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ブローカ野とウェルニッケ野の違いとは?役割・位置・失語症をわかりやすく解説

ブローカ野とウェルニッケ野は、どちらも言葉を使ったコミュニケーションに関わる脳の領域です。
ブローカ野は主に言葉を組み立てて話す働きに関わり、ウェルニッケ野は書く能力に影響する失語症が生じることがあります。
本記事では、ブローカ野とウェルニッケ野の位置や役割、障害された場合の症状、治療とリハビリテーションについて解説します。
目次
ブローカ野とウェルニッケ野の違い|「話す」と「理解する」の役割が異なる
- ブローカ野:言葉を組み立てて発話する働きに関わる
- ウェルニッケ野:聞いた言葉の意味を理解する働きに関わる
- 両者は神経線維を介して情報をやり取りする
ここでは、ブローカ野とウェルニッケ野の役割における主な違いを解説します。
ブローカ野とウェルニッケ野の違いは、ブローカ野が言葉の表出、ウェルニッケ野が言葉の理解に強く関わる点です。
ブローカ野が障害されると、相手の話を比較的理解できても、言いたい言葉を滑らかに話すことが難しくなります。
ウェルニッケ野が障害されると、流暢に話せる一方で、言葉の意味を理解しにくく、発話内容も伝わりにくくなる傾向があります。
ただし、実際の言語機能は2つの領域だけで完結しているわけではなく、前頭葉・側頭葉・頭頂葉などに広がる神経ネットワークによって支えられています。
※参照:米国国立聴覚・コミュニケーション障害研究所「Aphasia」
| 比較項目 | ブローカ野 | ウェルニッケ野 |
|---|---|---|
| 主な位置 | 前頭葉の下前頭回後部 | 側頭葉後部を中心とする領域 |
| 主な役割 | 発話・文法・言葉の組み立て | 言語の理解・言葉の意味の処理 |
| 障害時の発話 | たどたどしく短い発話になりやすい | 流暢だが意味が伝わりにくくなりやすい |
| 言葉の理解 | 比較的保たれやすい | 低下しやすい |
ブローカ野とは?
ここでは、ブローカ野の位置と主な役割について解説します。
ブローカ野は、言語機能が優位な大脳半球の前頭葉に位置しています。
多くの患者様では左大脳半球が言語機能の中心となりますが、言語機能の位置や広がりには個人差があります。
ブローカ野は単に口や舌を動かす場所ではなく、言葉の選択や文法、発話の計画に関わる領域です。
ブローカ野とその周辺が損傷すると、発音できても文章として滑らかに話せなくなる場合があります。
ブローカ野の位置
ブローカ野は、通常は左前頭葉にある下前頭回の後部に位置します。
脳の外側面から見ると、こめかみよりも前方で、額の下部に近い場所にあります。
解剖学的には、主にブロードマン44野と45野に相当する領域として説明されます。
右利きの患者様の多くでは左大脳半球に存在しますが、すべての患者様が同じ位置に言語機能を持つわけではありません。
※参照:米国国立医学図書館「The Anatomy of the Cerebral Cortex」
ブローカ野が担う役割
ブローカ野は、頭に浮かんだ内容を言葉として組み立て、発話へつなげる過程に関わります。
文章の文法構造を処理したり、発話に必要な音の並びを計画したりする働きも担っています。
ブローカ野が障害されると、「水、飲む」のように短い単語を努力して話す発話がみられることがあります。
言葉の理解は比較的保たれやすいものの、複雑な文法を含む文章の理解や、読み書きにも影響する場合があります。
※参照:米国国立聴覚・コミュニケーション障害研究所「Aphasia」
ウェルニッケ野とは?
