糖尿病の食事療法のポイント|内科専門医師が配信

2021.08.23

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病治療において、食事療法は柱ともいえるとても重要な取り組みです。こちらでは食事療法の概要や効果を高めるためのポイントについて紹介していきます。

糖尿病治療に食事療法が必要な理由

糖尿病治療は大別すると3つの種類に分かれます。広く知られている薬物療法のほか、運動療法と食事療法がありますが、なかでも大前提として取り組まなくてはならないのが食事療法です。

そもそも糖尿病とは、なんらかの理由でインスリンの作用が低下することで、食事から摂取するブドウ糖を体内にうまく取り込めなくなる症状です。

そのため、ブドウ糖摂取量を制限するべく、食事療法が用いられます。

また、いくら適切な薬物療法を受けたとしても、日々の食事療法がおろそかになっていれば、薬の効き目などに悪影響が出ることも考えられます。

このように、食事療法は糖尿病治療における土台となるものなのです。

食事療法を効果的にするコツ

糖尿病治療において非常に大切な食事療法。効果的に行うためには、毎日のちょっとした心がけが重要です。

1日3食、規則正しくゆっくりよく噛んで食べる

まずは朝・昼・夜と規則正しい食事を取ることを心がけてください。朝食と昼食をまとめて取るといったことは避け、均等な量に調整することがポイントです。

また、間食や夜食なども基本的には避けるようにしましょう。とくに深夜帯や就寝直前の食事は食事療法の効果を半減させてしまうので、十分に注意してください。

そのうえで食べ方にも気を配ると良いでしょう。早食いはせず、しっかりと咀嚼(そしゃく)することで、糖質の吸収がゆるやかになり、かつ満腹感も得られます。

1日30品目以上を目標に栄養バランスの取れた食事をする

「糖尿病になると厳しい食事制限がある」一般的にはそのようなイメージを持たれていると思いますが、食事療法においてNGとなる食材はほとんどありません。

それよりも重要なのは、一度の食事で取るエネルギー量を、体型や生活習慣に応じた範囲内に収めること。そして、タンパク質・脂質・糖質の3大要素に加え、ミネラルやビタミンなどの栄養素をまんべんなく取ることです。

上記を踏まえ、具体的なメニューを考えてみましょう。ポイントは、1日に30品目以上の食品を偏りなく取れるかどうかです。

バランスの採れた食事

自分に合った適正なエネルギー量を知り食べ過ぎないようにする

食事療法では、適正なエネルギー量の範囲内に食事をコントロールすることが大切です。しかし、人によって基準となるエネルギー量は異なります。

基本的には医師の指示に従うことが最善となりますが、目安としての一日のエネルギー量を求める計算式を紹介します。

エネルギー摂取量(kcal)= 身体活動量(kcal/kg)×標準体重(kg)

  • デスクワークなどの職業:25~30kcal/kg標準体重なお、上記でいう標準体重とは、身長(メートル単位)を2乗し、そこに22を掛けた数字から求められます。また、身体活動量の目安は以下となります。
  • 立ち仕事が多い職業:30~35kcal/kg標準体重
  • 力仕事が多い職業:35~kcal/kg標準体重

食品交換表を活用する

医師から伝えられる指示エネルギー量を献立に反映させるには、食品交換表の活用がおすすめです。

これは、炭水化物やタンパク質、脂質、ビタミン・ミネラルなどの栄養を主に含んだ食品を分類した表のことです。

食品交換表

糖尿病食は健康によい!糖尿病の予防にも

食品交換表や献立例を見直してみると、食事療法に導入される糖尿病食は、普通の食事とそこまで異なるものではありません。

むしろ、さまざまな食品をバランスよく摂取しようというコンセプトから考えられているものだといえます。

自分に必要な一日のエネルギー量を理解し、さまざまな栄養素を過不足なく取るようにしましょう。そのための工夫を食品交換表と照らし合わせながら考えることが大切です。

この取り組みは現在糖尿病を患っている方はもちろん、すべての人が今後の健康生活を維持するためにも効果的です。

糖尿病の予防にもつながるので、ぜひ実践するようにしてください。

野菜を採る女性

糖尿病の食事療法や予防食におすすめの調理方法・食べ方のポイント

次に、食事療法中の調理法におけるポイントも見ていきましょう。日々のメニューを考えるうえでの参考にしてください。

増やしたい調理方法は「ゆでる」「蒸す」

肉類の調理では、できるだけ脂肪を取り除ける方法を選ぶようにしましょう。具体的には、ゆでる、蒸すといった調理法が効果的です。

また、焼く際には網を利用すると良いでしょう。火を通しながら余分な脂を落とすことができます。

一方、揚げ物や炒め物は調理自体に油が必要となるため、必然的にカロリーも高くなりがちです。糖尿病の食事療法や予防食には適切とはいえません。

多くとりたいメイン食材はやはり野菜

献立を考える際、メインの食材として取り入れたいものは野菜です。食物繊維を十分に摂取できるうえ、低カロリーかつ空腹感を満たしてくれます。

また、腸からの炭水化物の吸収をゆるやかにする作用があるため、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。

