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肘をぶつけてから長く痛みが治まらない!考えられる原因とは 肘の関節は、脂肪や筋肉で覆われているわけではないため、ぶつけると痛みを感じやすいですね。 衝撃にもよりますが骨折などが起こっている場合もあります。小児の特徴的な骨折である「上腕骨顆上(じょうわんこつかじょう)骨折」や、中には肘の先端をぶつけることによっておこる「肘頭(ちゅうとう)骨折」などの可能性も考えられます。 これらの場合、骨折であれば固定が必要ですが、筋肉が痛みの原因である場合は運動療法などが有効となります。 そこで今回は、「肘をぶつけて、曲げると痛い」「肘をぶつけてから ずっと痛い」といった場合、どのような症状が考えられるのかご紹介していきます。 肘をぶつけて痛みが発生しやすい箇所 肘をぶつけることが多いのは、肘の背面に位置している「尺骨の肘頭」という部分です。 後ろ向きに転倒したときや、肩関節の伸展動作によって打撲することが考えられます。肘頭は、筋肉や脂肪で覆われていることが少ないため、打撲症状や骨折が起こりやすい部位です。 また、上腕骨下端にある外側上顆や内側上顆もぶつけやすい部位です。 外側上顆も内側上顆も、骨が少し外側に出っ張っているため、皮膚の上からでも容易に触わることが出来るくらい体表に近くなっています。転倒などでもぶつけることが多々あります。 痛みが出るのは、筋肉か骨に異常が出ているサイン 肘をぶつけて、曲げると痛い場合は、「筋肉に異常が出ているケース」も、「骨折など器質的な異常が出ているケース」もどちらも考えられます。 肘を曲げるための筋肉は、主に上腕二頭筋や上腕筋といった筋肉で、これらの筋肉に炎症や打撲があれば肘を曲げたときに痛みが出るでしょう。しかし、肘の伸展に作用する筋肉である、上腕三頭筋などに異常が起きている場合でも痛みが出ます。 肘を曲げることによって上腕三頭筋が強制的に伸張される形になるので、筋損傷があって緊張が強い場合には痛みが出るでしょう。骨で異常が出ている場合は、肘頭の骨折や上腕三頭筋付着部での炎症が考えられます。 肘頭は上腕三頭筋の停止部でもあるので、肘を曲げることで骨片が無理に引き離されます。それが痛みを発生させる原因になるのです。 肘を曲げると痛い!考えられる病態とは? 肘をぶつけて曲げると痛い場合、「筋肉が原因」なのか「骨が原因なのか」を見極める必要があります。発生機序や症状から、考えられる病態をご紹介していきます。 肘頭骨折 肘頭は尺骨の近位端部に位置する部位で、肘関節の大部分を構成しています。体表に近い部分まで骨が出ているので、ぶつけることで骨折が起こることは十分考えられます。 肘を曲げると痛いのはもちろん、場合によっては肘の動作がかなり制限されます。伸ばす動作も曲げる動作もどちらもできにくくなるので、生活に支障が出るでしょう。 もし肘をぶつけた後に肘頭部で強い痛みがある場合は、まず安静にして肘を動かさないようにしてから、整形外科を受診しましょう。 治療方法 肘頭の骨折では、保存療法と手術のどちらも考えられます。保存療法の場合はまず硬性材料によって1カ月以上の固定が必要です。ただ、肘頭骨折は固定が難しい骨折でもあり、偽関節を作りやすい部位でもあります。 固定には細心の注意を払い、安静を守ります。骨癒合した後は、少しずつ肘の可動域を広げていくための後療、罨法、手技療法などが有効です。運動療法なども少しずつ取り入れ、肘の可動域を最大にしていきます。 手術の場合はプレートなどで骨片を固定します。当然ですが、保存療法よりもしっかり骨片がくっつくので、早期にリハビリを開始できるというメリットがあります。 上腕骨顆上骨折 小児に多い骨折で、高齢者でも起こすことがあります。上腕骨の下端部の、内側上顆や外側上顆よりも近位部で折れてしまう骨折です。高いところから落ちて手をついたり、後ろ向きに転倒して手をついたりすることで発生します。 上腕骨顆上骨折を起こすと、明らかに変形を認め、運動がかなり制限されます。曲げようとすると激痛になるので、筋肉の損傷とは全く違う痛み方をするでしょう。 治療方法 上腕骨顆上骨折は多くの場合変形が大きく、手術を選択されることもあります。折れた骨片が深く入り込んで短縮してしまうことがあるので、牽引しながら治療することもあります。 手術をせずに保存療法で改善することも可能ですが、ギプスなどでしっかり固定されるのでしばらくは肘を使えなくなります。骨折が起きた時に神経や血管を圧迫したり、固定の仕方によって圧迫してしまったり、二次的な症状が起こることもあります。 小児の上腕骨顆上骨折では、変形したまま骨癒合することで内反肘という特徴的な後遺症を残すこともあります。 テニス肘(テニスエルボー) テニス肘は、特に肘の外側で痛みが起こる症状です。テニスのバックハンドの際に負担がかかる部分で、テニスプレーヤーが肘の外側で痛みを訴えることが多いことからテニス肘と呼ばれています。 外側上顆炎や肘外側の側副靭帯の損傷を、総称しているのです。肘をぶつけたことで痛みを発生しますが、その1回の外力によってテニス肘を発生させることは稀です。 よほど大きな外力で、肘関節に捻りが加わると側副靭帯の損傷を起こしますが、多くは軽微な外力を繰り返し受けることによってダメージが蓄積して起こります。 テニスなどのスポーツ競技はもちろん、パソコンなどのタイピングが多い方や、包丁をよく使う料理人などでもしばしば起こる症状で痛みが起こってから、肘に力が加わるとずっと痛いといった症状が起こります。 治療方法 基本は保存療法です。側副靭帯が損傷していない限りは、固定することはほとんどありません。手首の動きや手指の動きに関する筋肉が障害されていることが多いので、痛みのある動作をなるべく避けて安静にすることが第一です。 前腕の回内や回外、肘関節の屈曲や伸展で痛みが出ることもあるので、日常生活が少し制限される場合もあるでしょう。前腕の伸筋群にかかる負担や疲労を取り除くことが、早期治癒のカギです。マッサージやストレッチなど、自分でできるケアをしていくことも重要になります。 手のひらを下にした状態で、鍋などを持ち上げると激痛になることもあるので注意が必要です。 野球肘 肘の内側側副靭帯の損傷や、上腕骨内側上顆炎を野球肘と呼びます。小学生や中学生の年代で、繰り返し投球動作を繰り返すことによって肘の内側に過度な負担をかけ続けることで起こることが多いので、野球肘と呼ばれるのです。 肘の内側についている靭帯や軟骨、筋肉や腱が損傷している状態なので、肘を曲げるなどの動きでも痛みが出ます。炎症が起きている状態では、肘の内側をぶつけるとかなり痛いでしょう。 手首の屈曲や手指の屈曲など、前腕の屈筋群に負担をかけ続けると野球肘発生のリスクも高まります。 治療方法 骨自体に裂離骨折などが起きているケースは少なく、保存療法が主です。野球をやっている場合は投球の中止、安静が第一になります。上腕部の筋肉から、前腕の屈筋群にかかっている負担を減らしていくことが大切です。 肩甲骨の動きが悪いと代償動作として肘に負担がかかるので、再発の予防をするためには肩甲骨や背骨のゆがみから取り除いていかなければなりません。 関連記事はこちら つらい肘の痛みにPRP治療も効果的です 変形性肘関節症 男性に多い症状で、長年にわたって肘関節を酷使することによって肘で変形が起き、可動域制限や痛みを発生させる症状です。元スポーツ選手で起こるケースもありますし、重い物を持つなどの重労働を繰り返していた方では変形性肘関節症のリスクが高いです。 変形の仕方は骨棘ができることで、肘の関節面にある軟骨がすり減って、骨の部分が直接接触することで徐々に変形していきます。場合によっては肘の屈曲可動域が大幅に制限されるので、食事など日常生活に大きな支障をきたすケースもあります。 肘部管症候群と呼ばれる、尺骨神経を圧迫する症状が特徴的です。ロッキングを起こすこともあります。 治療方法 日常生活へどの程度支障が出ているかによって、手術か保存療法か判断されます。保存療法の場合は温熱療法や薬物療法、筋力トレーニングなどのリハビリを行います。手術の場合は、変形して出来た骨棘を取り除くことが行われます。 関節リウマチ 最初に手指など遠位部で炎症や痛みが起きることが多いですが、肘関節でも痛みを発生させることがあります。関節リウマチは発生の原因がはっきりしておらず、何が誘因になっているのか不明な点も多いです。 病態としては免疫の異常であり、本来であれば病原菌など侵害物に対して攻撃を行う免疫が、体の細胞に対して攻撃を行ってしまうという現象です。関節の組織を破壊してしまうため、肘で起きれば曲げるときに痛みが出ますし、変形を起こすこともあります。 治療方法 薬物療法や運動療法、罨法などが行われることが多いです。あまりに変形がひどく進んでしまっている場合には手術も選択肢に入り、変形によって血管や神経を圧迫してしまうことを防ぎます。人工関節の置換術が行われることもあります。 肘を曲げて痛いときにどうするべきか? 肘を曲げた時に痛みが出るような場合に、自分でできる対処法にはどのようなものがあるでしょうか。 整形外科を受診する 肘に関する症状を精査するなら、整形外科を受診してください。レントゲンやMRIを希望する場合は、大きな病院の中にある整形外科に行った方が確実です。骨折が疑われる場合はもちろん、明らかに変形が起きている場合も精査が必要です。 強く晴れている場合や、肘がほとんど曲がらない状態であれば骨折など、器質的な異常が隠れているかもしれません。 接骨院を受診する 肘を曲げて痛い原因が、筋肉の炎症や関節の動かし方にあるのであれば、接骨院や整骨院でも有効な治療を行うことが出来ます。整形外科で精査してもらい、骨折や病気でないことを確認してから接骨院や整骨院を受診すると確実です。 罨法、後療、電療、運動療法、手技療法など、様々なアプローチが出来ます。 整体を受ける 肘を曲げると痛いのが、肩甲骨の動きや背骨のゆがみによって起きているケースもあります。姿勢が悪く肩甲骨の動きも悪ければ、必然的に肘にも負担がかかります。 肘自体に問題があるというよりも、周りの機能によって二次的なダメージを溜めているパターンもあるのです。その場合、肘関節に電気治療を行ったり、肘の動きを良くするような手技療法を行ったりするだけでは改善できません。 肘にかかる根本的な負担を取り除くには、姿勢から改善する必要があるのです。 温める 捻挫や打撲でない場合や、痛みが出だしてから数日経過している場合、温めることが有効なセルフケアになります。基本的には温めた方が血流も良くなるので、損傷している組織の代謝も上がって回復力がアップします。 サポーターを付けて冷やさない工夫をしたり、お風呂でしっかり温まったりなど、簡単にできるケアで十分です。 安静にする 早く治そうと思ったら、安静にするのが一番です。リウマチなど、黙っていても症状が進行してしまう場合は別ですが、そうでない場合は肘を休めて筋肉疲労を回復させることで痛みが軽減する場合もあります。 再生医療を受ける スポーツによる障害や変形を伴った関節症など、肘に痛みが出る疾患は様々ですが、痛みを取るには自己の自然治癒力を高める事が重要です。温熱療法や手技療法など治療の仕方はいろいろありますが、そのどれもが自然治癒力を高めるための治療です。 その方法の一つに「再生医療」という治療があります。これは自身の血液や脂肪を用いて、「自然治癒力=再生する力」を高める方法です。 血液を用いた方法は「PRP(多血小板血漿)療法」といい、傷を修復させる血液成分を抽出して患部に注射します。PRP療法は、スポーツ選手がケガをした際、手術をせずに早期復帰を目指す治療法としても取り入れられています。 脂肪を用いた方法は、「脂肪由来幹細胞」による再生医療です。幹細胞とは臓器や皮膚、骨、筋肉、靭帯など様々な細胞に分化する能力があります。 自身の脂肪から幹細胞を培養し、それを体内に戻すことで自然治癒力が向上します。この治療法は患部に注射する方法だけでなく、点滴により全身に幹細胞を届けることも可能です。 肘の痛みから全身が痛くなることもある 最初は肘を曲げると痛いだけだったのが、知らない間に肘をかばって生活するようになり、肩や背中に痛みを発生させることもあります。そこから全身の不調につながっていくことは十分考えらえるので、痛みを放置せずに早めに対処してください。 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ リペアセルクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 監修:リペアセルクリニック大阪院 肘や筋肉の痛みに関連する記事はこちら 肘・筋肉の痛みは?原因と対策は? テニス肘とゴルフ肘の正しい治し方となりやすい条件とは 肘の外側が痛い場合の対処法は?外側上顆炎や神経痛の場合も 肩の痛み、肩の関節の痛みに関連する記事はこちら 肩の関節が痛い場合に有効な治し方と痛みの原因は? 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何 当院の治療についての考え方や 再生医療についての内容もお読みください スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ 再生医療による膝の治療に関連する記事はこちら 膝の症例 現役プロスポーツ選手 ひざの痛みにPRP治療
2019.04.11 -
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足の裏が痛いのは足底腱膜炎が原因か?その治療法や予防法を確認 長く歩いた次の日や、慣れない靴を履いたときなど、急に足の裏が痛くなることもありますよね。転倒や打撲でないにも関わらず、足の裏が地面に着くだけで痛い場合、いくつかの原因が考えられます。今回は、足の裏が痛い場合に疑うべき病態と、その治療方法や対処方法をご紹介していきます。 足の裏はアーチ構造になっている 足の裏は、いわゆる土踏まずと呼ばれるアーチ構造があります。足の裏側を踵(かかと)側からつま先に向かって作られる縦アーチと、母指球から小指球に向かって伸びる横アーチの二つの構造があり、もっと深くみていくと縦アーチは内側と外側で分かれています。これも含めると、全部で3種類のアーチ構造によって体を支えている仕組みです。 足が接地したときの衝撃吸収を担っている 足の裏のアーチ構造は、歩行時やジャンプの着地時など、足の裏から伝わる衝撃を吸収する役割を持っています。アーチが正常に作られていることによって、足の裏から背骨に直接衝撃が伝わるのを防いでいるのです。もしこのアーチ構造が何らかの原因で機能しなくなった場合、足を接地したときの衝撃が直接身体に伝わり、様々な不調をきたします。脛骨で起こる疲労骨折や、臀部が緊張することによって起こる坐骨神経痛、慢性的な腰痛、肩こり、股関節痛など様々な症状が考えられます。もし背骨付近で慢性的な症状があり、どんな治療法を試しても改善が見られない場合、アーチ構造を含め足部に問題があるのかもしれません。 足の裏のアーチは筋肉や腱によって出来ている 人間にとって非常に重要なこのアーチ構造ですが、足部の筋肉やその腱によって支えられています。これを足底腱膜と呼びます。主に足趾や足関節の屈筋群で、中には下腿部から走行してきている筋肉もあります。そのため、これらの筋肉が硬くなったり疲労が溜まったりすれば、アーチ構造を支える力が低下してしまいます。また、足関節や膝関節、足趾の関節の使い方が悪ければ、アーチ構造が破綻しやすくなります。足の裏のアーチが機能しなくなってくると、偏平足や浮指などの外見的な症状も現れてくるのです。 足の裏のアーチに問題が起きるのはなぜ? 幼少期に裸足で生活する機会が多い程、足の裏のアーチ構造が構成されやすいと言われています。近年では、室内でもスリッパを履くなど足の裏を直接地面に着ける機会が少なくなっているので、足の指でしっかり地面を掴まなくても歩けてしまうことが問題視されています。足の裏のアーチ構造を構成している筋肉を使わなくても生活が出来てしまうので、だんだんと筋力が低下し、偏平足や浮指になってしまうのです。また、骨盤の歪みや背骨の歪みによっても、足の裏にかかる負担は増えます。例えば骨盤の歪みによって股関節の可動域が狭くなると、歩行時にも膝関節や足関節が普段よりも大きな動きで股関節を代償しなければならなくなります。その状態が長期間続くと、足の裏が悲鳴をあげるのです。 足の裏が痛いときに考えられる症状 激しいスポーツ活動を繰り返しているわけでもなく、転倒した記憶もなく、激しく打ち付けたことも無いのに足の裏が痛いというとき、まず初めに考えられるのが足底腱膜炎です。足底腱膜炎の発生頻度は多いので、詳しく解説していきます。 足底腱膜炎とは 足の筋肉を使いすぎる、または上手く稼働出来ていないことによって足底腱膜で炎症を起こす病態です。足底腱膜は足の裏全体を覆う筋肉や腱で構成された膜のことで、足の裏のアーチ構造の大きな役割を担っています。足底腱膜炎であるということは、足関節を動かす筋肉、更には足の指を動かす内在筋といった細かい筋肉も含めて負担がかかっていることが考えられます。多くは一回の外力で足底腱膜炎を発症するというよりも、長く歩くことが続いたり、ハイヒールなど慣れない靴で長期間過ごしたりすることによって徐々に痛みが起こります。 足底腱膜炎の症状 足底腱膜炎の主な症状は足の裏の痛みで、歩行時や立ち上がる動作など、普段なら何でもない動作で痛みが発生します。足の裏を地面につけて少し荷重するだけでも痛いので、日常生活に大きな支障をきたします。安静時でも足の裏が痛むこともあり、少し触れるだけでも痛みが憎悪するケースも稀ではありません。痛みをかばいながら行動することになるので、そこから身体全体のゆがみを生み、逆足の足底腱膜炎や膝痛、腰痛などに発展することもあります。足底腱膜炎を放置しておくと、足の裏のアーチによる衝撃吸収が機能していないので、疲労骨折になることもあります。中足骨や脛骨で起こることもあるので、足の裏の痛みだけでなく他の部位にも痛みが広がり出したら早急に治療が必要です。 足底腱膜炎の原因 足底腱膜炎のリスクが高いのは、元々偏平足の方や、外反母趾、浮指になっている方です。合わない靴など、日常生活で足趾や足関節が上手く使えていないことも足底腱膜炎の原因になります。また、女性の場合は男性よりも足底腱膜炎の発生リスクが高いと言えます。それは、妊娠が出来るという女性の特徴が関係していて、ホルモンの作用によって足の靭帯が男性に比べて緩みやすくなっています。そのため足底腱膜で支える足の裏のアーチ構造が崩れやすく、外反母趾や偏平足になりやすいのです。ある時期だけ歩く距離が異常に長くなったり、立っている時間が長いことが続いたりということも、足底腱膜炎を助長する一因です。 足底腱膜炎の治療 足底腱膜炎は保存療法が選択されます。炎症であるという特性上、患部を安静にすることが第一ではあります。しかし、足は通常生活をしていれば完全に安静にすることは難しく、治療が長期化しやすいという側面もあるので注意が必要です。 電気治療 低周波や干渉波など、電気治療が施されることが多いです。筋肉への負担を減らし、血流を良くして足底腱膜の弾力性を取り戻すことが狙いです。電気治療だけで足底腱膜炎を治癒させることは難しいですが、治癒までの期間を少しでも短くするためには有効な手段の一つです。 マッサージ 足底やふくらはぎなど、下腿部のマッサージで筋肉をほぐすことも有効です。要はダメージの蓄積によって起きている症状であり、簡単な言葉で言い換えれば足底腱膜炎は足の使い過ぎということです。足の裏を押すと痛いこともあるので、痛みがある部分は避けた方がいいでしょう。 ストレッチ 足の裏やふくらはぎのストレッチが、足底腱膜炎の改善や予防に効果的です。足の指を足の甲側に反らせるようにストレッチすると、足底腱膜がよく伸びます。筋肉の緊張を緩和することで足の裏の痛みが軽減するので、日ごろからストレッチを習慣にしておくと治癒した後の予防に繋がります。 整体 背骨のゆがみを矯正することや、骨盤のゆがみを正すことで足の使い方が改善され、結果的に足底腱膜炎の改善にも繋がります。むしろ、足の裏が痛いからといって足ばかりを治療するのではなく、体全体のバランスも一緒に整えた方が治りも早いのです。単純に、体のバランスが整えば重心が改善され、足の裏の負担も減ります。 足底腱膜炎の予防方法 足にあった靴を履く サイズが大きすぎる靴を履いていると、靴が脱げないように無意識のうちに力が入り、足底腱膜を構成している筋肉に余計な負担をかけることになります。それが足底腱膜炎を助長するので、日ごろから自分に合ったサイズの靴を履くことが効果的な予防になるのです。 足首を良く回しておく お風呂に入った後などに、足首を良く回すだけでも足底腱膜炎の予防に繋がります。足首の動きを良くしておくことで、足底腱膜を構成している筋肉の負担を減らせるのです。逆に足首が硬くなると、指を動かす筋肉などが普段よりも過剰な筋力発揮をしなければならず、足底腱膜炎のリスクを高めてしまいます。 骨盤の後傾を防ぐ 椅子に座っているときなどに、背中が丸くなって骨盤が後ろに傾くような姿勢を続けていると、足底腱膜炎のリスクを高めてしまいます。これには理由が二つあり、一つは、骨盤が後ろに傾くことで股関節の動きが悪くなり、歩行などの際に足首や足趾を動かす筋肉にかかる負担が増してしまうからです。もう一つは、骨盤の後傾と共に股関節前側の筋肉が硬くなり、下肢全体の血流が悪くなります。血流が悪くなれば筋肉も硬くなりやすく、また代謝も落ちるので筋肉に溜まった疲労が抜けにくくなります。その結果足底腱膜の筋肉に慢性的なダメージを蓄積してしまい、徐々に足底腱膜炎に移行していくことになるのです。 足底腱膜炎以外で考えられる足の裏の痛み 足の裏で痛みが起こるのは、100%足底腱膜炎というわけではありません。その他にも考えられる症状をご紹介していきます。 行軍骨折 疲労骨折の一つで、足の第二中足骨や第三中足骨で起こります。一回の大きな外力によって中足骨が折れてしまうわけではなく、激しいスポーツ活動の長期間の継続や、長距離ランニングの継続など、細かい負担が継続的にかかってダメージが蓄積した結果起こる骨折です。一番は足の甲で痛みが出ますが、接地時にも痛みが出るので足の裏の痛みとして感じられることもあります。 ジョーンズ骨折 第五中足骨の基底部で発生する疲労骨折のことで、再発しやすいという特徴があります。足の背面や側面の痛みと共に、足の裏側で痛みを感じることもあります。圧痛があるので、足をついたときにも痛みを発生します。スポーツ活動で起こることがほとんどなので、治りかけからスポーツ再開をして痛みを再発させるというケースも少なくありません。 足の裏の痛みが出たらどうすればいい? 足の裏の痛みは、多くの場合明確な原因がなく急に襲ってきます。もし朝起きた時に急に足の裏が痛かったらどうすればいいのか、対処法をご紹介していきます。 整形外科を受診する 足底腱膜炎なのか、骨自体で何か問題が起きているのか、精査できるのは整形外科です。レントゲンを撮ったり触診したりして、確定的な診断を出してもらいましょう。もし骨折など骨の異常であった場合は、固定や安静が必要です。足底腱膜炎だった場合は、リハビリなど長期的な計画で治療をしていく必要があるでしょう。 接骨院・整骨院の受診 骨折だった場合、骨が戻るまでは固定と安静しかありません。しかし、足底腱膜炎だった場合は接骨院や整骨院でも有効な治療ができます。もちろん、いきなり接骨院や整骨院に行って治療を開始するのでも良いです。しっかり骨に異常が無いことを確認したい場合は、まず整形外科に行ってから近くの通いやすい接骨院に行ってください。罨法や手技療法、運動療法など様々な角度から治療が行えるでしょう。必要があれば、テーピングなどもしてもらえます。 温める 足底腱膜炎である場合、体が温まることで足の裏の痛みが軽減することもあります。お風呂でしっかり温まることはもちろん、足湯をする、電子レンジで蒸しタオルを作って足の裏にあてるなども効果的です。 足の裏の痛みは全身に影響する 足の裏は体全体を支える重要な器官です。痛みをかばうことで、知らず知らずのうちに全身に悪影響を与えてしまいます。二次的な症状を起こさないためにも、早めに治療を開始してください。 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ さかもとクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 以上、足の裏が痛いのは足底腱膜炎が原因か?その治療法や予防法を確認について記しました。参考になれば幸いです。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 監修:リペアセルクリニック 当院の治療についての考え方や再生医療についての内容もお読みください スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 変形性股関節症に対する当院の治療 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ
