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ウェルニッケマン肢位とは?特徴・原因・リハビリをわかりやすく解説

ウェルニッケマン肢位(ウェルニッケ・マン型肢位)は、脳卒中などによって錐体路が障害された際にみられる、特徴的な姿勢を指す用語です。
麻痺側の上肢は肘や手指が曲がり、下肢は膝が伸びたまま足先が内側へ向くという、上肢と下肢で逆方向のパターンをとるのが特徴です。
この肢位は単なる「見た目の変化」ではなく、錐体路障害の程度や痙縮の状態を反映する重要な身体所見として、評価やリハビリ計画の手がかりになります。
本記事では、ウェルニッケマン肢位の特徴・発生機序・評価方法・リハビリテーションまでを整理して解説します。
目次
ウェルニッケマン肢位とは脳卒中後にみられる代表的な異常姿勢
ウェルニッケマン肢位とは、上肢は屈曲位、下肢は伸展位をとる特徴的な姿勢パターンのことです。
脳梗塞や脳出血によって皮質脊髄路(錐体路)が障害されると、脳から筋肉への抑制が働きにくくなり、麻痺側の筋緊張が高まった状態(痙縮)が生じます。
この痙縮が上肢では屈筋群に、下肢では伸筋群に優位に現れるため、上肢と下肢で反対方向の姿勢が固定されていきます。
そのため、ウェルニッケマン肢位が明確に確認できる場合は、錐体路障害による痙性麻痺が存在していることを示す所見として捉えられます。
なお、名称の似た「ウェルニッケ脳症」はビタミンB1欠乏による別の疾患であり、混同しないよう注意が必要です。
ウェルニッケマン肢位の特徴
ウェルニッケマン肢位の特徴は、上肢と下肢を分けて整理すると理解しやすくなります。
ここでは、それぞれの典型的なパターンを解説します。
上肢にみられる特徴
上肢では屈筋群の緊張が優位となり、腕全体を体に引きつけて折りたたむような姿勢になります。
| 部位 | 典型的な肢位 |
|---|---|
| 肩関節 | 内転・内旋(脇を締め、腕を内側へねじる) |
| 肘関節 | 屈曲(曲がったまま伸ばしにくい) |
| 前腕 | 回内(手のひらが下を向く) |
| 手関節・手指 | 屈曲(握りこぶし状になり、指を開きにくい) |
この状態が続くと関節が固まる拘縮に進みやすく、着衣や手指の清潔保持といった日常生活動作にも影響します。
下肢にみられる特徴
下肢では上肢とは逆に伸筋群の緊張が優位となり、脚全体を棒のように突っ張った姿勢になります。
具体的には、股関節の伸展・内転、膝関節の伸展、足関節の底屈・内反(いわゆる内反尖足)が代表的です。
膝が曲がりにくく足先が下を向くため、歩行時には麻痺側の脚を外側へ振り回すように運ぶ「分回し歩行」がみられます。
一方で、下肢の伸展パターンは脚で体重を支える助けにもなるため、痙縮を単純に「悪いもの」として扱わない視点も必要です。
ウェルニッケマン肢位が起こる原因
ウェルニッケマン肢位が生じる背景には、錐体路(皮質脊髄路)の障害による筋緊張の異常があります。
健常な状態では、脳から脊髄へ向かう経路が筋肉の過剰な収縮を抑える働きをしていますが、脳梗塞や脳出血でこの経路が損傷されると抑制が失われます。
その結果、脊髄レベルの反射が過剰に働き、筋肉が伸ばされた際に強く抵抗する痙縮が現れます。
発症直後は筋緊張が低下した状態(フラクシッド)であることも多く、回復の過程で徐々に痙縮が強まるにつれて典型的な肢位が明確になっていきます。
つまりウェルニッケマン肢位は、麻痺からの回復過程で生じる筋緊張の変化を反映した姿勢だといえます。
どのような病気でみられる?
