2回を目指しましょう。 また、運動の時間を確保しづらい場合は、通勤や買い物などの日常の歩行とウォーキングを合わせ、1日1万歩を目標にしてください。 これまで運動習慣がなかった人がいきなり激しい動きをすると体調を崩しかねませんので、必ず柔軟体操などの準備運動をしてから始めるようにしてください。筋力トレーニングは週2~3回取り組むようにしましょう。 ただ、重度の糖尿病の方や高齢の方は負荷が大きい筋力トレーニングをすると血圧の上昇を招き、心臓や血管に悪影響を及ぼすので注意してください。 なお、運動や筋力トレーニングの量やメニューは主治医と相談して決めることをおすすめします。 初期のうちに治療するべき理由 糖尿病は初期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、放置しておくと合併症を引き起こす可能性があります。 糖尿病の合併症には、目の病気、神経の病気、腎臓の病気、血管の病気、心臓の病気、脳の血管の病気などさまざまです。 病名としては、糖尿病網膜症、糖尿病神経障害、糖尿病腎症、足の壊疽、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などがあります。 心筋梗塞や脳梗塞は「死を招く」と言われるほど危険な病気で、死に至らないまでも失明や足の切断といった生活の質(QOL)を著しく落とす事態になりかねません。 これらの合併症は、糖尿病が進行することで発症します。つまり、合併症を起こさないためにも、初期の段階で糖尿病の進行を食い止め、改善に向けて治療する必要があるのです。 まとめ 糖尿病は完治の難しい病気ですが、初期段階で食事療法や運動療法に取り組めば、進行を食い止め正常な人と同様の生活を送ることができます。 初期症状に気がついたら、糖尿病の治療を専門にしている医師を訪ねたり、内科のクリニックを受診してみてください。 早期発見をして、合併症を引き起こす前に生活習慣の改善に取り組みましょう。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 https://africatime.com/topics/7771/
2019.03.15 -
- 糖尿病
食事療法や運動療法を試みても血糖値が下がらない。そんな糖尿病患者の方には、体質や症状に合う薬物治療が必要となります。 こちらでは、2型糖尿病の方に適用される治療薬の詳細情報を紹介していきます。 経口血糖降下薬とは 糖尿病に有効な薬物療法のうち、とくに2型糖尿病の治療で広く使われているのが、経口血糖降下薬です。 食事療法や運動療法による血糖コントロールが難しい場合、病状やそれにともなうコンディション、高血糖状態に合わせて経口血糖降下薬が用いられます。 経口血糖降下薬の特徴は、次の3つに集約されます。 ● インスリンの分泌を増やす ● インスリンの作用を向上させる ● 糖の吸収を助け、排泄を調節する 3つの作用機序により分類された薬を、合併症の有無や病態に応じて使用し、経過をみる方法が一般的です。1剤もしくは2剤以上を併用します。 スルホニル尿素(SU)薬 スルホニル尿素(SU)薬の特徴を簡潔にまとめると、次のとおりです。 ● もっとも古いタイプの経口血糖降下薬:1950年代に登場。これまでに多くの薬剤が販売される。 ● 血糖値の確実な下降に期待:強力なインスリン分泌刺激作用は服用後すぐに効果を発揮 ● まずは少量投与から:効き目が強いため、少量投与であっても低血糖のリスクあり。 薬の作用 インスリンを活発化させて血糖値の上昇を抑制する治療薬です。 有効成分がすい臓のランゲルハンス島に浸透し、そこのβ細胞に直接働きかけてインスリン分泌を促進。基礎分泌量および追加分泌量を増加させることで、血糖を下げていきます。 インスリンへの分泌刺激はしばらく持続し、血糖コントロールを助けます。 主な副作用 血糖値の改善がみられる一方、低血糖に注意する必要があります。食前や、いつもと違う時間に食事をとったりすると、影響を受けやすくなるでしょう。 そのほかにも、腎機能・肝機能が低下した方、高齢者の方は、低血糖への十分な配慮が求められます。 SU薬はインスリン分泌刺激作用がとくに強い薬のため、血糖を下げる力が極めて強力です。服用時は、低血糖になった場合の対処法について熟知し、何かあればすぐに主治医に相談しましょう。 こちらも併せてご参照ください この薬での治療が向いている患者 食事療法・運動療法だけではインスリン分泌量に改善がみられず、空腹時血糖値が高め、かつ肥満でない人に用いられる薬です。 すい臓でインスリンは分泌できるものの、十分な分泌量をキープできないため血糖値の上昇は止められないので、インスリン分泌をサポートする目的で使用されています。 飲み方の注意点 SU薬は、食事療法や運動療法をしっかりこなした状態で服用してこそ効果が持続します。 食事・運動療法ができていない状態で服用を続けていると、食べすぎや運動不足から肥満化が進み、血糖値が上昇してしまいます。 その結果、薬を増量しなければ対応できず、体に負担がかかってしまいます。 食事・運動でコンディションを整えた状態でも、次第にSU薬の効果が薄れるケースもあります。 高血糖状態が続き、薬を長期使用しているとβ細胞の働きが低下してしまい、インスリン分泌の働きが弱くなってしまうのです。 この場合では、他の薬との併用や切り替え、あるいはインスリン療法へ移行するなど柔軟な対応が望まれます。 一般名・商品名一覧 現在7種のスルホニル尿素(SU)薬が販売されています。 種類により、使用する時間・効き目の強さなどが異なります。 患者の方の血糖値やインスリンの働き具合を計測しつつ、薬剤の特性と照らし合わせながら、最適とおもわれる商品を医師が選択します。 速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬) 速攻型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)の特徴は次の3点です。 ● メカニズムはSU薬と酷似:作用メカニズムはSU薬と同じながら、吸収・分解がさらに速い ● 服用は主に食後:服用から約30分後に効果が現れ、約60分後に最大化、約4時間後に消失 ● 副作用は低血糖:肝機能・腎機能障害がある方はとくに注意 薬の作用 インスリンの分泌力が低下している2型糖尿病の方は、血糖を速やかに低下させる力が慢性的に落ちている状態です。 これを改善するには、血糖の上昇にインスリン分泌のスピードを合わせる働きかけが必要となります。速攻型インスリン分泌促進薬は、そのスピードを高め、食後の血糖上昇を抑える効果を持っています。 分泌スピードに重きを置く薬のため、食後のインスリン分泌量の増加はSU薬ほど認められません。 主な副作用 効果の現れがはやい反面、こちらも低血糖を招く可能性があります。毎食直前の服用時間をきちんと守るようにしてください。 同時に、低血糖の症状やその対策について把握しておくことも大切です。対処法としては、ショ糖(砂糖)20gを常に携行する、などがあります。 この薬での治療が向いている患者 インスリン依存がみられず、食事・運動療法といったアプローチでも改善がなかなかみられない、なおかつ食後に高血糖がみられる。 そのような状況の2型糖尿病の方に向いています。すでにSU薬を使って治療を受けている患者さんには不向きの治療薬です。 飲み方の注意点 速攻型インスリン分泌促進薬を使う前提として、食事療法・運動療法がきちんとこなせている状態が求められます。 服用のタイミングは毎食の食前。食後の服用は絶対に避けてください。また、SU薬との併用も禁止です。 はやいタイミングでの服用は低血糖リスクを高めるため、服用時間を必ず守るようにしましょう。 この薬は原則、「SU薬を用いる前に使用する薬」という位置付です。SU薬を使用しても効果がみられない状態は、糖尿病がかなり進行していると予想されます。 その場合は病態とインスリン分泌力に合わせ、別の治療薬が用いられます。 一般名・商品名一覧 現在、3種類の速攻型インスリン分泌促進薬が販売されています。 DPP-4阻害薬 DPP-4阻害薬の主な特徴は以下のとおりです。 ● 低血糖リスクが小さい:単独使用では低血糖の可能性は低い ● 肥満防止に役立つ:血糖コントロールの改善で体重が増加しにくい 薬の作用 血糖値が高いときにインスリンの分泌を促す「インクレチン」と呼ばれるホルモンの働きを助ける治療薬です。 インクレチンには、血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」の分泌を抑制する作用も持ちます。 主な副作用 低血糖、便秘などの副作用に注意してください。とくに、スルホニル尿素(SU)薬の服用経験があるうえでの使用は、低血糖のリスクが高まります。 この薬での治療が向いている患者 DPP-4阻害薬は、単独使用であれば低血糖のリスクを軽減できます。ほかの薬に頼らず、DPP-4阻害薬のみの服用で血糖値をコントロールできる人に向いた薬です。 経口血糖降下薬のなかでも低血糖のリスクは低い薬ですが、肝障害、腎障害を抱えた患者さんは用心してください。 飲み方の注意点 ほかの薬と併用すると、低血糖が起きやすくなるので、なるべく単独で使用がすすめられています。スルホニル尿素(SU)薬と併用、肝障害、腎障害の方はとくに気をつけてください。 一般名・商品名一覧 現在、DPP-4阻害薬は次の9種が市販されています。 ほかの治療薬と同様、患者の方の症状、糖尿病の進行度合いなどをみて、医師が最適な薬を選択します。 ビグアナイド薬 ビグアナイド薬の主な特徴は以下のとおりです。 ● SU薬の後発:SU薬より数年遅れて販売される ● 主に肝臓に作用:肝臓の糖の放出を抑制 ● 低血糖になりにくい:インスリン分泌を刺激しないため、他の薬を併用しない限り低血糖の危険性が低い 薬の作用 ビグアナイド薬は、インスリン抵抗性で過剰になった肝臓の糖新生を抑制する働きを持つ治療薬です。 糖新生とは、肝臓で乳酸やアミノ酸などのブドウ糖以外の物質から糖を産生する過程をいいます。 インスリンはこの糖新生を適度にコントロールする働きがあるのですが、インスリン分泌機能が低下した2型糖尿病の方は、糖新生が慢性的に過剰状態となります。 過剰になった糖新生を抑え、空腹時血糖を下げる目的で、このビグアナイド薬が用いられます。 主な副作用 消化器系統が影響を受けやすく、吐き気や食欲不振、下痢などを起こす場合があります。 また、倦怠感や筋肉痛なども報告されているため、万が一これらの症状が確認されたら必ず主治医に相談してください。 この薬での治療が向いている患者 肥満型で、インスリン抵抗性による高インスリン血症が認められる2型糖尿病との相性がよい薬です。肥満でない方が使用しても血糖コントロールが改善される場合もあります。 飲み方の注意点 服用と同時にアルコールの摂取、そのほかの薬剤およびインスリン療法治療薬との併用は、低血糖リスクを高めます。 まれにですが、血液中に乳酸がたまり、意識障害を起こす「乳酸アシドーシス」を発症することがあります。 また、心臓・肝臓・腎臓・肺に障害がある方や循環器系に障害がある場合の服用は認められていません。 一般名・商品名一覧 現在、ビグアナイド薬として利用できるのは以下の2種類です。 肥満体質でない方も服用できますが、最終的には主治医が判断します。 インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬) インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬)の特徴は以下のとおりです。 ● 血糖値降下作用:インスリンに対する感受性を高め、血糖値を下げる ● 低血糖の可能性は低い:単独使用であれば、低血糖のリスクを軽減できる 薬の作用 インスリン抵抗性改善薬には、インスリン抵抗性の主因である脂肪組織に働きかけ、抵抗物質を減少させる作用があります。 インスリンの分泌力に問題がなくても、肝臓や骨の組織、脂肪組織でのインスリン反応が鈍化していれば、その効き目は弱まり、血糖値の上昇を招く可能性が高まってしまいます。 そのインスリン抵抗性を引き起こす主な原因が肥満のため、インスリン抵抗性の改善では脂肪組織への作用が重要なのです。 主な副作用 まれに肝機能障害を引き起こすことがあります。もともと肝臓に不安のある方は、定期的な肝機能検査が必要です。肝機能障害の重症度によっては、服用が認められません。 本薬を使用すると、体内に水分がたまりやすくなります。そのため、心不全の合併、もしくは過去に心不全を起こしている場合は、インスリン抵抗性改善薬は使用できません。 また、低血糖の可能性は低いものの、浮腫、貧血などの副作用が起こることもありえます。血清LDH、血清CPKの上昇にも注意が必要です。 この薬での治療が向いている患者 肥満タイプで、インスリン抵抗性による高血糖が原因の糖尿病患者の方に有効です。