糖尿病が原因の皮膚の症状をそれぞれ解説

2021.08.19

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病になると皮膚に症状が現れます。でも、糖尿病と皮膚は一見関係がなさそうに思えますよね。ではどうして糖尿病になると皮膚に症状が現れることが多いのでしょうか。この記事では糖尿病を発症するとなぜ皮膚に症状が現れるのか、また、どのような症状が皮膚に現れるのかについて説明します。

糖尿病と皮膚疾患の関係

糖尿病は高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと浸透圧が上昇し、細胞から水分を奪います。そのため、皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみが起きやすくなります。

また、高血糖状態が続くと白血球や免疫機能が低下するため、抵抗力が落ちてしまいます。さらに高血糖が続くことで血管が障害されるため、細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなり、感染症にかかりやすくなります。

そのため、ちょっとした傷が治りにくくなったり、健康な状態であれば発症しないような症状が皮膚に現れることがあるのです。

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糖尿病が引き起こす皮膚の症状

糖尿病を発症すると、どのような症状が皮膚に現れるのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。

皮膚の乾燥とかゆみが起こる

高血糖状態が続くと浸透圧が高くなり、頻尿や多尿になりやすく、脱水症状が現れたり、皮膚が乾燥することがあります。

皮膚は一番外側に皮脂膜があり、その下に角質層と呼ばれる、何層にも積み重なった角質細胞があります。角質細胞の間には細胞間脂質というものがあり、細胞同士の隙間を埋めることで水分を保持し、バリア機能を担っています。

しかし、皮膚が乾燥してしまうとバリア機能が弱くなり、外部刺激に敏感になります。そのため、ちょっとした刺激でもかゆみにつながることになります。そのため、糖尿病と診断されたら、日頃から保湿を心がけ、皮膚が乾燥しないように注意することが大切です。

皮膚に赤い斑点ができる

糖尿病ではリポイド類壊死症という皮膚症状が現れることがあります。糖尿病性リポイド類壊死症は主にすねの前面に黄色や赤、オレンジ色の光沢のある斑点ができるもので、痛みなどはありません。

糖尿病性ルポイド類壊死症はひざから足首にかけて多く見られますが、腕や太ももにもできることがあります。糖尿病性リポイド類壊死症は糖尿病による微小な血管障害が原因と考えられています。なお、リポイドは脂肪に似た物質のため、糖尿病性リポイド類壊死症は類脂肪性仮性壊死症とも呼ばれます。

傷が治りにくくなる

高血糖状態が続くと、血流が悪くなり細胞に必要な酸素や栄養が行き渡らなくなります。さらに糖尿病を発症すると白血球や免疫機能が低下して細菌などに対する抵抗力が落ちるため、感染症にかかりやすく、傷が治りにくくなります。

毛嚢炎(毛包炎)などの細菌感染症

糖尿病が原因の皮膚の症状をそれぞれ解説

糖尿病では、毛の根元に赤あるいは白色の吹き出物のようなものができることがあります。これを毛嚢炎(毛包炎)といいます。毛嚢炎は細菌感染により毛包に膿が溜まったものです。

毛嚢炎の原因としては免疫力の低下や高齢、肥満などがありますが、糖尿病が引き金となって発症することもあります。これも糖尿病によって白血球や免疫機能が低下することで細菌に対する抵抗力が落ちることが原因と考えられます。

足白癬(水虫)

糖尿病は足白癬(水虫)も引き起こしやすくなります。これは高血糖状態が続くことで白血球や免疫機能が低下し、細菌やカビなどの真菌に対する抵抗力が下がることが要因と考えられています。

元々、人間の身体には多くの真菌や細菌が常在していますが、特に足は他の部位と比べて真菌が多く生息していることがわかっています。また、足は靴下や靴を履くことが多いため他の部位よりも湿度が高く、白癬菌が増殖しやすくなります。

そのため、日頃からフットケアや足を清潔に保つように心がけ、こまめに足のチェックを行うことが大切になります。

水疱

糖尿病を発症すると手や足にやけどをしたときのような水疱ができることがあります。これを糖尿病性水疱といいます。

糖尿病性水疱はカビの一種である真菌に感染することで発症します。高血糖状態が続くと細菌や真菌に対する抵抗力が低下し、血流が悪くなるため感染症を引き起こしやすくなることが原因と考えられています。

糖尿病性水疱を放置すると、水疱部分に血液が行き渡らず、最悪の場合、患部が壊疽してしまうこともあります。日ごろから足のチェックやフットケアを怠らないように注意しましょう。

カンジダ症

カンジダ症は真菌による感染症で、発疹や腫れ、鱗屑、かゆみなどが現れます。

元々、カンジダ属の真菌は膣や消化管、口腔に常在しており、健康な状態であれば人体に害があるわけではありません。しかし、病気や妊娠中、抵抗力が落ちたときなど特定の条件下でカンジダが増殖することがあります。特にカンジダは鼠径部や口腔粘膜など湿潤部位や粘膜部分で過剰に増殖する傾向があります。

糖尿病になると免疫力が低下するため、カンジダ症を引き起こしやすくなるのです。

まとめ

糖尿病になるとどのような皮膚症状が現れるのかについて説明しました。

糖尿病は皮膚が乾燥し、外部からの刺激に反応しやすくなります。また、糖尿病を発症すると白血球や免疫機能が低下して抵抗力が落ちるため、感染症にかかりやすくなります。

糖尿病が原因の皮膚症状は、放置すると壊疽することもあります。また、糖尿病神経障害を発症している場合は痛みなどの感覚が鈍くなるため、ケガや傷に気付きにくくなります。特に足は目に触れることが少ないため、異変に気付きにくい傾向があります。そのため傷やケガがあっても気付かずに放置してしまい、最悪の場合、足を切断する可能性もあります。

 

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