ウェルニッケマン肢位は、錐体路が障害される中枢神経疾患で広くみられます。
- 脳梗塞・脳出血(脳卒中)
- くも膜下出血
- 外傷性脳損傷
- 脳腫瘍や脳炎などによる錐体路の障害
- 脳性麻痺
とくに脳卒中後の片麻痺では高い頻度で認められ、痙縮の分布や強さを把握するうえで欠かせない所見となります。
肢位のパターンを確認することで、どの筋群に介入すべきか、装具や補助具が必要かといったリハビリ計画の方向性を判断しやすくなります。
ウェルニッケマン肢位の評価方法
評価では、肢位そのものだけでなく、筋緊張・随意運動・生活動作を総合的に確認します。
| 評価方法 | 確認する内容 |
|---|---|
| Brunnstromステージ | 随意運動の回復段階を6段階で評価する ・共同運動の出現や分離運動の可否を確認 |
| Modified Ashworth Scale(MAS) | 他動的に動かした際の抵抗の強さから痙縮の程度を評価する |
| 関節可動域(ROM)測定 | 拘縮の有無や進行の程度を把握する |
| 歩行・ADL評価 | 分回し歩行の有無や、着衣・食事・移乗などへの影響を確認 |
同じ肢位に見えても、痙縮が主体なのか拘縮が進んでいるのかで介入方針は変わります。
そのため、定期的に評価を繰り返し、変化を記録しながら方針を見直していくことが大切です。
治療・リハビリテーション
治療は原因疾患への対応を土台に、痙縮の軽減と日常生活動作の改善を目的として複数の手段を組み合わせます。
- 理学療法(関節可動域訓練・ストレッチ・歩行訓練)
- 作業療法(上肢機能訓練・生活動作の練習)
- 装具療法(短下肢装具などで内反尖足に対応)
- ボツリヌス療法や内服による痙縮治療
- ポジショニングによる拘縮予防
ボツリヌス療法は脳卒中治療ガイドラインでも強く推奨されており、上下肢の痙縮の軽減や関節可動域の増加、介助量の軽減に有効とされています。
※参照:国立循環器病研究センター「ボツリヌス外来」
また、痙縮が固定する前の早い段階から関節を動かし、良い姿勢を保つことが拘縮の予防につながります。
損なわれた組織・臓器の機能改善を目指す再生医療という選択肢
ウェルニッケマン肢位そのものを治す再生医療は確立されておらず、姿勢や痙縮を直接改善する治療として提供されているものではありません。
現時点での対応は、あくまでリハビリテーションや装具療法、痙縮に対する薬物療法が中心となります。
一方で、この肢位の原因となる脳卒中後の神経機能の回復を目的として、幹細胞を用いた再生医療の研究と臨床が進められています。
再生医療は、患者様ご自身の幹細胞を培養して投与し、損傷した脳の神経や組織の修復をサポートすることを目指す治療法です。
リハビリテーションと並行して取り組むアプローチとして期待されていますが、効果や適応には個人差があり、現時点では研究が進められている段階にあります。
関心のある方は、まず主治医に現在の状態を確認したうえで、再生医療に精通した医師から十分な説明を受けることが大切です。
まとめ|ウェルニッケマン肢位は脳卒中後の運動麻痺を示す重要な所見
ウェルニッケマン肢位は、上肢が屈曲し下肢が伸展する特徴的な姿勢で、錐体路障害による痙性麻痺を反映する重要な身体所見です。
発症直後よりも回復の過程で明確になっていくため、経過を追って筋緊張や随意運動の変化を評価することが欠かせません。
BrunnstromステージやModified Ashworth Scaleなどで状態を把握し、リハビリや装具療法、痙縮に対する治療を組み合わせることで、機能や生活動作の改善が期待できます。
とくに拘縮は一度進むと戻りにくいため、早期からの関節可動域訓練とポジショニングが大切です。
また、原因となる脳卒中の後遺症に対しては、再生医療が機能回復を目指す選択肢の一つとなる可能性があります。
脳卒中の後遺症に対する再生医療の詳しい内容は当院(リペアセルクリニック)公式LINEでもご紹介していますので、後遺症の改善に取り組みたい方は、ぜひ参考にしてください。
監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
資格・所属学会
日本脳神経外科学会 所属
脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。


