2019.04.10 -
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肘の外側が痛い!何もしていないのに急に痛むのは外側上顆炎や神経痛の可能性! ぶつけたり捻ったりしたわけでもないのに、急に肘の外側が痛くなる。実はこれ、珍しい症状ではありません。普段の生活の中で軽微な外力による負担が積み重なり、あるとき突然、肘の外側で痛みを発生させます。 今回は、肘の外側が痛くなったときに考えられる原因や、どのように対処したらいいのかご紹介していきます。 肘の関節は 3 つの骨で構成される 少し難しいお話ですが、まず肘の関節は、上腕骨と前腕の橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)の3つの骨で構成されています。 肘関節のなかでもさまざまな関節があり、肘関節をもっと詳しくみていくと3つの関節が1つの関節包の中に納まっています。 1,腕尺関節(わんしゃく‐かんせつ) その中の1つの腕尺関節は、関節の種類でいうと蝶番関節であり、屈曲と伸展の運動を行っています。 2,腕橈関節(わんとう‐かんせつ) もう1つが腕橈関節であり、小さい関節ではありますが球関節の構造をしています。肘の屈曲伸展、回旋運動に関わる関節です。 3,上橈尺関節(じょうとうしゃく‐かんせつ) 最後の1つが上橈尺関節で、前腕の骨である橈骨と尺骨の間で構成されている関節です。主に前腕の回外や回内運動を行っています。 肘を動かす筋肉は肩関節を超えて走行している 肘関節を動かす最も大きな筋肉は上腕二頭筋で、肘関節の屈曲と前腕の回外の運動に関わっています。 上腕二頭筋は肩甲骨から上腕を通過して前腕まで走行しているため、肩関節の動きに異常がでることによって肘関節に影響が出る可能性もあります。 また、肘関節伸展に関わる主な筋肉は上腕三頭筋であり、これも肩甲骨から上腕を通過して前腕まで走行しています。やはり肩関節を超えて肘関節をコントロールする筋肉なので、肘関節の異常が肩関節の使い方によって影響されることもあり得ます。 肘の外側が痛い場合は「外側上顆炎症(がいそくじょうかえん)」を疑う 肘の外側が痛い原因として多く考えられる、外側上顆炎についてご紹介していきます。 外側上顆炎(テニス肘、テニスエルボー)とは? 別名テニス肘、近年ではスマホ肘と呼ばれることもある病態です。これらは正式名称を外側上顆炎と呼び、上腕骨にある外側上顆で炎症が起きているということです。 外側上顆で痛みが出ているわけですが、実際に根本的な原因になっているのは肘関節というよりも前腕の筋肉群です。具体的には手関節や手指の伸展動作に関わる筋肉で、前腕の伸筋群と呼ばれます。 前腕の伸筋群は、上腕骨の外側上顆から前腕を通過し、手関節の先まで走行しています。そのため、前腕の伸筋群を使いすぎるなどしてダメージを蓄積した場合、外側上顆にも負担がかかります。 手関節や手指の動きを繰り返し行うことで、前腕伸筋群が伸張を繰り返し、その牽引力が外側上顆の一点にかかります。これが長時間、または長期間続くことで徐々に外側上顆で炎症を起こし、結果的に肘の外側が痛いという症状となって現れるのです。 前腕の筋肉を多用するテニスプレーヤーに多い症状でもあることから、テニス肘という名称がついています。近年でスマホ肘と呼ばれる理由は、テニスをしていない人でもよく起こる症状であることも由来しています。 スマホを長時間操作していると、スマホを支えるために前腕の筋肉が硬直し、外側上顆に負担をかけるのです。 関連記事はこちら テニス肘が重症化すると 外側上顆炎は女性に多い? 外側上顆炎は男女どちらでも当然起こり得る症状ではありますが、患者数でいうと女性の方が多い傾向にあります。筋力やホルモンバランスも関係しているようです。 外側上顆炎を発症すると、伸筋群が原因であるにも関わらず手関節の伸展や手指の伸展以外の動作でも肘の外側に痛みを発生させます。肘の屈曲時や、前腕の回外、安静時でも肘の外側が痛むことがあり、日常生活にも大きく影響を及ぼすこともあるのです。 打撲や捻挫のように、一度の外力で急に外側上顆炎になることよりも、日常生活の動作の中で少しずつ負担を蓄積して発症するケースが多いという特徴もあります。そのため、治癒させるためには治療が長期間に及ぶこともしばしばです。 外側上顆炎の5つの治療方法 外側上顆炎の治療を医療機関で行う場合、どのような方法がとられるのか5つご紹介していきます。 1.電気治療 痛みがある肘の外側、前腕の筋肉を中心に低周波や干渉波の電気治療が行われることがあります。主な目的は前腕の筋肉で起きている緊張を取り除くことと、血流を良くすることです。 しかし、炎症であることと、筋肉の緊張による牽引力が原因で起きている症状であるという特徴から、電気治療をすることで稀に悪化するケースも見られます。 電気刺激が強すぎると、かえって自分の体を守ろうとする防衛本能が働き、逆に筋緊張を強めてしまうのです。そのような反応が見られた場合は電気刺激を弱めるか、別の保存療法を選択するべきです。 2.手技療法 前腕の筋肉をマッサージやストレッチでほぐすことが主な手技療法になります。上腕骨から指先まで走行している伸筋群もあるため、前腕だけでなく手指の動きを良くすることも重要です。 手指の動きが良くなれば、必然的に外側上顆の負担は減り、肘の外側の痛みが消えるのも早いです。そういった意味では、手の内在筋をマッサージやストレッチでほぐすということも、外側上顆炎の有効な治療と言えます。 3.温熱療法 外側上顆炎の患者の中には、お風呂に入った後には少し痛みが軽減するという方もいます。これは、温められることによって血流が良くなり、前腕伸筋群の緊張が和らいだことが考えられます。 赤外線などで外側上顆から前腕にかけて温熱療法を行い、その後に手技療法や運動療法を行うことで改善を早めることに繋げます。 4.運動療法 肘関節の正しい動かし方を身につける運動療法や、手関節、手指の関節の動きをスムーズにするための運動学習など、様々な運動療法が有効です。もちろん痛みの程度を見ながら、無理のない範囲で徐々に行うことが大切です。 その際、肩関節の動きを良くして可動域を広げることも外側上顆炎の治療では重要です。肩関節や肩甲骨の動きが肘関節を動かす筋肉の負担に繋がり、それが外側上顆炎に結び付くことが考えられるからです。 5.背骨の矯正 一見すると関係なさそうですが、外側上顆炎を改善するために背骨のゆがみ、さらには骨盤のゆがみを改善することは有効な手段です。姿勢が良くなることで肩甲骨や胸椎の正しい動き、スムーズな動きが獲得でき、肩関節の可動域が広がります。 肩関節の可動域が広がれば、肘関節にかかる負担も軽減することができ、結果的に手関節や手指の動きをスムーズに行うことができるのです。 外側上顆炎だからといって肘だけを集中的に治療するよりも、背骨のゆがみから改善していった方が早期に治癒が見込めます。その上、繰り返しの外力によって発生するという外側上顆炎の特性上、再発の予防にも繋がる治療なのです。 外側上顆炎は再発する!その予防方法は? 外側上顆炎は一度なってしまうと治癒まで比較的時間がかかる症状であり、一度良くなった後も再発するケースが多いのも特徴です。自分でできる改善方法、再発予防方法をご紹介していきます。 1.ストレッチ 前腕の特に伸筋群に疲労を溜めることで外側上顆炎のリスクが高まるので、前腕のストレッチをこまめに行うことが予防方法になります。外側上顆炎になった後はストレッチの動作でも痛みを感じることがあるので、痛みが軽減してから習慣にしてください。 やり方は簡単で、手関節の屈曲と伸展方向にゆっくりと伸ばすだけです。外側上顆炎の主な原因筋が伸筋群なので、手関節を屈曲方向に曲げれば伸筋群がストレッチできます。 しかし、伸筋群だけのストレッチでは外側上顆炎の再発予防としては不十分です。屈筋群に緊張があるままだと、日常生活の中でも手関節伸展がしにくくなり、余計に筋力を発揮させて伸展動作を行わなければならなくなります。 それが外側上顆にかかる負担を増す原因になるので、屈筋群も併せてストレッチしておくことが大切です。 2.肘と前腕を温める 基本的に冷えは筋肉の緊張を生みやすいので、自分でも温めるようにした方が改善の助けになります。お風呂でしっかり温まることはもちろん、電子レンジなどで蒸しタオルを作って肘の外側から前腕にあてておくだけでも良いセルフケアです。 安価な物でも良いので、肘全体を覆うタイプのサポーターをするのも冷え対策になるのでオススメです。 注意!ヘルニアなど神経痛によって肘の外側が痛むこともある 頚椎ヘルニアなど、首から上肢にかけて走行している神経が圧迫されることによって肘の外側で痛みを発生させている場合もあります。 頚椎ヘルニア・神経痛とは 神経を圧迫している原因の代表は頚椎ヘルニアで、スマホやPCが大部分に普及してきた現代では発生頻度も高くなっている病態です。頚椎から派出する神経が上肢を走行し、その過程で肘の外側も支配しています。 頚椎ヘルニアが上腕の外側を支配する高さで起こっている場合、肘の外側が痛むということは十分考えられます。デスクワーク、バイクの長時間の運転、姿勢が悪いという既往などが頚椎ヘルニアのリスクを高めます。 頚椎ヘルニアで肘の外側に痛みが出ている場合、そこだけでなく肩甲骨の内側や外側、首自体での痛みも同時に発生しているケースがほとんどです。 もし痛みが肘の外側だけでなく、体幹に近い部分にもいくつか発生しているなら、神経症状であることを疑いましょう。その他の鑑別ポイントとしては、安静時でも常に痛い、頸部の伸展や回旋動作などで痛みが悪化するといったことです。 頚椎ヘルニア・神経痛の治療方法 肘の外側で出ている痛みが神経痛であった場合、肘の動きをいくら良くしようが、前腕や上腕の筋肉をいくらマッサージしようが、根本的な解決にはなりません。神経が発生している背骨の部分から治療していく必要があります。 1.薬物療法 痛み止めの処方や、神経痛の際によく出されるビタミン剤が主な薬物療法で使われます。飲み続けることによって痛みを感じにくくなりますが、頚椎ヘルニアなど神経を圧迫しているものが解決されるわけではないので、薬物だけですべてを解決するのは難しいときもあります。 ただ、あまりの痛みは日常生活に支障をきたすので、それを防ぐ目的で使用するのが良いでしょう。 2.温熱療法 神経痛もやはり温めることが有効な治療方法になります。血流が良くなる上に筋肉の緊張が取れるため、神経の圧迫も軽減されることがあるのです。 3.牽引治療 整形外科などでは、頚椎を牽引して治療する方法になることが多いです。牽引することで背骨全体の筋肉がストレッチされ、神経の通り道を広くすることが期待できます。しかし、現状では牽引治療だけで治癒に至らないケースも多いです。 4.整体 姿勢を改善して首の負担を取り除くことや、関節の動かし方を改善して頚椎から出る神経を圧迫しないような体作りをしていきます。手術以外ではこれがかなり有効な治療方法でもあり、早期の改善と再発予防に繋がる可能性もあります。 5.手術療法 スポーツ選手など特別な事情が無い限りは稀な選択と言えますが、頚椎の手術が選択される場合もあります。頚椎というシビアな場所だけに、一般では最終手段的な立ち位置でもあります。 どこで問題が起きているのか見極めるのが大切 肘の外側で起きる痛みには、肘や前腕で問題が起きている場合と、頚椎など中枢に近い部分で問題が起きている場合と2種類あります。両者は治療方法も全く異なるので、早めに専門医に相談して原因を知っておくことが大切です。 お近くに再生医療やスポーツ医療についての専門医がいない方へ 当院は、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 以上、肘の外側が突然痛くなった!それ外側上顆炎や神経痛かもしれませんについて記してまいりました。参考になれば幸いです。 監修:リペアセルクリニック大阪院 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 肘や筋肉の痛みに関連する記事はこちら ・肘・筋肉の痛みは?原因と対策は? ・肘から下の痛みは背骨が原因か?前腕が痛む原因で考えられる疾患 ・テニス肘とゴルフ肘の正しい治し方となりやすい条件とは ・肘をぶつけてからずっと痛みが治まらない時、考えられる原因は? 腕に関連する記事はこちら 腕が上がらないのは病気のせい?考えられる症状は何 当院の治療についての考え方や再生医療についての内容もお読みください ・スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 ・再生医療とは ・PRP(多血小板血漿)療法とは ・ご相談から治療までの流れ
2019.04.08 -
- 変形性膝関節症
ひざの内側が痛むのなら変形性膝関節症かもしれません! 変形性膝関節症を発症した患者さんが訴える症状の多くが「膝の内側の痛み」です。この膝の内側の痛みが何故起こるのか?そもそも膝はどのような構造になっているのか? 関節の構造はどうなっているのか?変形性膝関節症とはどのような病気でどのような治療をするのかについて説明していきたいと思います。 膝の構造や関節の構造はどうなっているのか? 膝は人体の諸関節の中で最大の関節であると同時に損傷を受けやすい関節でもあります。膝は大腿骨、脛骨、膝蓋骨という3つの骨で構成されています。大腿骨と脛骨の表面には関節軟骨があり、関節軟骨と関節軟骨の間には半月板があります。この関節軟骨と半月板と関節軟骨の3つが膝が滑らかに動くようにしたり、荷重を分散させています。 大腿骨と脛骨は前十字靱帯、後十字靱帯、内側側副靭帯、外側副側靭帯という4つの靭帯によって結ばれています。この4つの靭帯の働きによって脱臼防止や関節の伸展・屈曲・内旋・外旋がスムーズに行われています。 膝にはもう1つ膝蓋大腿関節があり、この骨の表面にも関節軟骨が存在して、筋肉の力を効果的に下腿に伝える働きをしています。そして、これらの関節を包みこんでいる袋が関節包であり、この関節包の内膜は滑膜と呼ばれ、関節液を分泌したり吸収する働きをしています。 関節軟骨という言葉が出てきましたが、関節軟骨とはどのような物なのか? 関節軟骨の組成は60~80%が水分であり、残りはコラーゲンとプロテオグリカンです。関節軟骨の基質はⅡ型コラーゲンを主体とするコラーゲン線維の隙間を、アグリカンと呼ばれる巨大プロテオグリカン分子が埋める構造をしています。 プロテオグリカンは保水性に富み、スポンジのように水分の出し入れを行っています。軟骨細胞は小腔内に独立して存在し、軟骨組織には血管もリンパ管も存在しないため、軟骨細胞の代謝は関節運動による関節液の浸透によって行われています。このため、関節運動が行われないと軟骨の萎縮を起こします。また、軟骨組織は自己修復力がほとんどなく、ひとたび関節軟骨が損傷を受けると変性に陥ります。 関節包と滑膜について 通常大部分の関節には関節包とその内面を包む滑膜があります。前述の通り膝関節にも関節包と滑膜が存在しています。滑膜は関節の潤滑と栄養をつかさどる関節液を合成するとともに、関節内に生じた異物を除去する働きがあります。関節液の主成分は、グルコサミノグリカンの一種であるヒアルロン酸です。これはヘパリンと同種の組成であるため、関節内に出血が起きても血が固まりません。 関節の機能について 関節は、その種類によって運動の方向や正常な可動範囲が定まっており、関節運動はその方向によって決まった名称で呼ばれます。関節の可動域をROMといい、各関節はその構造上から運動の方向・機能と可動域を持っています。関節運動の方向には下記のような種類があります。 屈曲↔伸展 外転↔内転 外旋↔内旋 回内↔回外 掌屈↔背屈 関節可動域は年齢、性別、ときには職業によっても異なります。膝の運動方向は屈曲と伸展であり、可動域の範囲は屈曲が0~130、伸展が0です。 膝の痛みはなぜおこるのか? 関節を構成する靱帯や関節包には痛覚神経線維の終末が多数存在し、関節が異常運動を行った場合は強い痛みを生じて警告を発し、非生理的な関節運動が起こる事を予防しています。これらの組織に機械的刺激や化学的刺激が加わると、強く鋭い関節痛を生じます。これに加えて、滑膜の炎症によって増加した関節液や外傷による関節内出血は関節内圧の上昇をまねき、鈍重な痛みの原因となります。 変形性膝関節症とはどのような病気か? 変形性膝関節症とはその名の通り膝関節が変形し、痛みやしびれ、運動障害を起こす慢性関節疾患です。変形性関節症の中では最も頻度の高いもので、日本人の生活様式である畳の上に座るという習慣が影響していると考えられています。また、加齢や肥満、膝へのストレスが原因とされています。 原因についてさらに詳しく説明します。関節リウマチや大腿骨の顆部壊死、過去の骨折経験などもともと何らかの原因が元になっている場合が10%程度ありますが90%は原因がはっきりわかっていません。年齢では30代ではほとんど見られませんが40代以降、年齢を重ねるにつれて患者数が増えています。理由としては加齢によって関節組織(軟骨)の退行性変性が起きるためです。性別では女性の方が男性に比べ1.5~2倍くらい多い傾向にあります。特に閉経後の女性は急速に進むケースが多いです。これはエストロゲンという女性ホルモンに要因があると考えられています。肥満については、体重が増えることにより膝への負担が大きくなる事や、脂肪組織で生成されるレプチンという物質が影響することが原因と考えられています。レプチンとは食欲の抑制とエネルギー代謝の調節に関わるホルモンです。これらのような加齢や性別、遺伝、肥満や重労働やスポーツなどの膝への過度なストレスなど様々な要因が引き金となって、膝の軟骨が変形し、膝の中にある滑膜が炎症を起こします。 変形性膝関節症の進行と症状について 膝関節の腫れや痛みを主な訴えとして、関節の可動制限はそれほど著しくないが、最大伸展位を取る事が出来ずに、運動時のコツコツやゴリゴリといった軋轢音、関節裂隙(かんせつれつげき)の圧痛がみられます。高度になると内反膝あるいは外反膝の変形が起こ理ますが、日本では内反膝変形が多くみられます。 変形性膝関節症の症状は進行度によって症状が変化します。 【軽度】 骨と骨の隙間が少し狭くなり軟骨がすり減ってきます。起床時の第一歩の「膝の違和感」が最も早く現れる症状です。この段階では動作時のみの痛みですが、一時的でしばらく休むと痛みがなくなる場合がほとんどです。「立ち上がる時に膝が痛む」「膝がこわばる」「動き始めに膝が痛む」このような症状が現れます。 【中等度】 関節軟骨や半月板がすり減り、骨と骨の隙間がさらに狭くなります。痛みの頻度が多くなり、炎症が生じて膝の周辺が腫れたり、熱を持ったりします。膝に水がたまる事により膝を曲げると張って重くだるくなります。膝の変形が目立ち、膝に力のかかる動きをすると、コツコツやゴリゴリといった異音を自覚します。「膝が完全に曲げられない」「正座ができない」「階段の上り下り、とくに下りで膝が痛む」「膝に水がたまる」等のような症状が現れます。 【重度】 軟骨や半月板がほとんどなくなり、骨がむき出しになって、骨と骨が直接触れあうようになります。膝関節の変形も進行し、痛みも強くなります。日常生活に支障が起きるほどの痛みになります。そのため、買い物や仕事や旅行などの活動が思うようにできなくなり、活動範囲が狭まります。高齢者では家の外に出ない生活が続くと痴呆症状が現れる人もいます。骨の変形が相当進むので外見的にも関節の変形が目立ち、O脚(ガニ股)となります。「じっとしていても膝が痛む」「膝の曲げ伸ばしが難しい」「歩くときに膝が横揺れする」「歩行困難」等の症状が現れます。 変形性膝関節症の検査はどのような検査を行うのか? 【X線撮影】 膝の骨の変形の具合を調べます。骨と骨の関節部分は何も写りませんが、この関節の隙間が狭いほど関節軟骨がすり減っているという事になります。 【関節液検査】 膝に炎症が起きて腫れている場合、注射器で関節液を抜き取りその性状により病気の判定をします。変形性膝関節症では、黄色透明の関節液が排出されますが、リウマチや関節炎では、黄色混濁した関節液が出ますので鑑別診断ができます。 【MRI検査】 関節軟骨、半月板や骨内の病変の有無を調べます。変形性膝関節症が進行すると、半月板が痛んで断裂したり、骨内に骨のう腫という穴が開いたりして痛みの原因となります。また、膝関節の大腿骨内顆骨壊死が発見されたりします。 【血液検査】 関節リウマチではCRPやリウマチ因子が陽性となる事が多いですが、変形性膝関節症では通常CRPやリウマチ因子は因性です。 変形性膝関節症の治療はどのよううなものがあるのか? 変形性膝関節症の治療の1つとして肥満の人には体重を軽くするように指導するとともに大腿四頭筋の筋力強化、温熱療法が勧められます。変形性膝関節症は進行度により治療が行われます。