ここでは、ウェルニッケ野の位置と主な役割について解説します。
ウェルニッケ野は、言語機能が優位な大脳半球の側頭葉後部付近に位置しています。
耳から入った音を言葉として認識し、その意味を理解する過程に深く関わる領域です。
ウェルニッケ野が障害されると、音は聞こえていても、言葉の意味を正しく捉えにくくなる場合があります。
話し方は滑らかでも、言い間違いや意味の通らない言葉が増え、会話が成立しにくくなることがあります。
ウェルニッケ野の位置
ウェルニッケ野は、一般的に左側頭葉の上側頭回後部を中心とする領域として説明されます。
脳の外側面から見ると、耳の後方から少し上に位置する場所です。
言葉の理解には、側頭葉だけでなく、角回や縁上回などの頭頂葉に近い領域も関わっています。
ウェルニッケ野の境界は患者様によって異なり、現在は一つの点ではなく複数領域からなる言語理解ネットワークとして捉えられています。
※参照:米国国立医学図書館「Wernicke Aphasia」
ウェルニッケ野が担う役割
ウェルニッケ野は、聞こえた音の並びを言葉として認識し、意味を理解する働きに関わります。
会話の内容だけでなく、自分が話した言葉が適切かどうかを確認する過程にも関係します。
障害されると、話す速度や文法は自然でも、別の単語への言い換えや意味を持たない言葉が増えることがあります。
患者様ご自身が発話の誤りに気づきにくい場合もありますが、病識の程度には個人差があります。
※参照:米国国立医学図書館「Wernicke Aphasia」
ブローカ失語とウェルニッケ失語の違い
- ブローカ失語は発話が非流暢になりやすい
- ウェルニッケ失語は言葉の理解が低下しやすい
- どちらも復唱・読み書きに影響することがある
ここでは、ブローカ失語とウェルニッケ失語の症状の違いを比較します。
ブローカ失語では「分かっているのに話せない」、ウェルニッケ失語では「話せるが言葉の意味を理解しにくい」という違いが代表的です。
ただし、実際には発話と理解のどちらにも一定の障害がみられることがあり、症状が典型例に完全に一致するとは限りません。
損傷が広範囲に及ぶ場合は、話す・聞く・読む・書く機能がいずれも大きく低下する全失語が生じることもあります。
失語症の種類や程度は、医師の診察や言語聴覚士による言語機能検査などを通じて評価します。
| 比較項目 | ブローカ失語 | ウェルニッケ失語 |
|---|---|---|
| 発話 | 非流暢で、短く努力を伴う | 流暢だが、内容が伝わりにくい |
| 言葉の理解 | 比較的保たれやすい | 低下しやすい |
| 復唱 | 困難になりやすい | 困難になりやすい |
| 発話の例 | 「水……飲む」のように単語中心になる | 滑らかに話すが、別の単語や造語が混じる |
| 症状への気づき | 気づきやすい傾向がある | 気づきにくい場合がある |
なお、失語症は言葉を扱う機能の障害であり、口や舌の麻痺によって発音が不明瞭になる構音障害とは異なります。
失語症があっても、患者様の知識や人格、感情そのものが失われたとは限らないため、理解力を決めつけないことが大切です。
※参照:米国国立聴覚・コミュニケーション障害研究所「Aphasia」
ブローカ野とウェルニッケ野はどのようにつながっている?
- 弓状束を含む神経線維で情報をやり取りする
- 理解した言葉を発話へ変換する
- 接続経路の障害によって伝導失語が生じることがある
ここでは、ブローカ野とウェルニッケ野を結ぶ神経ネットワークについて解説します。
古典的な言語モデルでは、両者は弓状束と呼ばれる神経線維の束によって結ばれていると説明されます。
聞いた言葉を繰り返す際は、ウェルニッケ野を中心に処理された情報がブローカ野を含む発話ネットワークへ伝えられます。
この連絡経路や周辺の頭頂葉が障害されると、言葉を理解して自分で話せても、聞いた言葉の復唱が難しくなる伝導失語が生じる場合があります。
現在では、言語情報は一つの神経線維だけでなく、複数の経路を通じて前頭葉・側頭葉・頭頂葉の間を行き来すると考えられています。
※参照:米国国立医学図書館「Conduction Aphasia」
ブローカ野・ウェルニッケ野が障害される原因
- 脳梗塞
- 脳出血
- 頭部外傷
- 脳腫瘍や脳の感染症
- 認知症などの神経変性疾患
ここでは、ブローカ野やウェルニッケ野の障害につながる主な病気やけがを解説します。