肥満でない方が用いても問題ありません。SU薬との併用でも用いられます。 飲み方の注意点 食事療法で体質改善ができていない状態で服用すると、体重が増加してインスリン抵抗性状態に逆戻りする場合があります。そのため、食事療法も並行してしっかりと行うことが大切です。 一般名・商品名一覧 現在、インスリン抵抗性改善薬は「ビオグリタゾン塩酸塩」のみ販売されています。 肥満タイプでインスリン抵抗性の激しい糖尿病患者さんに有効です。 α-グルコシダーゼ阻害薬 α-グルコシダーゼ阻害薬の特徴は下記のとおりです。 ● 小腸の糖の消化・吸収を遅らせる:α-グルコシダーゼの働きを阻害し、糖質の分解を抑制 ● 体重が増加しにくい:食後の血糖値を抑えるため、肥満防止につながる ● 低血糖になりにくい:単独使用であれば低血糖の心配はなし 薬の作用 α-グルコシダーゼ阻害薬は、小腸でブドウ糖を分解する「α-グルコシダーゼ」という酵素の働きを阻害することで、食後の血糖値の上昇を抑える効果を持ちます。 インスリンには、分解されて血液中に送られたブドウ糖をエネルギーに変え、各組織に送る役割があります。 健康体であればブドウ糖の処理もスムーズですが、インスリン分泌力が低下している糖尿病の方だとブドウ糖の処理が間に合わず、血糖値の上昇を招くことになるのです。 このアンバランスを改善するには、α-グルコシダーゼの働きを阻害し、ブドウ糖の消化吸収を遅らせる必要があります。この作用により、食後の血糖値上昇を防ぐことができるのです。 主な副作用 初期はお腹の張りやおならの増加、下痢など消化器系統の症状に悩まされる場合もあります。 これらの症状は一時的なもので、服用をしばらく続けるうちに改善していくため過度に心配することはありません。 この薬での治療が向いている患者 空腹時血糖値は高くないが食後に血糖が上がってしまう、軽度の2型糖尿病の方に処方されます。中レベルの症状の方に対しては、ほかの薬との併用パターンで治療が試みられます。 飲み方の注意点 食前の服用が大原則です。単独使用では低血糖の可能性は低いのですが、SU薬などほかの薬との併用では血糖値の異常低下が起こりえます。 本薬を使用中に低血糖が起こった場合は、必ずブドウ糖を摂取してください。ただしブドウ糖の分解を抑えているため、低血糖はすぐには改善されません。 一般名・商品名一覧 現在、α-グルコシダーゼ阻害薬は3種の商品が販売されています。 ※上記商品一覧は代表する一部の商品です 軽症の2型糖尿病の方に使用される薬ですが、医師の判断によりほかの薬との併用もあります。 SGLT2阻害薬 SGLT2阻害薬の主な特徴は次のとおりです。 ● 腎臓に作用して血糖を下げる:尿中に糖を排出させることで、血糖を下げる ● 腎臓機能の負担はなし:腎機能が低下している人でも影響はない ● ほかの治療薬への影響は少ない:ほかの薬との併用でなければ低血糖のリスクなし 薬の作用 SGLT2阻害薬は、腎臓内のブドウ糖の吸収を抑えることで、血糖コントロールを是正します。 腎臓には「糸球体」と呼ばれる、原尿を生成する、ろ過装置がありますが、血液中の糖分はここを通らずそのまま尿として排泄されます。 その一方で、体に取り込むための糖は腎臓の尿細管を通り、そこで再度取り込まれ、血液に戻されます。 SGLT2阻害薬は、この尿細管を通るブドウ糖の血中取り込みを防ぎ、尿中に糖を放出して血糖値を下げる作用があるのです。 主な副作用 服用中は性感染症や脱水症状、頻尿などに注意してください。インスリン分泌への働きかけはないため単独使用では低血糖の恐れはありません。 ただし、ほかの薬との併用には注意する必要があります。また、高齢者には上記以外の副作用も考えられますので、医師から説明を受けたうえで服用するようにしてください。 この薬での治療が向いている患者 食事療法・運動療法では十分な血糖値の改善がみられない方に使用されます。肥満傾向の方への服用例も少なくありません。 飲み方の注意点 薬だけに頼るのではなく、医師管理のもとでの食事、適度な運動も治療として取り入れながら改善を目指しましょう。 飲み忘れや決められた時間以外での服用は、効果が弱くなるので注意が必要です。生活上の理由で服用が困難な場合は、医師に相談し、ライフスタイルに合う服薬の方法を提案してもらいましょう。 一般名・商品名一覧 現在、SGLT2阻害薬は6種類の商品が販売されています。 いずれを選ぶにしても、症状や経過をみて医師が判断します。 配合薬 配合薬とは、いくつかの薬を組み合わせた治療薬です。飲む薬の数を減らせるため、服薬が楽になるメリットがあります。 薬の作用 配合されるそれぞれの薬の持つ作用機序を利用して、血糖値の改善を試みます。 具体的な例を挙げれば、「ピオグリタゾン塩酸塩+メトホルミン塩酸塩(メタクト配合錠LD/HD)」があります。ピオグリタゾン塩酸塩はチアゾリジン薬で、インスリン抵抗性の改善効果を持つ治療薬です。 メトホルミン塩酸塩は、ビグアナイド薬で、これは糖新生を抑えて血糖値をコントロールする働きがあります。 主な副作用 配合される薬の副作用に注意が必要です。インスリン分泌に直接作用を及ぼす薬は、低血糖のリスクがあります。 この薬での治療が向いている患者 配合対象の薬と、患者さんの病態、インスリン分泌力をみながら、医師がどの薬との配合が適切か判断します。 肝機能や腎機能に障害を抱える方は、肝臓・腎臓への負担が少ない薬が選ばれるでしょう。 飲み方の注意点 それぞれの薬の特徴、服用時の注意点に合わせて飲むようにしてください。体に合わない、体調不良などの異変を感じた場合は、すみやかに医師に相談しましょう。 一般名・商品名一覧 現在、配合薬は以下の8種の商品が販売されています。 配合薬を選ぶ場合も、患者さんの状態をよく知る主治医が最終的に判断します。 まとめ 今回紹介した経口血糖降下薬を、「インスリンに作用するもの」「インスリン以外に作用するもの」「インスリンにもインスリン以外にも作用するもの」に分類します。
2019.03.11 -
- 糖尿病
糖尿病治療において、投薬は効果的な治療です。しかし、これが原因となって低血糖や体重増加などの副作用が生じることもあります。 こちらでは糖尿病治療薬と副作用について、詳しく紹介していきます。 糖尿病の治療薬の代表的な副作用 2型糖尿病の治療において、血糖値を下げるための薬が用いられることがあります。しかし、それら薬による血糖コントロールによって、副作用が引き起こされないとは言い切れません。 以下では、糖尿病の治療薬から発生するおそれがある、主な副作用をご紹介します。 こちらも併せてご参照ください 糖尿コントロールによる低血糖に注意 糖尿病の薬物療法の際、もっとも起こりやすい副作用は低血糖です。これは、血糖値が正常範囲を下回る状態のことをいいます。 投薬の効果が過剰に反映されることがその原因となりますが、本来はそれを避けるよう薬で血糖コントロールが行われています。 しかし、食事のタイミングや量が異なるなど、普段とは違う行動をした場合、適切な血糖コントロールがなされなくなって副作用につながるのです。 低血糖の症状 低血糖の初期症状には、冷や汗や顔面蒼白、動悸があります。その後、低血糖状態がさらに進行すると、意識障害やけいれんにまで発展することも懸念されます。 なお、これらの症状は高齢になるに連れて起こる頻度が高まります。ですが高齢になると自覚症状が少なく気づきづらいので注意が必要です。 低血糖が起こってしまう原因は? 具体的にどのような行動により低血糖の副作用が起こるのでしょうか?人によってシチュエーションはさまざまですが、よくある原因として食事の量とタイミングが挙げられます。 いつも通りの時間に食事をして、いつも同じ量のエネルギーを必ず摂取できるとは限りません。 体調が悪く食欲がなくなった場合や、忙しくて食事の時間が遅れた場合など、低血糖の副作用が出る可能性があります。 また、空腹の状態で激しい運動を行ったり、運動量が多すぎても同様です。つまり、普段と違う行動・生活を送った場合に、血糖コントロールがうまくいかなくなる可能性が高まります。 そのほか、インスリン注射を不適切な量で行ってしまった場合にも、低血糖の副作用が出る恐れがあります。 低血糖が発現した場合の対処法 どのようなシチュエーションで低血糖が発現するかに応じて、その対処法は変わります。 まずは平常時に症状を感じたとき。意識がはっきりとしているようであれば、ブドウ糖(5〜10g)や砂糖(10〜20g)、もしくは清涼飲料水(150〜200ml)を速やかに服用しましょう。 そして、症状がおさまるまでは安静にしていてください。その後、15〜20分もすれば症状は治まります。 次に、低血糖と自動車運転の関係性について。糖尿病の治療中に低血糖の症状が起き、意識障害を引き起こす場合は運転をしてはいけません。 自己測定を行い自身で管理ができる場合は、免許取得・更新が可能なケースもあります。 低血糖症状を繰り返す人は、軽度の低血糖では自覚症状を感じにくくなる傾向(無自覚性低血糖)にあります。 このため、2014年6月に改正された道路交通法にて、自動車運転中の血糖コントロールが問われるようになったのです。 最後に、低血糖によって意識がなくなってしまった場合。この際は、周囲の助けを借りるしかありません。 そのための事前準備として、まずは自身が低血糖になる可能性があることを家族や周囲に理解しておいてもらいましょう。その対処法についても知っておいてもらうことが大切です。 また、ブドウ糖やブドウ糖を含む清涼飲料水は、常に持ち歩くようにしてください。実際には、飴や角砂糖でも構いません。 取り出しやすいところに入れておき、何かあった場合には周囲の人にも気づいてもらいやすくなるよう工夫しましょう。 なお、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方の場合は、砂糖や飴では効果が薄いです。これは、α-グルコシダーゼ阻害薬には砂糖の吸収を遅らせる作用があるからです。 そのため、持ち運ぶのは必ずブドウ糖、もしくはブドウ糖を含む清涼飲料水にしましょう。 体重増加 糖尿病の投薬治療薬であるSU薬とインスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬)には、一定の条件下にて体重を増加させる副作用が認められています。 SU薬の通常投与においては、体重増加の副作用は起こりません。しかし、過食や運動不足などでエネルギー過剰となり、そこにSU薬が投与されると、血糖値は下がるものの、脂肪細胞がインスリン過剰状態となります。 その結果、脂肪細胞が肥大化し、体重増加につながります。また、体内のインスリン分泌低下が進んだ状態でSU薬を投与すると、追加分泌の増強作用が弱くなります。 これを解決しようとSU薬を増量した場合、空腹感が増す場合があります。その結果、間食などをしてしまい肥満につながるケースも見られます。 インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬)も少量投与では体重増加は起こりません。しかし、大量投与をした場合には小型脂肪細胞が多数作られることが分かっています。 インスリン抵抗性の改善は見込めるものの、新たに小型脂肪細胞がつくられるため、体重が多少増加します。 この現象には、あらたに出現した小型脂肪細胞がエネルギーの過剰負荷によって再度肥大化することと、浮腫によるものとの2種類があると言われています。 食事療法・運動療法 このように、糖尿病の治療薬には少なからず副作用が認められています。これを防ぐには、食事療法や運動療法を適切に実施し、かつ正しい服用量を守ることが大切です。 とくに食事療法や運動療法はすべての治療のベースとなるものです。それを怠ると体重が増えるなどの副作用の原因になりやすいため注意しましょう。 また、少しでも副作用を感じたのであれば、すぐに主治医へ相談しましょう。そのうえで、症状に合わせた治療薬の処方や服用法の指導を受けてください。 糖尿病治療薬の種類と副作用 糖尿病治療にはさまざまな治療薬が用いられます。それぞれに役割が異なるため、症状や進行度に合わせて使い分けられているのです。 以下の表は、糖尿病治療薬を作用別に分類したものです。 ※上記に加え、異なる作用を持つ薬を合わせた配合薬もあります すい臓からのインスリンの分泌を助ける薬の特徴と副作用 スルホニル尿素薬(SU薬) すい臓に散在するランゲルハンス島に働きかけ、インスリン分泌を促します。 服用のタイミングは食前の30分前、もしくは食後です。血糖値を下げる作用がありますが、血中半減期は1.5時間〜33時間、持続時間は6〜60時間と、製品によって幅があります。 代表的な副作用は体重増加です。すでに紹介しているとおり、運動療法と食事療法がしっかり行われていない場合、脂肪細胞の肥大化につながることも考えられます。 また、体内のインスリン分泌が低下している状態での投与は、追加分泌の増強作用を弱めます。