整形外科での治療は主に保存療法(リハビリ)と手術療法です。 保存療法(リハビリ) 症状が軽い場合には痛みどめの内服薬や外用薬を使った痛みを軽減する薬物療法が行われます。関節内で炎症が起きると痛み物質が発生し、滑膜が刺激されてさらに炎症が進むことによる悪循環に陥るため、この悪循環を断ち切るために鎮痛剤の処方が行われます。 そして、痛みを起こさせないようにするために重要なのが運動療法になります。膝関節を支える筋肉を鍛えることにより、膝がしっかり安定して関節への負担が減ります。また、膝を動かすことにより血行が促進され、関節液中の痛みを起こす物質が血中に吸収されて減っていきます。さらに運動によって肥満が改善され、膝への負担が軽減されます。 次に軟骨や関節液の重要な成分であるヒアルロン酸を潤滑成分として注射して軟骨表面の保護を行う治療があります。同様に注射治療の1つに炎症を強力に抑え込み、鎮痛効果も高いステロイドの注射があります。しかしステロイドの頻繁の使用は軟骨や靭帯を弱くしてしまうので2カ月から3カ月に1回の注射が安全とされています。 手術療法 上記の一般的な保存療法に抵抗し、軟骨破壊が内側に偏しているような時は高位脛骨骨切り術という手術療法が行われます。内反変形を矯正して、内側にかかる荷重を正常な軟骨や半月板が残っている外側の関節に分散させる手術です。手術後は自分自身の関節が温存されるため、可動域が改善されスポーツなどの重労働にも耐えられます。また、時間の経過とともに筋力が増強し関節機能が改善することがこの手術の特徴となります。 高度の関節破壊のある場合には人工膝関節置換術という手術が行われます。痛みのある片側だけを置き換える片側置換術と関節面全体を金属に置き換える全置換術があります。手術後は翌日から数日で立ったり歩いたりするリハビリが始まり2週から4週程度で退院し、比較的速やかに日常生活に戻る事が出来ます。 注目されている最新の治療法があります!! 近年再生医療の分野が医学界ではめざましい進歩をあげておりますが、この再生医療を応用した治療が変形性膝関節症にも治療適応されています。 再生医療も治療の選択の1つです。再生医療とはこちらを参照ください。 変形性膝関節症に対する再生医療分野の治療は脂肪幹細胞と多血小板血漿(PRP)を用いた治療になります。脂肪幹細胞を用いた治療ではご自身のお腹や太ももの皮下脂肪を吸引し、幹細胞を採取します。採取した幹細胞を培養し関節内に投与します。これにより関節の炎症を治めるだけでなく関節軟骨の変形を抑えたり痛んだ軟骨の修復や再生を促します。 多血小板血漿(PRP)を用いた治療とは自身の血液から特殊な技術で血小板が多く含まれる血漿を取りだし、膝関節内に注入する治療法で患者さん自身が持つ修復力をサポートする治療法です。自分の血液ですので副作用もありません。 膝関節症の患者さんの多くが訴える膝の内側の痛みについて、骨の構造や関節の機能、膝関節症とは何かについて説明してきましたが、膝関節症は原因の90%が明らかになっていない疾患です。 しかし変形性膝関節症の治療法の選択肢も増えてきています。ご自身のライフスタイルや症状に合った治療を選択していきましょう。変形性膝関節症や再生医療についてさらに詳しく知りたい時には専門医に話を聞いてみましょう。 お近くに再生医療についての専門医がいない方へ さかもとクリニックは、第二種・第三種再生医療提供計画を厚生労働省に提出し受理された厚生労働大臣許可医療機関です。当院では来院前でも「メール相談」を受付けています。どうぞ事前にご相談ください。 以上、ひざの内側が痛むのなら変形性膝関節症かもしれない!についてご説明させて頂きました。参考になれば幸いです。 メール相談・お問い合わせフォームはコチラ 監修:リペアセルクリニック大阪院 膝の痛みに関連する記事はこちら 膝の痛みと腫れが突然出た!考えられる原因は? 完治まで膝から水はなくならない?膝に水が溜まる原因と治し方 正座すると膝が痛いのは危険サインか?変形性膝関節症の可能性も 膝を曲げると痛いのは病気のサイン?音が鳴る原因は 膝をつくと痛い!痛みの原因や症状考えれる病態は? 膝の上が痛い原因は使い過ぎ?痛みに繋がるリスクとは 膝の皿が痛いのはなぜ?考えられる原因や病名は 再生医療による膝の治療に関連する記事はこちら 膝の症例 現役プロスポーツ選手 ひざの痛みにPRP治療 人工股関節、人工関節に関連する記事はこちら 人工股関節術後に脱臼する可能性と生活の注意点をチェック 膝の人工関節手術は失敗がある?知っておくべきリスクとは 当院の治療についての考え方や再生医療についての内容もお読みください 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ
2019.04.08 -
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股関節!人工股関節術後に注意!脱臼する可能性と、ならないために生活上の注意点 股関節に何らかの疾患を抱えてしまった場合、保存療法や関節鏡による手術でも改善が見込めない場合は人工関節に置換することが選択されます。人工股関節に置換すれば、早期から荷重をすることも出来ますし、左右の下肢の長さなど器質的な異常も改善することが出来ます。 そんな人工関節置換術について、どんな症状や疾患の場合に適応されるのかということや、手術後の生活を送る上での注意点などをご紹介していきます。 股関節は球関節に分類される 股関節の一番の特徴は、なんといっても常に荷重がある関節だということです。立位はもちろん、座位でも股関節には体重がかかります。股関節は骨盤の骨と大腿骨の骨で構成されており、関節の形で分類すると球関節に該当します。 球関節は運動の自由度が最も高い関節であり、様々な軸で関節を動かすことが可能です。股関節を前後に動かす屈曲や伸展という動作を筆頭に、左右に動かす外転や内転、下肢全体を捻る外旋や内旋といった動きは全て可能です。 関節包や関節唇で安定性を増している 股関節は荷重を大きく受ける球関節であるために、運動の自由度だけでなく安定性も求められる関節です。そのため、可動域の制限を最小限にとどめる範囲で関節包や関節唇が安定性を保っています。 関節包や関節唇は、股関節にはまり込んでいる大腿骨頭をしっかり覆うように位置していて、靭帯なども強固に付着しているため脱臼の頻度は少ないです。関節唇には神経も通っており、損傷すると痛みを発生します。 何らかの原因で大腿骨頭を取り囲む関節唇を損傷してしまうと、歩行や立ち上がりなど軽微な動作でも痛みを感じるようになってしまいます。 年齢と共に股関節疾患のリスクは上昇する 常に荷重がかかる関節であることも関係して、年齢を重ねると共に股関節関連の疾患を発症するリスクは上がっていきます。股関節の人工関節置換術など、大きな手術が適用になるケースは50代、60代以降の方に多いのが特徴です。 また、大腿骨頭から股関節の関節面に伸びている大腿骨頭靭帯には、血流が豊富に流れているという特徴があります。関節軟骨の代謝など、股関節を栄養する血管の血流が悪化することによっても、股関節の機能が低下する原因になってきます。 股関節の疾患から二次的な症状が多く発生する 股関節に痛みがあったり、違和感があったり、何らかの股関節疾患を発症することによって二次的な症状を多く発生させるという特徴もあります。人間はどこかに痛みが出ると無意識にそこをかばって行動するようになり、股関節の使い方がおかしくなったり骨盤や背骨が歪んだりすることもあるのです。 そこから腰痛や膝痛、周囲の筋肉の緊張が原因で起こる坐骨神経痛や梨状筋症候群など、様々な症状に繋がっていく可能性もあります。そういった二次的な症状が出てきた場合、股関節の疾患を改善するだけでは解決できないケースも出てくるのです。 股関節は人工関節置換術が選択される場合もある 疾患が起きた場合に手術が行われるケースは多々ありますが、股関節は人工関節置換術が選択される場合もある数少ない関節です。人工関節置換術は、基本的に膝関節か股関節に適応される外科的治療で、その他の治療方法が全く奏功しなかった場合に行われるケースが多いです。 股関節のその他の治療方法とは 保存療法 多くの整形外科的な股関節疾患に対しては、まず保存療法が行われます。内容は体重のかけかたや歩き方の指導、杖や車いすなど道具の使用方法といった生活指導が中心です。 その他臀部や大腿部の筋力トレーニング、エアロバイクを使用した運動療法、水中での運動療法などが主です。手術を行うよりもリスクが少ない治療方法ではありますが、大腿骨頭壊死症など股関節の変形が強く進行している場合には荷重することで悪化させてしまうケースも考えられます。 薬物療法 薬物療法は保存療法の一つと考えることも出来ます。基本的には痛み止めや炎症を抑えるための薬が処方されます。ただ、荷重関節であるために薬を処方しても痛みが長期間続くことも多く、長期の薬物の服用によって副作用を起こす恐れも否定できません。 薬を体内で処理するために腎臓に負担をかけたり、胃に負担をかけたりするので内臓の疾患に繋がってしまうかもしれません。薬物療法を行っている間も、主観的な痛みなどの感覚はもちろん、レントゲンやMRIなど客観的な評価でも治療の進行度を測る必要があります。 骨切り術 先天的な疾患でもある臼蓋形成不全によって股関節に痛みを発生させている場合、人工関節置換術ではなく骨切り術が選択されることがあります。臼蓋形成不全は、簡単に説明すると股関節が浅すぎるという器質的な問題がある疾患で、根本的には運動療法や薬物療法で解決することが難しい疾患です。 骨切り術は、股関節の大腿骨頭がはまり込む寛骨臼というくぼみを深く切り抜き、大腿骨頭を深くはまりやすくするための手術です。形態的な部分から改善できるため、股関節の痛みはもちろん、将来的な変形性膝関節症などを予防することにも繋がります。 人工股関節の手術が選択される症状とは 人工股関節の手術を選択されるケースは、日常生活にかなりの支障をきたしたり、他の保存療法でも治療が困難であったりする場合です。どんな症状から人工股関節の手術に踏み切る場合があるのか、ご紹介していきます。 変形性股関節症 股関節の中にある関節軟骨の変形によって、関節内で慢性的な炎症を起こしてしまっている症状です。何か一度の外力で急に股関節の軟骨が損傷して変形してしまうというよりも、日常生活の中で負担を積み重ねて少しずつ変形を進行させるケースの方が多いと言えます。 年齢と共に筋力が低下して股関節を支える力が無くなっていったり、姿勢が悪く股関節の動かし方が悪いせいで関節軟骨のすり減りを助長していたり、仕事の中で負担がかかることが多いなど理由は様々です。 一度変形してしまった関節軟骨は元には戻らないので、痛みが強く常に続いている場合などは人工股関節の手術が適応になります。人工股関節の手術以外で治療をするなら、股関節の運動療法、背骨や骨盤の矯正による荷重の改善などが有効です。 大腿骨頭壊死症 大腿骨頭から関節内に流れる大腿骨頭動脈の血流が断絶され、大腿骨頭の骨細胞が徐々に壊死していく疾患です。アルコール中毒や、ステロイドの使用歴など、大腿骨頭壊死症に繋がる原因はいくつか指摘されていますが、決定的な原因が解明できない症状でもあります。 そのため、大腿骨頭壊死症のほとんどが、原因不明の特発性と判断されているのです。大腿骨頭壊死症が見つかり次第すぐに人工股関節の手術が行われるわけではなく、経過観察されるケースもあります。壊死した骨が潰れるので、荷重がかかることによって痛みを生じます。 壊死した部分に負担をかけないような体の使い方ができたとしたら、手術を回避することも出来るのです。しかし、運動の自由度が高い関節であるため、大腿骨頭の破壊は時間と共に進んでいき、最終的には人工股関節の手術になることが多いでしょう。 関節リウマチ リウマチは自己免疫疾患とも呼ばれ、免疫が異常な動作を起こして体の健康な細胞を攻撃してしまう疾患です。手先など全身の関節で症状が出る可能性がありますが、股関節でもリウマチの症状を起こします。基本的には薬物療法で生活改善を試みることが多いですが、 著しい歩行時痛や歩行困難など、日常生活動作に大幅な支障をきたしている場合は人工股関節の手術になります。しかし、健康な組織を攻撃してしまうという疾患の特徴ゆえに、リウマチが進行しすぎると人工股関節の手術さえできなくなることもあります。 もし人工股関節の手術を視野に入れるなら、比較的早い段階で決断することが必要な場合もあるのです。 人工股関節の手術は年齢によっても変わる 一般的には、人工股関節の手術をするのは60代以降の年齢になります。日常生活の具合や、症状の程度、運動習慣などを加味して50代や40代で行われるケースもありますが、基本的には高齢になってから行うものです。 というのも、人工股関節にも耐用年数があるからです。近年では技術の向上によって人工股関節の耐久も上がってきましたが、それでも20年くらいが1つの目安と言われています。もちろん股関節の使い方や、生活レベルによっても大きく左右されます。 使えば使うほど摩耗していくことは当然なので、人工股関節の手術後にもスポーツや旅行などを楽しみたいという場合は、筋力を取り戻すリハビリも長期間にわたって行う必要があるわけです。 人工股関節の手術後に日常生活で注意すること 人工関節の手術をした後は、股関節に余計な負担をかけないように注意しなければならない点もいくつかあります。 脱臼肢位を避ける 人工股関節の手術後に最も怖いのは、脱臼してしまうことです。これも、近年では手術の技術や人工股関節の精度も高まり、心配は少しずつ軽減されてはいます。しかし、脱臼しやすい肢位を取ってしまうと、通常の股関節に比べて脱臼しやすい状態であることには変わりありません。 股関節が深く屈曲するような体勢や、あぐらのように過度な外線外転肢位になると、脱臼のリスクが高まります。これらの動作は意外と日常生活の中でも頻繁に起こる姿勢で、例えばお風呂の低い椅子に座るなどすると股関節が深く曲がり込みます。 床に座って前かがみになって靴下を履くときもそうです。正座をしたまま遠くの物を取ろうとした時も、股関節の屈曲が強くなります。意識していないとやりがちな体勢なので、人工股関節の手術後は注意を払いましょう。 また、人工股関節の手術をした足を軸にして片足で立ち、高いところに手を伸ばすなどの姿勢も危険です。今度は股関節に伸展力が強く加わってしまうので、脱臼のリスクが高くなってしまうのです。とにかく、過度な屈曲伸展、外転や外旋などの動作を避けることです。 激しい運動を避ける よく言われるのが、スキーやサッカー、バレーボール、バスケットボール、野球など激しくジャンプや捻り動作を行うスポーツを避けるべきだということです。人工股関節が脱臼してしまうリスクがあるとともに、人工股関節の摩耗を早めてしまいます。 ただ、せっかく股関節の手術をしたのだから好きにスポーツを楽しみたいという考えもあります。その場合は動作を制限するなど、なるべく負担を軽減して楽しむことが大切です。運動すること自体は良いことなので、水中でのウォーキングや散歩など、人工股関節への負担が少ない活動を選ぶようにしましょう。 リハビリを長期間続ける 人工股関節の手術後は、筋力が低下しています。手術したことによって動作がしにくいということもありますが、人工股関節にしなければならないほどの症状を患っていたわけです。多くの場合は人工股関節に至るまでに、長年にわたって症状と向き合い続けてきています。 その間に日常生活が大きく制限されるほどの痛みを伴っていたのですから、当然筋力は大きく低下しています。何年もかけて低下した筋力を、短期間で取り戻すのは難しいです。 人工関節の手術後にどのくらいの生活レベルを目指すかにもよりますが、リハビリも長いスパンで計画を立てる必要があるわけです。 再生医療も発達してきている 今の日本では、再生医療をリードしようという動きもみられています。一度失ってしまった機能を、細胞移植によって再び取り戻そうという医学です。再生医療に関心のある方当院まで、ご遠慮なくお問い合わせ下さい。 監修:リペアセルクリニック大阪院 人工関節に関連する記事はこちら 膝の人工関節手術は失敗がある?知っておくべきリスクとは 足の付け根の痛みに関連する記事はこちら 足の付け根が痛い場合は手術が必要?考えられる病態とは 当院の治療についての考え方や再生医療についての内容もお読みください スポーツ外傷・障害の痛みに対する当院の治療 変形性股関節症に対する当院の治療 再生医療とは PRP(多血小板血漿)療法とは ご相談から治療までの流れ 監修:リペアセルクリニック大阪院
2019.04.08 -
- 糖尿病
糖尿病は年齢が高くなるとリスクが高くなるって本当? 年齢を重ねると、糖尿病の危険性が高まるといわれています。特に親族に糖尿病と診断された方がいる場合では、自分もいずれ発症するかもしれないと不安を感じてしまうものです。 健康に暮らしていくために知っておきたい、年齢と糖尿病の関係について知っておきましょう。 高齢者は糖尿病の危険性が高くなる 糖尿病発症のリスクは加齢とともに高まります。特に注意すべきは40代以降です。厚生労働省「2017年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は、40代男性で8.1%、女性で3.1%に達するという結果が報告されています。 50代では男性で14.6%、女性で5.1%と、大幅に数字が伸びており、高齢者ほど糖尿病を発症しやすいことが明らかになっています。 人間の体は、年齢を重ねるとさまざまな機能が低下します。加齢により運動機能が低下すると、体全体の筋肉量が減少し、その一方で内臓脂肪は増加します。 その結果、インスリンの働きが低下し血糖値が高くなりやすくなるため、若年層に比べて糖尿病を発症することが多くなるのです。糖尿病は、重症化するまで自覚症状はほとんどありません。 気づいたときには、すでに進行して合併症を発症している例も多く、動脈硬化などリスクが高い合併症も懸念されます。40代以降では、定期的に検査を受けることが大切です 高齢者が糖尿病になる原因 高齢者が糖尿病になる原因として、生活習慣の改善が困難であることが挙げられます。 糖尿病の予防や治療の基本である食事療法と運動療法では、主に生活習慣の改善が行われます。 しかし、高齢者にとって慣れ親しんだ生活習慣を変えることは、若年層と比較すると難しいものです。 さらに、加齢に伴う身体機能の低下で疲れやすくなる、介護が必要となっているなど自立した生活を送れない高齢者であれば、協力者がいなければ食生活や運動習慣を変えることはできません。 医師から生活指導を受けてもなかなか改善に至らず、糖尿病が進行してしまう例も見られます。 また、加齢にともなう身体機能の低下により、インスリンを分泌する働きが弱まることも原因のひとつです。体内で分泌されたインスリンの働きの低下は、糖尿病の発症を招きます。 また、身体機能の低下は、糖尿病の自覚症状を気づきにくくするという問題もあります。自覚症状を感じたとしても、加齢による症状だと思い込んでしまい、病気の発見が遅れてしまうこともあるのです。 男性と女性はどちらの糖尿病患者が多い? 国内で男性と女性の糖尿病有病者率を比較すると、男性の割合がより高くなっています。 厚生労働省が2017年に発表した「国民健康・栄養調査」の結果によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は男性で18.1%、女性で10.5%となりました。 このような性別による差異と関連して、男性の肥満化も指摘されています。同調査では、BMIが25以上で肥満傾向にある人の割合は、男性で30.7%、女性で21.9%という分布になっています。 女性よりも男性のほうが、肥満の割合が高いことが分かります。 2型糖尿病は生活習慣とのかかわりが深い病気です。日常生活で食べ過ぎや運動不足が続き肥満になることも、糖尿病を引き起こす要因のひとつと考えられています。 また、性ホルモンの違いも、糖尿病有病者率に関係しているという見方もあります。動物実験の結果、オスの精巣を取り除いた個体では糖尿病の発病率が下がり、メスの卵巣を取り除いた個体では発病率が上がるという研究結果も報告されています。 高齢者の血糖値の特徴 高齢者が糖尿病治療を受ける場合に目標とするHbA1c値(ヘモグロビンA1c)は、認知機能にほとんど障害がなく、自立した日常生活を送れている方であれば、7.0%未満が目安となります。 薬物療法を行っている場合は、低血糖のリスクがあるため7.5~8.0未満が目標に設定されます。 高齢者が糖尿病治療を受ける場合は、低血糖に注意しなければなりません。糖尿病治療では、高くなりすぎた血糖値を下げるために、インスリン製剤や血糖降下薬を服用して改善を図る薬物治療が行われます。 ところが、医薬品の働きにより血糖値が下がりすぎ、低血糖に陥ってしまうおそれもあるのです。 低血糖の主な症状には、手足の震え・冷や汗をかく・頭痛などが挙げられ、重篤なケースでは意識障害なども生じます。 特に高齢者の場合は感覚が鈍くなっているため、低血糖症状に気づくのが遅れて重症化しやすい傾向があります。 低血糖が疑われる際は、すみやかにブドウ糖を摂取し、主治医の診察を受けましょう。 高齢者の血糖値の確認方法 高齢者の糖尿病は、発見が遅れて重症化することが少なくありません。病気をできるだけ早く発見し、正常値を目指して治療を行うために、定期的に検査を受けることが求められます。 血糖値は医療機関で検査をする以外に、自分で確認する方法もあります。 例えば、薬局などの施設に設置されている「ゆびさきセルフ測定室」では、手軽に血糖値を測定できます。測定は数分から10分程度で完了するため、利用してみるとよいでしょう。 自宅で血糖値を計測する場合は、血糖自己測定器や持続血糖測定器を用います。血糖自己測定器とは、指先から血液を採取して、ブドウ糖の濃度を測定できる医療機器です。 持続血糖測定器とは、体に専用のセンサーを装着し、細胞間にある液体「間質液」中の糖濃度を調べる医療機器です。 血管から間質液に移動したブドウ糖の濃度を計測した数値を血糖値に換算し、数日間の記録を残すことで、血糖値がどのように変動しているのかを確認できます。 高齢者でも運動療法は必要 高齢者の糖尿病治療においても、運動療法は効果的です。運動により筋肉が強化され、基礎代謝の向上が見込めます。 定番の運動である、ウォーキング・腹筋・腕立て伏せ・スクワットなどは、強度調整により、高齢者でも無理なく行えます。 筋肉が鍛えられると糖尿病の治療につながるだけでなく、正しい姿勢を維持することで腰痛を防ぐことにも役立ちます。 運動を行うのが難しい場合は、日常生活の中で歩く時間を増やしたり、正しい姿勢を保つよう意識するだけでも、健康効果が期待できます。 また、運動療法は血糖コントロールに有効であるだけでなく、生活習慣病の予防やストレスの発散にもつながります。血流の改善や、食欲の回復など、幅広い効果が期待されます。 運動療法で高齢者が注意すべき点 高齢者が運動療法に取り組む際は、運動の強度や可否について、必ず医師の指導を仰いでください。 特に糖尿病の合併症がある場合は、運動を避けなければいけないこともあるため、事前の確認が不可欠です。 主治医から運動療法の許可を受けた場合でも、はじめのうちは負荷の大きな運動は避け、軽い運動から取り組みましょう。 散歩や買い物など、日常生活で体を動かす頻度を増やす程度でも問題ありません。運動に慣れてきたら、軽いジョギングを取り入れるなど、少しずつ負荷を増やしていく流れが理想的です。 また、運動を行う前は準備運動、運動を終えたら整理運動を行ってください。 運動療法では、こまめな水分補給も大切です。運動による脱水症状に注意してください。 また、天候が運動に適さない場合であれば、屋内でできる運動だけでも構いません。無理のない範囲で続けられる運動を、自分の体力に合わせて実施しましょう。 まとめ 年齢を重ね身体機能が低下すると、糖尿病のリスクは高まります。特に高齢者は糖尿病の自覚症状に気づきにくく、生活習慣の改善も難しいことから、糖尿病を悪化させやすいリスクもはらんでいます。 また、薬物療法の副作用として生じる低血糖も懸念されます。食事療法や運動療法も含め、主治医の指導の下で治療に取り組みましょう。 こちらも併せてご参照ください