失語症の代表的な原因は脳卒中であり、言語野を含む左中大脳動脈領域の脳梗塞や脳出血によって生じることがあります。
頭部外傷や脳腫瘍、脳炎などでも、言語野や周辺の神経ネットワークが損傷すると失語症が現れます。
アルツハイマー病や前頭側頭型認知症などでは、言語機能が徐々に低下する進行性失語がみられる場合があります。
※参照:米国言語聴覚協会「Aphasia」
言葉が突然出なくなった、相手の話を急に理解できなくなった場合は脳卒中が疑われるため、ためらわず119番通報してください。
※参照:公益社団法人日本脳卒中協会「脳卒中の主な症状」
ブローカ野やウェルニッケ野が障害された場合の治療とリハビリ
- 原因となった脳卒中や脳疾患を治療する
- 言語聴覚士による評価と訓練を受ける
- 残された言語機能や代替手段を活用する
- 家族も会話方法を工夫する
ここでは、失語症が生じた場合の治療とリハビリテーションについて解説します。
治療では、脳梗塞や脳出血などの原因疾患に対応したうえで、言語聴覚士による言語リハビリテーションを行います。
リハビリでは、言葉を聞いて指差す訓練、絵の名称を答える訓練、音読、復唱、読み書きなどを症状に合わせて組み合わせます。
発話が難しい場合は、ジェスチャー、文字、写真、コミュニケーションボードなどの代替手段も活用します。
回復の程度や期間は損傷部位、範囲、年齢、全身状態などによって異なるため、患者様に合わせて継続することが重要です。
※参照:米国言語聴覚協会「Aphasia」
ご家族は短い文章でゆっくり話し、答えを急かさず、患者様の発言を途中で遮らないようにしましょう。
「はい」「いいえ」で答えられる質問や、選択肢を示す聞き方を取り入れると、意思を確認しやすくなります。
※参照:Stroke Association「Communication treatment and tools」
損なわれた組織・臓器の機能改善を目指す再生医療という選択肢
- 失語症の中心的な治療は原因疾患の治療と言語リハビリ
- 脳卒中後の神経機能を対象とする細胞治療研究が進んでいる
- 適応や期待できる内容は患者様ごとに異なる
ここでは、脳卒中後の失語症と再生医療の位置づけについて解説します。
失語症に対する中心的な対応は、脳卒中などの原因疾患の治療と言語リハビリテーションです。
一方で、脳梗塞後の神経機能障害に対して、幹細胞を用いて損傷周辺の神経機能の回復を目指す研究も進められています。
国内では、患者様自身の骨髄から作製した細胞を脳梗塞周辺へ移植する医師主導治験などが行われていますが、症例数が少なく、失語症への効果も含めて追加の検証が必要です。
※参照:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「脳梗塞に対する再生医療等製品の研究開発―医師主導治験 RAINBOW研究の結果報告―」
リペアセルクリニックでは、患者様ご自身の脂肪から採取した幹細胞を培養して投与し、脳卒中によって損なわれた機能の維持・回復を目指す再生医療を行っています。
治療の対象や適応は発症時期、後遺症、既往歴などによって異なるため、現在のリハビリを継続しながら再生医療に精通した医師へご相談ください。
脳卒中後の再生医療については、脳卒中・脳梗塞の治療紹介ページでも詳しくご紹介しています。
まとめ|ブローカ野とウェルニッケ野は連携して言語機能を支えている
ブローカ野は主に言葉を組み立てて話す働きに関わり、ウェルニッケ野は主に言葉を理解する働きに関わります。
両者は弓状束を含む複数の神経経路で結ばれ、周辺の脳領域と連携しながら会話や読み書きを支えています。
言葉が突然出ない、相手の話を理解できないなどの症状は脳卒中の可能性があるため、すぐに救急車を呼びましょう。
脳卒中後に失語症が残った場合は、原因疾患の治療と患者様の症状に合った言語リハビリテーションを継続することが重要です。
一方で、リハビリを続けても後遺症が残る場合には、損傷した脳組織の機能回復を目指す再生医療も選択肢の一つとなることがあります。
後遺症の改善に取り組みたい方は、リペアセルクリニックの公式サイトや無料相談をご活用ください。
監修者
圓尾 知之
Tomoyuki Maruo
医師
資格・所属学会
日本脳神経外科学会 所属
脳神経外科の最先端治療と研究成果を活かし、脳卒中から1日でも早い回復と後遺症の軽減を目指し、患者様の日常生活の質を高められるよう全力を尽くしてまいります。


