これを回避するために投薬量を増やすと、空腹感が増して肥満につながるおそれがあります。 速効型インスリン分泌促進薬 インスリンの分泌速度を早くする効果を持つ薬です。名前のとおり、薬が効きはじめる時間が早いため、食事の10分前に服用します。 なお、効果継続時間もほかの薬に比べて短めとなっていることも特徴です。 代表的な副作用は低血糖です。服用後、食事を取らない状態が続くと低血糖が引き起こされることがあります。 そのほかにも、血糖値を低下させる薬との併用や、肝機能・腎機能に問題を抱えている場合、副作用が出るリスクが高まります。 そのため、処方の際には現在服用中の薬やご自身の体調・症状について、医師に必ず伝えるようにしましょう。 DPP-4阻害薬 血糖値を下げるインスリンの分泌促進と、血糖値上昇に関わるグルカゴンの分泌抑制をするホルモンとして、インクレチンがあります。 糖尿病治療にとても役立つホルモンですが、DPP-4と呼ばれる分解酵素により分解されてしまします。この現象を防ぐのに用いられるのがDPP-4阻害薬です。 代表的な副作用は吐き気、便秘、胃腸障害です。低血糖をもたらす場合もありますが、その可能性は低いです。 ただし、SU薬をはじめとした血糖値を下げる薬と併用した場合、低血糖のリスクが高まるので気をつけましょう。 肝機能や腎機能に障害を持つ方の場合には、服用が禁じられるケースがあります。 GLP-1受容体作用薬 インクレチンにはいくつかの種類があり、GLP-1はその一種です。GLP-1受容体作用薬とは、投薬によって体内のインクレチンを補う目的で使用される治療薬です。 こちらは注射器を用いて投薬します。薬の効果持続時間には製品によって異なりますが、早いものは1.5時間程度、長いものだと100時間以上になります。 代表的な副作用は胃腸障害と低血糖です。ただし、空腹時にはGLP-1が働きませんので、基本的に治療中の低血糖は起こらないと考えられています。 なお、血糖値低下を促す薬と併用した場合には、この限りではありませんのでご注意ください。 インスリンを効きやすくする薬の特徴と副作用 ビグアナイド(BG)薬 インスリン感受性を高めたり、肝臓の過剰なブドウ糖新生を抑えたり、小腸の糖吸収を抑えたりといった効果のある薬です。食後に服用することで、血糖値を低下させる働きが期待できます。 なお、ビグアナイド(BG)薬はあくまでもインスリンを効きやすくする薬なので、低血糖の心配はほぼありません。 ただし、アルコール摂取や血糖値を下げる薬と併用した場合は、低血糖のリスクが高まるので注意が必要です。また、まれに乳酸アシドーシスと呼ばれる意識障害を引き起こす可能性もあります。 インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン薬) インスリン抵抗性物質の数を減らすことで、インスリンの働きを促進する薬です。主にインスリン感受性が弱っている患者さんに対して処方されます。 代表的な副作用は体重増加ですが、医師から指示された服用量を守っていれば、基本的には起こらないと考えられています。 そのほかには、むくみや肝障害といった副作用が起こる可能性があります。 糖の吸収を調整し、食後の高血糖を改善する薬の特徴と副作用 α-グルコシダーゼ阻害薬 小腸で糖質を分解する酵素のひとつに、α-グルコシダーゼがあります。α-グルコシダーゼ阻害薬は、この酵素の働きを阻害することで糖の分解スピードを遅らせ、血糖値の上昇を防ぐ薬です。 インスリン分泌には直接関わらないので、低血糖などの心配は基本的にありません。 ただし、炭水化物の消化が遅くなることで、おなかが張ったり、屁の頻度が増えたり、下痢や便秘になったりといった消化器系に影響を及ぼす場合があります。 また、肝機能障害が報告されたこともあるため、定期的な検査が必要です。 糖の排泄を調整する薬の特徴と副作用 SGL T2阻害薬 腎臓にある糸球体で血液から原尿の中にでた後に、糖は尿細管を通り体内へと再び取り込まれます。 SGL T2阻害薬は、この流れを阻害する薬で、血液中へのブドウ糖の再取り込みを防ぎ、尿に糖を含ませ排出させる働きがあります。 副作用には低血糖や尿路・性器感染、脱水、頻尿、皮膚症状、体重低下などがありますが、比較的新しい薬であるため副作用については未知の部分も少なくありません。 ただし、体重減少の作用のみは、糖尿病患者にとってメリットにもなり得るでしょう。 まとめ 低血糖や体重増加など、糖尿病治療の薬と副作用には切っても切れない関係があります。 しかし、適切な処方と使用法、そして対処法を理解していれば、副作用の発生率は抑えられます。 糖尿病の投薬治療の際には、正しい知識をつけておくようにしましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.11 -
- 糖尿病
インスリン注射で注意したい単位について インスリン注射では、インスリンを正しく取り扱うための単位が設定されています。糖尿病と診断されインスリン注射をすることになった方や糖尿病予備群の方は、インスリンの単位について必ず知っておかなければいけません。 ここでは、インスリンの単位やインスリン専用注射器の使い方、単位間違いによるミスの事例などについて紹介します。 インスリンの投入単位 注射は薬剤の量を正確に守る必要があるため、注射器には薬剤の量を計測するための目盛りが表示されています。通常、注射に使用する薬剤の単位としてはmlが一般的です。 一方、糖尿病治療で血糖値を下げるために使用するインスリンは、さらに少ない単位で取り扱われており、インスリン注射では、1単位が0.01mlと定められています。つまり、10単位が0.1ml、100単位が1mlです。 問題となるのは、1単位の量を誤解してしまうケースです。1単位を10ml、あるいは100mlと誤解したまま投与した場合、実際に投与すべきインスリン量との間には1,000倍、もしくは10,000倍の違いが生じます。 自己注射の場合だけではなく、医療現場でも起きかねないミスといえます。とりわけ、インスリン1単位を1mlと思い込んだまま注射するケースが多く見られます。この誤解を持ったままだとインスリンは適量となりません。 単位換算は注射する前に毎回確認が必要です。インスリンの単位換算を間違ったまま投与すると、副作用としての低血糖もしくは高血糖が引き起こされます。さらに自己注射の場合、その間違いに気づかない可能性があります。 医師には単位換算に関する指導の徹底が求められると同時に患者側も注意しなければなりません。 インスリン専用の注射器を推奨 インスリンの注射について、専用ではない汎用の注射器を使用するとインスリン量を間違える場合があります。例えばツベルクリン用の注射器や、一般的なプラスチック注射器では「ml表示が採用」されています。 対してインスリン専用の注射器には「単位表示が採用」されています。 一般的な注射器の1目盛りの量をインスリン専用注射器の1目盛りと同じだと誤解したまま使用すると、インスリンの過剰投与になってしまいます。過剰投与は深刻な低血糖症状を引き起こすことも考えられ、最悪の場合は死に至ることもあります。 過去には医療現場でも注射器の間違いによって、インスリンを患者に過剰投与してしまう事故が起きました。注射器でインスリンを投与された女性はその約8時間半後に心肺停止の状態で見つかっています。 注意 1目盛りの単位が違う/表示されている文字が違う 一般的な注射器の目盛り 1ml ✕ インスリン専用の注射器の目盛り 1unit 〇 (単位): o.o1ml これは当看護師がインスリン専用注射器の存在を知らなかった、ほかの看護師にインスリンの量を確認してもらわなかった、患者が装着していた心電図モニターのアラームが故障していた、といった悪条件が重なっての事故です。 一般的な注射器とインスリン専用の注射器の違いを把握していればこうしたミスを防げます。医療現場でもインスリン過剰投与事故を回避するための指導が徹底されています。 インスリンを自己注射する場合も必ずインスリン専用の注射器を使用してください。 単位の間違いによる過激投与は注意が必要 上述したとおり、インスリン量の誤認は低血糖・高血糖を引き起こします。過去に起きた事故の例を見ると、インスリン注射による投与量のミスは3つのパターンに分類できることがわかります。 それは単位自体を誤解して覚えているケース、インスリン専用ではない注射器を使用したケース、普段と違うインスリン専用注射器を使用したケースの3つです。 それぞれのケースについて詳しく説明します。 事例①0.1mlを1単位だと勘違いして投与 ある現場では、0.1mlのインスリンを患者に投与するように指示された看護師が誤って0.01mlのインスリンを投与してしまいました。これは担当看護師が0.1mlを1単位だと勘違いしていたために起きた事故です。 インスリンの単位換算では1単位が0.01mlと定められています。0.1mlのインスリンを投与する場合、1単位ではなく10単位のインスリンが必要です。 つまりインスリン専用注射器を使用する場合は、10目盛り分までインスリンを入れる必要があります。 この事例の看護師は0.1mlを1単位と認識していたため、インスリン専用注射器で1目盛り分のインスリンしか投与しませんでした。これにより、患者は高血糖になってしまいました。 この事故は、看護師が正しい単位換算を知っていれば防げたはずです。インスリン単位換算について正しく理解することは、インスリン注射を行ううえでの大前提といえるでしょう。 事例②インスリン4単位投与の際、0.4mlだと思い込みツベルクリン用の注射器で投与 インスリン4単位の投与を指示された看護師が、その10倍である40単位のインスリンを患者に投与してしまう事故が起きました。この看護師は、インスリン専用注射器ではなく、ツベルクリン用の注射器を使用したのです。 さらに、インスリンの4単位を0.4mlと勘違いしていたようです。この事故の最大の原因はインスリン専用注射器ではない注射器を使用した点です。 インスリン専用注射器では目盛りで単位が表示されているため、指標に従い4単位分のインスリンを注入すれば問題ありません。しかし、この事故の担当看護師はmlが目盛りで表示されたツベルクリン用の注射器を使ってしまいました。 また、看護師は「1単位は0.1ml」という間違った単位換算で認識していたため、取り込んだインスリンの量に疑いを持つこともありませんでした。 インスリン専用注射器は目盛り下部に「単位」もしくは「UNITS」という表示があります。一方、一般的な注射器の場合は「ml」の表示があるのみです。 インスリン注射には専用注射器を使用しましょう。また、使用前には必ず表示を確認し、インスリン専用注射器であることを確認してください。 事例③1本30単位の注射器と50単位の注射器を誤って使用し投与 ある医院では30単位のインスリンを使用するために、1本30単位の注射器で上限までインスリンを入れています。しかし、日常的に使用している30単位の注射器と1本50単位の注射器を取り違える間違いが起きました。 その日は50単位の注射器を使い、普段と同じ(30単位の注射器と同じ)感覚でインスリンを上限までとったため、誤って50単位を投与してしまいました。 インスリン注射器のサイズには複数の種類が存在しています。もちろん、それぞれには共通の単位が表示されているため問題なく使用できます。 しかし、複数のサイズの注射器を持っている場合は、誤った使い方をしないよう注意が必要となるでしょう。 「上限まで」「半分の目盛りまで」といった感覚で記憶していると、万が一注射器の取違いが起きたときに間違った量のインスリンを取り込んでしまいます。 投与量が変わらない場合は、毎回同じサイズの注射器を使用するのが安全です。また、インスリンを注射器に取り込んだ際には、感覚ではなく必ず目盛りで量を確認してください。 インスリン注射の打ち方 インスリン注射の打ち方は医師からの指導があることが一般的です。あるいは「インスリン自己注射手技確認のしおり」といった書類が提供されていることもあります。 万全を期するために、インスリン注射の打ち方をおさらいしておきましょう。 1 まず、手と注射部位を洗浄します。アルコール消毒した場合は、アルコールが完全に蒸発するまで待ちます 2 インスリン製剤、注射器を用意する際は間違いがないように確認してください。インスリン製剤は注射の前によく振り、均一に混ぜておきましょう。特に長期間保存していた製剤を使用する場合は固まっていることがあります 3 インスリンを注射器に取り込みます。所定量のインスリンが入っていることを確認しましょう 4 使用する前は必ず空打ちして空気を抜き、インスリンがきちんと出るかどうかを確認してください 5 注射する部位は、お腹や上腕部の外側、ふとももの外側といった部分が一般的ですが、患者の体型によって好ましい部位が違いますので、医師の指示に従い、決められた部位に注射を行ってください。