2019.04.05 -
- 糖尿病
糖尿病の末期症状|手足の震えや視力の低下でわかる自覚症状 糖尿病は無自覚・無痛の状態から始まりますが、末期の患者さんは失明したり足を切断したり人工透析を受けたりしています。 したがって糖尿病患者の方やその家族の方は、糖尿病の末期症状について把握し、糖尿病をこれ以上進行させないようにしましょう。 この記事では糖尿病の末期症状とその予防方法を紹介します。 糖尿病の末期症状 高血糖の状態が長く続くとさまざまな合併症を引き起こしやすくなるといわれています。脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気も糖尿病の合併症です。 合併症は、その病気に伴って引き起こされる病気のことで、合併症のほうが元の病気より深刻なこともあります。 特に糖尿病の合併症は糖尿病そのものよりも深刻な結果を招きます。 糖尿病の合併症は、血糖値が高い状態が続くことで、血管がぼろぼろになったり神経が侵されたりすることで起きます。 さらに、血管が損傷すると細胞に酸素や栄養が行き届かなくなるため、全身にさまざまな障害が起きます。 この記事では、以下の4つの合併症について解説していきます。 ●糖尿病性神経症 ●糖尿病性網膜症 ●糖尿病性腎症 ●尿毒症 上記4つのうち「糖尿病性神経症」「糖尿病網膜症」「糖尿病性腎症」の3つを糖尿病の三大合併症と呼んでいます。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病性神経症 糖尿病の合併症のなかでも特に発症頻度が高いのが、糖尿病性神経症です。手足などに走っている末梢神経がダメージを受け、痛みやしびれが出てきます。 糖尿病性神経症のその他の症状には次のようなものがあります。 ●手足の痛みやしびれ ●安静時に足がつる ●顔面神経麻痺 ●感覚の鈍化 糖尿病性神経症は、高血糖の状態が続くことによってソルビトールという物質が神経細胞に蓄積することで起きると考えられています。 また、高血糖は毛細血管の血流を悪化させるので、末梢神経の細胞が毛細血管から酸素や栄養を受け取れなくなります。 その結果、神経細胞が壊されるのではないか、といわれています。糖尿病性神経症を引き起こす原因はほかにもあるとする説もありますが、いずれにせよ原因は明らかになっていません。 糖尿病性神経症を放置すると痛みなどの感覚を感じなくなるので、傷を負っても気がつかず治療を怠ってしまうことがあります。そうすると細菌に感染しやすくなり、細胞が壊死します。 壊死した細胞は再生できません。足の細胞が壊死したら足を切断することになってしまいます。 糖尿病性神経症も早期に発見して治療に取り組むことが重要です。 糖尿病性神経症の治療には、食事療法や運動療法、薬物療法などがあります。また痛みやしびれがある場合はそれを緩和させる治療を行うこともあります。 食事療法や運動療法に関しては後述します。 糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症は日本の成人の失明原因の上位になります。 網膜は目の眼底にある神経細胞が敷き詰められた膜です。網膜で光や色を感じ、その情報が脳に届くことで「見える」ようになります。 網膜には細い血管も張りめぐらされています。そのため高血糖状態が続くとその血管が損傷を受け、神経細胞に酸素と栄養が届かなくなります。 このとき、新しい血管(新生血管)をつくって神経細胞に酸素と栄養を届けようとします。 新しい血管ができるのであれば「良いこと」のように感じるかもしれませんが、そうではありません。新生血管は元の血管よりもろいので簡単に壊れて出血しやすくなるのです。 新生血管が出血するとかさぶたのような膜(増殖組織)ができます。 この膜が網膜を引っ張ってしまい、網膜剥離の原因となります。網膜剥離とは、網膜が眼球壁からがれることですので、網膜で光や色を感じられなくなり視力低下や失明を招きます。 糖尿病性網膜症には次の3種類があります。 ●単純糖尿病網膜症 ●前増殖糖尿病網膜症 ●増殖糖尿病網膜症 それぞれについて以下で説明します。 単純糖尿病網膜症 単純糖尿病網膜症は初期段階のことで、血管の瘤である毛細血管瘤ができたり、小さな出血がおきたりします。単純糖尿病網膜症では自覚症状がありません。 この段階で血糖コントロールなどを行い血糖値の改善ができれば改善できることもあります。 前増殖糖尿病網膜症 前増殖糖尿病網膜症は、単純糖尿病網膜症が進行した状態です。網膜の血管の障害が進むことで網膜に酸素が行き渡らなくなります。その結果、新生血管ができ始めます。 この状態になると目のかすみといった症状が現れます。この段階では網膜光凝固術という治療を行います。 これは血流の悪い部分にレーザーを当てることで低酸素状態を改善し、新生血管がつくられるのを予防したりする治療法です。 増殖糖尿病網膜症 前増殖糖尿病網膜症より重症化した状態が増殖糖尿病網膜症です。この状態になると、新生血管が伸び、網膜だけでなく硝子体という別の器官も障害されるようになります。 新生血管が破れると硝子体出血を起こします。出血が起こると黒いゴミのようなものが見える飛蚊症という症状を引き起こします。さらに進行すると視力低下を招きます。 新生血管が破れると増殖組織という膜ができますが、この膜が収縮すると網膜が引っ張られるため、網膜剥離を引き起こしてしまいます。 この段階になると硝子体手術という治療を行います。手術器具を使って眼球に穴を空け、増殖組織を取り除き、剥離した網膜を戻したりします。 ただし、視力や網膜が完全に元の状態に戻るわけではありません。 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症とは糖尿病の合併症の1つで腎臓が障害される病気です。症状は段階的に進んでいきますが、ひどい場合には腎臓が完全に機能しなくなる腎不全に陥ることもあります。 腎不全まで進んだ場合は人工透析という治療が必要になります。国内の透析患者さんの約4割が糖尿病性腎症であるとの報告もあります。 糖尿病性腎症も初期は自覚症状がほとんどなく、発見しづらい病気ですが、進行すると次のような症状が現れます。 ●むくみ ●しびれや痛み ●満腹感 ●食欲不振 ●息切れ ●胸の苦しさ ●顔色の悪化 ●疲れやすくなる(易労感) ●嘔気、嘔吐 ●筋肉の強直 ●つりやすくなる ●筋肉や骨の痛み ●腹痛 ●発熱 糖尿病性腎症には病気の進行度合いに応じて第1期から5期までの「病期」が設定されています。第1期、第2期の段階ではほとんど自覚症状がありません。 第3期になると、むくみや胸の苦しさ、息切れなどの症状が出てきます。 さらに第4期、第5期と症状が進むと、筋肉や骨の痛み、つりやすくなる、顔色の悪化などが生じます。 糖尿病性腎症では病期によって以下の治療を行います。 第1期(腎症前期)では血糖コントロールになります。 第2期(早期腎症期)では血糖コントロールをより厳格に行い、降圧治療も開始します。 第3期(顕性腎症期)では治療にタンパク質制限が加わります。タンパク質の食材を食べないようにします。 第4期(腎不全期)では人工透析を導入します。人工透析を開始すると原則、中止できません。 第5期(透析療法期)では腎移植も検討に入ります。 第4期まで症状が進むと人工透析を行うことになります。人工透析は週3回、1回4時間かかるものです。 生活に大きな支障を来たしますので、病期を進めないように血糖コントロールや降圧治療、タンパク質制限などにしっかり取り組みましょう。 尿毒症 腎不全になると腎臓の機能が低下します。腎臓が機能しなくなることで体内の老廃物や毒素を尿によって体外に排泄することができなくなり、血液中の有害物質が多くなってしまうと尿毒症を発症することがあります。 尿毒症の症状は全身におよびます。主な症状は次のとおりです。 ●脳関連の症状:頭痛、不眠、けいれん、意識障害 ●目関連の症状:眼底出血、視力障害 ●口のなかの症状:味覚異常、歯肉出血 ●顔の症状:むくみ、顔色の悪化 ●心臓関連の症状:動悸、高血圧、脈の乱れ、心肥大 ●血管関連の症状:血管の石灰化(硬くなる) ●肺関連の症状:咳、息苦しさ ●血液関連:貧血など血液検査による数値の悪化 ●腎臓関連の症状:尿量が減る ●胃腸関連の症状:吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、胃潰瘍、十二指腸潰瘍 ●皮膚関連の症状:かゆみ、むくみ、色素沈着、皮下出血 ●神経関連の症状:感覚異常、いらいら ●骨の症状:高リン血症、低カルシウム血症 尿毒症を発症すると透析療法が必要になります。このように尿毒症は生活の質を大きく低下させる病気です。 糖尿病の予防方法 糖尿病は食べ過ぎ、運動不足、ストレス、不規則な生活などが原因で発症する場合があります。また、これらの生活習慣はインスリンの働きも妨げてしまいます。 糖尿病の原因となるうる生活習慣には以下のようなものがあります。 ●食べ過ぎ ●運動不足 ●過剰なストレス ●睡眠不足 糖尿病の進行を食い止め、合併症を引き起こさないためにもこれらの生活習慣を改善する必要があります。 必要量のエネルギーをとる 糖尿病を予防するには、必要エネルギー量の範囲内で炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良くとることが大事です。 1日のエネルギー必要量は次のように算出します。 ・1日のエネルギー必要量=標準体重×身体活動量 ・標準体重=身長(m)×身長(m)×22 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークなど)25~30Kcal/kg 普通の労作(立ち仕事など)30~35Kcal/kg 重い労作(力仕事など)35~Kcal/kg 軽めのウォーキングを継続する 糖尿病は運動不足や肥満が原因などの原因が重なることで発症するといわれています。したがって継続的な運動をすることで糖尿病の進行を防ぐことができる場合があります。 運動をすると筋肉でエネルギーが消費されるので、血糖値が下がる効果が期待できます。 また運動不足が原因で糖尿病を発症した方は運動によってインスリンの働きが改善することがあります。 運動不足の人は軽めのウォーキングから始めてみてはいかがでしょうか。 血糖値コントロールには食後1~2時間後にウォーキングを行うことが良いでしょう。1分間に80メートル進む程度の速さで1回1万歩、週3回以上行うようにしましょう。 ストレス源を遠ざける 糖尿病はストレスが原因で発症することもあります。 日常生活で完全にストレスをなくすことはできませんが、ストレスを感じるストレス源(ストレッサー)を取り除いたり、遠ざけることでストレスを減らすようにする必要はあります。 例えばストレスの対処法には次のようなものがあります。 ●環境を変える ●十分な休養をとる ●娯楽や趣味でリフレッシュする ●腹式呼吸をする ●専門家や友人に相談する ●仕事の環境を変える など 7~8時間以上の睡眠をとる 7~8時間程度の睡眠をとることも、糖尿病を末期症状にまで悪化させないために重要です。 睡眠不足だと空腹時血糖値が上昇し、インスリンの分泌が低下するといわれています。つまり、睡眠不足は糖尿病のリスクが高まるだけでなく、糖尿病の悪化にもつながるのです。 反対に睡眠時間を延長すると、空腹時血糖値を低下させたり、基礎インスリン分泌能が増大することもわかっています。 つまり十分に睡眠をとることは糖尿病のリスクを減らすことにつながるのです。 糖尿病を悪化させないためにも質の良い睡眠を心がけましょう。 まとめ 糖尿病は放っておくとさまざまな弊害が出る病気です。また、早い段階で適切な治療に取り組まないと病気が進行してしまううえ、健康な状態に戻ることができなくなります。 特に三大合併症は、進行すると失明や足の切断、人工透析にいたることもあります。 このような状況を防ぐためにも、食事療法や運動療法を取り入れ、十分な睡眠をとり、ストレス解消に取り組みましょう。
2019.04.05 -
- 糖尿病
糖尿病の進行速度は症状でわかる|体重が減少し始めた人は要注意 糖尿病で懸念されるのが、症状の進行にともなう合併症です。動脈硬化や神経障害、脳梗塞、心疾患など、さまざまな症状が現れますが、発症からどれくらいの時期に合併症が引き起こされるのか、不安に思う方も少なくありません。 糖尿病の進行で現れる合併症とその種類、血糖値をコントロールするための治療法を解説します。 糖尿病の進行状況と合併症 初期段階の糖尿病は、自覚症状がない場合が多いです。しかし、この時点で動脈硬化が起こっている可能性もあり、そのまま放置すると脳梗塞や心筋梗塞などにつながるおそれがあります。 その後、5~10年にわたり症状が進行すると、以下のような合併症が引き起こされるリスクが高まります。 糖尿病の進行で現れる症状 引用元:メディマグ.糖尿病 糖尿病の初期段階では自覚症状はほぼありません。具体的な症状は現れはじめたときには、すでに相当進行していることが疑われます。 〈糖尿病の進行で現れる症状〉 ● 神経障害:高血糖が続き、神経障害が起こると、手や足の指先がしびれるようになる。 ● 壊疽:下肢閉塞性動脈硬化症により、足が壊疽し、最悪の場合切断するケースも。 ● 体重の減少:インスリンの働きの低下で、脂肪にブドウ糖が取り込まれず、たんぱく質が分解されて体重減少を招く。 神経障害 糖尿病の進行で注意しなければならないのが、神経障害です。高血糖が続くと末梢神経の代謝機能が低下し、老廃物が溜まったり、血管損傷で神経に栄養が行きわたらなくなったりと、神経の働きが阻害されます。 〈神経障害の症例〉 ● 感覚の異常:手足のしびれ、足の裏の違和感、痛み、冷感、ケガや傷みに鈍感になる、など ● 心臓の異常:無痛性の心筋梗塞や起立性低血圧 ● 目・顔面の異常:顔面神経麻痺、眼球運動機能の低下など ● 四肢の異常:筋力の低下や筋萎縮、足の変形など ● 泌尿器の異常:排尿障害、残尿など ● 胃腸器官の異常:自律神経の不調により、吐き気や食欲低下、便秘や下痢などの症状 壊疽 高血糖が原因で足の血管が硬化する閉塞性動脈硬化症を発症すると、血行が悪くなり、歩くだけで痛みをともなうようになります。さらに進行すると歩かなくても痛みを感じるようになり、最終的には壊疽(足が腐ってしまうこと)するまで悪化。最悪の場合は切断もありえます。 足の壊疽は神経障害に由来する側面もあります。神経が麻痺し、痛みを感じにくくなると、傷があっても放置してしまうからです。そのままだと敗血症を起こし、最悪の場合は死に至る危険性もあるため、必要に応じて切断の措置が取られます。 体重の減少 糖尿病といえば「肥満」のイメージですが、体重減少も起きやすい症状のひとつです。食事から取り入れたブドウ糖は、本来インスリンの働きによって細胞内にエネルギーとして取り込まれます。 ところが、糖尿病患者はインスリン分泌力が低下しているため、血管内に糖が蓄積されるだけとなり細胞内の糖が減少。これを補うために、脂肪や筋肉が分解され、体重が減ってしまうのです。 体重減少が認められる場合は相当な進行が予想され、自覚症状としては喉の渇きを強く覚えます。 同様の症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。 そのほかの合併症 高血糖の状態が続くと、はじめに影響を受けるのが血管です。損傷範囲は全身の血管におよぶため、前述した神経への障害のみならず、目や腎臓、心臓、脳など重要な器官にも障害が発生します。 ほとんどの場合、本人が気付かないうちに症状が進行し、さまざまな合併症が誘発される例も少なくありません。 〈合併症の症例〉 ● 神経の障害:糖尿病神経障害 ● 目の障害:糖尿病網膜症 ● 腎臓の障害:糖尿病腎症 また、糖尿病の初期段階で発生する症例として、動脈硬化があります。高脂血症や肥満、高血圧、メタボリックシンドロームを併発すればさらに高血糖状態が重症化するため、早期発見・早期治療が重要です。 心臓病や脳卒中など、重篤な症状を引き起こすリスクも考えられます。 糖尿病の進行を抑える方法 糖尿病の対症療法として、「食事療法」「運動療法」「薬物療法」があります。それぞれ進行状況に合わせ、適切な療法が選択されます。 〈糖尿病の進行を止める方法〉 ● インスリン注射で血糖値をコントロールする ● 内服薬で血糖値をコントロールする ● 日常生活の食事や運動でコントロールする 上記の内容について、以下で詳しく説明します。 インスリン注射で血糖値をコントロールする 高血糖状態が長期におよぶと、膵臓が疲弊し、インスリンを分泌する力が失われます。合わせてインスリン抵抗性が助長された結果、糖尿病を発症するわけですが、初期の段階では少量ながらもインスリンは分泌されます。 その後、症状が進行してほとんどインスリンが分泌されなくなった場合は、インスリンの外部注入により、血糖値の低下を図ります。 内服薬で血糖値をコントロールする 血糖値を下げるための内服薬も有効です。大きく分けて「インスリンの分泌をよくする薬」「インスリンの利きをよくする薬」「摂取した糖の分解・吸収を遅らせる薬」「糖の排泄を促す薬」の4種類があります。 進行具合や血糖値の推移、体質などを診て、医師が適切と思われる種類を選択します。なお、インスリン分泌を促すためのインスリン注射も、薬物療法の一種です。 日常生活の食事や運動でコントロールする 高血糖の予防・改善策としてまず試みられるのが、食事療法と運動療法です。糖は食事から取り込まれ、血管を通って細胞に蓄積されます。体に取り込む炭水化物の量をコントロールすることで、糖の量を調節し、健全な血糖値への誘導を図ります。 食事によって取り込まれた糖は、運動で消費されます。筋肉量が増えると、細胞に糖を取り込みやすくなるため、血糖コントロールにつながります。また、脂肪の減少は血糖値を抑制するインスリン機能を向上させ、糖が正常に蓄積される環境を整えていきます。 まとめ/糖尿病の進行速度は症状でわかる|体重が減少し始めた人は要注意 単に血糖値が高いだけでは異常に気付きにくく、合併症の進行を許してしまうのが糖尿病の怖いところです。 重症化すると血管や神経が阻害され、最悪の場合、心筋梗塞や脳梗塞、網膜や腎臓の障害などを引き起こすことから、定期的に検査を受けて早期に発見することが望まれます。 糖尿病と診断されても、生活習慣の見直しやインスリン注射、内服薬など有効な治療はありますので、主治医の指示にしたがいながら少しずつ改善を目指してください。 ▼こちらも併せてご参照ください 監修:リペアセルクリニック大阪院
2019.04.04 -
- 糖尿病
糖尿病の検査指標|5つのコントロール指標とは 糖尿病と診断されるまでには、複数の検査が行われることがあります。それぞれの検査で糖尿病と診断される指標には、一体どのようなものがあるのでしょうか。 また、血糖値をはじめとする指標において、正常値と糖尿病型判定ではどれくらいの差があるものなのでしょうか。 医療機関で糖尿病の疑いがあると診断された方や、糖尿病予備軍と診断された方へ向けて、糖尿病の検査指標について紹介していきます。 糖尿病の検査指標 糖尿病の診断に用いられる主な検査方法には、採血による血糖値の検査、採血によるグリコヘモグロビン検査(HbA1c)、尿糖検査が挙げられます。血糖値の検査では、血液中のブドウ糖の濃度を調べます。食後は血糖値が高くなりやすいため、空腹時または食後に血糖値の測定を行います。 測定の結果からはっきりと判断できない場合は、ブドウ糖を摂取し高血糖状態としたうえで、経過時間ごとの血糖値を検査するブドウ糖負荷試験も行います。グリコヘモグロビン検査(HbA1c)は、血液中のグリコヘモグロビンの状態を調べることで、過去1~2カ月間の平均的な血糖値を明らかにする検査です。 血糖コントロールの状態が評価されます。 尿糖検査は、尿に含まれるブドウ糖の割合を調べます。糖尿病の治療効果を確認することはできますが、軽度の糖尿病では尿からブドウ糖は検出されないため、糖尿病を発見する目的では一般的に用いられない検査です。 糖尿病と診断される指標 糖尿病の検査を通じ、いずれかの検査値が基準値を鵜阿波回った場合に糖尿病型と判定され、さらに典型的な糖尿病の症状が見られる場合や、糖尿病網膜症が現れている場合には糖尿病と診断されます。 たとえば、血糖値の検査とグリコヘモグロビン検査の両方で糖尿病型の判定が出た場合は、糖尿病と判断されます。どちらか一方のみが糖尿病型と診断された場合は再検査を行います。 ●正常型・糖尿病型の指標 糖尿病のコントロール指標 糖尿病を改善するために、どれくらいの数値を目指すべきなのか。各検査値のコントロール指標を紹介します。ただし、実際に治療の目標となる数値は、年齢・罹患期間・臓器障害・低血糖のリスクなどを考慮したうえで設定されます。また、これらの指標は妊娠中の女性には該当されません。 コントロール指標におけるHbA1c値 糖尿病治療で血糖値の正常化を目指す場合、グリコヘモグロビン検査の目標値は6.0%未満となります。食事療法や運動療法のみで目標達成が可能な方や、薬物療法で副作用の心配がない方が、こちらの目標値に該当します。 一方、糖尿病の合併症を予防することが目的であれば、7.0%未満を目指します。また、薬物療法による低血糖など副作用のリスクが懸念され、治療の強化が難しい場合は、8.0%未満を目標としてコントロールが行われます。 コントロール指標における血糖値 血糖値が空腹時100mg/dL未満、食後2時間120mg/dL未満の方は、コントロール指標のうちで評価がもっとも高い「excellent(優)」に該当します。空腹時血糖値100~119mg/dL、食後2時間120~169mg/dLの場合は、「good(良)」と評価されます。 空腹時血糖120~139mg/dL未満、食後2時間170~199mg/dLの方の状態は「fair(可)」です。なお、空腹時血糖値には異常がないにもかかわらず、食後血糖値が高い状態が続く傾向であれば、食後高血糖のタイプであることが疑われます。 血糖値と併せてHbA1c値も確認が必要です。 コントロール指標における体重 肥満はさまざまな病気の原因となり、糖尿病や合併症のリスクを高めます。身長と体重から算出した「BMI」の数値が25を超えている場合は、すでに肥満の状態にあるため注意しなければいけません。 BMIは下記の計算式で求められます。 BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m) すでに肥満の状態にある方は、まずは25以下を目標に体重管理を行います。もっとも長命で有病率が少ない数値はBMI22であるため、最終的には20~24を目指すことが理想です。 コントロール指標における血圧 糖尿病患者のうち4~6割は高血圧といわれています。糖尿病による高血糖やインスリン抵抗性で体液や血液の量が増えると、血圧が高くなるためです。コントロール指標では、収縮期血圧 130mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を目指します。 コントロール指標における血清脂質 血清脂質の数値は、血液中の脂肪の濃度を表します。糖尿病を含む、動脈硬化を引き起こす病気にかかっている場合は、特にコントロールの必要性が高まります。 糖尿病治療では、総コレステロールが200mg/dL未満、早朝空腹時の中性脂肪が150mg/dL未満、HDL-コレステロールが40mg/dL以上、LDL-コレステロールが120mg/dL未満を目指しましょう。 まとめ/糖尿病の検査指標|5つのコントロール指標とは 糖尿病の診断には、複数の検査方法が用いられています。糖尿病を発見するための検査として、主に血糖値の検査やグリコヘモグロビン検査(HbA1c)が行われ、両方で糖尿病型と判定が出た場合には、糖尿病と診断されます。 糖尿病を改善するためのコントロール指標では、HbA1c値・血糖値・体重・血圧・血清脂質などの検査項目で、それぞれ目標値が定められています。 糖尿病の進行を予防、または適切な治療を続けていくために、これらの目標値を参考にしてください。 ▼こちらも併せてご参照ください 監修:リペアセルクリニック大阪院
