- その他
後縦靱帯骨化症のリハビリとは?運動内容・注意点・手術後の流れを解説

後縦靱帯骨化症(OPLL)とは、背骨の中を縦に走る後縦靱帯が骨のように硬く変化し、その内側を通る脊髄や神経根を圧迫する疾患です。
骨化した靱帯を元に戻す方法は現時点でないため、治療は神経を保護しながら、残された機能を維持・改善していくことが中心となります。
その中でリハビリは、痛みやしびれの軽減、筋力やバランス能力の維持、日常生活の動作を安全に行う力を保つうえで重要な役割を担います。
本記事では、後縦靱帯骨化症で行われるリハビリの内容、手術後の流れ、自宅でできる運動と注意点までを解説します。
診断を受けてリハビリの進め方に悩んでいる患者様やご家族は、ぜひ参考にしてください。
目次
後縦靱帯骨化症のリハビリは症状の改善と機能維持を目的に行う
後縦靱帯骨化症のリハビリは、骨化そのものを治すためではなく、身体機能を維持・改善するために行います。
骨化した靱帯は運動によって小さくなるものではないため、リハビリの目的は神経症状とうまく付き合いながら生活の質を保つことにあります。
具体的には、痛みやしびれの軽減、手足の筋力やバランス能力の維持、日常生活動作(ADL)の自立度を保つことが目標となります。
この考え方は、保存療法で経過を見ている場合も、手術を受けたあとの回復期でも共通しています。
実際、すべての患者様で症状が悪化するわけではなく、半数以上の方は数年経過しても症状が変化しないと報告されています。
※参照:難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」
だからこそ、症状が落ち着いている時期に体を動かす習慣を保っておくことが、その後の生活を左右します。
後縦靱帯骨化症で行われるリハビリ
医療機関で行われるリハビリは、症状や神経障害の程度に応じて内容が組み立てられます。
ここでは、代表的な3つのリハビリを解説します。
関節可動域訓練・ストレッチ
関節可動域訓練は、首や肩、手足の柔軟性を保ち、関節が固まる拘縮を防ぐために行います。
しびれや麻痺があると動かす機会が減り、関節が動く範囲は少しずつ狭くなっていきます。
そのため、理学療法士が介助しながら関節をゆっくり動かしたり、無理のない範囲で自分でストレッチを行ったりします。
ただし、首を後ろにそらせる姿勢は避ける必要があります。
※参照:難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」
首を反らせると脊柱管がさらに狭くなり、脊髄への圧迫が強まるおそれがあるため、頚椎まわりのストレッチは必ず指導を受けてから行いましょう。
筋力トレーニング・バランス訓練
体幹や下肢の筋力を保つトレーニングは、歩行能力の維持と転倒予防のために欠かせません。
脊髄の圧迫によって足に力が入りにくくなると、活動量が減り、さらに筋力が落ちるという悪循環に陥りやすくなります。
実際のリハビリでは、椅子からの立ち座り、仰向けや座位で行う下肢の運動、平行棒を使った立位保持など、転倒のリスクが低い方法が選ばれます。
バランス訓練では、支持物のある環境で片脚立ちや重心移動を練習し、ふらつきに対応できる力を養います。
負荷の設定は症状の程度によって大きく異なるため、自己判断で強度を上げないことが大切です。
歩行訓練・日常生活動作(ADL)訓練
歩行訓練では、歩幅や姿勢を整えながら、安全に移動できる方法を身につけます。
下肢の突っ張り(痙性)やしびれがある場合は、杖やシルバーカー、装具の使用も検討されます。
階段の昇り降りでは手すりを使う練習を行い、段差でつまずかない足の運び方を確認します。
また、手指の巧緻運動障害があるとボタンかけや箸の操作が難しくなるため、更衣や入浴、食事といった生活動作の練習も重要です。
必要に応じて、太めの柄のスプーンやボタンエイドなどの自助具を取り入れ、できる動作を増やしていきます。
手術後のリハビリの流れ
手術後のリハビリは、医師の許可のもとで段階的に進めます。
おおまかな流れは以下のとおりです。
| 時期 | 主な内容 |
|---|---|
| 術直後 | ・ベッド上での手足の運動 ・呼吸練習や関節可動域の維持 |
| 離床期 | ・座位、立位の練習 ・装具を装着したうえでの歩行開始 |
| 回復期 | ・歩行距離の延長と階段昇降 ・日常生活動作、手指の細かい動作の練習 |
| 退院後 | ・外来リハビリや自宅での運動継続 ・定期的な画像検査による経過観察 |
頚椎の手術では、術後しばらく頚椎カラーを装着して首を安定させるケースが多く、装着期間は術式や骨化の状態によって異なります。
神経症状の回復には時間がかかることも多く、数か月から1年ほどかけて少しずつ改善していく場合もあります。