また、注射する位置は毎回2~3cmほどずらして打つようにしましょう 6 注射後は、注射器から針を取り外し、所定の場所に保管してください。また、次回注射をする際は必ず新しい注射針を使用してください また、インスリン注射では、以下のポイントを意識してください。 インスリンは涼しいところで保管 未使用のインスリンは冷蔵庫で保管してください。ただし、凍結する場所では保管できません。使用中のインスリンは室温または涼しい場所で保管します。 注射針はまっすぐ取り付ける 注射針は注射の直前に取り付けます。注入器のゴム部に対して後針が斜めになっていると、注射針が斜めの状態で取り付けられてしまいます。 注射針は注入器に対してまっすぐ取り付けるようにしてください。 注射器は、空打ちを忘れずに 注射前には上述したように空気の混入がないことを確認する必要があります。また、新品の針がなんらかの要因で詰まっていることも考えられます。 針が詰まっている場合、体内に必要量のインスリンが入っていきません。注射の前には、「空打ち」を必ず行ってください。空打ちとは、少量のインスリンを針から出して空気を出し、針の詰まりがないことを確認する作業です。 注射の前は都度空打ちを行うことが推奨されています。 注射部位は体型によって変わる 一般的なインスリン注射の対象部位として二の腕、お腹、太ももなどが挙げられます。注射に最適な部位は体型によって決め方が変わってきますので、医師の指導に従って下さい。 毎回少しずつ注射場所をずらす 同じ場所に何度も注射していると、皮膚の硬化、赤み、むくみといった症状が現れます。また、インスリンの効きが悪くなってしまうことも考えられます。 そのため、指定されている部位の範囲で毎回2~3cm程度、場所をずらして注射してください。 インスリン注射の痛みについて 多くの方がインスリンの自己注射に抵抗感を抱いています。その最たる理由は「注射の痛み」です。採血や予防接種の注射の際に感じた「痛い」というイメージが強く残っているようです。 実際には、インスリン用の注射針は一般的な注射針とは大きく異なります。インスリン用注射針には、一般的な注射針の3分1程度の細さのものが採用されています。 さらに、針先には特殊な加工が施されており、痛みが緩和されています。そのため、痛みについてさほど心配する必要はありません。どの患者の方も治療開始後ほどなくして自己注射に慣れていきます。 不安な方は、病院で実際に注射器や注射針を見せてもらうといいでしょう。もちろん、インスリン注射の方法についてもしっかりとしたガイダンスを受けられます。 なお、インスリン注射では皮下組織にインスリンを送る必要があるため、注射針の長さは体型に応じて選ばれます。一般的な注射針と比較すると、5分の1から10分の1程度の長さです。 このインスリン注射針の長さでは痛みを感じる反応への影響はほとんどないことがわかっています。 それでも痛みが気になる場合は医師に相談してください。 まとめ/インスリン注射で注意すべき単位 インスリンの単位を間違って認識していると、定められたものとはまったく違う量のインスリンを投与してしまうことになり、その結果、高血糖または低血糖の症状が起きてしまいます。 過去にはインスリンの単位間違いで死亡事故が起きているほどです。インスリン注射自体は患者の方自身で行える簡単な措置ですが、インスリンの単位間違いには細心の注意を払いましょう。 自己注射は、仮に投与量が間違っていたとしても、それを指摘してくれる人はいません。医師から指示された服用単位をしっかりと覚えておき、注射の際には専用の注射器を使用しましょう。 それ以外の注射器の使用は単位間違いの原因になります。 また、インスリン注射は大きな痛みを伴いません。医師からの指示に従っていれば、非常に安全な治療です。事前に正しい方法と正しい単位換算を把握し、安全にインスリン注射を行いましょう。 監修:院長 坂本貞範 糖尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
2019.03.08 -
- 糖尿病
スルホニル尿素(SU)薬の効果と注意点 糖尿病治療で用いられる医薬品のひとつ、スルホニル尿素(SU)薬について、その効果や特徴を紹介していきます。使用前に知っておきたい注意点、副作用もまとめていますので、服用の際の参考にしてください。 スルホニル尿素(SU)薬とは? ますはスルホニル尿素(SU)薬の概要として、その効果や特徴、服用時に気をつけるべき副作用について見ていきましょう。 スルホニル尿素(SU)薬の効果・特徴 スルホニル尿素(SU)薬が投与されると、すい臓にあるβ細胞への働きかけによりインスリンの分泌が促され、血糖値が下がります。代表的な効果や特徴には、以下が挙げられます。 経口血糖降下薬の中では最も古い スルホニル尿素(SU)薬の発売は1950年代。経口血糖降下薬の中では最も歴史のあるお薬です。現在も糖尿病治療で広く用いられており、ほかの薬剤と併せて使われることもあります。 発売された時期により「第1世代」「第2世代」「第3世代」に分類されています。 血糖を下げる効果が強い スルホニル尿素(SU)薬の大きな特徴に、血糖値を確実に下げる効果があることが挙げられます。 服用すると短時間で強力にインスリンを分泌させる作用があり、比較的効き目の穏やかなものから強力なものまで、さまざまな種類が用意されています。飲み始めには少量が投与されるのが基本です。 低血糖に特に注意が必要 スルホニル尿素(SU)薬は強力な効果が期待される反面、服用した患者さんは低血糖に注意しなければいけません。 そのため、服用中はブドウ糖を持ち歩くよう、医療機関で指導されています。低血糖になったときの対処法についての知識も合わせて身につけておきましょう。 代表的な副作用 スルホニル尿素(SU)薬をはじめとした糖尿病治療薬では、副作用として低血糖が懸念されます。万が一低血糖の症状がみられたときには、すみやかにブドウ糖を摂取しましょう。 15分程度で症状が回復しないときや、血糖値を検査した結果60mg/dlを下回るときは、再度ブドウ糖を摂取します。それでも回復しない場合には医療機関を受診してください。 <低血糖でみられる主な症状> 〇顔面蒼白 〇冷や汗 〇動機 〇意識障害 〇けいれん また、過食や運動不足が続く状態で薬を服用すると、一時的に血糖値が下がったとしても、脂肪細胞が増え、結果的にインスリン抵抗性の状態に戻ることもあります。 服用時間 スルホニル尿素(SU)薬は食前または食後に服用します。1日1回服用する場合は朝、1日2回服用する場合は朝と夕方の時間帯が適切です。 使用前に知っておきたい注意点 スルホニル尿素(SU)薬を継続して服用していると薬剤の効果が弱まってくることがあります。これを「二次無効」といいます。二次無効は食事療法や運動療法が適切に行われていたとしても生じる可能性があるため常に注意が必要です。 二次無効が見られたら、別の薬剤への切り替えまたは並行して別の薬剤を使用するなどの措置が検討されます。 糖尿病に効果のある薬剤の種類 スルホニル尿素(SU)薬のほかにも糖尿病治療で用いられる薬剤があります。ここでは主な血糖降下薬の種類を紹介していきます。 インスリンの分泌を助ける薬 〇スルホニル尿素(SU)薬…すい臓にあるβ細胞に働きかけることでインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる効果のある薬剤です。効果は数時間続きます。 〇速効型インスリン分泌促進薬…インスリンの分泌を助ける仕組みはスルホニル尿素(SU)薬と同じですが、その効果が続くのは短時間とされています。 〇DPP-4阻害薬…「GLP-1」という、インスリンの分泌を促進するホルモンの働きを高める新しい薬剤です。低血糖を起こしにくいほか体重増加の心配がないことが特徴です。 インスリンの吸収を助ける薬 〇ビグアナイド(BG)薬…糖を作る肝臓の働きを抑えたり、ブドウ糖が筋肉などで消費されることを促したりすることで、血糖値を下げる薬剤です。低血糖や体重増加を起こしにくいといわれています。 〇チアビリジン薬…筋肉や脂肪にインスリンを効きやすくすることで、ブドウ糖の消費を促し、血糖値を下げる働きがあります。低血糖を起こしにくい一方で、体質によってはむくみや体重増加が見られます。 糖の吸収を調整する薬 〇α-グルコシダーゼ阻害薬…小腸でのブドウ糖吸収を遅らせることで食後の急激な血糖値上昇を抑える薬剤です。食前の血糖値はあまり高くないけれど、食後の血糖値が高まりやすい患者さんの治療に用いられます。 糖の排泄を調整する薬 〇SGL T2阻害薬…排尿による糖分の排泄を促し、血糖値を下げる新しい薬剤です。腎臓にある近位尿細管という部位で、ブドウ糖が再吸収されることを抑制します。体重の低下作用も期待されています。 スルホニル尿素(SU)薬の効果と注意点/まとめ スルホニル尿素(SU)薬の効果や副作用など、服用するときに知っておきたい基本知識をまとめました。血糖値を下げる効果が強い薬剤である反面、低血糖を引き起こすことがあるため、その対処法も含めて理解しておきましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.07 -
- 糖尿病
糖尿病を治す方法はある?一度診断されたら一生治らない?|内科専門医師が配信 糖尿病と診断されたら治すことはできるのか、糖尿病とその治療について紹介していきます。糖尿病は自然治癒する病気ではなく、継続的なケアが必要です。 医師の指導のもとで運動療法や食事療法をはじめとした治療を行いながら、健康的な生活を送れるよう取り組んでいきましょう。 糖尿病は「治る」病気なの? 糖尿病は「治る」病気ではありません。継続的に体質改善・生活改善に取り組んでいくことが大切です。 血糖値が正常な値に近づくようコントロールすることで、健康な方と同じような生活を送れる状態を目指すのが糖尿病治療といえます。 まずは糖尿病の種類に応じた治療の基本情報について紹介していきます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病は1型と2型に分類される 糖尿病とは、体内のインスリンの量が不足していたり、インスリンの働きが悪くなったりするために、血糖値が高くなってしまう病気です。 糖尿病は大別して「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類されます。1型と2型はそれぞれ原因が異なるほか、完治についての考え方も異なります。 1型糖尿病は完治の見込みはほぼない 1型糖尿病の原因は、膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が免疫により破壊されてしまうことにあります。 この細胞が破壊されてしまうとインスリンが分泌されなくなってしまうため、完治する見込みはほとんどないと考えられています。 多くの場合では子どもや青年が発症しますが、中高年が発症することもあります。 インスリンが分泌されなくなっている症状に対しては、インスリン注射を行って血糖値を下げていく治療が行われます。 このように免疫反応がおきて細胞が破壊されてしまう原因について、詳しいことはまだ明らかになっていません。 2型糖尿病は適切な治療で回復も見込める 糖尿病患者の9割以上が2型糖尿病に該当するといわれています。 生まれつきインスリンの分泌が不足しているか、あるいはインスリンが作用しにくいことが原因として挙げられ、これに生活習慣などの条件が重なることにより血糖値が上昇してしまうのです。 過食・肥満・運動不足・ストレスなどは、2型糖尿病を発症させやすい生活習慣の一例です。 いずれの原因で起こる2型糖尿病も、適切な治療によって病状を回復させられる見込みがあり、また初期段階であれば進行を食い止められる可能性があります。 高血糖を放置する危険性 高血糖を数年間にわたり放置することは、さまざまな器官に合併症を引き起こすおそれがあります。眼・神経・肝臓などに問題が生じる病気があるので注意が必要です。 糖尿病は自然治癒することはなく、放置し続けていると症状は次第に悪化してしまうものです。できるだけ早期に医療機関を訪れ、治療を開始することが大切です。 高血糖を放置することで引き起こされやすくなる代表的な病気として、以下が挙げられます。 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症は、「糖尿病3大合併症」といわれています。 視力が低下し、さらに重症化すると失明するおそれもある病気です。しかし、初期段階では自覚症状がほとんど見られません。 中期には目のかすみなどが表れ、末期には飛蚊症や視力の低下が生じます。進行するにつれて緑内障や網膜剥離などを併発するリスクもあるため注意が必要です。早めの治療で進行を抑えることができます。 糖尿病神経障害 糖尿病神経障害も「糖尿病3大合併症」のひとつです。