2019.04.03 -
- 糖尿病
糖尿病の三大合併症とは|症状別の病期に現れる異常を知る 糖尿病に罹患している患者の体には、血糖値の上昇によりさまざまな問題が起こります。特に注意すべきは合併症となりますが、合併症の種類や症状について理解できていない糖尿病患者も少なくありません。 合併症の中でも「三大合併症」と呼ばれる症状にスポットを当て、症状や進行度、治療方法などについて紹介していきます。正しい知識を身に着け、予防に取り組んでいきましょう。 糖尿病の三大合併症 糖尿病はさまざまな臓器に影響をおよぼす病気です。根本的な治療を行わず糖尿病を放置していると、病気が進行した結果、糖尿病合併症を発症するおそれがあります。 特に、以下の病気は三大合併症と呼ばれ、糖尿病と密接な関係があるとされています。 ● 糖尿病性神経障害 ● 糖尿病性網膜症 ● 糖尿病性腎症 糖尿病の三大合併症は「神経障害」「網膜症(目の障害)」「腎症」の頭文字をとって「しめじ」と称されます。以下にて、それぞれの病気について詳しく紹介していき 糖尿病神経障害 糖尿病による高血糖状態が続くと、感覚神経や自律神経、運動神経などに異常が発生します。以下は神経障害による主な異常とその症状です。 〈神経障害による異常と症状〉 ● 感覚の異常 ・両手や両足先のしびれ、痛み ・皮膚感覚の低下 ● 心臓や血圧調整の異常 ・無痛性心筋梗塞 ・起立性低血圧 ● 目や顔面の異常 ・顔面の麻痺 ・眼球運動の異常 ● 胃腸運動の異常 ・下痢、便秘 神経障害によって起こる痛みには、内服薬での対処や生活習慣の見直しなど、改善のための血糖コントロールが欠かせません。 糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症は、高血糖により網膜の血管に異常が起こることで発症する、失明の原因にもなる深刻な合併症です。初期段階では自覚症状がほとんどないため、違和感を覚えたときには病状が悪化している可能性があります。 網膜に存在する視細胞は、目に入った光を視覚情報として変換する働きがあります。網膜症が進行して網膜の血管にダメージが生じると、詰まりや出血などが発生し、視界が不明瞭になる、視力が低下するなどの症状がみられるようになります。 糖尿病性網膜症の病期 引用元:スガオ眼科 糖尿病性網膜症の病気は以下の三段階に分けられます。 ● 単純網膜症 ● 増殖前網膜症 ● 増殖網膜症 進行のスピードは人によって異なりますが、40~50代など比較的若い層の患者は病状の悪化が早い傾向にあります。ただし、血糖コントロールを適切に行うことで、進行を遅らすことも可能です。 それぞれの進行段階について、詳しく見ていきましょう。 単純網膜症 単純網膜症は、糖尿病網膜症の初期症状です。視力には影響がないため、ほとんどの患者は発症していることに気づきません。 単純網膜症を発症すると、小さな点状の出血や、毛細血管が膨張しできる毛細血管瘤が生じます。また、硬性白斑という脂肪やたんぱく質の沈着によって起こるシミもみられます。 この時期であれば、血糖コントロールによって症状の改善が期待できます。 増殖前網膜症 単純網膜症が進行すると、増殖前網膜症に移行します。単純網膜症によって生じた血管の異常がさらに進むと、網膜に血液が十分に行きわたらなくなり、酸素不足が生じます。 そこで酸素欠乏を補うために、新しい血管(新生血管)をつくりだす準備がはじまります。また、軟性白斑という血管の詰まりによって生じるシミもみられます。 この段階でも視力への影響はなく自覚症状として気づくことはありませんが、かすみ目が生じる場合もあります。 増殖網膜症 増殖前網膜症がさらに進行した状態が、増殖網膜症です。この段階になると、新生血管が網膜や硝子体に広がってきます。新生血管は破れやすいのが特徴です。血管が破裂して硝子体出血が起こると、視界に黒い虫のようなものが見える飛蚊症が生じることがあります。 出血量が多ければ、視力低下を引き起こすおそれもあります。また、増殖膜が生じて網膜が引き寄せられ、牽引性の網膜剥離が生じることもあります。そうなると自然治癒は難しく、手術が必要となることもあります。 網膜剥離の際にも、飛蚊症や視力低下などの症状がみられます。 糖尿病性腎症 糖尿病性腎症は、糖尿病の経過中にみられる病気です。詳しい原因は明らかになっていませんが、高血糖状態が長引くことによる動脈硬化に発症の一因があると考えられています。 腎臓には毛細血管が集まってできた糸球体が存在します。糸球体は、血液内に含まれる老廃物などをろ過し、体外へ尿として排出する働きを担っています。糸球体の血管が動脈硬化によって破れたり詰まったりすると、腎臓の働きが悪くなってしまいます。 腎臓の機能が低下していくにつれ、尿に含まれるたんぱく質が増える、血圧が上昇するなどの症状がみられるようになります。腎症も初期段階では自覚症状が現れないため、気づかないうちに病気が進行していきます。 治療せずに放っておくと腎機能が低下し、最終的に慢性腎不全となるおそれもあります。 ▼こちらも併せてご参照ください 糖尿病性腎症の病期 糖尿病性腎症は、第1期~第5期の5段階で進行します。 ● 第1期(腎症前期) ● 第2期(早期腎症期) ● 第3期(顕性腎症期) ● 第4期(腎不全期) ● 第5期(透析療法期) ステージを分ける指標となるのは、尿アルブミン値または尿蛋白値と腎機能です。進行速度には個人差があり、どの段階にあるかによって治療方法も変わってきます。 第1期~第5期までのそれぞれの症状について、順に紹介していきます。 第1期(腎症前期) 腎症前期では自覚症状がなく、検査しても尿アルブミン値は正常のため、腎症と判断することはできません。腎症が進行することのないよう、普段の生活での食事療法による血糖コントロールや、血圧の管理が求められます。 また、この段階であれば食塩やカリウムの食事制限はありませんが、たんぱく質を摂りすぎないよう注意してください。 第2期(早期腎症期) 第2期にあたる早期腎症期では、尿検査を行うと微量のたんぱく質が検出されるようになります。これを微量アルブミン尿といいます。 ● 自覚症状 血圧が高くなる以外はほとんど自覚症状がみられません。 ● 検査方法 尿検査や血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールと降圧治療を行います。同時に、食事ではたんぱく質の制限が行われます。この段階で適切な治療ができれば、たんぱく質が尿に含まれない状態まで戻すことも可能です。 第3期(顕性腎症期) 第3段階の顕性腎症期になると腎機能が低下し、さまざまな自覚症状がみられるようになります。尿に含まれるたんぱく質の量は、第2期より増えてしまいます。 ● 自覚症状 むくみ、息切れ、胸の苦しさ、食欲不振、満腹感 ● 検査方法 尿検査、血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールや降圧治療のほか、たんぱく質・食塩・カリウムの制限を行います。人によっては水分も制限します。この段階になると、腎機能を完全に元通りにすることはできません。 第4期(腎不全期) 第4期の腎不全期になると、腎臓の糸球体で老廃物を十分に濾し取ることができなくなります。その結果、血中に毒素が蓄積されてしまい、尿毒症の発症を招きます。低血糖になりやすいことも腎不全期の特徴です。 ● 自覚症状 むくみ、倦怠感、掻痒感、頭痛、吐き気、食欲不振、手足の痛み、貧血など ● 検査方法 尿検査、血液検査 ● 治療方法 厳格な血糖コントロールや降圧治療、食事療法のほか、透析治療も行います。 第5期(透析療法期) 第5期の透析療法期になると、腎臓の働きはほとんど失われてしまいます。慢性透析療法が取り入れられ、基本的に週3回の人工透析が必要になるほか、透析治療患者用の食事療法が行われます。5年後の生存率は約50%と、予後は良好とはいえません。 人工透析の効果がみられなければ、腎移植や膵腎移植などの手術を行うこともあります。見てきた通り、糖尿病性腎症は進行するにつれて重篤な症状となるため、早期での発見が肝心です。 元の状態に戻すことも可能である、第2期までに腎症を発見し、適切な治療を行うことが大切です。 1型糖尿病で合併症を起こす確率 若年者の糖尿病では、1型糖尿病患者のほうが二型糖尿病患者と比較して合併症を起こす確率が低くなっています。糖尿病の治療に影響を与える肥満が、1型糖尿病患者には少ないためではないかと考えられています。 まとめ/糖尿病の三大合併症とは|症状別の病期に現れる異常を知る 糖尿病では「糖尿病性神経障害」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性腎症」の三大合併症に注意を払わなければいけません。どれも初期段階では発症を自覚しにくく、気づいたときには病気が進行している可能性があります。こまめな検査で早期発見・治療を目指しましょう。 また、食事療法や運動療法、薬物療法などによる血糖コントロールでも、合併症のリスクは低下します。しっかりと糖尿病治療に取り組み、合併症を予防しましょう。 監修:リペアセルクリニック大阪院
2019.04.03 -
- 糖尿病
糖尿病の運動療法における禁忌|血糖値を上げないためのポイント 糖尿病治療には多くの場合、運動療法が取り入れられます。ただし、患者の状態や併発している病気などによっては、運動が禁忌とされる場合もあります。 どのような状態だと運動を控えるべきなのか、糖尿病の中でも運動療法を行ってはいけないケースを紹介していきます。 また、運動療法が取り入れられる場合におすすめの運動方法についてもお伝えします。 糖尿病の運動療法を行ってはいけないケース 適切な運動は糖尿病の改善に効果的です。しかし、糖尿病治療に運動療法を取り入れるどうかは、医師や専門家の判断を仰いでください。 糖尿病合併症のある方やその他の疾患を持つ方が自己判断で運動を続けてしまうと、病状悪化を招く可能性があるからです。 以下のいずれかに当てはまる場合は、特に注意が必要です。 <運動療法を行ってはいけないケース> ● 単純網膜症を発症している ● 重症の高血圧 ● 糖尿病壊疽(えそ)の症状が出ている ここからは、上記の3つケースについて詳しく紹介します。 網膜症を発症している 糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症のひとつで、失明の原因にもなりえる病気です。 糖尿病網膜症を発症している場合、運動によって血圧が変化すると網膜の血管が破裂する可能性があります。また、低血糖で眼底出血が起こるリスクもはらみます。 網膜症は3段階に分けられ、「単純網膜症」「増殖前網膜症」「増殖網膜症」の順番に進行していきます。単純網膜症の場合、強すぎない運動であれば問題はありません。 増殖前網膜症の方であれば、目の治療を受けつつ、症状が安定しているのであれば軽い運動を行っても構いません。 一方、増殖網膜症になると運動療法を控えなければならないケースが多くなり、力んだり重いものを持ちあげたりしないよう指導されます。 こちらも併せてご参照ください 重症の高血圧 糖尿病患者の多くは高血圧も同時に発症しています。高血圧の改善には、適切な運動を継続して行うことが効果的ですが、条件によっては制限がかかります。 収縮期血圧が180mmHg以上、もしくは拡張期血圧が110mmHg以上になる重度の高血圧患者の場合、運動を控えなくてはなりません。 また、運動によって血圧が上がりすぎると、腎臓の血管に過剰な負荷がかかることから、腎症の進行スピードを速めてしまいます。 腎症を発症している方は注意してください。心臓や血管などにも負担がかかるため、心臓病や脳血管疾患を招く可能性もあります。 合併症により神経障害を発症している場合だと、心臓の痛みに気づかず、症状悪化の可能性が高まるリスクもあります。運動をはじめる前に、医療機関でチェックを受けるようにしてください。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病壊疽の症状が出ている 糖尿病になると、糖尿病壊疽(手や足などの組織が壊れてしまう症状)を引き起こす可能性があります。症状が出ている場合に患部に負荷がかかる運動をすると、壊疽が悪化するおそれがあります。 ウォーキングのような軽い運動であっても、患部に負担がかかるようであれば控えなくてはなりません。 また、現段階で壊疽の症状がなくても、神経障害のある方は壊疽の発症に気を配りましょう。 感覚神経障害の影響で皮膚の感覚が鈍っていると、靴擦れや擦過傷など、運動によってできるケガに気づかないことがあります。 治療をしないまま放置していると感染症を招き、壊疽を引き起こすおそれも。運動後は体にケガがないか調べ、ケアを念入りに行いましょう。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病改善のための効果的な運動方法 糖尿病の改善には、体中の筋肉を動かす有酸素運動が効果的といわれています。 適切な運動方法や時間は患者によって異なりますが、基本的には1回20分~40分、週3回の運動を行うよう推奨されています。 <有酸素運動例> ● ウォーキング ● サイクリング ● ジョギング ● スイミング 上記のような運動を日常生活に導入し、楽しみながら続けることが大切です。 継続して運動することで体重が減る、血糖値が下がるなどの効果があるほか、インスリンが効きやすくなる効果も期待できます。 また、インスリン療法や降圧薬を使用している場合は低血糖にも注意し、運動時にはブドウ糖を携帯するようにしましょう。 もちろん、運動療法をはじめる前に医師の診断を仰ぐことも大切です。 ウォーキング ウォーキングは、糖尿病改善のために効果的な運動のひとつです。特に肥満の方は、膝に負担のかかりやすいジョギングよりもウォーキングが推奨されています。 日常生活に無理なく取り入れられるため、これまで運動習慣がなかった方にもおすすめです。 ウォーキングの際は、ふつうに歩くより大きめの歩幅で、スピードを上げて歩くのがコツです。 少々息が荒くなるものの、隣の方とおしゃべりできる程度の速さが目安となります。姿勢のよさを意識し、腕を大きく振って歩きましょう。 また、食後30分~1時間後に10分間のウォーキングを取り入れると、食後の血糖値上昇を抑えるのに効果的です。 サイクリング 肥満が原因でウォーキング中に負担を感じる場合は、無理な継続は禁物です。膝や足首、腰など、体のさまざまな部位に問題が生じる可能性があります。 長期間継続して運動するために、体に負担のかからない方法を見つけましょう。 おすすめの運動のひとつがサイクリングです。足や膝、腰などへの負荷がかかりにくく、運動習慣のない方でも気軽に取り入れられます。 週に3回、1日に合計30分以上自転車運動する生活を3カ月続けたことで、減量やインスリンの働きが高まる効果がみられたという調査もあります。 また、自転車で走るのは爽快感があり、ストレス解消にもつながります。 ジョギング ジョギングは道具も場所もいらず、手軽にはじめられるスポーツです。ウォーキングやサイクリングなどと比べると体への負担は大きくなりますが、時間あたりのカロリー消費量も多くなります。 まずはウォーキングからはじめ、徐々にジョギングへ切り替えていくのもおすすめです。 走る際はフォームを意識し、ケガをしないように気をつけましょう。 歩幅は大きくとりすぎず、つま先から着地して体を小刻みに動かします。運動前にはストレッチや準備運動を行い、ケガの予防に努めてください。 体のケアと疲れを残さないために、運動後の整理運動も大切です。スピードはウォーキングと同様、おしゃべりしながら走れる速さが目安となります。 スイミング 体重による関節への影響が心配な方には、スイミングがおすすめです。水の浮力を利用できるため、足腰への負担も軽減されます。 また、神経障害や動脈硬化などの影響で下半身の血流が悪い方にも、負担のかかりにくいスイミングがすすめられています。 スイミングは陸上の運動よりもカロリー消費が高いことで知られています。水の抵抗や水圧などが体全体に加わることが理由のひとつです。また、水温が体温より低いことも、カロリー消費を促進します。 これは、体が体温を一定に保とうとエネルギーを燃やすためです。泳ぎに自信がない方はであれば、水中ウォーキングからはじめるのもおすすめです。 まとめ 糖尿病の改善には運動療法が効果的ですが、病状や合併症などに応じて、患者ごとに適した運動方法は異なります。 まずは運動をはじめる前に医師の診断を仰ぎ、自身に適切な運動療法を行いましょう。 運動をすすめられた場合には、継続的な有酸素運動に努めましょう。ウォーキングやサイクリングなら日常生活に取り入れやすく、手軽にはじめられます。 軽い運動からはじめて、ジョギングのように強めの運動へ移行していくのもおすすめです。 体重による負荷が心配な方は、スイミングや水中ウォーキングなど、体への負担が少ない運動を取り入れていきましょう。
2019.04.02 -
- 糖尿病