なお、手術後も骨化が別の部位に広がって再び症状が出ることがあるため、生涯にわたって定期的に画像検査を受けることが勧められています。
※参照:難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」
自宅でできるリハビリ・運動
自宅では、主治医や理学療法士から許可された範囲の運動を継続することが基本です。
取り入れやすいのは以下のような運動です。
- 椅子に座って行う膝の曲げ伸ばしやかかと上げ
- 手すりや壁に手を添えた状態での立ち座り練習
- 平坦な道を歩く無理のないウォーキング
- 肩や肩甲骨まわりを軽く動かす体操
- 指先を使う簡単な作業(洗濯ばさみ、タオルたたみなど)
一方で、避けたほうがよい運動もあります。
- 首を強く反らせる、勢いよくひねる動き
- 首や肩を強く押す、引っ張るマッサージや矯正
- 重い負荷をかける自己流の筋力トレーニング
- ジャンプや転倒リスクの高いスポーツ
これらは脊髄への圧迫を強めたり、転倒によって症状を急に悪化させたりするおそれがあります。
また、長時間うつむいた姿勢や、枕が高すぎる寝具も首への負担につながるため、日常の姿勢環境もあわせて見直しておきましょう。
リハビリを行う際の注意点
後縦靱帯骨化症のリハビリで最も重視したいのは、転倒を防ぐことです。
軽微な外力でも神経の障害が急速に進行し、四肢の麻痺に至ることがあるため、転倒には十分な注意が必要とされています。
※参照:難病情報センター「後縦靱帯骨化症(OPLL)(指定難病69)」
自宅では段差の解消や手すりの設置、滑りにくい履き物の使用など、環境面の対策も並行して行いましょう。
あわせて、以下のような変化があった場合は運動を中止し、早めに受診してください。
- 手足のしびれや脱力が急に強くなった
- 箸が使いにくい、字が書きにくいなど手指の動きが悪化した
- 足がもつれる、階段が急に怖くなったなど歩行が不安定になった
- 排尿や排便がしにくくなった
痛みを我慢して運動を続けることも避けるべきです。
症状は数年単位でゆっくり変化することもあるため、定期的な診察と画像検査を受けながら、その時々の状態に合わせて内容を調整していきましょう。
リハビリで改善しない場合の治療法
保存療法とリハビリを続けても神経症状が進行する場合には、手術が検討されます。
手術が積極的に検討されるのは、以下のようなケースです。
- 歩行障害が進行し、日常生活に支障が出ている
- 手指の巧緻運動障害が悪化している
- 排尿・排便の障害が現れている
- 薬物療法や装具で症状が抑えられない
手術には、骨化した部位を摘出して固定する前方法と、脊柱管を広げて圧迫を減らす後方法があり、骨化の状態や部位によって選択されます。
神経の障害が強く長期化してからでは回復に限界が出ることもあるため、症状の変化を主治医と共有し、手術時期を含めた方針を相談しておくことが大切です。
損なわれた組織・臓器の機能改善を目指す再生医療という選択肢
後縦靱帯骨化症の標準治療は、装具や薬物療法などの保存療法とリハビリ、そして症状が重い場合の手術です。
再生医療は、現時点で後縦靱帯骨化症そのものへの有効性が確立された治療ではありません。
一方で、脊髄損傷や脳卒中の後遺症など、神経機能の回復を目的とした幹細胞治療の研究・実施は進められています。
再生医療は、患者様ご自身の脂肪から採取・培養した幹細胞を投与し、傷んだ組織の修復や機能の維持を目指す治療法です。
手術後もしびれや麻痺が残っている場合の補完的な選択肢として関心を持つ方もいますが、適応は個々の状態によって異なります。
まずは主治医の診断と方針を確認したうえで、再生医療に精通した医師に相談するという順序が大切です。
詳しくは脊髄損傷の再生医療についてをご覧ください。
まとめ|後縦靱帯骨化症のリハビリは継続と適切な指導が重要
後縦靱帯骨化症のリハビリは、骨化を元に戻すためではなく、筋力やバランス能力、日常生活の動作を保つために行うものです。
首を反らせる動きを避ける、転倒を防ぐといった配慮を守りながら、症状に応じた内容を続けることが生活の質の維持につながります。
自己流で負荷を上げると症状を悪化させるおそれがあるため、医師や理学療法士の指導を受けながら進めましょう。
一方で、手術やリハビリを続けてもしびれや麻痺が残る場合には、神経機能の回復を目指す再生医療に関心を持たれる患者様もいます。
再生医療は、ご自身の幹細胞を活用して組織の修復や機能の維持を目指す治療法であり、適応は状態によって異なります。
再生医療の詳しい内容は、リペアセルクリニックの公式サイトでもご紹介していますので、後遺症の改善に取り組みたい方は、ぜひ参考にしてください。
監修者
岩井 俊賢
Toshinobu Iwai
医師

