神経の働きに障害が起こり、体に痛みやしびれが生じたり、体の感覚がなくなったりする症例が見られます。 このように神経の働きに異常が生じると、ほかの病気に気づきにくいので、知らぬ間に合併症が進行している場合があります。 皮膚の感覚が鈍くなっているためケガをしても気づかずに進行して化膿してしまったり、胸痛のない無痛性心筋梗塞を起こしてしまったりするのがその一例です。 糖尿病腎症 糖尿病腎症も「糖尿病3大合併症」のひとつであり、腎機能が低下する病気です。腎機能が低下し続けると慢性腎不全につながるおそれがあり、悪化すると透析療法を受けることになります。 足がむくんだり、体にだるさが感じられたりするのが症状の一例ですが、進行するまで自覚症状はほとんどありません。 さらに悪化すると、腎機能が低下した結果として体内に毒素がたまっていき、頭痛や吐き気、食欲不振などの尿毒症が生じます。 脳梗塞 脳梗塞は、脳内にある血管が詰まりを起こしてしまう病気です。突然に発症し、日常生活にかかわる後遺症が生じるおそれがあります。 命にかかわる可能性もあるため、自覚症状があれば速やかに医療機関を受診しましょう。放置すると後遺症が悪化することも考えられます。 狭心症 狭心症は、心臓の血管が狭くなり胸部に痛みが生じる病気です。心臓に必要な血液が十分に送り届けられていない状態となり、さらに血管が塞がると心筋梗塞にもつながりかねません。 痛みが続くのは数十秒から数分ですが、重症化すると痛みが長く続くようになります。 心筋梗塞 心筋梗塞は、心筋が壊死して胸部に強い痛みが生じる病気です。しかし、糖尿病にかかっている方の場合は痛みの感覚が鈍くなっているため、症状になかなか気づけない傾向があります。 重症化すると命にかかわる病気であり、日本では「三大死因」としてがんや脳卒中とともにその名を挙げられています。 糖尿病になってしまった場合の治療方法 糖尿病と診断されたときは、具体的にどのような治療方法を行っていくのでしょうか。また、それぞれの治療方法には、どのような効果が期待されているのでしょうか。 ここでは、医療機関で行われている糖尿病の治療について紹介していきます。 まずは食事療法・運動療法・生活改善 糖尿病の治療では、まずは食事療法と運動療法をはじめとした生活習慣の見直しが指導されます。 食事療法とは、食生活をコントロールすることでエネルギー摂取量を適正な範囲内に抑え、同時に栄養バランスを整える措置のことです。 運動療法は、日常生活に運動を習慣化し取り入れることで、適切に血糖を消費して血糖値を下げていくアプローチです。 このほかに、タバコやお酒など生活習慣を見直したり、ストレスを解消したりと、健康的なライフスタイルを維持するための取り組みが行われます。 食事療法のポイント 食事療法は必ず医師や栄養士など専門家の指導のもとで行いましょう。 食事の回数は1日3回、決まった時間に規則正しく指示されたエネルギー量を守って栄養のバランスよく摂取することが大切です。 運動療法のポイント 運動によってかえって体に負担がかかってしまう場合もあるため、自己判断にはリスクが伴います。医師やトレーナーなど専門家の指導のもとで行うことで、高い効果が期待されます。 食事療法・運動療法・生活改善に薬物療法をプラス 食事療法・運動療法・生活改善を継続しても血糖値が下がることがなく回復がみられなかった場合には、さらに薬物療法を追加することになります。 ただし、この場合でも引き続き食事療法・運動療法・生活改善の継続は不可欠です。 また、薬物療法が開始した以降も、体の様子を見ながら薬剤を変更したり、別の薬剤を併用したりと、適切な治療を続けていく必要があります。 糖尿病の予防・改善には肥満の解消が効果的 肥満は糖尿病と深い関係があります。肥満により肝臓に脂肪が溜まってくると、肝臓がインスリンに対して反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が生じてしまうのです。 インスリン抵抗性が生じた結果、膵臓で生成されるインスリンは過剰分泌され、糖質を細胞に取り込みやすくなり、さらに脂肪が全身にたまってきます。 たまった脂肪は膵臓でインスリンを生むβ細胞の機能に悪影響をおよぼし、これによりインスリンが分泌されにくくなった結果、血糖値が上昇してしまうのです。 肥満を解消し体内に蓄積されている脂肪が減ってくると、肝臓でインスリンが作用しやすくなることから、糖尿病の予防や改善が期待されます。 過剰に蓄積された脂肪を減らすためには、食事のコントロールによりカロリー摂取量を抑えること、そして運動によって筋肉を増やすことが必要です。 食事制限のみでダイエットを行うと、筋肉も減少してしまうため代謝が落ちてしまいます。 その結果として消費エネルギー効率が減少し肝臓に脂肪がつきやすくなったり、リバウンドしたりするおそれがあるため、食事制限と運動は併せて行うことを心がけましょう。 肥満は糖尿病のほかに動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中などの病気のリスクも高める原因となるため、ぜひ改善を目指しましょう。 治療の中断は要注意! 糖尿病は完治が難しいといわれる病気ですが、体質改善や生活習慣の見直しを行うことによって、健康的な生活を送れるようになります。 しかしそれは逆にいうと、治療を中断してしまうと次第に症状が悪化し、合併症を引き起こすおそれにもつながるのです。 できるだけ早い段階で治療を始めるとともに、症状が軽いうちから治療を継続することで、健康的な状態を維持することが大切です。 しかし、高血糖は放置していても、ただちに自覚症状が現れるものではないため、油断して治療をやめてしまう方も少なくありません。 糖尿病は自然治癒することがなく、放置すると症状が悪化していく病気であると、正しく認識することがなによりも大切です。 一時的に体質改善や生活改善の効果を感じられたとしても、自己判断で通院や服薬をストップしたり、食事療法や運動療法を止めたりすることがないよう注意してください。 医師の指示のもとで治療を継続し、健康的な生活を維持していきましょう。 まとめ 糖尿病治療では、体質改善や生活改善を継続して行い、健康的な生活を維持することが不可欠です。放置していても自然治癒することはなく、症状がさらに進行してしまいます。 具体的な治療方法には、主に食事療法と運動療法の継続が挙げられます。その際は、医師や専門家の指導のもとで治療を行い、自己判断で中断することのないよう注意してください。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.06 -
- 糖尿病
糖尿病の治療に使う飲み薬の種類は?効果的に治療するための服用方法|内科専門医師が配信 糖尿病の治療では、さまざまな薬が使われています。それぞれの薬にはどのような効果があるのかを正しく知り、治療に取り組みましょう。 ここでは、糖尿病治療において処方される主な薬について紹介します。 糖尿病治療に使用される薬の作用 糖尿病は、膵臓のインスリン分泌が不十分になる、またはインスリンが体内の器官にうまく作用しなくなる病気です。 インスリンが働かなければ血中のブドウ糖が増えすぎてしまい、血糖値が上昇します。高血糖の状態が続くと懸念されるのが、糖尿病合併症です。 腎症や網膜症、神経障害、脳梗塞、心筋梗塞など、さまざまな疾病につながる可能性があります。適切な治療を継続し、糖尿病改善に努めなければいけません。 糖尿病の治療では食事や運動などの生活習慣に気をつけながら、治療薬を用いるのが基本です。糖尿病の診断を受けた際に処方される薬には、主に4つの作用があります。 〇インスリンの分泌を促進 〇インスリンの効果を高める 〇糖の吸収を調節 〇糖の排泄を調節 これら薬の主な作用を理解し、糖尿病治療に生かしましょう。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病治療薬には、いくつかの種類があります。患者の方それぞれの状態によって、処方される薬は違います。 ここでは、薬の働きや種類別に、効果や注意点などをご紹介していきます。 膵臓からのインスリンの分泌を助ける薬 スルホニル尿素薬(su薬) スルホニル尿素薬(su薬)は膵臓のランゲルハンス島に作用し、インスリンを分泌させることで血糖値を下げる薬です。 食前30分前、もしくは食後に服用します。薬を飲んでから効果が出るタイミングについては、商品によってさまざまです。 服用後徐々に効果を発揮し、はやいものだと1.5時間、遅いものだと33時間かけて薬の血中濃度を上昇させていきます。 効果が持続する時間は短いもので6時間、長いもので60時間ほどが目安です。 スルホニル尿素薬を服用するうえで注意したいのは、体重増加です。特に運動習慣がなく、食事内容も改善されていない場合、薬の服用で脂肪細胞が肥大することがあります。 また、スルホニル尿素薬は食事や運動でインスリンの分泌量が改善せず、空腹時血糖値が高いという方に向いています。 スルホニル尿素薬は空腹時だけではなく、食後の追加分泌を増加させる効果もあります。ただし、インスリン分泌の低下が進んだ状態だと追加分泌の効果が得にくくなります。 この状態で食後高血糖の治療のためにスルホニル尿素薬を増量すると空腹時血糖値が下がりすぎ、空腹感が上昇してしまいます。結果、食べる量が増えて肥満につながってしまうのです。 速効型インスリン分泌促進薬 速効型インスリン分泌促進薬は、インスリンが分泌する速度をはやめる働きがあります。食事10分程度前に飲むことで、食後の血糖値上昇を防ぎます。薬が効き始めるまでの時間と、効果持続時間はともに短めです。 ただし、服用後に食事をとらない状態が長く続くと低血糖を引き起こすおそれがあり注意が必要です。 血糖値を下げる薬を併用している場合や、肝機能や腎機能に問題がある場合は、低血糖となるリスクが高まります。すでに服用中の薬がある場合は必ず医師に伝えておきましょう。 DPP-4阻害薬 インクレチンというホルモンには、血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑制する働きがあります。 しかし、インクレチンはDPP-4という酵素によって分解されてしまうため、それを避けるべくDPP-4の効果を抑制する薬がDPP-4阻害薬です。 飲むのは1日1回~2回、薬によっては週1回で、効果は長時間持続します。薬が効き始めるまでの時間は薬剤によって異なり、血中濃度半減期も6時間や24時間などさまざまです。 副作用は吐き気や便秘などの胃腸障害や低血糖です。インクレチンは血糖値が高くなったときにのみ作用するため低血糖の心配はほとんどないともいわれています。 しかし、スルホニル尿素薬など血糖値を下げる薬と一緒に飲んでしまうと、低血糖が起こる可能性があります。また、腎機能や肝機能に障害のある方には、処方されないこともあります。 GLP-1受容体作動薬 食事を摂ると小腸にある一部の細胞が刺激され、消化管ホルモンを分泌します。このなかには膵臓内のβ細胞を刺激、インスリン分泌を増加させるものもあります。 このホルモンをまとめて「インクレチン」と呼んでいます。GLP-1とはインクレチンのひとつで、インスリンの分泌を増やします。 この薬は2型糖尿病患者の方に向いており、初めて投薬を行う方から、投薬を行っていてもHbA1cが目標値に達しない方まで広く使われています。 その反面、インスリンをほとんど生成できない1型糖尿病の患者の方には適しておりません。 GLP-1は分解されやすいため、GLP-1受容体作動薬を投与することで、体内に不足しているGLP-1が補えます。 GLP-1受容体作動薬は注射にて投与する薬で、たいていは患者の方自身が自分で注射を行います。種類によって半減期に差があり、短いものは1.5時間程度、長いものは100時間以上になるものもあります。 そのため、投与の頻度も1日1回のものから週に1回のものまでさまざまです。 主な副作用は胃腸障害や低血糖です。ただ、GLP-1受容体作動薬は空腹時に作用しないため、低血糖になる可能性はそれほど高くありません。 しかし血糖値を下げる薬との併用時は注意が必要です。 インスリンを効きやすくする薬 ビグアナイド(BG)薬 ビグアナイド薬には、インスリンの感受性を高める効果や、肝臓が過剰にブドウ糖を放出するのを防ぐ効果、小腸が糖を吸収するのを抑制する効果などがあります。 服用は食後ですが、1日を通して体の血糖値を下げる働きが期待できます。血中半減期は短いもので1.5時間、長いもので4.7時間ほど。効果はだいたい6時間から14時間ほど続きます。 ビグアナイド薬にはインスリンの分泌を促す作用はないため、低血糖のリスクはそれほど高くありません。 ただし、お酒を飲んだり、そのほかの血糖値降下薬と併用したりすると低血糖の可能性が上がります。 また、稀に乳酸アシドーシスという意識障害が発生することもあります。 インスリン抵抗性改善薬 インスリン抵抗性改善薬は、インスリンへの感受性が弱まっているタイプの糖尿病患者の方に処方されます。 