糖尿病と血糖値の関係|正常値と目標値を把握しよう 年齢を重ね、普段の食生活を省みると、血糖値が気になってきてしまう。そのような時は、血糖値の正常値と目標値を確認してください。 これらの数値を把握することは、体調や糖尿病リスクを知る目安になります。同時に、糖尿病が疑われる数値や食後血糖値の上昇を表すGI値についても確認しましょう。 これらの情報をもとに、自身の血糖値レベルを把握することができます。 糖尿病と血糖値の関係 糖質(炭水化物)は体内に取り込まれるとブドウ糖になり、血液を介して細胞へ運ばれ、人が活動するうえでのエネルギー源になります。この際、インスリンにはブドウ糖を細胞へ取り込ませたり、筋肉や脂肪に蓄えたりする働きがあります。 インスリンの分泌量が少なくなるとブドウ糖がうまく細胞へ取り込まれなくなり、血糖値の上昇につながります。糖尿病とは、上昇した血糖値の数値が高いままになってしまう病気です。 糖尿病による高血糖の慢性化は、血管内に損傷を引き起こします。最小血管と呼ばれる細い血管がダメージを受け、網膜症や腎症を誘発。併せて末梢神経にも影響は及び、足の壊疽(えそ)など血管以外にも障害が広がります。 また、大血管(太い血管)への影響も小さくはなく、血管の壁が硬くなることにより、動脈硬化を引き起こす可能性があります。動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症を招く症状で、高血圧や脂質異常症など生活習慣病との併発に注意しなければいけません。 このように、血糖値の上昇はさまざまな症状や障害の原因になります。 血糖値の正常値 血糖値の正常値の基準は、空腹時で110mg/dl未満、食後2時間後で140mg/dl未満です。食後に血糖値が上がり、空腹時に下がるのは普通のことで、前述の数値の範囲内であれば問題ありません。 ただし、食後の血糖値が低下せずに140mg/dlほどの状態が続くと、「食後高血糖」と診断されます。糖尿病を発症してまだ日が浅い患者は、空腹時の血糖が正常であっても、食後に高血糖になりやすい傾向にあります。 糖尿病の進行を防ぐためには、空腹時と食後の血糖値を正確に測り、必要に応じて食事制限を行うなどの処置が必要となります。 正常な血糖値 ・空腹時で110mg/dl未満 ・食後2時間後で140mg/dl未満 血糖値の目標値 血糖の目標値は、日本糖尿病学会のガイドラインが指標になります。「糖尿病診療ガイドライン2002-2003」によると、空腹時の血糖値は100mg/dl未満、食後2時間血糖値なら120mg/dl未満がそれぞれ「優(excellent)」判定で、もっとも望ましい数値となっています。 ちなみに、空腹時血糖値は100-119mg/dl、食後2時間血糖値は120-169mg/dlが「良(good)」判定。もっとも悪い数値を意味する「負荷(poor)」判定は、空腹時血糖値が140mg/dl以上、食後2時間血糖値は200mg/dl以上とされています。 負荷判定の水準となると、生活指導や薬物療法でもコントロール不可とみなされ、早期の専門治療が求められます。 糖尿病が疑われる検査値 糖尿病の診断では、血糖値のほかHbA1cの推移もチェックされます。診断で「境界型」と判定されれば糖尿病予備軍、「糖尿病型」と判定された場合には、血糖値改善のための必要な治療が施されます。 境界型に分類されるのは、空腹時血糖値が110~126mg/dl、食後2時間血糖値が140~200mg/dlの場合です。このケースでは耐糖能異常の状態にあるため、動脈硬化の有無を検査します。 血糖値が糖尿病型に分類されるのは、空腹時血糖値が126mg/dl以上、食後血糖値が200mg/dl以上。HbA1c が糖尿病型と判断されるのは、HbA1cが6.5%以上の場合です。 糖尿病に分類される血糖値 ・空腹時血糖値が126mg/dl以上 ・食後血糖値が200mg/dl以上 ・HbA1cが6.5%以上 1回の検査で血糖値とHbA1cの両方が糖尿病型に属する人は糖尿病と診断され、いずれか一方のみが糖尿病型であれば再検査を受けることになります。 GI値(グリセミック指数とは) 糖尿病予備軍の人や、食後血糖値が高いままの「隠れ糖尿病」の人は、食後の血糖上昇値を食品別に把握することが大切です。そこで確認したいのがGI値です。GI値とは、糖質摂取後2時間までの血中糖濃度を計った数値のことで、糖質の吸収度合いを示します。 低G1食品は糖化の抑制に有効かつ内臓脂肪の増加を防ぐ効果も期待されるため、糖尿病予備軍のほか、肥満体質やメタボリックシンドロームの予防・改善対策としても知られています。 一般的に、炭水化物は血糖値の上昇を招きやすい栄養素です。食後の急激な血糖値上昇を防ぐには、同じ炭水化物食品でも食物繊維が豊富で、なおかつ低エネルギーのものが望ましいです。 普段どのような食生活を送っているかで、その人の糖尿病リスクの度合いも測れます。 GI値が高い食品の摂取が多いと、現在は健康であっても、将来的に食後血糖値の上昇を招く可能性もあるでしょう。そのような「隠れ糖尿病」の人を探す指標としても、GI値は役立つ指標です。 さまざまな食品のGI値 オーストラリアのシドニー大学では、食品を以下のように区分しています。 ● 高GI食品:GI値70以上 ● 中GI食品:GI値56~69 ● 低GI食品:GI値55以下 ※グルコースを100とした場合。以下は、代表的な食品をGI値の区分ごとに分けた表です。 低GI値に相当する食品はたくさんありますが、毎日調理する食材として徹底することは大変です。飲むだけで摂取できる牛乳や、調理の必要がない果物類など、加工の手間がかからない食品も糖尿病予防には効果的なので、積極的に取り入れていきましょう。 GI値を下げる食品 血糖値コントロールやGI値を低下させる効果が期待される食品について、その特徴を具体的に紹介していきます。 ・牛乳 朝食時に牛乳を飲むと、食後血糖値の上昇抑制が期待できます。カナダのゲルフ大学とトロント大学が共同で行った「朝食時の牛乳と水の比較実験」では、牛乳に食後の血糖値上昇を抑える働きがあることが確認されました。 それだけでなく、昼食以降の血糖値も押さえられる「セカンドミール効果」も期待できるそうです。セカンドミール効果とは、はじめの食事が次の食事の後の血糖値に影響をおよぼす現象です。この理論を活用すれば、朝食を起点とした1日の血糖値コントロールに期待が持てます。 ・わかめ 理研ビタミンと藤女子大学の共同研究では、わかめの摂取が食後の血糖値抑制に役立つことがわかりました。実施されたのは、健康的な成人女性9人を対象に行った「白米のみ」と「白米とわかめ」の比較実験。 結果は、白米だけより、わかめとの同時摂取のほうが、血糖値の上昇を食後15分、30分、120分にて抑制できたというものでした。この実験では、わかめとの同時摂取がGI値の低下につながることを示しています。わかめは日本人にとって身近で取り入れやすい食品です。 スープやみそ汁、サラダなどに積極的に取り入れて、血糖値コントロールに役立てましょう。 ・バナナ 食物繊維やビタミン、ミネラルなどの栄養素に恵まれたバナナには、血糖値下降作用を持つカリウムも含まれます。インスリンには、血液中の糖質をエネルギーとして蓄えるうえで重要な働きがありますが、カリウムには、このインスリンの効果を高める作用があります。 バナナも手軽に購入できる身近な食品ですので、朝食時に取り入れるなど糖尿病予防に役立てましょう。なお、バナナは高カロリーの果物ですので、1日1本までにとどめることが推奨されます。 まとめ/糖尿病の血糖値と関係|正常値と目標値を把握しよう 血糖値は食後に上昇するものではありますが、その後正常範囲に収まらなければ「食後高血糖」と診断されます。空腹時血糖値が正常だからといって安心せず、食後高血糖も合わせて確認しましょう。また、血糖値上昇にかかわるGI値は、適切な食品選びに役立ちます。 血糖値や肥満が気になる方は、GI値55以下の低GI値食品を普段から積極的に取り入れていきましょう。 監修:リペアセルクリニック大阪院 ▼こちらも併せてご参照ください
2019.04.01 -
- 糖尿病
糖尿病の兆候は足、目、尿に出る|早期発見して予防しよう 糖尿病は発症当初、自覚症状がほとんどありません。体の異変を感じたときには、ある程度病状が進行していることがほとんどです。 糖尿病による初期症状が現れていても気がつかず「歳のせい」と放置してしまう人もいます。 糖尿病を放置すると重大な合併症を引き起こすことがあります。ここで糖尿病の症状を把握しておき、早期治療に取り組めるようにしてください。 今回は「足、目、尿」に着目して紹介してきます。 糖尿病の兆候 糖尿病は初期段階ではほとんど自覚症状がありません。また、症状が出たとしても少しずつ、ゆっくり現れます。 糖尿病の兆候には次のようなものがあります。 ・疲れやすくなる ・おなかが空きやすくなる ・皮膚が乾燥する ・皮膚がかゆい ・切り傷が治りにくくなる ・手足の感覚が鈍くなる ・手足にチクチクした痛みが走る ・目がかすむ ・頻尿なる ・尿量が増える ・感染症にかかりやすくなる ・勃起不全(ED)など性機能が低下する そのほかにも、いろいろな部位にさまざまな形で症状が現れますが、本稿では足、目、尿について詳しく紹介していきます。 こちらも併せてご参照ください 足に出る兆候 足に出る兆候には下記のようなものがあります。 ・巻き爪 ・靴擦れ ・爪が厚くなる ・かかとやつま先などが乾燥する ・水虫 ・タコや魚の目 ・しびれる ・痛む ・感覚がない ・こむら返り ・ほてる ・冷える ・歩くふくらはぎが痛む ・傷が治りにくい 糖尿病患者の方は免疫機能が低下しているので傷が治りづらく、さらに悪化すると足が壊死し、最悪の場合は切断にいたることもあります。 目に出る兆候 糖尿病患者の方の目に現れる兆候は次のとおりです。 ・目がかすむ ・飛蚊症 ・視野に黒みがかかる ・急に視力が低下する 飛蚊症とは蚊や煙の煤(すす)のようなものが飛んでいるように見える症状です。 これらの症状は、糖尿病の合併症である糖尿病網膜症が原因です。この病気は初期では自覚症状がなく、上記のような症状が出るころにはかなり進行しています。 最悪の場合、失明することになるので、目がかすむようなことがあれば、医者の診察を受けましょう。 尿に出る兆候 糖尿病患者の方の尿に現れる兆候とそれに関連した症状を紹介します。 ・尿量が多くなる ・尿が頻繁に出る ・喉が渇く 糖尿病で血液中の糖が増えると、大量の糖を薄めるために腎臓が過剰に水分を排出しようとします。そのため、尿が多く出て、身体が水分を欲して喉が渇くようになります。 その他の糖尿病チェックポイント 足、目、尿以外の糖尿病のチェックポイントは次のとおりです。 ・疲れやすい ・食欲が旺盛になる ・体重が急に減った ・物忘れが増える ・傷が治りにくい また、糖尿病には遺伝する傾向があります。症状がみられない場合であっても、家族や親族が糖尿病を発症していたり、心臓病や脳卒中を起こしていたりすると遺伝によって糖尿病のリスクが高まります。 糖尿病が進行すると合併症の危険性も高まる 糖尿病が恐いのは、進行すると命にかかわる合併症の発症リスクが高まることです。網膜症は失明を招き、腎症は腎不全を招き、神経障害は足の切断を招くことになりかねません。 さらに脳梗塞や心筋梗塞といった重い後遺症が残ったり、突然死のリスクが高い病気も発症しやすくなります。こうした重い病気を起こさないためには、症状を早めに感じ取り、糖尿病を早期発見して予防に努めることが大切です。 では、どのようなことに取り組めば糖尿病の進行を防げるのか、みていきましょう。 糖尿病を予防するには 糖尿病の進行を防ぐには、食事療法・運動療法・ストレス対策の3つに取り組む必要があります。 どのようなことをすれば良いのか、ひとつずつみていきましょう。 <食事療法> 糖尿病の食事療法では、摂取エネルギーと栄養素に着目します。 糖尿病患者の方は、1日の摂取エネルギーを「標準体重×身体活動量」以下にするようにしましょう。標準体重と身体活動量は以下のとおりです。 ・標準体重=身長(m)×身長(m)×22 ・身体活動量 軽い労作(デスクワークが主な人):25~30kcal/kg 普通の労作(立ち仕事が多い):30~35kcal/kg 重い労作(力仕事が多い) :35~kcal/kg 例えば、身長160センチ(1.6m)の普通の労作の人の1日の摂取カロリーは1,690~1,971kcalです。 計算式は以下のとおりです。 ・1日の摂取カロリー=1.6m×1.6m×22×30~35kcal/kg=1,689.6~1,971.2kcal 栄養素はバランスよく摂ることが大切です。 1日の摂取カロリーの内訳を次のように配分するように心がけましょう。 ・炭水化物:55~60% ・たんぱく質:標準体重1kgあたり1.0~1.2g ・脂質:残り さらにビタミンやミネラルも意識して摂るようにしてください。 こちらも併せてご参照ください。 https://africatime.com/topics/1688/ <運動療法> 糖尿病患者の方のなかには、運動が苦手な方や運動する時間がない方も多いと思いますが、運動をするとインスリンが効きやすい体になります。 インスリンは血糖値を下げるホルモンですから、運動は糖尿病予防に効果的なのです。 特に糖尿病治療に有効とされているのは、ウォーキング、ラジオ体操、自転車、ジョギング、水泳などの有酸素運動です。これらの運動を1回20~40分、週3回を目安に実施してください。 運動習慣がない方が急に負荷が大きい運動を始めると低血糖を引き起こしたり関節に負担がかかったりしますので、無理のない範囲から始めてください。 <ストレス対策> 糖尿病は、患者の方の心の動きや置かれている社会環境の影響を受けます。過度なストレスを受けるとストレスによって分泌されるホルモンの関係で血糖コントロールが難しくなるためです。 したがって、意識的にストレスを解消することは糖尿病の悪化の予防と改善に繋がります。 しかし、ストレスを解消しなければいけないことはわかっているけど、「どのようにストレスを解消したら良いのかわからない」という方も少なくないと思います。 そこで「休息」「気分転換」「ストレス原因から離れる」の3つに取り組んでみてください。 まずは、 ・休息を取る ・趣味や好きなことをして気分転換をする ・ストレスの原因から離れる といったことを積極的に取り入れましょう。 例えば、職場の理解を得て休みをとり、趣味や旅行で息抜きをしてみるとよいでしょう。心に余裕ができると、どんなことにストレスに感じていたのか気づくかもしれません。 まとめ 今回は糖尿病の症状のうち、足、目、尿に注目してみました。 糖尿病は初期段階では自覚症状がありませんが、必ず自覚症状が出てきます。わずかな自覚症状が出た段階で予防・改善に進まなければ、合併症を招き、悲惨な結末を迎えてしまいます。 ですから、足、目、尿はじめとした身体の「小さな変化」を見逃さないようにしてください。 「いつもと何かおかしい…」「糖尿病の症状かもしれない」と感じたら、近所の内科クリニックや糖尿病専門のクリニックを受診してください。 糖尿病対策に「早すぎる」ことはありません。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.31 -
- 糖尿病
ストレス性糖尿病は治る|血糖値変動の原因は? 2型糖尿病は生活習慣の悪化によって発症することが多いですが、精神的なストレスも糖尿病の発症や悪化に関係します。では、ストレスによって発症した2型糖尿病は、ストレスを緩和すると治るのでしょうか。 2型糖尿病患者の方の多くはストレス以外の要因も抱えているので、ストレス解消だけで糖尿病を治癒することは難しいでしょう。それでも、糖尿病患者の方がストレスを遠ざけることは治療のひとつになります。ストレスと糖尿病の関係性を詳しくみていきましょう。 ストレスと血糖値の関係 ストレスと糖尿病(血糖値の上昇)には深い関係があり、そこにはホルモンが関与しています。人がストレスを感じると、アドレナリンやコルチゾールというホルモンが分泌されます。 これらのホルモンは、血圧と心拍数や血糖値を上げます。ストレスを受けたときに「心臓がバクバクする」といった経験をしたことがある方もいると思いますが、そのとき同時に血糖値も上がっているのです。 コルチゾールは人がストレスに耐えるために必要なホルモンなので、そういった面では人を助けていますが、糖尿病患者の方の場合は血糖値を上げる作用によって糖尿病の悪化も促します。 また、ストレスを受け続けると、インスリンに対しての感受性が鈍くなり血糖値が下がりにくくなることがわかっています。このように、ストレスを受け続けると高血糖の状態が続くため糖尿病を招いてしまうのです。 人によってはストレスを暴飲暴食で解消することもありますが、これも注意が必要です。食生活の乱れは糖尿病の発症や悪化させる要因になるからです。 以上のようにストレスは直接的にも間接的にも糖尿病を助長してしまうのです。 ストレス性糖尿病の症状 糖尿病にはいくつか種類がありますが、すい臓がインスリンを分泌できないことで発症する1型糖尿病と、生活習慣の悪化で発症する2型糖尿病が主になります。 ストレスと深く関わっているのは、後者の2型糖尿病になります。 2型糖尿病の症状は次のとおりです。 ・尿量が多くなる ・尿が頻回になる ・疲れやすくなる ・肌が乾燥する ・皮膚がかゆくなる ・皮膚が痛くなる ・体重が急減する ・空腹に襲われる ・手足の感覚が鈍くなる これらの症状が気になったら、はやめに内科クリニックか糖尿病専門クリニックを受診するようにしてください。 自覚症状のあるころには、すでに糖尿病が進行している可能性が大きいからです。糖尿病は初期段階では自覚症状が出ないことが多いので、症状がなくても油断しないようにしてください。 ストレス性糖尿病の予防策 2型糖尿病を予防するにも、糖尿病を進行させないためにも、ストレスを遠ざけるようにしましょう。 こちらも併せてご参照ください 次にストレスの対処法を紹介します。 無駄なストレスがかかる場面を避ける ストレスは完全になくすことは難しく、良い緊張感を生む「良いストレス」も存在します。ストレス対策では、「無駄なストレス」を避けるようにしましょう。 身体はストレスを感じているにも関わらず、自覚がなく「ストレスはない」という人もいます。ストレスを発生させる要因のことをストレッサーといいますが、ストレスを受けている自覚がないこともあるため、ストレッサーの特定は難航することがあります。 例えば、仕事のプレッシャーや結婚や離婚といったライフイベント、日々のイライラもストレッサーになりえます。 一方、ビジネスパーソンによっては「仕事のプレッシャーを楽しんでいる」と言う人もいます。そのような人は、実際、身体はストレスを感じているのに、それをストレスだと認識していません。 ストレスを避けるためには、自分の感じているストレスに気づくことが、とても大切になります。 例えば、仕事であれば、業務内容を整理したり、部署異動することはストレス対策として有効です。 一方、ライフイベントのストレスについては完全に解消することが難しいので、うまくストレスとつきあうようにしましょう。気分転換の方法をみつけてストレス解消に努めてください。 荒れた食事をしない ストレス性の2型糖尿病を予防するためには、ストレス解消が欠かせません。しかし、ストレスを解消するために「荒れた食事」(暴飲暴食、偏食など)をするのは避けてください。 特に男性は飲酒、女性は食事でストレスを発散する傾向がありますが、暴飲暴食につながらないようにしましょう。食生活の乱れは血糖値の上昇につながり、糖尿病を助長してしまいます。 ストレス性糖尿病に向く薬 ストレスの解消法として、次のような漢方やアミノ酸が有効とも言われています。 ・半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) ・桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) ・アミノ酸「ギャバ(GABA)」 半夏厚朴湯は「気」のめぐりをよくすることが期待できる漢方です。桂枝加竜骨牡蛎湯も「気」に関係し、ささいなことが気になったり、落ち着かなかったりする人に効果があるとされています。 ギャバは体内に存在するアミノ酸のひとつで、脳や脊髄(せきずい)で抑制性の神経伝達物質として働いています。「抑制性」とは興奮を抑えたり、リラックスさせたりする、という意味です。 効果に個人差はありますが、一度試してみるのも良いかもしれません。ただし、すでに糖尿病治療で投薬中の患者の方は、必ず主治医に相談をしてから服用するかどうかを決めてください。 まとめ/ストレス性糖尿病は治る|血糖値変動の原因は? ストレスと2型糖尿病の関係について解説しました。 「ストレスは万病の元」といわれるくらいです。糖尿病の原因となったり、悪化させたりしても不思議ではありません。しかし、現代はストレス社会といわれており、完全にストレスをなくすことは難しいでしょう。 自分のストレスに気づき、解消法を身につけて、ストレスを軽減していくことが大切です。 監修:院長 坂本貞範 治療に役立つ関連記事はこちら
2019.03.30 -
- 糖尿病
糖尿病性腎症のステージ別症状|病期によって異なる自覚症状|内科専門医師が配信 糖尿病の合併症のひとつに糖尿病性腎症があります。糖尿病性腎症は進行すると命にかかわる恐ろしい病気です。 こちらも併せてご参照ください しかし、初期段階での自覚症状がほとんどないため、発症に気づくまでに時間がかかってしまいます。 また、糖尿病性腎症は進行度により症状が大きく異なるため、段階ごとに見られる症状を把握しておくことが大切です。こちらでは、糖尿病性腎症の特徴やステージ別の症状を解説していきます。 糖尿病性腎症のステージ別で現れる症状 糖尿病性腎症とは、糖尿病によって引き起こされる合併症のひとつです。具体的な症状は5つのステージ(病期)に応じて異なり、腎機能とタンパク尿がステージ進行の指標となります。 はっきりとした症状が出ないまま無自覚のうちに進行する病気でもあるので、早期発見のためには定期検診を受けることが大切です。 糖尿病性腎症は、長期にわたって高血糖が続き腎臓の糸球体の血管がダメージを受けることで、体内の老廃物のろ過が困難になるとされていますが、根本的な原因は明らかになっていません。 以下、糖尿病性腎症にて現れる症状と自覚症状について、ステージごとに解説していきます。 ステージ1で現れる症状 この段階では糖尿病性腎症としての症状が見られることはなく、糖尿病の症状だけが現れます。 そのため、検査を受けたとしても糖尿病性腎症と診断されることはほぼありません。 この時点での有効な治療方法として血糖コントロールがあります。しかしそれは腎症に対しての治療というよりは、糖尿病の症状を緩和させることを目的として行われます。 ステージ1の自覚症状 ステージ1は検査でも診断できない段階となるため、糖尿病性腎症として自覚できる症状もありません。 発症に気づかないままに、腎症前期のステージ1を過ごすこととなります。しかし、糖尿病の症状は現れているため、血糖コントロールや健康的な食生活など治療を継続して行いましょう。 それは結果的に腎症進行の抑制にもつながります。 ステージ2で現れる症状 早期腎症期のステージ2では、尿中から微量のアルブミンが検出されるようになります。 アルブミンとはアミノ酸の集合体からできたタンパク質のことです。 この状態で発症に気づくことができれば、厳格な血糖コントロールや血圧管理など適切な治療を施すことで、アルブミンが尿に漏れ出ない状態へと戻すことも可能です。 ステージ2の自覚症状 この段階でも自覚症状はほとんどありませんが、多くの場合では血圧が上昇します。 定期的に血圧を計測する機会があれば糖尿病性腎症を疑うこともできますが、そうでなければ気づかないことも多いです。 また、ステージ2の症状にあるタンパク尿は尿検査から見つけられます。そのため、腎症の早期発見には定期的な検診が必要となります。 ステージ3で現れる症状 顕性腎症期のステージ3では、ステージ2よりも多くのタンパク質が尿中に排出されるようになり、腎臓の機能も低下していきます。 厳格な血糖コントロールをこれまで同様に行うほか、血圧を下げるための治療も必要となる段階です。また、塩分やタンパク質を抑えたメニューを取り入れる食事療法も必要になります。 ステージ3の自覚症状 ステージ3になると、タンパク尿が増えることでむくみが現れ、息切れ、食欲不振、満腹感、胸の苦しさなど、これまでとは異なり具体的な症状を自覚することが多くなります。 この段階まで糖尿病性腎症が進行すると、元どおりの健康な状態に戻ることは難しく、進行を遅らせるために治療が行われます。できるだけ早期の段階にて発症に気づかなければいけません。 ステージ4で現れる症状 腎不全期のステージ4では、これまで以上に症状が顕著に見られるようになります。 腎臓には老廃物をろ過する機能を持つ糸球体が存在していますが、ステージ4になると、糸球体のろ過機能が正常に働かなくなります。老廃物が血液中に溜まった結果、尿毒症の症状が現れます。 また、インスリン排泄の低下により低血糖が起きやすくなるため、インスリンの投与や厳格な血糖コントロール、血圧管理と合わせて、これまで以上に腎症治療を重視した栄養管理が求められます。 ステージ4の自覚症状 血液中に老廃物が蓄積し尿毒症の症状が発生すると、ステージ3でも見られるむくみ症状に加えて、全身の倦怠感や手足の痛み、かゆみなども現れます。 また、腎臓には貧血を防ぐためのエリスロポエチンを生成する働きがありますが、腎機能が低下することで貧血が起こりやすくなることも懸念されます。 必要に応じて透析療法の準備を始めるのもこの時期です。 ステージ5で現れる症状 透析療法期のステージ5になると腎臓はほとんど機能しなくなります。そのため、腎機能を人工的にサポートする透析療法が導入されます。 この段階まで進行した場合では、5年後の生存率はおよそ50%といわれています。透析療法で症状の改善が見込めない場合は、腎移植が有効な手段となります。 また、糖尿病性腎症以外の合併症への予防や治療も必要となります。 ステージ5の自覚症状 手や筋肉の痛みやしびれ、腹痛、嘔吐、発熱、顔色の悪化、易労感、筋肉の強直など、さまざまな症状が自覚されます。 週に3回ほど人工透析を受ける必要がありますが、体に負荷がかからない範囲にて、これまでと同じように仕事や家事をこなしている人も見られます。 まとめ 腎症は5つの段階に病期が分かれており、症状が進むと透析療法や腎移植が必要になる深刻な病気です。 できるだけ早期の発見が求められますが、初期段階では自覚症状がほとんどなく、自分で腎症に気づくことは難しいです。 初期段階であれば治療によって元の状態に戻すことも可能ですが、進行度によっては回復が見込めなくなってしまいます。早期発見のためにも、定期的に検診を受けましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.29 -