なお、食物繊維を取るのであれば、海藻や麦ごはん、キノコ類もおすすめです。「野菜>魚>鶏肉>豚肉>牛肉」の順で優先度を付けるとよいでしょう。

外食はなるべく和食を選ぶ

外食時には、できるだけ和食のお店を選ぶよう心がけましょう。洋食は肉やバター、生クリームなどが多く使われる傾向にあります。

エネルギー量が多いだけでなく、脂肪過多となって栄養バランスも崩れやすくなってしまうので、できるだけ控えるべきでしょう。

砂糖は使わず使いたい場合は人工甘味料を使用する

砂糖はカロリーの高い調味料であるため、できる限りその使用量を減らしたいところ。とはいえ、甘さは料理に欠かせない要素でもあり、完全に断つことは現実的ではありません。

この場合は、血糖値上昇に寄与しない人工甘味料を用いることがおすすめです。ただし、人工甘味料の長期的な摂取は、健康にどのような影響を与えるのか明らかでないところもあります。

多量の人工甘味料を継続的に使用する、といったことは避けるようにしましょう。

味付けは調味料や香辛料・ハーブなどを使用する

塩分の過剰摂取は高血圧につながるとされています。醤油や味噌も含め、できるだけ利用を控えるよう心がけてください。

しかし、それだけではどうしても味気なくなってしまいますので、香辛料やハーブ、レモン、ゆずなどを食事に取り入れてみるとよいでしょう。

また、バターやマーガリン、ドレッシングは油分が多く、動脈硬化のリスクが高まる可能性もあります。できる限り不飽和脂肪酸を多く含む植物油を使うようにしてください。

主菜・副菜のバランスをとる

献立を考える際には、ついつい麺・米などの主食や肉や魚などの主菜が多くなり、野菜を多く使った副菜などが少なくなりがちです。

しかし、食事療法中は栄養バランスが大切となるため、野菜などの副菜の量や品数を増やすように心がけてください。その結果、一日30品目も達成しやすくなります。

バランスを大切に

糖尿病の食事療法中に注意したい日常生活の習慣

最後に、食事療法中の生活についても見直しを行いましょう。食事療法の効果を高めるためには、日常生活をどう過ごすのかの観点も大切です。

規則正しい生活を心掛ける

バランスの良い食事を取るためには、規則正しい生活が大前提となります。朝起きたら朝食を食べ、昼食、夕食も決まった時間に取るようにし、早めの就寝を心がけましょう。

運動の習慣を身につける

有酸素運動を行い筋肉への血流が増えてくると、ブドウ糖が細胞へ多く取り込まれます。その結果、インスリンの作用効率も高まります。

また、筋力トレーニングによって筋肉量を増やすことも、インスリンの働きを促します。インスリンの抵抗性が改善された結果、血糖値が下がりやすい体質へと改善されるのです。

禁煙する

喫煙はインスリンの感受性を低下させます。この状態では、筋肉や肝臓が血液中のブドウ糖を取り込む作用が低下するため、血糖値が下がりにくくなる弊害を生みます。

また、糖尿病罹患中の喫煙は、総死亡や血管死亡のリスクを高めることも知られており、禁煙によってそのリスクが低下することも報告されています。

アルコールは飲まない

アルコールはそれ自体が高カロリーであり、肥満の原因になります。それだけでなく、低血糖の危険性を高め、インスリン抵抗性にも影響をおよぼすこともあります。

加えて、大量摂取は高血圧にもつながることが多くの研究からわかっています。高血圧と糖尿病が合併すると心筋梗塞や脳卒中を発症させやすくしたり、糖尿病合併症の症状を悪化させるともいわれています。

このように、糖尿病治療中の患者さんにとってアルコールは多くの危険性をはらんでいます。

まとめ・糖尿病の食事療法のポイント

食事療法は糖尿病治療のベースとなるものです。医師の指示に従い健康的な食生活を送ることは、薬物療法も含めた糖尿病治療全般に好影響を与えてくれます。

いつ、なにを、どのように食べるのか。食生活の見直しをあらゆる角度から考えてみてください。

 

監修:院長 坂本貞範

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