インスリン抵抗性物質の数を減らし、インスリンの効き目をよくすることで血糖値を下げるアプローチが期待されます。 服用のタイミングは食後となり、血中半減期は5時間程度です。5時間を過ぎると徐々に減少へ向かいます。作用時間目安は20時間ほどです。 主な副作用はむくみや体重増加、肝障害などで、低血糖が起きる確率は高くありません。食事のコントロールや適切な運動など、生活習慣の改善が重要になります。 糖の吸収を調整し、食後の高血糖を改善する薬 α-グルコシダーゼ阻害薬 α-グルコシダーゼ阻害薬は、インスリンの分泌にかかわる薬ではなく、食事の消化速度を抑制して血糖値を低下させる薬です。1日3回、食事の直前に服用します。効果が発現するまでの時間や作用時間は短めです。 α-グルコシダーゼとは、小腸にて糖質を分解する酵素のことです。糖質は小腸で分解されてブドウ糖になり、血中に運ばれます。 健康な状態ならすぐにブドウ糖を吸収できますが、糖尿病患者の方の場合では高血糖になってしまいます。α-グルコシダーゼ阻害薬には、糖質を分解するスピードを遅らせることで、血中のブドウ糖を増やしすぎない作用が期待されます。 ただし、炭水化物の消化が遅れるため、腹部のはりやおならの増加など、消化器に何らかの症状が起こる可能性があります。また、肝機能についても注意が必要です。 糖の排泄を調整する薬 SGLT2阻害薬 健康な状態の体から、糖が排泄されることはありません。血中のブドウ糖は腎臓で再吸収され、体内へ戻ります。 SGLT2阻害薬は、腎臓からのブドウ糖再吸収を抑制することでブドウ糖の血中取り込みを防ぎ、あえて尿中に糖を放出し、体外に排泄する薬です。服用は1日1回、朝食の前後どちらかに行います。体の吸収は早めで、1.5時間ほどで半減期になります。 SGLT2阻害薬は新しい薬のため、副作用についてはよくわかっていませんが、尿の回数が増えることによる脱水症状や、泌尿器の感染症などが起こる可能性が考えられます。 体重減少の副作用もありますが、糖尿病患者の方にとってはかえってメリットとなることもあります。 まとめ 糖尿病にはさまざまな症状があり、それに合わせた治療薬が処方されます。インスリンの分泌・感受性にかかわる薬や、糖の吸収・排泄にかかわる薬など、作用するポイントは薬によって異なります。 ご自身が処方されている薬はどういったものなのか、しっかり確認するようにしましょう。特に服用のタイミングや副作用について把握しておくのは大切です。 食生活や運動習慣の改善にも取り組みながら、治療薬と適切に向き合っていきましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.06 -
- 糖尿病
糖尿病の食べ物のとり方|血糖値を下げる食べ方や調理方法|内科専門医師が配信 食生活の改善は、糖尿病治療の基本となる大切な行動です。それぞれの食品と血糖値には密接な関係があるため、それを理解したうえで健全な食生活を心がけましょう。 こちらでは、糖尿病治療中の食べ物の選び方や食べ方について紹介していきます。 血糖値を上げやすい食品は? 糖尿病の治療中は、血糖値をなるべく一定値に保つように注意しなければなりません。 そこで注目すべきは食事です。血糖値を上昇させる要因はいくつかありますが、中でも食事はその影響が大きく表れます。 とくに甘いものや単純糖質を含む食べ物などは、血糖値を急激に上昇させてしまう要因となります。以下は、血糖値を上げやすい食品の代表例です。 〇主食にあたるもの(ご飯、パン、麺類) 〇餅 〇芋類(ジャガイモやサツマイモなど) 〇とうもろこし 〇栗 〇豆類 ※大豆を除く 〇コーンフレーク 〇お菓子類(ケーキ、まんじゅう、スナック菓子、クッキー、せんべいなど) 〇ジュース 糖尿病治療中に「これを食べてはいけない」といった食事制限は原則ありません。ただし、上記のような食品を口にする場合は頻度・量を調整することが大切です。 糖質の摂り過ぎにつながる要注意な食事のとり方 糖質を摂りすぎないためには、食品を選ぶことだけでなく、食事のとり方にも気を配りましょう。糖尿病治療中における食事のとり方の注意点について紹介してきます。 主食だけの食事が多い 食事は栄養を補充するものであり、満足感を得るためだけに取るわけではありません。 しかし、なかには「とりあえずお米を食べておけば大丈夫」と考える人もいるでしょう。うどんのみ、そばのみ、ラーメンのみ、という食べ方も同様です。 しかし前項のリストでも取り上げたように、主食には多くの糖質が含まれています。そのため、主食に偏った食事では糖質過多となる傾向があり、高血糖の原因になりかねません。 主食だけでなく、主菜・副菜がそろった献立を心がけましょう。 間食が多い 糖尿病治療中であっても間食自体は構いません。しかし、何を食べるのかには注意が必要です。 多量の糖質が含まれる甘いお菓子やジュースを取りすぎると、高血糖の原因になるほか、1日に摂取すべきカロリーを超えてしまう可能性も考えられます。 また、間食はあくまでも次の食事までの“つなぎ”です。量やタイミングについても考慮しなければいけません。とくにタイミングは重要です。 不規則ではなく、決まった時間に間食を取るようにしてください。 <間食で特に控えたほうが良いもの> 〇甘味料(はちみつ含む) 〇お菓子(和洋問わず) 〇せんべい・おかき 〇カップラーメン 〇菓子パン でんぷん質の多い食品をよく好んで食べる 見落としがちなのが芋類やかぼちゃ、トウモロコシ、栗といった食品です。これらは大量のでんぷん質を含んでいます。 実はこの“でんぷん”も糖質源のひとつとなるため、取りすぎには注意しなければいけません。ちなみに、スナック菓子の主な原料も小麦やとうもろこし、ジャガイモです。 <でんぷん質の多い食品> 〇イモ類 〇かぼちゃ 〇とうもろこし 〇栗 このように、すべてが「糖質 = 甘いもの」というわけではありません。知らず知らずのうちに大量の糖質を摂取していた、ということを避けるためにも、食品に含まれる栄養について理解しておきましょう。 糖尿病食を調理するポイント 糖尿病食を調理する際には、いくつかのポイントを抑えておくことが大切です。食事療法の効果を高めるためにも、以下の点を覚えておきましょう。 まずはすぐにでも実行できる、簡単なことから始めてください。 食物繊維を多めに摂る 野菜や海藻、きのこなどの食品には、多くの食物繊維が含まれています。食物繊維には消化吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。 便秘の改善にも効果があるとされており、糖尿病治療中に積極的に摂りたい成分のひとつです。 また食物繊維には、お腹を膨らませる作用があり、さらに消化までの時間も長くかかるため、空腹を感じるまでの時間を延ばし、間食を防ぐことにもつながります。 なお、一日に摂取しておきたい食物繊維の量の目安は男性で20g、女性で18gです。 また、食物繊維には水溶性と不溶性があり、それらをバランスよく摂ることもポイントのひとつ。 例えば便秘の改善であれば、水溶性は便を柔らかくする働き、不溶性には便のカサを大きくする働きがあり、それぞれをバランスよく摂取することで便秘改善効果が促されるというわけです。 以下に、代表的な食物繊維含有量の多い食品をまとめます。 ◆水溶性 〇リンゴ 〇キャベツ 〇大根 〇こんぶ 〇わかめ 〇こんにゃく ◆不溶性 〇穀類 〇ごぼう 〇きくいも 〇よもぎ 〇しそ 〇エリンギ 肉類の余分な脂肪は取り除く 牛肉や豚肉の赤身の摂取は、糖尿病の発症リスクを高めるという研究があります。とはいえ、すべての肉類を食べてはいけないわけではありません。 理想的な肉類としては、鶏の胸肉やささみが挙げられます。また、牛・豚・鶏の肩肉、ヒレ肉も問題ありません。 さらに調理方法を考えることもポイントです。蒸す・茹でる・煮るといった調理は、肉の余分な脂を取り除くことに適しています。 また、焼く場合は網を使うのもポイントです。糖尿病治療中では魚の積極的な摂取が推奨されますが、このような工夫をすれば決められたエネルギー範囲で肉類を取り入れられ献立の幅も広がります。 植物油で調理をする 調理で油を使う際は、サラダ油やオリーブオイルといった植物性油の利用がおすすめです。これらに含まれる油は不飽和性脂肪酸です。 これには血中のLDLコレステロールを上げづらくし、中性脂肪を下げる働きがあります。 一方、赤身肉やラード、バターの脂肪には、動脈硬化を促進するLDLコレステロールを増やしてしまう飽和脂肪酸が含まれています。 飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることで、健康上の大きな恩恵が受けられたというハーバード公衆衛生大学院の研究もあるほどです。 食塩の量を減らす 食塩の摂取量が多くなると、腎臓への負担だけでなく、動脈硬化の悪化につながるともいわれています。 そのため、減塩は高血圧予防に効果的です。厚生労働省で推奨されている一日の摂取量は男性で8g未満、女性で7g未満です。 ただし、合併症や高血圧がある場合は1日6g未満を目指してください。 しかし、減塩によって食事が味気なくなってしまうのは避けたいです。そこで、以下のような工夫をしてみてください。 〇昆布・かつおの出汁を取って料理に生かす 〇香辛料や酸味、香味野菜で味にアクセントをつける 〇醤油やつゆは小皿にとって、つけながら食べるようにする 〇汁物を作る際は具を多め、汁を少なめにする 糖尿病食事療法のための食品交換表を活用する 糖尿病の治療には、日本糖尿病学会の食品交換表が定本として用いられています。 ここには、食品がⅠ~Ⅳ群1~6表と調味料に分類されており、食品の栄養エネルギー80lcalを1単位として示しています。表1~6の分類は以下の通りです。 ○表1:穀物、いも、まめ(大豆を除く)、一部の野菜 ○表2:くだもの ○表3:魚介、肉、卵、チーズ、大豆とその製品 ○表4:牛乳と乳製品 ○表5:油脂、多脂性食品 ○表6:野菜、海藻、きのこ、こんにゃく この表が「交換表」と呼ばれているのは、同じ表分類の食品であれば、同じ単位数で取り替えてもいいという考え方でできているからです。 たとえば魚介と肉は表3に入っているので、単位毎に日替わりで食べてもいい、といった考え方です。糖尿病治療中の献立を決める際は、ぜひ活用しましょう。 血糖値を上げにくくする食べ方 食べ方ひとつでも、血糖値には大きな影響を及ぼします。以下では、血糖値を上げにくくする食べ方について紹介していきます。 よく噛んで早食いはしない 早食いをすると、早くインスリンを分泌しようとする膵臓に負担がかかり、血糖値が上がりやすくなります。 こうした症状を避けるためには、口に入れた食品をよく噛んでゆっくり食べることが大切です。また、ゆっくりと食べることは過食を避けることにもつながります。 満腹中枢が働くまでの時間は、食べ始めてから約15分後とされています。最低でも、一度の食事が15分以上になるよう心がけましょう。 1日3食、規則正しく食べ間食は控える 食事は規則性が大切です。朝・昼・晩の3回を、同じ時刻で食べられるよう生活を見直しましょう。 なお、朝と昼を一緒にする“まとめ食い”は厳禁。回数を一定にするのと同じように、食事の量も均等にするのが大切です。なお、間食も原則は避けるようにしてください。 栄養バランスの良い食事量にする 食事の質にも気を遣いましょう。大切なのは、さまざまな食品をまんべんなく食べることです。 そのため、丼物や麺類などの単品料理は避け、主食・主菜・副菜がそろった食事を心がけましょう。 また、ご自身の食事量を把握するために、食品の計量を習慣にすることもおすすめです。 適正なエネルギー量の食事を摂る 人それぞれに、一日に必要となるエネルギー量は異なります。基本的には、主治医から指示を受けた量を守るようにしてください。 なお、一般的なエネルギー量の目安は以下の計算式で求められます。 エネルギー摂取量(kcal)= 身体活動量 ×標準体重(身長m×身長m×22) なお、上記の身体活動量については以下を目安にしましょう。 〇軽労作:25〜30kcal/kg標準体重 〇普通の労作:30〜35 kcal/kg標準体重 〇重い労作:35〜kcal/kg標準体重 まとめ 食生活の改善は糖尿病治療において、基本となる大切な行動です。今回紹介した内容を踏まえて、適切な食生活を習慣づけるようにしてください。 監修:院長 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください
2019.03.06 -