- 糖尿病
糖尿病の初期症状とは|目や手足に異変が現れたら要注意|内科専門医師が配信 糖尿病は早めに治療すると病気の進行を食い止めることが期待できる一方で、治療が遅れたり病気を放置したりすると、失明や足の切断、命に関わる合併症の発症といった「重大な結果」を招くことになります。 したがって糖尿病は初期症状をとらえることが重要になりますが、初期では自覚症状が出ないことがあります。 自覚症状を感知できたときには糖尿病が進んでいた、ということも珍しくありません。 小さな兆候でも初期段階で見逃さないようにしたいところです。糖尿病の初期症状を徹底解説します。ポイントは目と手足です。 糖尿病の初期症状は? 国立循環器病研究センターは、糖尿病の初期症状で最も恐いのは「症状がないこと」としています。 これが糖尿病の初期症状の把握を難しくしています。 比較的早期に現れる症状としては、次のようなものがあります。 ・目がかすむ ・手足の痙攣(けいれん) ・頻尿気味になる(逆に尿が出にくくなることもある) ・喉が渇きやすくなる ・手足にイボやタコができやすくなる ・足がしびれる ・足が冷える ・皮膚が乾燥する ・性機能の低下 このうち「目がかすむ」「手足の痙攣」「頻尿気味になる」「喉が渇きやすくなる」「手足にイボやタコができやすくなる」の症状について以下で詳しくみていきます。 こちらも併せてご参照ください 目がかすむ 糖尿病を発症すると、目がかすむ、ピントが合わない、視力が落ちる、といった目の障害が発生します。 糖尿病患者の方は涙の量が少ないことが多いため、ドライアイになり、かすみ目になる傾向があります。 また、高血糖状態が続くと、水晶体が濁りやすくなり、白内障を併発することも多いです。 一方、糖尿病は「血管の病気」という一面もあります。糖尿病を発症すると血管が壊れてしまうのです。 目には細小血管(毛細血管)が走っているので、糖尿病患者の方に目の支障が現れるのです。 手足の痙攣 痙攣やしびれやむくみ、皮膚の乾燥といった異常が手足に現れるのも糖尿病の症状の特徴です。 血管は心臓から離れるほど細くなり、手足の先端には最も細い血管が走っています。糖尿病によってその細い血管「細小血管」が壊されてしまいます。 また、糖尿病患者の方は神経にも支障をきたします。 神経には、触って感じる感覚神経や、手足を動かす運動神経、血圧や内臓の動きを調節する自律神経があります。糖尿病になると末梢神経の代謝が悪くなることがあります。 さらに、血管に支障が出ることで末梢神経に栄養と酸素が届かず、神経が働かなくなることもあります。 糖尿病の患者の方のなかには、ガラスの破片を踏んで大量に出血したにも関わらず痛みを感じないこともあります。これは感覚神経が壊れているからと考えられます。 頻尿気味になる 1日に8回以上排尿すると頻尿と診断されます。多尿とは1回の尿量が3リットル以上になることです。 糖尿病を発症すると頻尿や多尿の症状が出ます。 血糖値が上がると、糖の濃度を下げようとして全身の細胞から水分が出ていきます。 その結果、喉が渇いて多飲することになり尿が増えます。また、糖尿病によって末梢神経が壊れることで神経因性膀胱になり、夜間頻尿になることもわかっています。 また糖尿病が進むと尿をつくる腎臓にも問題が生じます。尿は腎臓にある糸球体という細かい血管によってろ過されます。 しかし、糖尿病が進むと血管を傷つけてしまうため、尿をそのまま出してしまいます。 これをたんぱく尿といいます。もし尿の泡立ちが目立つという場合は尿にたんぱくが混じっている可能性もあります。 喉が渇きやすくなる 糖尿病患者の方が、喉が渇きやすくなるのは血糖値が上昇しているからです。 体の防御機能として、血糖値が上昇すると糖の濃度を下げようとして全身の細胞から水分が出ていき、尿の量が増えます。その結果水分を欲するようになるのです。 手足にイボやタコができやすくなる 糖尿病の患者の方の手足にイボやタコができやすくなるのも、末梢血管と末梢神経の異常が関係しています。 糖尿病が進むと血行が悪くなります。そのため手足にイボやタコができやすくなります。 また、糖尿病は神経を傷つけますので、ケガや火傷をしても気付きにくく、さらに治りにくいので、放置してしまうことがあります。 糖尿病患者の方や糖尿病が疑われる人の手足にイボやタコができたら、早急に医療機関にかかってください。 イボやタコなどの異変を放っておくと手足が壊死することもあります。壊死とは体の一部分の細胞が死滅することですので、最悪の場合手足を切断することになります。 この点は次の章で詳しくみていきます。 糖尿病による足の壊死の初期症状とは それでは足の壊死について解説していきます。 足の壊死にいたる前の初期症状には次のようなものがあります。 ・しびれ ・痛み ・こむら返り ・できもの ・皮膚の乾燥 ・皮膚のひび割れ いずれも、「なにかおかしいな」と思うだけで放置しやすい症状だけに注意する必要があります。 これらのサインが現れたら、早めに内科クリニックや糖尿病専門のクリニックを受診したほうがいいでしょう。 前述のように、糖尿病による足の壊死には血流障害と神経障害が深く関わっています。血流が悪くなるとタコやイボなどの症状が出やすくなります。 また神経障害があると知覚が鈍くなって痛みを感じにくいため、病変に気付きにくくなります。 さらに、糖尿病患者の方は免疫機能が低下しているため感染症が悪化して壊死へと進むこともあります。 引用元:DMTOWN 糖尿病の初期症状のセルフチェック方法 糖尿病の初期段階ははっきりした自覚症状がなく、発見したときには症状が進んでいる場合が多くあります。そのため、初期段階でのセルフチェックが重要になります。 糖尿病の初期症状には上記を含め次のようなものがありますので、チェックしてみてください。 ・食べてもやせる ・空腹がはげしくなる ・空腹時にイライラする ・喉が渇く ・疲れやすい ・尿が多くなる ・排尿が頻回になる ・目がかすむ ・手足がしびれる ・手足に異常が現れる ・陰部がかゆい こうした症状がみられたらメモ書きしておき、医師に症状を説明してください。 まとめ 糖尿病は初期段階で治療に取り組むことが大切です。そのためには初期症状の把握が不可欠です。 特に手足や目の症状はチェックしやすいため、初期症状の特徴を覚えておき「おかしいな」と感じたら医師に相談しましょう。 監修:院長 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事(レシピ付き)
2019.03.29 -
- 糖尿病
糖尿病とは|種類と病態、原因と予防に迫る 「糖尿病は甘いものを食べすぎると発症する病気」としか捉えていない人もいますが、それは少し違います。 なぜなら糖尿病はもっと複雑で重大な病気だからです。 実は糖尿病にはいくつか種類があります。その中から、今回は1型糖尿病と2型糖尿病の違いを詳しく解説します。 さらに、糖尿病の種類と病態、治療方法や予防方法、改善策を紹介します。 糖尿病の種類 糖尿病には1型や2型、遺伝子異常によるものや妊娠によるものがありますが、ここでは患者の方の数が多い1型糖尿病と2型糖尿病について解説します。それぞれ主な特徴は次のとおりです。 <1型糖尿病の特徴> ●特定の遺伝子との関連性がある ●10~20代が突然発症することが多いが、高齢者も発症することがある ●自己免疫性と特発性がある <2型糖尿病の特徴> ●日本の糖尿病患者の95%は2型 ●遺伝的要因と環境的要因から発症する ●40歳以上に多い ●肥満傾向の人が発症しやすい さらに詳しくみていきましょう。 1型糖尿病の病態と原因 1型糖尿病は、インスリンをつくっているすい臓のβ細胞が壊れることで発症します。インスリンが減ったり、なくなったりすると体内の細胞が糖を取り込めなくなり、血中の糖の量が増えてしまうので血糖値が上昇してしまいます。 1型糖尿病は主に自己免疫性と特発性に分かれています。自己免疫性の1型糖尿病は、免疫の異常によって自分のβ細胞を破壊してしまいインスリンが出せなくなることで発症します。 免疫は通常は細菌やウイルスと闘って「自分自身」を守りますが、免疫に異常が起きると「自分自身」を攻撃するようになるのです。一方、特発性1型糖尿病の特発性とは「原因不明」という意味になります。つまり1型糖尿病とわかっても原因がわからないとき特発性1型糖尿病と診断されるのです。 1型糖尿病患者の方のなかには甲状腺疾患などの自己免疫疾患を合併していることもあります。 2型糖尿病の病態と原因 2型糖尿病の原因には、遺伝因子と環境因子があります。「因子」とは「原因となるもの」という意味です。つまり2型糖尿病の発症原因は遺伝によるものか、環境によるものに分かれています。 遺伝因子とは、両親や血縁に糖尿病の患者の方がいる場合は普通の人より糖尿病発症の可能性が高いということです。一方、環境因子とは食生活や運動などの生活環境のことを指しています。 食事によって血糖値が上昇するとすい臓からインスリンが分泌され、血糖値を下げます。しかし、食生活の悪化や運動不足などで生活習慣が乱れるとすい臓は大量のインスリンを分泌し続けることになり、疲弊してしまいます。 こうなってしまうと、インスリンの分泌量が低下することになります。また生活習慣が乱れると肥満を招きます。肥満により脂肪が蓄積するとインスリンの効果が出にくくなります。これをインスリン抵抗性といいます。 この場合も、より多くのインスリンを分泌しようと、すい臓が働き疲弊してしまうことで分泌が悪くなり高血糖状態が続くことで発症します。ほかにも、環境因子としてはストレスなどにも気をつける必要があります。 糖尿病の治療方法 糖尿病の治療方法について1型用の治療法と2型用の治療法にわけて説明します。 <1型糖尿病の治療法> ・インスリン補充療法:体内で不足しているインスリンを体外から注射器によって補充します。1型糖尿病は体内でインスリンを生成することができないので、治療ではインスリン療法が第1選択肢となります。なお、2型は病状が悪化してからこの治療法に移行するケースが多いです。 ・すい臓移植:ドナーから提供されたすい臓を1型糖尿病患者の方に移植する治療法です。ただ、ドナーの数が少なく、あまり多く行われている治療法ではありません。すい臓だけの移植が行われることはまれで、糖尿病が悪化して腎不全に陥った患者の方に、すい臓と腎臓を同時に移植する膵・腎同時移植を行うことが一般的です。 1型糖尿病患者の方も、後述する食事療法や運動療法を取り入れます。 しかし、1型糖尿病患者の方はインスリンを生成する細胞が壊れているため、運動療法の効果は2型と異なります。1型糖尿病は運動によってインスリンを生成する機能の回復は望めません。しかし運動するとストレスが解消されるので糖尿病治療に良い効果をもたらします。 また、運動することで体外から補給するインスリンの働きが高まることも期待できます。 <2型糖尿病の治療法> 2型糖尿病の治療では食事療法と運動療法が第1選択肢となります。特に2型は食生活の乱れや運動不足などの生活習慣の悪化で発症することが多いです。したがって、1型糖尿病患者の方よりも食事療法や運動療法が重要になってきます。 ・食事療法:食生活が乱れている方は、決められたエネルギー内で炭水化物、タンパク質、脂質からミネラルやビタミンまでバランスよく摂れる食事に切り替える必要があります。 ・運動療法:運動はインスリンの作用を高める効果が期待できます。 ・薬物療法:食事療法と運動療法で効果が出ない場合、飲み薬を使った治療に移行します。インスリンを出しやすくする薬(スルホニル尿素薬やDPP-4阻害薬など)やインスリンを効きやすくする薬(ビグアナイド薬やチアゾリジン薬など)、糖の吸収を調整する薬(α-グルコシダーゼ阻害薬など)などがあります。 食事、運動、薬物療法で効果が出なくなったら、2型糖尿病患者の方もインスリン療法に移行します。 糖尿病を予防・改善する方法 糖尿病を予防したり糖尿病の進行を防いだりするには「生活習慣を見直すこと」が欠かせません。生活習慣の改善ポイントは食事と運動とストレスの3点です。 食事を見直す 食生活の改善は糖尿病治療の基本です。したがって1型、2型どちらの患者の方も食事療法に取り組むことになります。食事で注意したいのは摂取エネルギーと栄養バランスです。 1日の摂取エネルギー 「標準体重(kg)×身体活動量(kcal/kg)」以内に抑えましょう。 ※標準体重は「身長(m)×身長(m)×22」で算出します。 身体活動量は仕事や作業によって次のように変わります。 ・軽い労作(デスクワークが多い人):25~30kcal/kg ・普通の労作(立ち仕事が多い人):30~35kcal/kg ・重い労作(力仕事が多い人):35~kcal/kg 食事は炭水化物とたんぱく質と脂質をバランスよく摂る必要があります。各栄養素の割合は以下が目安になります。 ・炭水化物:1日の摂取カロリーの50~60% ・たんぱく質:1日、標準体重1kg当たり1.0~1.2g ・脂質:1日の摂取カロリーの20~25% さらにビタミンとミネラルも意識して摂りましょう。ビタミンもミネラルも食事のなかで摂ることが理想ですが、難しい場合はサプリで補いましょう。 食事では次のことも実行してください。 ・ゆっくり食べる ・よく噛んで食べる ・夜遅くに食べない ・朝、昼、晩、3食しっかり食べる ・満腹まで食べない(腹八分目が理想) 運動をする 糖尿病の方は有酸素運動を習慣化してください。運動によって肥満が解消されるだけでなく、インスリンの働きもよくなります。最も簡単な有酸素運動は歩くことです。1日1万歩を目標にしてください。 ただ、運動が苦手な人や運動習慣がない人は、1日15分ほどのウォーキングから始め徐々に増やしていきましょう。糖尿病の方は運動により1日160~240kcalの消費を目指します。1万歩が大体160~240kcalになります。 次の運動を体重60㎏の人が行った場合、どれも100kcalほど消費しますので、これらを組み合わせて自分に合った運動メニューをつくってみると良いでしょう。 ・ゆっくり散歩を30分 ・速足のウォーキングを25分 ・自転車を平地で20分走行 ・早めのジョギング10分 ・クロールで水泳5分 ストレスを軽減させる ストレスを受けると血糖値が上がることがわかっています。このように、糖尿病は心理的要因や社会的要因も密接にかかわっているのです。糖尿病患者の方はなるべくストレスを遠ざけるようにしましょう。 ストレスは会社だけでなく家庭でも発生します。まずは自分のストレッサー(ストレスの原因)を見付けることから始めると良いでしょう。ストレス発散のために運動をすると運動療法にも寄与するのでおすすめです。 まとめ・糖尿病とは|種類と病態、原因と予防に迫る 糖尿病には1型と2型があり、それぞれ原因や発症メカニズムが異なります。さらにこの2種類の糖尿病は治療法も異なります。ただし、食事療法、運動療法、ストレス解消といったことは、すべての糖尿病患者の方が取り組むべきです。 いずれの場合も異変を感じたらなるべく早い段階で医師の診察を受けることが大切です。 監修:院長 坂本貞範 ▼こちらも併せてご参照ください
2019.03.28 -
- 糖尿病
糖尿病にかかると頭痛がする原因と対処方法|内科専門医師が配信 糖尿病治療中にしばしば発生し悩ませられる頭痛、その原因として低血糖症状が疑われます。 糖尿病は血糖値の高さにばかり目が向きがちですが、治療の過程で血糖値が低くなりすぎると、頭痛が引き起こることがあります。 こちらでは、糖尿病における頭痛の原因と、その対処方法を紹介します。 糖尿病患者が頭痛を訴える原因 糖尿病によって引き起こされる合併症のひとつに低血糖があります。血糖値が50mg/dl程度の状態が続くと、初期症状として空腹感やあくびなどが見られるようになります。 その後、倦怠感や動悸を催すようになり、さらに悪化すると、頭痛の症状が現れるのです。 糖尿病になると血糖値の高さに気を取られてしまいがちですが、治療段階では低血糖に悩まされるケースも珍しくありません。 血糖値を下げる治療として広く用いられているインスリン注射や血糖の低下を促す経口薬ですが、人によってはその効果が出過ぎてしまい、低血糖につながってしまうのです。 低血糖に陥ったとしても、すぐに対処すれば大きな問題にはなりませんが、実際には自覚できないケースも少なくありません。 頭痛の症状が現れて初めて察知するといったように、気づいた時にはすでに症状が進行している可能性があります。 低血糖で頭痛がする原因 なぜ低血糖は頭痛を引き起こしてしまうのか、症状が起こるまでの流れを解説します。 アドレナリンの血管収縮作用 血糖値が低下すると体内ではアドレナリンやノルアドレナリンが血糖値を上げるために働きかけます。 しかし、アドレナリンには血管を収縮させる作用もあり、血流を悪化させてしまうのです。その結果、脳内の血管が収縮し頭痛が引き起こされます。 活性酸素による血管へのダメージ また、血糖値の低下は遊離脂肪酸の血液中への放出を促します。遊離脂肪酸とは、血液を通じて全身に運ばれ、体を支えるエネルギーとして活用される物質です。 しかし、遊離脂肪酸には活性酸素を作り出す作用もあります。その活性酸素が血液中で脂質と結びつくと、血管を傷つけてしまうのです。脳の血管にダメージが生じた場合、頭痛の症状が現れます。 さらに血液中の活性酸素量が増加し血管がダメージを受けると、血管はより細くなっていきます。その結果、血液がスムーズに流れなくなり、血圧を引き上げてしまうのです。高血圧は糖尿病の合併症を発症させるリスクをはらんでおり、その原因となる低血糖は糖尿病治療において決して無視できない問題といえます。 低血糖で頭痛がしたときの対処方法 低血糖による頭痛、もしくは空腹感や眠気となどの症状を感じた場合は、すぐに対処してください。 糖分が含まれているお菓子やジュースを補給し、低血糖からの回復に努めましょう。 対処はできるだけ早期に 低血糖状態が継続すると、深刻な合併症が生じる恐れがあります。痙攣や異常行動、意識レベルの低下などを引き起こし、昏睡状態に陥るケースもあるため、できるだけ早い段階での対処が求められます。血糖値が70mg/dlを下回ったとき、発汗や動悸、頻脈などの症状が見られます。 この段階ですみやかに糖分を補給するように意識してください。 周囲の助けが必要になるケースに備えた事前説明 血糖値が50mg/dlを下回り意識レベルが低下すると、自分で糖分を摂取することは困難となるため、周囲の人の助けが必要となります。 糖尿病患者の方は身の回りの人に、その可能性があることを事前に告げ、緊急時の対応に備えておきましょう。 具体的な対応として、まずは応急処置として口唇や歯肉に糖分を塗ってもらいます。その後、救急車を呼んでもらい、病院で治療を受ける流れとなります。 適切な対処方法を事前に説明していないと、周囲の人も初見では状況を理解できず対応しきれません。万が一に備え、対処方法をしっかり伝えておきましょう。 低血糖が原因で進行する症状 低血糖は自覚のないうちに症状が進行してしまうおそれがあります。 早期対処のために低血糖時に現れる症状について正しく把握しておきましょう。 低血糖による交感神経症状 血糖値が70mg/dlを下回ると交感神経症状が現れます。主な症状には、発汗、脱力感、手足の震え、動悸、頻脈、顔面蒼白、気分の悪さなどが挙げられます。 また、副交感神経症状として強い空腹感も現れます。これらは低血糖の症状においては、比較的軽いものに分類されます。 低血糖による中枢神経症状 血糖値が50mg/dl程度の状態が続くと、中枢神経症状が現れます。具体的には、頭痛、眠気、めまい、目のかすみ、ろれつが回らない、ぎこちない動作、強い疲労感などです。 さらに血糖値が50mg/dlを下回ってくると、異常行動や痙攣、意識レベルの低下、さらに昏睡状態に陥るケースも考えられるため、早期の対処が不可欠です。 普段から血糖値が低い場合は、無意識のうちに低血糖状態となっている可能性も考えられ、中枢神経症状が突然発症するおそれもあります。 初期症状や症状の段階ごとの対処法をしっかり把握しておきましょう。 普段の生活で予防できる方法 低血糖の予防のために、普段の生活から実践できる対策もあります。 こちらも併せてご参照ください 糖尿病を日常生活から防ぐ!今から始められる予防法 治療薬が体におよぼす作用に気を配る まずは、糖尿病治療薬の種類や量に気を配ることです。 血糖値を抑えるために用いられるインスリンや経口薬は、人によっては効き過ぎてしまうこともあり、その結果として低血糖を誘発することがあります。血糖値を抑える作用の薬を投与後に違和感を覚えた場合は、主治医に相談してください。 適切な食生活や運動を取り入れる また、食事や運動など生活習慣を正すことも低血糖の予防につながります。糖尿病治療では食生活の改善は不可欠なものであり、食事を適正なエネルギー量にコントロールすることが求められます。 食事量が足りていないと血糖値が低下する可能性があるため、毎食適切な量を食べるようにしてください。また、お酒の飲み方にも注意が必要です。特に空腹時のアルコール摂取は低血糖を引き起こす原因となります。 適切な運動を生活習慣に取り入れることも欠かせません。ただし、長時間の激しい運動は、筋肉や肝臓に蓄えられたブドウ糖が過剰に消費されてしまい、低血糖を引き起こす原因にもなるため、逆効果になりかねません。 散歩や水泳など、疲労につながりにくい有酸素運動が血糖値コントロールに適しています。無理のない範囲で適度に取り入れましょう。 まとめ 糖尿病治療中に発生する頭痛の原因として低血糖が疑われます。低血糖は頭痛や動悸などさまざまな症状を引き起こしますが、悪化すると意識を失うなど深刻な事態になります。 慢性的な低血糖の場合は、気づかないうちに症状が進行していることも考えられるため、どのような症状が低血糖症に該当するのか、しっかり把握しておきましょう。 実際に頭痛などの具体的な症状が現れている場合には、糖分を補給して、血糖値を正常な値に戻すよう対処してください。 自身で対処できない場合を考えて、事前に周囲に対処法を伝えておくことも重要です。低血糖の予防として、食事や運動など生活習慣の見直しも大切です。 監修:院長 坂本貞範 尿病について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。 糖尿病ってどんな病気?