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糖尿病になった場合の食事の注意点|内科専門医師が配信 糖尿病治療中の食事には、症状の悪化を防ぎ、治療効果を減少させないためのポイントがあります。こちらではそれら食事における注意点を紹介します。 食事制限や喫煙・アルコール、間食についても併せて解説していきます。 糖尿病になったら食べてはいけないものはある? 「糖尿病になったら、好きなものが食べられなくなる」こんなイメージをお持ちの方もいることでしょう。 確かに、脂っこい、こってりしたものを毎日大量に食べ続ける、といったことはできません。しかし、その食事自体は完全に禁止されているわけでもありません。 糖尿病の方に対して行われる食事療法とは、いわば健康のための食事法。特別な制限があるわけではなく、1日あたりに摂取するエネルギーを最適な値に調整するとともに、そのうえでバランスのとれた栄養摂取となるよう、さまざまな食品をまんべんなく食べようというコンセプトのもとに設計されています。 糖尿病になったから始めるというものではなく、健康な人も注意すべき内容です。 それを踏まえたうえで、食事に関する注意点を見てみましょう。 血糖値を上げやすい食品には注意 食品のなかには「血糖値を上げやすい食品」があります。その代表的なものが糖質、つまりご飯やパン、麺といった主食類や、ケーキなど単純糖質を含む甘いものです。 糖質が多く含まれた食品を取ることは、血糖値の急な変化の原因となります。日常的に口にする食べ物のなかでも、糖質が高いものについては量を把握・管理することが大切です。 糖尿病予防には糖質に注意を なお、糖質を控えることは、それだけで糖尿病予防にもつながります。 もちろん、極端な糖質制限はおすすめできませんが、普段食べている食品にどれくらいの糖分が含まれており、一日にどれくらい摂取したかを把握しておくことは、糖尿病予防につながります。かつ、ダイエットや中性脂肪値・血圧の改善も期待されます。 糖尿病の栄養指導|食事療法のポイント|内科専門医師が配信 糖尿病予防・糖尿病治療の食事療法で注意したいこと 糖尿病の食事療法では、食事の内容だけではなく「食べ方」にも注意が必要です。 前項は“何を食べるか”についての概要となりましたが、ここからは、“どうやって食べるか”という部分について、詳しく見ていきましょう。 食事は規則正しい時間に食べること まずは大原則として、三食を決まった時間、均等な量で食べることが大切です。間食などは避け、規則正しい食生活を送りましょう。 また、朝食と昼食を一回で済ませるなど、まとめ食いも避けてください。ただでさえ弱っている膵臓に、さらなる負担をかける結果となってしまいます。 一回の食事に時間をかける 早食いも、消化器官に負担を与える原因のひとつです。ゆっくり時間をかけて、よく噛むようにすることが大切です。 だ液によって食べ物が溶かされると、消化効率がよくなります。なお、咀嚼(そしゃく)をしっかり行うことで満腹感もアップするので、食べ過ぎ防止にもつながります。 自分に必要なエネルギー分を摂る 糖尿病の食事療法がはじまったら、医師から指示エネルギー量が伝えられます。これは患者さんごとに決められた一日の摂取カロリーのことです。 食事のメニューを考える際は、指示されたエネルギーの量を超えないように注意しながら、献立を組み立てていきましょう。 なお、エネルギー量だけではなく、栄養バランスがまんべんなく取れているかも必ずチェックしてください。 腹八分目を心掛ける 一回の食事量は腹八分目が適量です。満腹になるほど食べることは、医師の指示エネルギーを超える可能性が高まります。 少し我慢をするくらいのほうが血糖値も上がりにくくなり、各食事のバランスも取りやすくなります。 逆に、あまりに量が少なすぎるといった状況も避けるようにしてください。結局空腹を感じてしまい、間食などをしてしまっては元も子もありません。 糖尿病治療中に外食をする場合のメニューを選ぶポイント 糖尿病治療中は、基本的に自宅で栄養バランスを考えた食事を3食、規則正しく取ることが大切です。 しかし、食事時間を外で迎えたり、付き合いでレストランに入ったりといったケースもあるでしょう。 外食はカロリーの高いメニューが多く、栄養も偏りがちです。その際は、できる限り以下のポイントに注意しながらメニューを選びましょう。 うどんのみ、ラーメンのみ、そばのみ、パンのみは控え定食を メニュー次第ではありますが、単品料理は使われている食品数が少なく、どうしても栄養が偏りがちになります。 また、単品メニューでボリュームを増やすために炭水化物が多めな傾向にあります。そのため、定食など複数の食品を一気に取れるメニューがおすすめです。 肉より魚 血中の中性脂肪やコレステロール値を調整する働きがあるといわれる不飽和脂肪酸。これは肉料理よりも魚料理に多く含まれる傾向にあります。 そのため、外食ではできる限り魚料理を選びましょう。 洋食・中華より和食 洋食や中華は、メニューにもよりますが全体的に多量の油を使った調理法が多い傾向にあります。 一方、和食は茹でる・蒸すといった調理法が多く、食材も野菜や魚が中心なので外食時に積極的に選びたいメニューです。 糖尿病治療中のタバコ・アルコールは? 食事と合わせて、糖尿病治療中に気をつけたいのがタバコとアルコールです。喫煙については糖尿病悪化の大きな因子のひとつになるので禁煙をしましょう。 また、アルコールは少量であれば問題ありませんが、飲み方や頻度に注意が必要です。 禁煙しましょう タバコは百害あって一利なしとも言われますが、糖尿病中の喫煙はさらに大きなリスクを招く可能性があります。 喫煙はインスリンの感受性を低下させることがわかっています。この状態ではインスリンの抵抗性が高くなり、筋肉や肝臓が血中のブドウ糖を取り込みにくくなります。 その結果、血中のブドウ糖が減らないので、血糖値が下がりにくくなってしまいます。 また、糖尿病の患者さんが喫煙をした場合は、総死亡や血管死亡のリスクが高まるということも分かっています。 同時に、禁煙によってこれらのリスクが大幅に低下するという報告もあるので、タバコはできるだけ早くやめましょう。 飲酒は主治医と相談して毎日飲まないようにしましょう 「酒は百薬の長」という言葉があるとおり、少量のアルコールには食欲の増進やストレス解消といった健康に良い効果があります。これは糖尿病の場合でも違いはありません。 しかし、お酒の食欲増進効果によってついつい食べ過ぎてしまうと、結果として指示エネルギーを超過してしまう可能性があります。 アルコール自体にも多量のカロリーが含まれているので、やはりエネルギー過多になりやすいのです。 また、インスリン注射による治療をされている方の場合、十分に食事を摂っていない状態で飲酒をすると、低血糖が起こる可能性が高くなるというリスクもあります。 このように、糖尿病の方にとっての飲酒は少なくないリスクを含んでいます。 お酒を飲まれる方は、先に主治医と相談をし、どれくらいのペース・量であれば飲んでいいのかを聞いておきましょう。その上で、指示に従った飲酒をしてください。 間食はとってもいいの? 3食の内容に制限がかかると、合間に何か食べたくなってしまいがちです。間食を取ることから生じる悪影響などはあるのでしょうか? こちらも併せてご参照ください 間食を取るなら午後3時頃、時間を決めて 糖尿病治療中は3食を規則正しく取ることが大切です。ただし、間食がすべて禁止となるわけではありません。 大切なのは“1日あたりのエネルギー摂取量を最適な値に調整する”こと。 そして間食をする時間帯に配慮することです。高血糖状態での就寝につながるため、夕食後は特に控えるべき時間帯となります。 どうしても間食をやめられない場合は、おやつの時間を午後3時頃といったように決めておきましょう。 間食ではスナック菓子を避け牛乳や果物を どのような間食を取るのかも注意が必要です。 ジュース類や砂糖入りコーヒー・紅茶、ケーキ、和菓子、せんべい、おかき、カップ麺、菓子パンといった食べ物には多くの糖質が含まれているので避けてください。果物や牛乳などは糖質が少ないのでおすすめです。 間食は主治医と相談しましょう 間食の適切な量については、人それぞれにて異なります。そのため、まずは主治医に相談をしてください。 相談の際には、どのような間食なら取っていいのかなども含め、詳しく説明してもらいましょう。 まとめ 糖尿病中の食事はそこまで不自由を感じるものではありません。こちらで紹介した考え方を踏まえ、健康的で規則正しい食生活を送りましょう。 暴飲暴食はできませんが、厳しい食事制限などもありませんので、基本的には適量であれば好きなものを食べられます。 治療効果を促進するためにも、ぜひ今回紹介したポイントを心がけてください。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.05 -
- 糖尿病
糖尿病の食事療法のポイント|内科専門医師が配信 糖尿病治療において、食事療法は柱ともいえるとても重要な取り組みです。こちらでは食事療法の概要や効果を高めるためのポイントについて紹介していきます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病治療に食事療法が必要な理由 糖尿病治療は大別すると3つの種類に分かれます。広く知られている薬物療法のほか、運動療法と食事療法がありますが、なかでも大前提として取り組まなくてはならないのが食事療法です。 そもそも糖尿病とは、なんらかの理由でインスリンの作用が低下することで、食事から摂取するブドウ糖を体内にうまく取り込めなくなる症状です。 そのため、ブドウ糖摂取量を制限するべく、食事療法が用いられます。 また、いくら適切な薬物療法を受けたとしても、日々の食事療法がおろそかになっていれば、薬の効き目などに悪影響が出ることも考えられます。 このように、食事療法は糖尿病治療における土台となるものなのです。 食事療法を効果的にするコツ 糖尿病治療において非常に大切な食事療法。効果的に行うためには、毎日のちょっとした心がけが重要です。 1日3食、規則正しくゆっくりよく噛んで食べる まずは朝・昼・夜と規則正しい食事を取ることを心がけてください。朝食と昼食をまとめて取るといったことは避け、均等な量に調整することがポイントです。 また、間食や夜食なども基本的には避けるようにしましょう。とくに深夜帯や就寝直前の食事は食事療法の効果を半減させてしまうので、十分に注意してください。 そのうえで食べ方にも気を配ると良いでしょう。早食いはせず、しっかりと咀嚼(そしゃく)することで、糖質の吸収がゆるやかになり、かつ満腹感も得られます。 1日30品目以上を目標に栄養バランスの取れた食事をする 「糖尿病になると厳しい食事制限がある」一般的にはそのようなイメージを持たれていると思いますが、食事療法においてNGとなる食材はほとんどありません。 それよりも重要なのは、一度の食事で取るエネルギー量を、体型や生活習慣に応じた範囲内に収めること。そして、タンパク質・脂質・糖質の3大要素に加え、ミネラルやビタミンなどの栄養素をまんべんなく取ることです。 上記を踏まえ、具体的なメニューを考えてみましょう。ポイントは、1日に30品目以上の食品を偏りなく取れるかどうかです。 自分に合った適正なエネルギー量を知り食べ過ぎないようにする 食事療法では、適正なエネルギー量の範囲内に食事をコントロールすることが大切です。しかし、人によって基準となるエネルギー量は異なります。 基本的には医師の指示に従うことが最善となりますが、目安としての一日のエネルギー量を求める計算式を紹介します。 エネルギー摂取量(kcal)= 身体活動量(kcal/kg)×標準体重(kg) 〇デスクワークなどの職業:25~30kcal/kg標準体重なお、上記でいう標準体重とは、身長(メートル単位)を2乗し、そこに22を掛けた数字から求められます。また、身体活動量の目安は以下となります。 〇立ち仕事が多い職業:30~35kcal/kg標準体重 〇力仕事が多い職業:35~kcal/kg標準体重 食品交換表を活用する 医師から伝えられる指示エネルギー量を献立に反映させるには、食品交換表の活用がおすすめです。 これは、炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン・ミネラルなどの栄養を主に含んだ食品を分類した表のことです。 糖尿病食は健康によい!糖尿病の予防にも 食品交換表や献立例を見直してみると、食事療法に導入される糖尿病食は、普通の食事とそこまで異なるものではありません。 むしろ、さまざまな食品をバランスよく摂取しようというコンセプトから考えられているものだといえます。 自分に必要な一日のエネルギー量を理解し、さまざまな栄養素を過不足なく取るようにしましょう。そのための工夫を食品交換表と照らし合わせながら考えることが大切です。 この取り組みは現在糖尿病を患っている方はもちろん、すべての人が今後の健康生活を維持するためにも効果的です。 糖尿病の予防にもつながるので、ぜひ実践するようにしてください。 糖尿病の食事療法や予防食におすすめの調理方法・食べ方のポイント 次に、食事療法中の調理法におけるポイントも見ていきましょう。日々のメニューを考えるうえでの参考にしてください。 増やしたい調理方法は「ゆでる」「蒸す」 肉類の調理では、できるだけ脂肪を取り除ける方法を選ぶようにしましょう。具体的には、ゆでる、蒸すといった調理法が効果的です。 また、焼く際には網を利用すると良いでしょう。火を通しながら余分な脂を落とすことができます。 一方、揚げ物や炒め物は調理自体に油が必要となるため、必然的にカロリーも高くなりがちです。糖尿病の食事療法や予防食には適切とはいえません。 多くとりたいメイン食材はやはり野菜 献立を考える際、メインの食材として取り入れたいものは野菜です。食物繊維を十分に摂取できるうえ、低カロリーかつ空腹感を満たしてくれます。 また、腸からの炭水化物の吸収をゆるやかにする作用があるため、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。 なお、食物繊維を取るのであれば、海藻や麦ごはん、キノコ類もおすすめです。「野菜>魚>鶏肉>豚肉>牛肉」の順で優先度を付けるとよいでしょう。 外食はなるべく和食を選ぶ 外食時には、できるだけ和食のお店を選ぶよう心がけましょう。洋食は肉やバター、生クリームなどが多く使われる傾向にあります。 エネルギー量が多いだけでなく、脂肪過多となって栄養バランスも崩れやすくなってしまうので、できるだけ控えるべきでしょう。 砂糖は使わず使いたい場合は人工甘味料を使用する 砂糖はカロリーの高い調味料であるため、できる限りその使用量を減らしたいところ。とはいえ、甘さは料理に欠かせない要素でもあり、完全に断つことは現実的ではありません。 この場合は、血糖値上昇に寄与しない人工甘味料を用いることがおすすめです。ただし、人工甘味料の長期的な摂取は、健康にどのような影響を与えるのか明らかでないところもあります。 多量の人工甘味料を継続的に使用する、といったことは避けるようにしましょう。 味付けは調味料や香辛料・ハーブなどを使用する 塩分の過剰摂取は高血圧につながるとされています。醤油や味噌も含め、できるだけ利用を控えるよう心がけてください。 しかし、それだけではどうしても味気なくなってしまいますので、香辛料やハーブ、レモン、ゆずなどを食事に取り入れてみるとよいでしょう。 また、バターやマーガリン、ドレッシングは油分が多く、動脈硬化のリスクが高まる可能性もあります。できる限り不飽和脂肪酸を多く含む植物油を使うようにしてください。 主菜・副菜のバランスをとる 献立を考える際には、ついつい麺・米などの主食や肉や魚などの主菜が多くなり、野菜を多く使った副菜などが少なくなりがちです。 しかし、食事療法中は栄養バランスが大切となるため、野菜などの副菜の量や品数を増やすように心がけてください。その結果、一日30品目も達成しやすくなります。 糖尿病の食事療法中に注意したい日常生活の習慣 最後に、食事療法中の生活についても見直しを行いましょう。食事療法の効果を高めるためには、日常生活をどう過ごすのかの観点も大切です。 規則正しい生活を心掛ける バランスの良い食事を取るためには、規則正しい生活が大前提となります。朝起きたら朝食を食べ、昼食、夕食も決まった時間に取るようにし、早めの就寝を心がけましょう。 運動の習慣を身につける 有酸素運動を行い筋肉への血流が増えてくると、ブドウ糖が細胞へ多く取り込まれます。その結果、インスリンの作用効率も高まります。 また、筋力トレーニングによって筋肉量を増やすことも、インスリンの働きを促します。インスリンの抵抗性が改善された結果、血糖値が下がりやすい体質へと改善されるのです。 禁煙する 喫煙はインスリンの感受性を低下させます。この状態では、筋肉や肝臓が血液中のブドウ糖を取り込む作用が低下するため、血糖値が下がりにくくなる弊害を生みます。 また、糖尿病罹患中の喫煙は、総死亡や血管死亡のリスクを高めることも知られており、禁煙によってそのリスクが低下することも報告されています。 アルコールは飲まない アルコールはそれ自体が高カロリーであり、肥満の原因になります。それだけでなく、低血糖の危険性を高め、インスリン抵抗性にも影響をおよぼすこともあります。 加えて、大量摂取は高血圧にもつながることが多くの研究からわかっています。高血圧と糖尿病が合併すると心筋梗塞や脳卒中を発症させやすくしたり、糖尿病合併症の症状を悪化させるともいわれています。 このように、糖尿病治療中の患者さんにとってアルコールは多くの危険性をはらんでいます。 まとめ 食事療法は糖尿病治療のベースとなるものです。医師の指示に従い健康的な食生活を送ることは、薬物療法も含めた糖尿病治療全般に好影響を与えてくれます。 いつ、なにを、どのように食べるのか。食生活の見直しをあらゆる角度から考えてみてください。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.03 -
- 糖尿病
ビグアナイド薬|糖尿病治療の経口血糖降下薬の特徴 糖尿病の治療薬、ビグアナイド薬は肝臓に作用し血糖値を下げるお薬です。単独で服用する場合は副作用としての低血糖リスクが少ないという特徴をはじめ、その働きや服用時の注意点について紹介していきます。 糖尿病と診断された方や、これから糖尿病の治療を始める方は、ぜひ参考にしてください。 ビグアナイド薬とは? ビグアナイド薬は肝臓に作用することで血糖値を下げる働きがあります。使用されるビグアナイド薬には「メトホルミン」と「ブホルミン」の2種類があり、日本国内では1961年の発売開始以来、現在でも糖尿病治療に広く使われています。 ビグアナイドの特徴・働き ビグアナイド薬は、主に2型糖尿病などのインスリン非依存型糖尿病の患者さんに投与されており、服用することで肝臓に作用し糖新生を抑える働きがあります。 なお、糖尿病は、その原因によって1型、2型などに分類され、病態によってインスリン依存型、インスリン非依存型に分類します。以前は2型糖尿病もインスリン非依存型糖尿病と呼ばれていました。 通常、肝臓でブドウ糖が作られて血液中に送られますが、ブドウ糖が作られるまでには分解と糖新生という過程を経ています。このうちの糖新生とは、乳酸やアミノ酸などの糖以外の物質からブドウ糖が作られることを指します。 インスリンが通常通りに働いていれば、糖新生で作られるブドウ糖の総量は調整されますが、糖尿病によってインスリンの分泌が不足、またはインスリンの働きが悪くなってしまっていると、過剰な糖新生が行われてしまいます。 ビグアナイド薬には過剰な糖新生を抑えることにより空腹時血糖値を下げる働きがあります。糖尿病のお薬のなかには、服用することで低血糖が心配されるものもありますが、ビグアナイド薬は単独で服用する場合には比較的低血糖のリスクが少ないというメリットがあります。 また、ビグアナイド薬は肝臓に作用するほかにも血糖値を下げる働きがあることも特徴です。例えば腸からブドウ糖が吸収されることを抑えたり、筋肉のインスリン感受性を改善することでブドウ糖の取り込みを増やしたりといった血糖値を下げる作用があります。 また、食欲を抑える効果も期待されています。 ビグアナイド薬剤の種類 ビグアナイド薬には一般名「メトホルミン」と「ブホルミン」という2種類の薬剤があります。ここでは、それぞれの特徴を紹介していきます。 メトホルミン塩酸塩 メトホルミン塩酸塩の商品名の一例には「メトグルコ」「グリコラン」「メトホルミン」などがあります。主に2型糖尿病の患者さんの治療に用いられるお薬です。 糖尿病の治療において、すでに食事療法と運動療法を行っている方で効果が不十分な場合に処方されます。メトホルミンを服用して以降も患者さんは引き続き食事療法と運動療法を継続する必要があります。 ブホルミン塩酸塩 ブホルミン塩酸塩の商品名の一例には「ジベトス」「ジベトンS」などがあります。主に2型糖尿病などのインスリン非依存型糖尿病の患者さんの治療に用いられるお薬です。 糖尿病の治療薬であるスルホニル尿素(SU)薬で十分な効果が得られなかった場合や、副作用が強いために服用できない場合などに用いられています。 ビグアナイドでの治療が向いている人 ビグアナイド薬による治療が向いているのは肥満傾向にある患者さんです。ほかの糖尿病の治療薬であるスルホニル尿素(SU)薬は副作用として体重増加が起こることがあります。 それに対してビグアナイド薬は体重増加が起こりにくいことから、肥満傾向にある患者さんの治療に使われているのです。一方、肥満傾向のない患者さんに対しても血糖値を下げる効果があります。 ビグアナイド服薬の注意点 ビグアナイド薬は肝臓に作用して糖新生を抑えるお薬であるため、服用によってインスリンの分泌量自体が増えるものではありません。医師の指示のもと、服用後も治療の基本となる食事療法と運動療法を続けていきましょう。 ビグアナイド薬の服用時はアルコールの摂取に注意してください。アルコールの過剰摂取によって、「乳酸アシドーシス」を引き起こすおそれがあるため、普段からお酒を大量に飲む方には投与できません。 乳酸アシドーシスとは、血液中に乳酸が過剰に増えてしまう状態を指します。吐き気や腹痛や低血圧などの症状が見られ、重篤な場合には意識を失うおそれもあります。 た、腎機能障害や肝機能障害のある患者さんは、ビグアナイド薬を服用できないことがあります。そのほかの理由で投与できないこともあるため、必ず主治医の指示を守って服用するとともに、不安な点は医師に相談してください。 ビグアナイド薬を使用しても血糖コントロールがうまくいかない場合 糖尿病の治療では血糖コントロールが欠かせません。血糖コントロールとは血糖値を健康的な値に保つことを指します。上手に血糖コントロールをすることは、糖尿病の患者さんが健康な方と同じように生活を送ることにつながり、ひいては健康寿命を伸ばすことにもつながります。 ビグアナイド薬を服用しても血糖コントロールがうまくいかないと感じたら、まずはライフスタイルの見直しから始めてください。そもそもビグアナイド薬は、食事療法や運動療法がきちんと行われているうえで、それでも効果が不十分であると判断されたときに処方されるお薬です。 糖尿病の治療は、あくまで食事療法と運動療法が基本であり、これに加えて薬物療法が行われます。食事療法では、毎日の食事での適正なエネルギー量を守るとともに、食事から摂取できる栄養バランスを整えていきます。 ご飯をよく噛んでゆっくりと食べることや、朝昼夕食を毎日同じ時間に取ること、腹八分目までに抑えること、就寝前の食事を控えることなどが食事療法のコツです。 医師や栄養士などの専門家の指導のもとで食生活を改善していきましょう。運動療法では、有酸素運動と筋力トレーニングをバランスよく組み合わせて、適度に体を動かす習慣をつけていきます。 有酸素運動は、筋肉の血流を増やしブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなることで、血糖値を下げる効果が期待されています。また、筋力トレーニングによって筋肉を増やすと、インスリン抵抗性の改善につながります。 運動療法は継続することで効果が出るため、欠かさずに行いましょう。医師に指示された通りのタイミングでビグアナイド薬を服用し、食事療法や運動療法も実施できている場合でも血糖値コントロールが上手くいかない場合は、ほかの原因が考えられます。 複数の医薬品との飲み合わせや、ほかの病気などが原因として疑われる場合は、あらためて医師に相談してください。 ビグアナイド薬一覧 <ビグアナイド薬の商品名> ・メトグルコ 大日本住友製薬から発売されています。一般名はメトホルミン塩酸塩です。規格には250mgと500mgがあります。 ・グリコラン 日本新薬株式会社から発売されています。一般名はメトホルミン塩酸塩です。規格には250mgがあります。 ・メタクト 武田テバ薬品株式会社から発売されています。一般名はメトホルミン塩酸塩で、ピオグリタゾン塩酸塩が配合されています。規格には500mg(15mg)と500mg(30mg)があります。 ・エクメット ノバルティスファーマ株式会社から発売されています。一般名はメトホルミン塩酸塩で、ビルダグリプチンが配合されています。規格には250mg(50mg)と500mg(50mg)があります。 ・ジベトス 日医工株式会社から発売されています。一般名はブホルミン塩酸塩です。規格には50mgがあります。 まとめ・ビグアナイド薬|糖尿病治療の経口血糖降下薬の特徴 ビグアナイド薬は、肝臓の糖新生を抑制することで血糖値を下げるお薬です。糖尿病の治療では、食事療法や運動療法と併せて用いられます。2型糖尿病やインスリン非依存型糖尿病の患者さんに適した治療薬であり、インスリンの分泌量を増やすことがなく、低血糖になるリスクが少ないことが特徴です。 健康寿命をできるだけ伸ばせるよう、薬物療法を上手く取り入れながらライフスタイルの見直しを行いましょう。以上、ビグアナイド薬|糖尿病治療の経口血糖降下薬の特徴について説明させて頂きました。参考になれば幸いです 監修:院長 坂本貞範 ▼糖尿病の他の治療薬はこちら
2019.03.02