2019.03.27 -
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糖尿病のシックデイ対策|シックデイルールに沿って対処しよう|内科専門医師が配信 シックデイ、体調不良時は血糖値が大きく上下するおそれがある為、適切な対処と過ごし方が求められます。薬の調整が必要となる場合もあり、誤った自己判断で薬の調整を行った結果、症状を悪化させてしまうことも考えられます。 シックデイの適切な過ごし方を知っておくことは、糖尿病治療において不可欠です。 こちらでは、自身の病状の把握方法や食事の際の注意点などから、シックデイの過ごし方について解説します。 糖尿病のシックデイとは?その対策 糖尿病患者が感染症や病気にかかり、発熱、食欲不振などが生じ体調が悪化しているときのことをシックデイといいます。 特に糖尿病を患い高血糖状態が続いていると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、インフルエンザなど感染症にかかりやすくなる側面もあるため、シックデイ対策の正しい理解が求められます。 体調不良時のあらゆる症状は体にとってストレス・負荷をかけるため、身を守るために体内にストレスホルモンが分泌されます。 しかし、この働きは糖尿病患者にとっては悪影響にもなりかねません。インスリン投薬は血糖値を抑えることを目的で糖尿病治療に広く用いられています。 しかし、ストレスホルモンはそのインスリンの働きを抑えてしまう作用があるため、高血糖を引き起こす原因にもなるのです。 また、シックデイには次のようなリスクもあるため、糖尿病の方は特に注意してください。 <糖尿病患者にとってのシックデイのリスク> ● 抵抗力が低いため感染症にかかりやすい ● 病気によるストレスで血糖値が高くなりやすい ● 食事の量が減って低血糖になることがある このように、シックデイは糖尿病患者にとってさまざまなリスクをはらみます。体調がすぐれない日は、どのように過ごすべきなのでしょうか。 糖尿病のシックデイルール シックデイの適切な過ごし方をシックデイルールといいます。その主なルールとして、次の5つが挙げられます。 <糖尿病のシックデイルール> ● 保温を徹底して安静にする ● 水分と炭水化物を十分に摂る ● 飲み薬を調整する ● 自己判断でインスリンを中断しない ● 血糖値を測り症状を把握する 糖尿病の進行状況や治療方針は人それぞれ異なるため、ルールの具体的な部分は主治医と相談して決めるようにしてください。医師の指示がないままに薬の量を調整するなどの自己判断は禁物です。 シックデイの過ごし方で大切なことは、まずはルールを遵守することですが、次のような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。 <医療機関での受診が必要な状態> ● 高熱が続いている(38度以上) ● 高血糖状態が続いている(350mg/dl以上) ● 嘔吐や下痢などの強い自覚症状がある ● 食事ができない なぜシックデイルールを守ることが大切なのか、項目ごとにそれぞれ解説していきます。 保温を徹底して安静にする 安静は病気の症状を抑えるための基本です。体を動かすと体内のエネルギーが消費され、同時に病気に対する抵抗力も減少してしまいます。体力の消耗を防ぎ、抵抗力を保ちながら病気の完治に努めましょう。 また、保温も心がけてください。体を温めてしっかり休むことは体調不良時の対策として欠かせません。寒気を感じるような場合では、なおさらの徹底が必要です。 水分と炭水化物を十分に摂る 体調不良時にはなかなか食欲がわかないものです。しかし、病気の症状を抑え回復に向かうには、体内へのエネルギーや栄養素の取り込みは不可欠です。 食欲がない場合でも食事はしっかりと摂らなければなりません。なかでも大切なのは水分と炭水化物の補給です 脱水状態になると体内の血液濃度が高まり、血糖値上昇の原因になります。また、高血糖であれば本来は血液中の余分な糖分は尿から排出されるものですが、脱水状態では尿の量自体が減少するため、適切に排出されず体内に残ってしまいます。 これも血糖値の上昇につながる要因となります。脱水状態となることを防ぐべく、十分な水分補給が求められます。 一方、糖分が不足し低血糖になった場合では、血液中にケトン体という物質が増加し、血液は酸性へと変わります。 それは吐き気や意識障害といった深刻な問題を引き起こす原因になります。 低血糖にならないための血糖値コントロールの一環として、糖分が多く含まれている炭水化物を摂取するようにしてください。 飲み薬を調整する 糖尿病の薬の調整方法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。 ・1型糖尿病の場合 食欲が湧かず、まともに食事を食べられない状態であっても、インスリンの投与は欠かさず行うようにしてください。数時間おきに血糖値を測定し、その結果に合わせてインスリンを数単位ずつ追加していきましょう。 また、この際のインスリンは速効性の高いものを選択してください。この流れを繰り返し、血糖値のバランスを損ねないよう調整することが大切です。 ・2型糖尿病の場合 使用する飲み薬によって調整の方法も異なります。例えばビグアナイド薬の場合であれば、脱水によって別の症状が引き起こされるリスクが懸念されるため、服用を控えることになります DPP-4阻害薬の場合は、食事を摂れない状態であれば薬効自体が見込めなくなります。このように、体調と薬の種類に応じた調整が求められるため、主治医の指示に従うことが大切です。 自己判断でインスリンを中断しない インスリン注射についても、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。 ・1型糖尿病の場合 体内でインスリン分泌が正常に行われていないため、外部からインスリンを投与する必要があります。 これは、シックデイでも変わりありません。インスリンの投与を中断してしまうと、インスリンの欠乏により嘔吐や意識障害など深刻な症状が現れるおそれがあります。 ・2型糖尿病の場合 いつも通りに食事を摂れない状態であれば、インスリンの投与量を調整する必要があります。普段の半分程度食べられる場合であれば通常時と同じ量のインスリンを投与することになりますが、自己判断は禁物です。必ず主治医の指示に従って調整しましょう。 血糖値を測り症状を把握する シックデイでは血糖値が乱れやすくなるため、数時間おきに血糖値を測定し、自身の状態を正しく把握することが大切です。普段の状態と比較しながら、病状の把握に努めましょう。 血糖値のほかに体温や体重も自身の状態を確かめるひとつの指標となります。シックデイで体の抵抗力が弱まると、感染症にかかりやすくなります。感染症には発熱が伴うケースがあるため、まずは体温を測ることから対応してください。 また、体重が普段よりも大幅に減少している場合には、体内の水分量が低下し、脱水状態に陥っていることが懸念されます。 このように、自身の症状を正しく把握することは、医療機関の受診を急ぐべきかの判断材料にもなります。 シックデイのときに避けた方がよい食べ物 シックデイでは食欲不振に陥り、嘔吐や下痢といった症状に悩まされることも少なくありません。 消化のしづらい食べ物や脂肪分の多い食品は体への負担につながるため、できるだけ控えるようにしましょう。 <シックデイのときに避けた方がよい食べ物> ● インスタント食品 ● デニッシュパン ● たけのこ ● きのこ類 ● 海藻類 ● 脂身の多い肉 ● 生クリーム ● マヨネーズ ● 青魚 ● まぐろ ● セロリ ● にら また、調理する具材の切り方やかたさなども消化効率に影響します。大きな具材やかたい食べ物は消化までに時間がかかるため、体への負担になりかねません。 食材選びだけでなく調理方法にも気を配りましょう。 シックデイのときに摂った方がよい食べ物 糖尿病治療薬には、食事を摂れない状態の服用では効果が期待できない種類もあるため、適切に食事を摂る必要があります。 シックデイのときにはどのような食べ物を選ぶべきなのか、普段通りに食べられる場合、食欲不振の場合など、ケースごとに紹介します。 こちらも併せてご覧ください⇩ 糖尿病による腎臓の病気|糖尿病性腎症におすすめの食事(レシピ付き) <食欲があるときにおすすめの食べ物> ● 麺類(うどん・そばなど) ● シチュー ● おじや ● 果物 <食欲がないときにおすすめの食べ物> ● おかゆ ● 梅干し ● アイスクリーム ● ゼリー ● 茶碗蒸し また、シックデイでは嘔吐や下痢などの症状から、電解質や水分が体内から奪われてしまいます。脱水症状を防ぐために、次の食べ物を取り入れるようにしましょう。 <脱水予防におすすめの食べ物> ● みそ汁 ● 野菜スープ ● スポーツドリンク ● 果汁ジュース まとめ シックデイでは血糖値が大きく上下するおそれがあり、嘔吐や吐き気などの症状や低血糖などの合併症も懸念されます。シックデイルールに従って生活することを心がけましょう。 ルールの細部や具体的な部分については、主治医との相談のうえで決めるようにしてください。何事も自己判断は禁物です。薬の量の調節なども含め、主治医の指示を遵守しながらシックデイを適切に過ごしましょう。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.26 -
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糖尿病の生命予後|経過時間と進行する症状|内科専門医師が配信 糖尿病の治療におけるキーワードのひとつに「生命予後」があります。生命予後とは、病気を発症した後や治療をした後の「命の予測」や「健康の予測」のことです。 すなわち糖尿病は「命に関わる病気」と位置付けられているのです。 糖尿病の生命予後を解説したうえで、治療法について紹介していきます。 糖尿病の生命予後 病気を発症しても自然に治ることがあります。また治療によって病気の症状が消えることもあります。 その一方で、死に至る病や治療をしても完全には治せない病気もあります。 そのような病気や治療では、医師たちは「命をどの程度維持できるか」「どの程度健康が回復するか」「生活の質(QOL)はどの程度保たれるか」といったことを予測します。 なかでも、「命をどの程度維持できるか」を予測したものを生命予後といいます。 糖尿病は、治療を徹底することで生命予後を改善することもできます。 一方、いい加減に治療をしていると失明や足の切断、腎不全などの生活の質を著しく低下させる状況に陥ったり、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気につながることもあります。 このように目や足や腎臓などの臓器や器官などに支障が出ることを「機能予後の悪化」といいます。 糖尿病による合併症は生命予後や機能予後に大きな影響を与えます。さらに、合併症がどのくらい進行しているかによっても予後が変わってきます。 糖尿病の病期分類 糖尿病の症状は病気が進行すると著しく悪化していきます。そして糖尿病患者の方が警戒しなければならないのは次の3つの合併症です。 ・糖尿病性腎症 ・糖尿病性神経障害 ・糖尿病性網膜症 上記はそれぞれ、腎臓の病気、神経の病気、目の病気です。 糖尿病には「前期」「初期」「早期」「中期」「晩期」「末期」の6つの病期があり、3つの合併症も病期が進むにしたがって重症化していきます。 糖尿病の病期は発症からの年月数や血液検査の結果、症状の悪化の度合い、合併症の状態によって決まります。 末期症状としては、糖尿病性腎症の場合は人工透析が必要になり、糖尿病性神経障害の場合は知覚が消失し、糖尿病性網膜症の場合は失明した状態になります。 こちらも併せてご参照ください 1998~2012年に実施された米国疾病予防管理センターの追跡調査によると、糖尿を持つ人はそうでない人と比べて4.6年早く死亡し、日常生活動作への障害が6~7年早く進行することがわかりました。 日常生活動作とは食事をしたり排泄をしたり着替えをしたりする生活の基本動作のことです。 一方で、日本の多くの医師や糖尿病の研究者たちが「糖尿病を発症しても治療次第で普通の人となんら変わらない生活を送ることができる」と言います。 寿命が短くなることも普通の生活を送れることも事実です。この明暗をわけるものは早期治療や適切な治療や生活の改善などです。 もし病期が進行したり合併症を発症しても、その病期や予後、合併症に応じた治療があります。 症状によって異なる予後 糖尿病には以下の2種類があります。 <糖尿病の種類> ●1型糖尿病 ●2型糖尿病 それぞれの生命予後をみてみましょう。 <1型糖尿病の生命予後> 1型糖尿病は、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞が損傷し、インスリンがほとんど分泌されなくなることで発症します。 したがって1型糖尿病の治療は体外からインスリンを補充するインスリン注射が主になります。 インスリン注射は基本的に、患者自身が朝、昼、夕の3食後に自分の体に打ちます。これを自己注射といいます。 1型糖尿病の患者の方は生涯にわたってインスリンの自己注射を続ける必要があります。インスリン注射をしないと高血糖になって合併症を引き起こすことになりますが、インスリンの投与量を多くしてしまうと低血糖になるため健康を著しく害します。 したがって、インスリンと血糖値をいかにコントロールするかが患者の方ご自身の生活の質(QOL)を左右することになります。 <2型糖尿病の生命予後> 1型、2型に関わらず、糖尿病の生命予後に大きな影を落とすのは合併症です。糖尿病に高血圧、肥満、高脂血症を加えた4つの症状が合併していることを「死の四重奏」と呼ぶこともあります。 特に2型糖尿病は食生活や運動不足などの生活習慣が原因で発症することが多いといわれています。 また、高血圧や高脂血症も生活習慣によって発症することが多い病気です。 そのため、2型糖尿病患者の方にとっては合併症を発症させないことが生命予後を左右することになります。 糖尿病の治療方法 糖尿病の治療には大きく次の3つのアプローチがあります。 <糖尿病の治療方法> ●インスリン治療における血糖管理 ●食事療法で血糖値を抑える ●運動療法で血糖値を下げる それぞれについて解説します。 インスリン治療における血糖管理 糖尿病の薬には飲み薬もありますが、ここではインスリン治療について解説します。 インスリン治療とは不足しているインスリンを注射を使って体外から補充する治療法です。これにより血糖値をコントロールすることができます。 インスリン治療に用いられる薬(インスリン製剤)には次の6種類があります。 医師は患者の方の血液検査の結果や体調、生活環境などを勘案し、適切なインスリン製剤を選択します。 <インスリン製剤の種類> ●超速効型インスリン製剤 ●速効型インスリン製剤 ●中間型インスリン製剤 ●持効型溶解インスリン製剤 ●混合型インスリン製剤 ●配合溶解インスリン製剤 それぞれの特徴を紹介します。 <超速効型インスリン製剤> インスリン製剤の効果が注射後10~20分に現れます。効果スピードが最も早いインスリン製剤です。ただ作用する時間は3~5時間しかありません。毎食前に投与します。 <速効型インスリン製剤> 注射後30分~1時間程度で効果が出ます。作用時間は5~8時間です。毎食、約30分前に投与します。 <中間型インスリン製剤> 速効型と持効型の中間に位置するインスリン製剤で、効果が現れるのは注射後30分~3時間後です。作用時間は18~24時間です。朝食前に投与します。 <持効型溶解インスリン製剤> 1日1回投与します。効果が現れるのは注射後1~2時間で、1日中作用します。 <混合型インスリン製剤> 「超速効型または速効型」と「中間型」を混合したインスリン製剤です。食事の直前または食事の30分前に注射することが一般的です。 持続時間は中間型インスリン製剤とほとんど同じです。 一方、混合型インスリン製剤は、作用時間の異なる薬を混合しているため、超速効型(または速効型)と中間型それぞれの作用時間で効果が見られるという特徴があります。 混合されているインスリンの種類によって注射を打つ時間が変わってきます。 <配合溶解インスリン製剤> 持効型7:超速効型3の割合で配合したインスリン製剤です。医師が指定した食事の前に注射します。早く効果が出ながら、作用時間が1日中作用します。 食事療法で血糖値を抑える 食事療法で血糖値を抑えるポイントは次の7点です。 ●1日3回の規則正しい食事を心がける ●ゆっくり食べる ●よく噛んで食べる ●炭水化物とたんぱく質と脂質をバランスよく摂る ●満腹にしない(腹八分目を心がける) ●夜遅く食事をしない ●寝る直前に食事しない 糖尿病治療では「食事療法」といっても食べてはいけないものはありません。 むしろ、バランスよくいろいろなものを食べることが大切です。特に野菜が苦手な方は意識して野菜を多く食べましょう。 また食事の量も重要ですので、医師が指示した「1日の摂取エネルギー」は厳格に守ってください。 運動療法で血糖値を下げる 食事療法だけでなく、運動療法も糖尿病治療に効果的です。運動することによって糖が細胞に取り込まれやすくなるからです。 血糖値を下げる効果が期待できるのは次の2つの運動です。 ●有酸素運動 ●筋力トレーニング 有酸素運動とはウォーキングや水泳やジョギングなどのことです。 有酸素運動によって糖が筋肉へ取り込まれ、血中の糖が消費されやすくなることで、血糖値を下げる効果が期待できます。 筋肉が増えるとインスリンの効果が高まるので、筋力トレーニングも血糖値を下げる効果が期待できます。 まとめ 糖尿病は放っておくと命に関わる病気へと進行していきます。その一方、しっかり治療に取り組めば普通の生活を送ることが期待できます。 生命予後を決めるのは適切な治療と生活習慣の改善です。そして糖尿病の初期段階から治療に取り組むことも生命予後によい効果をもたらします。 「糖尿病かな?」と感じたら、お近くの内科クリニックや糖尿病専門クリニックにかかるようにしてください。 監修:院長 坂本貞範
2019.03.26 -
- 糖尿病
糖尿病の早期発見のために必要な初期症状の見抜き方 糖尿病は一度発症すると完治が難しい病気です。 しかし、糖尿病の初期段階の方や糖尿病予備軍と呼ばれている方、生活習慣病が気になる方に知っていただきたいのは、「初期段階で治療に取り組んで生活習慣を改善すれば、一般の人と変わらない生活を送れる」ということです。 これから紹介する糖尿病の症状をしっかり押さえたうえで、早期発見と早期治療、療養の継続に努めましょう。 糖尿病は治すことが難しい病気 糖尿病は、血糖を下げる働きをするインスリンというホルモン自体を生成できなかったり、何らかの理由により少なくなったり、働きが悪くなり、血液中の糖の濃度が高くなることで発症します。 そして一度、糖尿病を発症すると、元の状態に治すことは極めて難しいとされています。 インスリンはすい臓にあるβ細胞でつくられており、このβ細胞が壊れると現代医学では再生できないからです。そのため医師によっては患者の方に「糖尿病は治らない」「糖尿病を治すことは難しい」と説明しています。 糖尿病は血液のなかの糖の割合(血糖値)が高くなる病気です。糖尿病を治すことはできなくても、血糖値を正常値に保つことはできます。すなわち血糖値を正常値の範囲内にとどめておけば、一般の人とまったく変わらない生活を送ることができます。 糖尿病には成因によって1型と2型に分けられます。1型糖尿病の原因はいまだ解明されていませんが、2型糖尿病は生活習慣の悪化などが引き金となって発症します。 1型と2型は発症の原因に違いはありますが、すい臓やβ細胞やインスリンの分泌に支障が生じる点では同じです。 糖尿病は早期発見が重要 生活習慣の悪化などによって発症する2型糖尿の場合、完治は難しくても早期発見と早期治療と治療の継続によって健康な人とほぼ同じ生活を営むことができます。 糖尿病の治療の基本方針は「血糖値のコントロール」です。糖尿病は血糖値が高くなりすぎる病気ですが、糖尿病治療薬を飲みすぎて血糖値が下がりすぎても健康を害してしまいます。 そこで「血糖値を下げる」だけでなく「下げすぎない」ことも必要になります。そこから「血糖値のコントロール」という言葉が使われるのです。 血糖値をコントロールするには、薬のほかに食事と運動が鍵を握ります。糖尿病の初期段階ではまずは食事療法と運動療法を行い、それでも効果が出なかったら薬物療法を取り入れます。 食事療法と運動療法は、糖尿病治療の基本なので薬物療法を始めてからも継続する必要があります。つまり糖尿病の治療は「生活習慣を見直す」ことが重要になります。 糖尿病の初期症状 糖尿病の初期症状を紹介します。初期段階での自覚症状は気づきにくいものが多いですが、少しでも疑わしい症状があれば医師に相談することをおすすめします。 高血糖状態 糖尿病は初期症状に気づきにくい病気のひとつです。それは、糖尿病の初期段階では自覚症状がほとんどないうえに、ほかの要因でも起きうる症状が多いからです。 糖尿病の主な初期症状 ・喉や口の中や舌が渇く ・水分を多く摂るようになる ・尿の回数や量が増える ・強い空腹に襲われる ・体重が急に減少する ・疲れやすくなる 例えば、運動をして汗をかけば喉が渇きます。高齢になると尿の回数が増えます。胃や腸の病気でも体重減少が現れます。したがって常に糖尿病を警戒していないと、喉が渇いても、尿の回数が増えていても、体重が減っても、糖尿病を疑うことができないかもしれません。 厚生労働省の調査では、糖尿病の患者の方が初めて医師に「糖尿病である」と診断されたとき、約4割の方は自覚症状を持ってなかったことが分かっています。上記のような症状が現れたら、医者にかかり検査をうけることを、おすすめします。 初期段階から進行した場合 糖尿病の初期症状を放置すると病気が進行し、次のような症状が現れます。 ・手足がしびれる ・手足にチクチクするような痛みが走る ・皮膚が乾燥しやすくなる ・肌がかゆくなる ・目がかすむ ・小さな傷でもすぐに化膿する ・勃起不全(ED)など性機能に支障が出る この状態に陥っても放置していると、足の切断や失明、腎不全といった合併症を発症してしまいます。また心筋梗塞や脳梗塞といった「命に関わる病気」の発症リスクも高まります。 数値で見る初期症状 先ほど、糖尿病は初期症状を把握しにくい病気である、と解説しました。糖尿病は「見えにくい」病気ですが、「病気を数値で見る」ことがあります。それは健康診断などの血液検査で実施する血糖値の測定です。 以下の数値になると、糖尿病と診断されます。 ・空腹時血糖値が126mg/dl以上 ・随時血糖値が200mg/dl以上 ・HbA1c値が6.5%以上 健康診断でこれに近い数値が出ると、医療機関で再検査や精密検査を受けるようアドバイスされるはずです。その場合は再検査や精密検査を必ず受けるようにしてください。 自覚症状がないのに、糖尿病を疑って医療機関を受診した患者の方の約5割は「健康診断や人間ドックで指摘された」ことがきっかけでした。 まとめ・糖尿病の早期発見のために必要な初期症状の見抜き方 初期段階では自覚症状がほとんどないのに、放置すると重大な病気を引き起こすというのが糖尿病の恐ろしいところです。一方、初期段階のうちに、医療機関にかかると治療効果が大きいのも糖尿病の特徴です。 糖尿病予備軍の方や生活習慣病が気になる方は、初期症状を確実につかむことが重要です。早期治療で糖尿病の進行を防ぐことができれば、健康な人と変わらない生活を送ることが可能です。 そして初期段階で治療に取り組むことができた方は、油断せずに血糖値のコントロールを地道に継続することが大切です。 監修:院長 坂本貞範 こちらも併せてご参照ください
2019.03.17